「大地さんは科学者なの!? じゃあ、みんなの首輪だって外せるのかしら?」
「いや、それは危険だ。まだ、情報が足りなすぎるし、下手に首輪に手をつけたら何をされるかわからない。夏葉さんの命は危険に晒せないからね」
「あっ、そうね……ごめんなさい、考えなしに聞いちゃって」
「いいや、俺もまずはこの首輪を外さないといけないと思っているからね。確実に外せるようになったら、夏葉さん達を助けると約束するよ」
「……ありがとう! 大地さん!」
理知的で、かつ温かさを込めた大空大地の言葉に、有栖川夏葉は太陽のような満面の笑みを浮かべた。
身長は170㎝を優に超えるであろう体格の良い成人男性と、優雅な雰囲気を全身から放つ少女が並べば、当人たちの容姿の良さと相まってお似合いのカップルに見えるだろう。
しかし、ここは殺し合いの舞台となった街だ。お互いに敵意がないとわかり、有効的に会話することができても、決して油断することはできない。
「気付いたら映画館にいて、青春映画を見せつけられたと思ったら……殺し合いをしろなんて、信じられないわ!」
「あぁ……俺も、今まで色んなことを経験したけど、こんなことは滅多にない。でも、君のことは絶対に守ってみせるから、安心してくれ」
「それは頼もしいわね!」
大地の答えに、夏葉は笑顔を取り戻した。
防衛チームXioの研究員兼特捜隊員として、研究と怪獣との戦いに身を投じた青年が大空大地だ。一般常識はあるものの、アイドルなどサブカルチャーに関する知識はやや疎い。
「それより、大地さんの言っていることがよくわからないわ! 防衛チームのXio? 隊員? そういう組織が、日本にあったかしら?」
「あるさ! 俺は地球を守るための組織に所属する隊員……簡単に言えば、お巡りさんや自衛隊員みたいなものさ。詳しく話すと、ちょっと長くなるんだよね」
そうして、大地は自分自身とXioに夏葉ついて語り始めた。
15年前に発生したウルトラ・フレアと名付けられた太陽フレアが地球を覆ったことがきっかけで、世界各地に眠っていたスパークドールズと呼ばれるオーパーツが怪獣になって、人類は対抗する為にXioと呼ばれる防衛チームを結成した。
地球と怪獣の共存の為、そしてウルトラフレアから行方不明となった両親を見つける為に大地はXioに入隊して、日夜奮闘していることを。
「……えっと、大地さん。それ、本気で言ってる?」
もちろん、夏葉にとっては荒唐無稽な話でしかなく、怪訝な表情を浮かべていた。まるで、怪しい宗教に浸かった人間を見つめているように。
だけど、そんな夏葉の反応を大地は真摯に受け止めていた。
「当然。もっとも、これは俺の世界の話だから、夏葉さんにとっては信じられないだろうけどね。だって、俺と夏葉さんはそれぞれ別の地球から連れてこられたから」
「せ、世界? 別の……地球? さっきから、何が何やら……」
「信じられないかもしれないけど、落ち着いて聞いてほしい。俺と夏葉さん、それにあの映画に出てきた帆高くんと陽菜ちゃん達は、みんな別の世界の住民なんだ。
Xioや怪獣、それに映画に出てきた晴れ女の話を、夏葉さんは知らなかったよね? それが証拠さ」
「はぁ……」
呆気にとられる夏葉を前に、大地は言葉を続ける。
世界には、多元宇宙論(マルチバース)と呼ばれる仮説があり、数え切れない程の宇宙が存在する可能性が語られていた。それぞれの宇宙には地球と呼ばれる惑星が存在すれば、全く別の人生を歩む大空大地や有栖川夏葉もいる。
怪獣とは縁のない人生を歩む大地や、アイドルじゃない夏葉も存在するかもしれない。だけど、この殺し合いに巻き込まれたのは、Xioの大空大地とアイドルの有栖川夏葉だった。
そして、映画に登場した帆高と陽菜を初めとした登場人物はもちろん、殺し合いを主催する神子柴達も、全く別の宇宙に存在する地球の住民だ。
「……要するに、この広い宇宙には数え切れない程の地球が存在していて、俺達はそれぞれ別の地球から連れてこられたのさ」
「うーん……なんか、ピンと来ないけど……ウソじゃないのかしら? 映画館だと、なんか変身して戦っていた女の人がいたし……」
「きっと、彼女もまた別の地球……それも、あの神子柴と同じ地球の住民のはずだよ。でも、彼女は神子柴にあんな酷いことをされたから、今頃どうなっているのか……」
名も知らぬ女性は神子柴に抗おうと戦ったが、無惨にも首輪を爆破させられてしまった。だが、次の瞬間には女性の体は何事もなかったかのように再生している。
神子柴は死者蘇生を実現させたのだろうが、その先の安全が保障されるとは思えない。むしろ、明確な反抗の意志を見せたことで、どこかに囚われている可能性すらある。
かつて大地自身も、別宇宙からやってきた宇宙魔女賊ムルナウの罠に囚われたように。
「……酷いわよね。あんな、ことされて……」
そして、惨劇を思い出してしまったのか、夏葉の表情は一気に曇ってしまう。
多感な時期の女性に、人間の首が吹き飛ばされる光景を見せつけては、PTSDに陥ってもおかしくない。映像ではなく、生で目撃したなら尚更だ。
今だって、些細な出来事をきっかけにパニックに陥ってもおかしくない。
「……ごめん、夏葉さん。嫌なことを、思い出させて」
「だ、大丈夫……いや、本当は少しきつい、けど……今は大地さんが、いてくれるでしょう? だから、平気だと思う……」
それでも、夏葉は笑ってくれた。明らかな作り笑いだったが、大地を気遣っているのが一目でわかる。
夏葉は優雅で心優しい女性だ。こんな状況でも大地の話にきちんと耳を傾けてくれて、何よりも大地を信じている。
そんな彼女に誠意を向けるならば、守るという意志を確かな形で見せる必要があった。
「ご、ごめんなさい……大地さんが、せっかく私のことを……励ましてくれてるのに……」
「無理をしなくてもいいよ、夏葉さん。こんな状況だから、不安に思っても仕方がないよ。君を安心できるかどうかわからないけど、俺の秘密を一つだけ教えてあげるから」
「大地さんの、秘密……?」
「そうだよ」
首を傾げる夏葉を前に、大地は懐から一台の電子端末……エクスデバイザーを取り出す。エクスデバイザーの画面に映し出されているのは、長らく共に戦ってきた相棒の姿だ。
「えっ? 大地さん、その機械って何かしら?」
『おいおい、大地! 私をこんな堂々と見せて大丈夫なのか?』
「えぇ!?」
夏葉の疑問に答えたのは、エクスデバイザーに宿る相棒だった。
当然、エクスデバイザーから流暢に聞こえてくる声に、夏葉は驚いてしまう。
「今は仕方がないだろ! 夏葉さんに俺達のことを説明しないといけないからさ! 協力してくれ!」
『……まぁ、仕方がないな。どうやら、今は緊急事態のようだからね』
「ありがとう、エックス! 夏葉さん、よく見ていてくれ……これが俺のもう一つの姿だ!
エックス、ユナイトだ!」
『よぉし! 行くぞ、大地!』
大地が相棒の許可を得た一方で、夏葉は未だに呆気に取られている。
夏葉を真摯に見つめながら、大地はエクスデバイザー上部のボタンをタッチした。Xの文字を描くようにエクスデバイザーの両面パーツが開かれると、相棒を模した人形……スパークドールズが大地の手元に現れる。
その手に握り締めたスパークドールズを、エクスデバイザーの画面にリードさせた。
ーーウルトラマンエックスと、ユナイトします!
エクスデバイザーから発せられるのは、相棒との団結を意味する電子音声。
圧倒的な力がエクスデバイザーより流れ込み、大地を中心に虹色の輝きが発せられ、その眩さに夏葉は目を閉じてしまう。
されど、大地は夏葉から目を離さずに、エクスデバイザーを天に掲げながら叫ぶ!
「エックスウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
ーーエックス! ユナイテッド!
大地とエクスデバイザーの叫びが重なった瞬間、放たれる光はより眩くなり、Xの字を象っていく。
光の中で自らの姿が変わっていき、大地は相棒との団結を実感する。これまで何度も、こうして相棒と共に戦ってきたのだから。
そして、光はすぐに収まっていき、夏葉は瞼を開く。だが、そこに立つ大地は、既に大地ではなかった。
「やあ、お嬢さん! 初めまして! 私はウルトラマンエックスだ!」
全身を銀色と赤で彩られ、胸に埋め込まれたX字の宝石が青く輝かせながら、仏像を彷彿とさせる穏やかな顔つきをした人型だ。彼……ウルトラマンエックスはフレンドリーな態度で手を掲げながら、夏葉に挨拶をする。
しかし、肝心の夏葉はぽかんと口を開けていた。
「………………ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
だが、次の瞬間には驚愕の叫びをあげてしまった。
◆
10秒ほど経過した後。
大空大地はウルトラマンエックスとのユナイトを解除し、エックスはエクスデバイザーの中に戻っていく。
だが、有栖川夏葉は瞳を輝かせながら、エクスデバイザーを手にしていた。
「す、凄いわ! 一体どうなっているの!? 宇宙人!? 宇宙人って、本当にいたのね!?」
『こ、こら!? お嬢さん! あんまり乱暴に揺らさないでくれ!?』
「これは新発見よ! 放課後クライマックスガールズのみんなにも自慢できるし、果穂は大喜びするわ! 今度、果穂にも見せてあげたいわ!」
大地からエクスデバイザーを借りた夏葉は、まるで子どものようにはしゃいでいた。
そんな夏葉の姿を、大地は微笑みながら見守っている。彼女のように未来ある女性が笑っていられるように、大地は今まで戦っていたのだから。
「ねえ、大地さん! エックスさんの写真を撮りたいけれど、いいかしら!?」
「大丈夫だよ! ただ、インターネットにアップロードするのだけは、ちょっと遠慮してほしいな。俺達にも、プライバシーがあるからね」
「お安い御用だわ!」
『その前に、私を放してくれえええええぇぇぇぇぇぇっ!』
普段の優雅な雰囲気が嘘のように、夏葉はスマホでエクスデバイザーを連写していた。
放課後クライマックスガールズのリーダーである小宮果穂の為、夏葉はエックスの写真を一枚残さずスマホに保管する。頼れるリーダーである果穂は特撮ヒーローが大好きだから、ウルトラマンエックスを知ったらテンションが上がるはずだ。
「夏葉さんも、元気になってくれてよかったよ。君は、宇宙人に興味があるのかな?」
「えぇ、宇宙旅行ができたら楽しいでしょうし、そこで未知の出会いがあれば楽しいでしょうね。
でも、それ以上に……私の頼れるリーダーが、エックスさんのことを知ったら大喜びするはずよ」
「へえ。夏葉さんはその人を大切に想っているんだね」
「当然よ!」
大地が言うように、放課後クライマックスガールズのみんなは互いを大切に想っている。もちろん、283プロのみんなだって例外ではない。
だからこそ、この殺し合いを許すことが夏葉にはできなかった。
大地とエックスの二人は深い絆で繋がった相棒だ。
地球と、そして宇宙の平和を守るためにいつも奮闘しており、数え切れない程の星々を渡り歩いたらしい。宇宙の守護者であるウルトラマンエックスは、夏葉のような地球人を守ることを使命としている。
そんなエックスは背丈こそは夏葉より少し高い程度だが、独特の存在感や神々しさが感じられた。もっとも、今はエクスデバイザーの中に戻り、人情味の溢れる愉快な一面を見せてくれている。
「本当にありがとう……大地さんにエックスさん! あなた達のおかげで、元気になれたわ」
「いいや、俺達は何もしていないよ。夏葉さんが自分で決心した結果さ」
『大地の言う通りさ。君自身の心が強いからこそ、そうして立ち上がれているのだからね!』
「それでも、あなた達がいたからこそよ! 悔しいけれど、私一人じゃどうすることもできそうになかった……でも、あなた達みたいな頼れる人がいてくれたから、私も100%の力を発揮できるのよ!」
有栖川家の令嬢として、自己研鑽を欠かさずに世界一を目指したアイドルが有栖川夏葉だ。
家の名に恥じないよう常日頃からあらゆる努力を欠かさず、放課後クライマックスガールズの一員として、そして有栖川夏葉という一人のアイドルとして活躍し続けた。
けれど、それは決して夏葉一人だけの力では成し遂げられなかった。夏葉をアイドルにしてくれたプロデューサーと、そして放課後クライマックスガールズのみんながいてくれたからこそ、今の夏葉がいる。
「当然、森嶋帆高と天野陽菜の二人も私は助けてみせる! 二人が再会できる機会を潰すなんて、あってはいけないことよ!」
「あぁ! 神子柴は二人が再会したら、世界は雨に飲み込まれると言っていたけど……そんな運命も変えてみせる。どんな原理かはわからないけど、研究を続ければいつか二人に青空を見せてあげられるはずだから」
『ならば、まずはあの帆高という少年を探さないといけないな。大地、お嬢さん……いいや、夏葉!』
大地とエックスの力強い言葉が、夏葉の決意に火をともす。
未だに降り注ぐ大雨では鎮火できない程に、夏葉の心は燃え上がっていた。
「大地さんとエックスさんは、いつだって宇宙の平和を守るために戦っているようだから……私も誓うわ!
世界一……いいえ、マルチバースにその名を轟かせられる程の、宇宙一のアイドルになれるよう、この殺し合いを絶対に認めないことを!」
この世界から……宇宙全てに響かせられるように構えながら、有栖川夏葉は宣言する。
大空大地やウルトラマンエックスの二人と共に、100%の力を発揮して殺し合いを止めてみせる確固たる意志を込めながら。
【大空大地@ウルトラマンX】
[状態]:健康
[装備]:エクスデバイザー&スパークドールズ(ウルトラマンX)@ウルトラマンX、エクスラッガー@ウルトラマンX
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針:この殺し合いを止めて、みんなを守る。
1:エックスと共に夏葉さんを守る。
2:首輪を解除する為に情報を集める。
[備考]
※劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックスにてグリムドを撃破した以降からの参戦です。
※制限により、ウルトラマンXの巨大化または長時間の飛行は不可能です。また、ウルトラマンゼロのサイバーアーマーで会場からの脱出もできません。
【有栖川夏葉@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:宇宙にその名を響かせられるほどのアイドルとして、殺し合いを認めない。
1:大地さんやエックスさん達と一緒に殺し合いを止める。
【エクスデバイザー&スパークドールズ(ウルトラマンX)@ウルトラマンX】
大空大地がウルトラマンエックスに変身するために必要なアイテム。
普段はエクスデバイザーにウルトラマンエックスの人格が内蔵されていて、大地がデバイザーを変形させることでエックスのスパークドールズが出現する。
また、エクスデバイザーには大地が出会った怪獣やウルトラマン達のサイバーカードも内蔵されていて、ロードさせることで力を秘めた鎧・サイバーアーマーを纏うことが可能。
【エクスラッガー@ウルトラマンX】
ウルトラマンエックスをエクシードXにパワーアップさせる虹色の輝きを放つ剣。
普段はエクスデバイザーに内蔵され、大地がエックスに変身した際に使用可能。
最終更新:2021年02月15日 19:32