―――私は彼女の事が好きになれなかった。嫌いだった
―――私には持っていたいものを持っていて、それでいて正しくて強くて、みんなの中心にいる彼女が
―――けれども、私は嫌いの感情と同じぐらいに憧れていて、好きだった
○ ○ ○
「……はぁ」
降り注ぐ雨を窓の内より見つめ、ため息。艷やかな黒の長髪と透き通った躑躅色の瞳。そして彼岸花をイメージさせる衣装に身を包んだ、一人の少女
彼女の憂鬱は、このゲームに呼ばれた事でも、失ったはずの勇者の力が戻ったことでも、神子柴に見せられた映画の感傷に浸っていた事でもない
それは、なぜ自分は蘇らせられた、のか――
「あの神子柴って人は、分かってて私を蘇らせたのかな」
郡千景の人生はお世辞にも良いものとは言えなかった。両親の不和、生まれを発端とするクラスメイトからのいじめ。村の人々からも嫌われるような毎日から、彼女が価値を見出すきっかけとなったのは『勇者』としての義務、それによる信頼できる仲間とも出会い
悪化する状況、嫉妬と精神不調からなる拗れ、その果てに追い詰められ、仲間に手を掛けようとして、勇者の力を剥奪され、己が醜い嫉妬とその仲間に対する憧憬を自覚、仲間を守らんがためにその身を犠牲とし、息を引き取った
映画の内容は兎も角、もし『前の自分』ならゲームに乗る理由はいくつでもあったのだろう。それこそ村への復讐なんて悍ましい願いも
「……でも、残念だけどね神子柴。私はあなたの思い通りになるつもりはないわ」
だからこそ、自分の中の感情を向き合い、自覚したからこそ、彼女はゲームに乗ることを拒絶する
それは、こんな自分でも仲間だと言ってくれたみんなの為だ。眩しいぐらいに真っ直ぐで、自分には勿体ないぐらいのみんな
それは『勇者』郡千景ではなく、『みんなの仲間』だった郡千景として
「そうなったら、まずはあの帆高って人を見つけないと」
一先ず優先するべきは森嶋帆高の保護。彼の存在がゲームに関わってくる以上、殺されないように保護しなければならない。映画で見た感じ、彼の性格はお世辞にもいいとは言えない。まあ罵詈雑言は言われ慣れてるから、徐々に相手の心を解しながら対話してけばいいとは思う
「――今更資格なんて無いと思っていたけど。今だけは―――」
勇者・郡千景として、誰かを守ろうとするのも、悪くないと。そう思っていた
自分では、高嶋さんみたいな事は出来ないと自嘲じみた笑みを浮かべながら
【郡千景@乃木若葉は勇者である】
[状態]:健康、勇者衣装
[装備]:大葉刈@乃木若葉は勇者である
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:今だけは『勇者』として、このゲームを止める
1:森嶋帆高を探す
※死亡後からの参戦
【大葉刈@乃木若葉は勇者である】
郡千景の勇者としての武器。形状は巨大なデスサイズ
最終更新:2021年02月07日 17:08