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十種競技(デカスロン)―――二日間に渡り、十種目の合計得点を競う陸上競技。
デカスリートにはパワー、スピード、テクニック...その全てが求められる。十種競技を制した者には、惜しみない賞賛と「キング オブ アスリート」という称号が与えられる。
そんな苛酷な競技で、伝説と呼ばれたデカスリート...室淵剛三。
ハンマー投げ選手の父とやり投げ選手との母との間に生まれたサラブレッド。
生後十日目にして立ち上がり、家族を驚かせた。
本格的に陸上競技に取り組みだしたのは中学生の時。あらゆる競技の記録を塗り替え、「神童」と呼ばれる。
16歳の時、十種競技日本代表に初選出。
以降、25年もの間、第一線で活躍し、数多の勝利を積み上げた。
国際大会での敗北はわずかに5回。その能力は時に専門競技者をも上回った。
国民的英雄となった室淵剛三。もはやその活躍は一競技者の域を超えていた。
だが―――、二年前、四一歳の時、突然の引退発表。
室淵剛三は、表舞台から姿を消した。
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「殺し合い、か」
雨水がその屈強な身体をシャワーのように濡らす。
常に不敵な笑みを絶やさない彼こそが、室淵剛三。身体能力だけで多くの猛者と渡り合ってきたアスリートだ。
彼は裏の顔として、企業間における代理戦争こと、拳願試合の闘技者に属している。
その試合では稀に死人が出ることはあるものの、進んで人を殺そうとするタイプは非常に珍しい。
彼もまたそのタイプの闘技者だった。
格闘技の経験が無く、高い身体能力にモノを言わせるタイプであるため技術は無いに等しいが、それでも相手を殺す為に戦うようなことは無かった。
そのため、あの老婆の殺しあえという謳い文句には反発心しかなかった。
特にこのルール。『森嶋帆高を死滅させればゲーム終了』。
この明らかに帆高を殺しに行かせる為の誘導尋問。これが彼の琴線に触れた。
「神子柴よ。これはあなたからの挑戦状と受け取っても良いのかな?」
室淵はかつては国民的スターにまで登り詰めた男だ。
恐らく、神子柴もルールに素直に従う男だとは思っていまい。
ならばこれは挑戦状だろう。
『果たして世界の室淵はこの理不尽なルールにも抗えるのか』という。
「受けてたとうじゃないか」
問題ない。むしろ、これぐらいの理不尽の方が挑戦し甲斐があるというものだ。
これくらいの難関を超えねば怪物は倒せまい。
そう。拳願会の猛虎こと、若槻武士は。
「フフ...全く、挑戦とはなんと甘美な響きだろうか」
室淵は既に一般人なら全盛期をとうに過ぎている年齢だ。
だが、若槻武士と戦ってからは更に一皮剥けることが出来た。
彼という怪物への挑戦欲が室淵剛三を更なる高みへと押し上げたのだ。
「森嶋帆高くん...私は君の挑戦も応援しよう。神への挑戦とはなんとも男らしいじゃないか」
あの映画は見るからにまだ終わっていなかったが、目を閉じればいともたやすくその光景を思い描ける。
きっと彼は神様から陽菜を取り戻す為に挑戦を続けるだろうと。
両腕を広げ、深く息を吸い目を閉じ精神集中。
そして―――室淵の目が全開に見開かれる。
―――さあ、挑戦だ!
【室淵剛三@ケンガンアシュラ】
[状態]:健康 高揚感
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1~3
基本方針:犠牲者を出さずにゲームを終えることに挑戦する。
0:帆高を保護する。
1:若槻がいれば探して挑戦する。
最終更新:2021年02月12日 22:50