☆
―――男は怒りを抱いていた。
千年もの間探し求めていたものをようやく見つけたというのに。
焦がれ続けた悲願達成への足掛かりをようやく見つけたというのに。
その矢先に首輪を付けられ呼ばれたのがこのふざけたお遊戯だ。
それだけでも怒髪天をつくというのに、鞄に張られた説明書の記載は更に怒りを募らせた。
【ゲームの終了方法】
①『森嶋帆高』が天野陽菜と出会えず制限時間が過ぎた場合、太陽光が会場中にくまなく差し込みゲーム終了。1時間後に『森嶋帆高』の首輪の爆破を合図に全員退去。
この一文。さらに言えば、老婆の言う通りに帆高と陽菜の合流を阻止した際のクリア条件だ。
帆高が陽菜と会えなかった時、会場中に太陽光が差し込み1時間経過するまで抜け出せない。
なんだこのふざけた文面は。
あの陽菜とかいう小娘が天気を操りその代償に人柱となることで天候を安定させるというのはわかった。
だが、天候を取り戻した後になぜ1時間も待たねばならん。
これではまるで自分への個人的な嫌がらせのようではないか。
つまりはこういうことだ。
老婆は最初から自分を逃がすつもりはない。どう転んでも自分を殺すつもりだと。
腹立たしい。まったくもって腹立たしい。
どうやったかはわからないが、自分を部下から切り離し、あまつさえ奴隷の証のような首輪を嵌める。
ここまでの手間をかけてなにがしたいのやら。
自分への恨みを晴らすためだろうか。あり得る。こんな玩具を自分につけられるのはあの鬼狩り(いじょうしゃ)共くらいしか考えられない。
枷を嵌めておいて殺さないのは理解しがたいが、あの狂人共ならば積年の恨みを晴らすだの数多の怨念を思い知らせるだのと考えても可笑しくはない。
いいだろう。いいだろう。
ひとまずは貴様らの提示したルールに則り、太陽を迎え入れぬ為に帆高とやらを会わせてやろうではないか。
この雨が会場を埋め尽くすという数時間があれば充分だ。その間に奴らを殺し、脱出口を確保するとしよう。
「目障りな鬼狩り共...今宵、私が殲滅してやろう」
その怒れる者の名は鬼舞辻無惨。
千年の時を生きてきた至高にして究極の鬼である。
【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:健康、主催への不快感と激しい怒り
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:生き残り、神子柴含む鬼殺隊を殲滅する。
1:ひとまず帆高を確保し少しでも時間を稼ぐ。
2:鬼狩りは見つけ次第殺す。
※この無惨が参戦し、他の【鬼@鬼滅の刃】が参戦した場合、無惨の呪いは解かれている状況になります。
※参戦時期は炭治郎と義勇に鬼殺隊は異常者だと言った後です。
※体内に打ち込まれた薬が消えているかどうかはお任せします。
☆
「クッキー...ビスケット...シャーベット...」
ひとつの民家と見間違うほどの巨体がひとつ。
それは雨に濡れたお菓子を手に落ち込むようにぶつぶつ、とお菓子の名前を口にし肩を竦めていた。
「マ~マママママ...こんな雨じゃあお菓子も存分に食べられねえじゃねえかよ」
それはなによりも食に執着していた。
「おれの子供たちとも逸れちまったし...寂しいったらありゃしねえ」
それは己の知る中で誰よりも繋がりを夢描いていた。
「ああ、なんだっけぇ。ホダカだかホタテだかいうガキのせいでこんなことになったんだっけか?なら話ははええ...さっさとあのガキを殺して帰らねえとなぁ。マーマママママ...!!」
それは目的を達成する為なら手段を厭わぬ冷酷さと手段を有していた。
それ―――彼女の名はビッグマム。
長きに渡り、偉大なる海を支配する皇の一人である。
【ビッグマム@ONE PIECE】
[状態]:健康、軽い空腹
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:さっさと帰ってお菓子を食べる。
1:帆高を殺して帰る。
※参戦時期は少なくとも老婆になって以降です。
※ソルソルの実の天候を操る能力はプロメテウス以外は使用可能です。ただし、会場をとりまく雲に魂を与えることは出来ません。
☆
「......」
男は考える。
初めての経験だった。
眼前で人が死に、生き返り、あまつさえこの手で命を奪わねばならない。
彼とて数多の戦場を体験してきたが、しかし、それらとは別種の感覚に冷や汗をかく。
これは命を握り、握られている恐怖か?それとも未曾有の事態への興奮か?
(いや...いまは置いておこう)
いまの彼にとってそれらは些細なことだった。
いまの彼の胸中を占めるのは、あの映像で見せられた『神様』のことだ。
(私の尊敬する男は人をやめ神となった。私は人を謳歌し神になろうとしている。ならば―――あの『神』はどんな『神』になろうとしている?)
かつて彼が憧れた男は、誰よりも気品あふれ、何者をも寄せ付けぬ荘厳さに溢れ、なにより強かった。
だからこそ、多くの人間から、名声だけでなく彼という漢自身を『神』と慕う者は後を絶たず、その称号―――『大和国』の名は腐ることなく語り継がれている。
だがあの映像の『神』は彼とは違う。
己の生命を保持する為に幼き命を贄に永らえ、彼らの青春という名の輝きを奪い去る。
むしろ神どころか悪魔に等しい所業ではないか。
大和国はいつでも神たらんと険しい顔をしていた。
なら、あの神様は、少年少女の絶望を糧にいったいどんな顔をしているのだろうか。
「いや...なんにせよ」
なんにせよだ。
あの映像だけでは、少年少女たちがどのような関係なのかは測り切れない。
しかし、彼らの間には確かに"愛"がある。
でなければ、あんな大立ち回りは演じられまい。
そんな少年少女の愛を穢す権利など誰にもありはしない。
「若人の恋路を邪魔するような輩(かみさま)は、懲らしめてあげないとねぇ...!!」
彼の四股名は刃皇。土俵の神―――横綱として、君臨し続ける男である。
【刃皇 晃(ダワーニャウィン・ツェウェグニャム)@火ノ丸相撲】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:帆高が愛を貫くならばそれを支え導く。
1:打倒主催者
※参戦時期はお任せします。
☆
(こんな雨の中で吸っても仕方ない)
懐から取り出しかけた煙草を仕舞いなおし現状を分析する。
突如集められた会場、嵌められた首輪、自分たちに命じる老婆、蘇生させられた女、森嶋帆高と天野陽菜を巡る催し、絶え間なく降り続く雨...
なにもかもが異常事態だ。
数多の修羅場を経験してきた自分でもこんなことは初めてだった。
とにもかくにも、あの老婆が悪であることに疑いはない。
奴は必ず殺す。その為には奴の元へと辿り着かねばならない。
ならばどうする。
人数はまた後で判明するようだが、この会場に自分以外の参加者が複数いることは認識できた
そしてバトルロワイアルと称されているが、なにも全員を殺す必要はなく『森嶋帆高』を殺せばこの催しは終わるらしい。
差し当って、この少年のことを考えてみる。
彼がただの猟奇犯罪者なんかであればなにも躊躇うことなく殺すだけだ。
だが、あの見せられた映像が本物ならば、彼は都会暮らしに苦労する至って善人寄りの平凡な少年だ。
決して邪悪な存在ではない。
ならば彼を生かし、残された1時間で主催を倒し生還する方法に賭けるか?
その為に、数多の参加者の命をBETする多大なリスクを負うか?
「......」
今までもずっと殺し続けてきた。銃で。ナイフで。毒で。爆弾で。
一度たりとも意味を疑わず。その価値を推し測り。
天秤が傾いた方を救うべく。
そう―――それは正しい。
多くを救う為には犠牲が必要だ。
幸福の数が不幸の数より多いなら、世界はほんの少しだけ救済に近づく。
救われた命が犠牲になった命よりも多いならそれでいい。
護られた数こそが、尊いはず。
そう、信じてきた。
だから彼―――衛宮切嗣のやることは変わらない。
【衛宮切嗣@Fate/Zero】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:生き残り主催を始末する。
1:森嶋帆高を殺し一刻も早くゲームを終わらせる。
※参戦時期は不明
最終更新:2021年01月04日 01:33