「何でだよ、何でこんなっ…!」
小奇麗な民家。
ゴーグルの少年、榊遊矢は壁に拳を叩きつけた。
できれば悪い夢であって欲しいと願った。
ロジェとの戦いを終え、ようやく柚子と再会できたのに、今度は殺し合いに巻き込まれたのだから。
「くっ…」
ならばどうする?
柚子の元へ帰る為に為に森嶋帆高を殺すか?
神子柴に命じられるがままに、自分の手を血で汚すのか?
そうする為の武器なら持っている。
デュエルディスクにセットされている自分のデッキ。
リアルソリットビジョンが取り付けられているディスクなら、召喚したモンスターで相手を殺すことも可能だろう。
「……ふざけるな。俺は殺し合いなんて絶対にしない!」
デュエルは誰かを傷付ける為の道具ではない。
真剣勝負を通じ互いを、見ている者を笑顔にする為のものだ。
だからこそ遊矢は神子柴を許せない。
デュエルをただの道具としか見ていない、アカデミアと同じあの外道を。
(ユート、お前も怒ってるんだな)
怒りを覚えているのは遊矢だけではない。
彼の中に居るユートも同じだ。
声は聞こえずとも分かる。
アカデミアと同じ非道にデュエルを利用する神子柴へ憤りを感じているのだと。
「神子柴、お前の思い通りにはさせない!」
誰かを殺すことはせず、他の参加者と共にこの殺し合いを打破する。
それが遊矢のスタンスだ。
この残酷な遊戯の場でも、己を曲げることなく、デュエルで笑顔を与える。
神子柴を倒し、柚子達の所へ必ず帰る。
それに帆高の事も何とか助けてやりたい。
大切な人と引き離される辛さは、二度と会えなくなるかもしれない恐怖は、遊矢自身嫌という程知っている。
「…よし。行こう」
やるべきことは多いが、グズグズしていたら悲劇で終わってしまう。
そうならないために力強い足取りで踏み出した。
「誰かいるのか?」
だがその一歩は声を掛けられたことで静止する。
遊矢は驚愕の表情を作った。
突然声をかけられた事もそうだが、何よりの驚きは。
「と、父さん……?」
その声が自分の父、榊遊勝のものに酷似していたからだ。
固まっている間に声の主は姿を見せる。
遊矢の前に現れたのは、銃を構え屈強な肉体を持った知らない男だった。
◆◇◆
「奴は一体何を考えている…?」
クリス・レッドフィールドはその精悍な顔を顰め、雨が降り注ぐ空を睨みつけていた。
BSAAのエースとして数々のバイオテロと戦ってきたが、今回の事件は一際異常に思えた。
ゾンビやB.O.W.とは違う、言い知れぬ不気味さを放つ神子柴という老婆。
日本を舞台にしたあの映画の内容が全て真実かはまだ分からないが、彼女をこのまま放置する気は自分には無い。
奴はアンブレラやトライセルと同じ、悪意をもって兵器をばら撒く犯罪者達と変わらない存在だ。
(ああ、俺のやることは変わらない)
たとえバイオテロとは無関係でも、これから起こる惨劇を見て見ぬ振りなどできない。
必ずこの手で神子柴の凶行を止める。
幸い支給品には恵まれていた。
一つは現在背負っている巨大な十字架、パニッシャー。
機関銃とロケット砲を搭載した強力な重火器。
バッグからこの冗談のような代物を見つけた時は、流石に目を剥いた。
二つ目はオートマチックの拳銃。
パニッシャーは強力だが、その大きさから取り回しに些か不便さがある。
それを補う為のサイドウェポンとして十分な代物だ。
「…悪くないな」
クリスは自身の身体を見回しながら呟く。
現在彼はBSAAの戦闘服ではなく、黒一色のスーツで身を固めていた。
バトル・ドレス・ユニフォーム、通称BDUと呼ばれるスーツが最後の支給品。
普段着ている防弾ベスト等よりも遥かに防御に優れていそうなそれを見て、満足気に頷く。
パニッシャーはかなりの重量だが、それを感じさせない俊敏な動きで周囲を警戒しつつ、移動を開始する。
暫く歩いた先でふと、人の声が聞こえた。
用心しながら近付くと、声の発生源は民家の中からのようだ。
いざという時はいつでも引き金を引けるよう構え、声を掛ける。
「誰かいるのか?」
中からは自分の声に反応してか、動揺する気配が感じられた。
慎重に扉を開け中に入ると、そこには一人の少年が居た。
◆◇◆
部屋に入ってきたクリスを前に、遊矢は固まっていた。
父と非常によく似た声の屈強な男。
しかも手には拳銃が握られている。
これまで命がけの戦いを繰り広げてきた遊矢だが、それらは全てデュエルで決着を着けるものだった。
その為拳銃など映画の中でしか見たことがない。
直接的な凶器を向けられ咄嗟の行動が遅れてしまった。
「突然で済まないが、君は森嶋帆高を殺す気でいるのか?」
遊矢の様子を見兼ねてか、クリスはなるべく穏やかに告げる。
勿論万が一を考え、トリガーに指を掛けているが。
「っ、いえ、俺は誰も殺したりなんてしません。こんなの間違ってる!」
神子柴への怒りが力強い言葉で告げられた。
遊矢の揺ぎ無い目を見たクリスは、そうかと言い銃を降ろす。
「いきなり銃を向けて悪かったな」
「い、いえ。あっ俺は榊遊矢って言います。貴方は?」
「俺はクリス・レッドフィールドだ。神子柴を逮捕しバトルロワイアルを止めるつもりだ」
向こうも殺し合いには乗っていないらしい。
その事にホっとする。
そしてふとクリスの言った言葉が気になり、聞いてみた。
「あの、逮捕って事はクリスさんは警察の人なんですか?」
「少し違う。俺はBSAAの所属だ」
「びーえすえーえー?」
「…そうか。君は日本人だから、知らないのも無理はないか」
日本では余りバイオテロの事件は発生していない。
なら遊矢がBSAAを知らなくても当然かとクリスは思った。
「しかし、遊矢は中々肝が据わっているな。こんな状況ならもう少し慌てそうなものだが」
「それは…デュエリストとしてそれなりの修羅場は潜って来てますから。
…流石にこんな事件は初めてですけど」
頬を掻きながら言う遊矢の言葉に、疑問が浮かぶ。
「デュエリスト……?それはいったい……」
「えっ?知らないんですか?」
「ああ、初耳だ」
今度は遊矢が驚いた顔をする。
デュエルモンスターズは日本のみならず、世界で最も有名な娯楽と言っても過言ではない。
興味の無い人間でも一度は聞き、目にしたことがあるはずだが…。
と、遊矢の脳裏に一つの仮説が浮かんだ。
(もしかして別の次元の人なのか?)
世界は一つではなく四つの次元に分かれていると赤馬零児から聞いている。
しかし、ひょっとしたらレオ・コーポレーションが未発見なだけで、他にも別の世界が存在するのではないだろうか。
デュエルモンスターズが存在しない世界などが。
急に考え込む素振りを見せた遊矢にクリスが声をかける。
「すまない。何か気に障る事を言ってしまったか?」
「あ、違うんです。……あの、信じられない内容だと思うんですけど、俺の話を聞いてくれませんか?」
そして遊矢は話した。
デュエルモンスターズというカードゲーム。
それを利用して次元侵略を実行しているアカデミアと、それに対抗するランサーズ。
世界は一つではなく複数の次元に分かれていること。
全てを説明すれば膨大になってしまうので、なるべく簡略しながら。
聞き終えたクリスはやはりというか、疑わしげな顔をしている。
それもそうだろう。
遊矢とてユートやユーゴといった別次元の自分を知っていなければ、信じることはできなかった。
そこで試しにリアルソリットビジョンでモンスターを一体召喚してみせた。
屋内でオッドアイズ等を出す訳にもいかないので、手頃な大きさのEMモンスターをセットする。
そうして出現したモンスターを見てクリスは目を見開く。
恐る恐る触れてみると、本物の生物と変わらないであろう触感があった。
「どう、ですか?」
「ああ…。確かに俺の知る限りこんな技術は存在しない」
「じゃあ…!」
「君の言う別次元の話。信じるべき、なんだろうな」
遊矢の説明ではアカデミアとやらはデュエルモンスターズを用いて一つの世界を支配下に置いたのだという。
もしこんなものがあれば、世界中の武器商人が目を付けない訳が無い。
現実離れした話だが、次元戦争とは事実なのだろう。
今度はクリスが手短に自身の身分と世界の事を説明する。
ある企業の狂った研究により、死体が蘇る事が可能となってしまったこと。
生物兵器が世界中の戦争で使用されており、そんな事態への対抗策として結成された組織、それがBSAA。
既に非日常に居るとはいえ、ホラー映画のような事件が実際に頻発しているというクリスの世界には、遊矢も驚きを隠せなかった。
「それじゃあ行くか。まずは森嶋帆高を保護しないとな」
「はい!」
遊矢は思う。
殺し合いに反対する人はちゃんといる。
他の参加者の人達とだってきっと協力することができるはず。
争いあっていたトップとコモンズが、最後には和解できたように。
(待ってろ神子柴。俺は必ず皆でお前を止める。そして柚子や皆の所へ戻るんだ!)
遊矢が胸中で宣戦布告している時、クリスもまた考えていた。
(神子柴、奴も別次元の人間なのか?)
神子柴が自分達とは別の世界から来たというなら、色々と説明がつくことがある。
死者を生き返らせた方法、質量保存を無視したデイバックの謎。
それらがリアルソリットビジョンのような未知の技術を使ったというなら、多少強引だが納得がいく。
(奴の情報がいるな。その為には彼女とも会っておくべきか)
最初に殺され、そして蘇生させられた日本人の女性。
神子柴に食って掛かった剣幕や、神子柴の態度を見る限り何らかの因縁があると見て間違いない。
相手がどんなスタンスかは不明だが、接触を図りたい所だ。
チラリと遊矢に視線を向ける。
(デュエルで皆に笑顔を、か……)
遊矢の方針はさっき聞いた。
殺すのも殺し返すのもせず、デュエルを通じ分かり合いたいと言っていた。
培ってきた観察力がその信念は本物だと伝えてきた
彼の真っ直ぐな目を見れば分かる。
眩しい願いだと思った。
今の自分では口に出来ない青臭く、けれど希望に満ちた夢。
そして同時にこう思う。
遊矢の考えでこの殺し合いを破壊できるだろうか。
断言してもいい、不可能である。
クリスは知っている。
世界には己の利益の為に平然と大勢を死に追いやる犯罪者たちが居ることを。
一欠片の良心さえ持ち合わせていない、アルバート・ウェスカーのような悪を。
そんな連中と戦ってきたクリスからすれば、遊矢の考えは甘いと言わざるを得ない。
だからといってその夢を捨てろなどと言う気は無い。
むしろ彼のような考えの人間こそ、今必要なのだと思っている。
この殺し合いの中で遊矢はきっと突きつけられる。
笑顔にするだけでは解決できない現実を。
(その時手を汚すのは俺の仕事だ)
この優しい少年が手を汚す必要は無い。
それらは全て、大人である自分が背負うべき業である。
ホルスターの銃を意識しながら、クリスはそう決意した。
こうして若きエンタメデュエリストと、対バイオテロのスペシャリストは民家を後にした。
彼らが笑顔の未来を手に入れるか絶望に沈むかは、今はまだ誰も知らない。
【榊遊矢@遊戯王ARC-V】
[状態]:健康
[装備]:遊矢のデッキとデュエルディスク@遊戯王ARC-V
[道具]:共通支給品一式、不明支給品0~2
[思考]
基本:バトルロワイアルを止める
1:クリスさんと行動。帆高を探す
2:襲われたら戦う。ただし殺す事は絶対にしない
[備考]
※参戦時期はエクシーズ次元に跳ばされる直前。
※バイオハザードの世界に関する情報を聞きました。
【クリス・レッドフィールド@バイオハザードシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:パニッシャー@TRIGUN MAXIMAM、ベレッタM92@現実、ゼクトルーパーのスーツ@仮面ライダーカブト
[道具]:共通支給品一式、パニッシャーの予備弾×?、ベレッタの予備マガジン×?、ゼクトルーパーのヘルメット
[思考]
基本:神子柴を逮捕し、バトルロワイアルを潰す
1:遊矢と行動。帆高を探す
2:神子柴に関する情報を手に入れたい
3:映画の内容が全て真実かは疑問
[備考]
※参戦時期はバイオハザード5終了後~6開始前。
※デュエルモンスターズ及び異なる次元の情報を聞きました。
※予備の弾丸の数は次の書き手にお任せします。
【遊矢のデッキとデュエルディスク@遊戯王ARC-V】
榊遊矢が使用するデュエルモンスターズのデッキ。
シンクロ次元篇までに登場したカードが入っているが、もしかしたら抜き取られているカードがあるかもしれない。
制限によりモンスターは最大5分間までしか召喚できない。また、一度使用したカードは二時間経過しなければ再使用不可。
【パニッシャー@TRIGUN MAXIMAM】
最強にして最高の個人兵装。
巨大な十字架の形をしており、縦長の部分には機関銃、反対側にロケット砲が仕込んである。
装甲も堅牢で、鈍器のように直接叩きつけて使用することもできる。
【ゼクトルーパーのスーツ@仮面ライダーカブト】
ZECTに所属する戦闘員が着こむ、蟻をモチーフにした戦闘服。
特殊な素材で作られていて刃物やライフルにも対処できるが、脱皮したワーム相手には効果が薄い。
最終更新:2021年02月12日 20:19