―――くそったれ こんな世界、大嫌いだ


○ ○ ○

緑に生い茂る森林、立ち並ぶ白く高い建物。どれもこれも彼女の『世界』には存在しなかったもの

「……うわぁ」

そんな光景に、彼女は空を見上げ、今の状況を忘れて思わず声を上げてしまう。彼女がいた街や、富裕層の街でもここまでの光景は見られなかったであろうから



彼女にとって、『神』など存在しないものであった

だが、あの動く画には――文字通り『神』がいた。彼女自身が存在を否定していた、『神』だ



彼女は『神の代行者』だった。神が居ない世界において、罪人に裁きを下す者

けれど、彼女にとっては、たった一人の幼馴染の青年にとっての『神様』であれば十分だった

青年はある罪を犯した。故に彼はその罪を裁いてくれる『神』を求めた

彼女はそうなりたいと願った。けれど―――やっぱり嫌だった

彼が死ぬのは嫌だった。だけど、ダメだった。世界はクソッタレだった


青年がいなくなった世界に意味なんて無いと、彼女は青年の後を追った

そのはずなのに、目が覚めたら妙な動く画を見せられ、殺し合いをしろと言われた
どんな手を使ってでも、『森嶋帆高』を食い止めろという文言も含め


「……ははっ。そうか、そうなんだ」


自嘲めいた目で怪しく笑う。さんざん神の存在を信じず、『彼』だけの神を名乗っていた自分が、まさか本当に神様絡みの事に巻き込まれるなど思わなかった

だけど、チャンスでもあった。あの時見た『死者の蘇生』。神を名乗っていただけの自分とは違う、神の所業。だから――

「ごめん、マイザー。僕は、殺し合いに乗るよ。だって仕方ないじゃないか、本当に神様がいるんだったら、僕はそれに従わないと。―――神の代行者として」

『彼』への謝罪の言葉とともに、彼女の目は濁り、輝く

「でもねマイザー。それでも僕は、君に生きて欲しいんだ。たとえ僕はどうなったとしても、僕はマイザーに殺されることになっても、さ」

例え『本当に』神の傀儡と成り果てようと、例えその身が数多の罪で塗れようと、彼女にとっては『彼』こそが全てだった

彼を蘇らせるために全てを殺しつくそう、神の代行として使命を全うしよう




「――でも、こんな僕を、マイザーは、必ず止めようとするんだろうね」

最後に、そんな自嘲めいた言葉を発し、彼女は雨の中に消える




神よ、汝の名は明らかならず。されど罪はここにあり

我は飢え、満ち足りることはなく

故に神よ、汝の名は蒙昧に似る



【セリーナ@Shadowverse】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:優勝してマイザーを蘇らせる
1:神の代行として如何なる手段を用いてでも『森嶋帆高』を食い止める

※参戦時期は『運命相克編-最終章-』第八章終了後
最終更新:2021年01月04日 01:36