雨が降り続ける街の一角にて、彼は佇んでいた。
 気が付いたら、既に見知らぬ映画館に連れてこられてしまい、よく分からない映画を見せつけられた。男女の色恋沙汰にはまるで興味がなく、退屈極まりなかったが……その後に突き付けられた殺し合いには胸が躍った。
 しかも、ルールはあの映画に登場した帆高を捕らえること。生死に関係ないなら、帆高を殺しても構わないようだし、他の参加者達を殺しても問題ない。
 ならば、殺し合いに乗らない理由などなかった。


 雨が降り続ける街の一角にて、彼は笑っていた。
 一見すると、金髪であることを覗けば、彼はどこにでも見られる少年だろう。
 しかし、彼は普通の人間ではない。人間社会に害を成す極道(ごくどう)のカリスマである“破壊の八極道”の一人にして、殺人の王子様(コロシのおうじさま)と崇められた少年……ガムテ。いや、輝村照。
 通り名の如く、ガムテは数多の命を奪っていた。これまでの食べたパンの数をわざわざ覚えないように、彼の手にかかって命を落とした人間の数は計り知れない。


 雨が降り続ける街の一角にて、彼は走っていた。
 常に脳ミソが限界までイカれたガムテであっても、今が楽しい死亡遊戯(ゲーム)の真っ最中であることくらいは理解できる。
 また、神子柴と呼ばれた老婆が吐き気を催す程の悪意を秘めていることも、理解できた。底知れぬ悪意を潜ませたガムテすらも、息を呑むほどに。
 神子柴によって用意された首輪の威力は計り知れないだろう。それこそ、極道(ごくどう)であるガムテの命すらも、ほんの一瞬で奪い取れるはずだ。
 お前はもう、死んでいる……この首輪が付けられている限り、その運命からは逃れられない。
 だが、ガムテは微塵も臆さなかった。陽菜に会おうとする帆高を殺しさえすれば、その時点でゲームが終わるのだから。


「でも、すぐに殺してゲームクリアはもったいない~☆」


 雨が降り続ける街の一角にて、彼は思いついた。
 せっかくの素敵なゲームを用意されたのだから、存分に楽しまなければ損をする。恐らく、この街には忍者と極道に匹敵するような連中がいるのだから、そいつらと思いっきり殺し合いをしたかった。

「決めた決めた☆ まずは帆高を探さないと☆ そして、帆高を利用して死亡遊戯(ゲーム)をもっと楽しくしてやるんだ☆」

 雨が降り続ける街の一角にて、彼は決めた。
 まずは帆高を生け捕りにして、彼を餌に他の参加者をおびき寄せてやればいい。帆高を殺そうとする参加者と、帆高を助けようとする参加者の両方が集まるのだから、死亡遊戯(ゲーム)を盛り上げることができる。

「帆高をエサにすれば、みんな集まってくる☆ そうすれば、みんな大盛り上がり☆」

 もちろん、帆高は逃げられないように両足を潰してやればいい。人質になった帆高は、陽菜を救えないままゲームオーバーだ。
 タイムリミットを迎えた後は彼を始末して、めでたくガムテは報酬を貰えばいい。

「おっと? そういえば、他に誰がいるのかな……」

 雨が降り続ける街の一角にて、彼は足を止める。
 そして、片手だけでデイバッグから名簿を取り出した。忍者との戦いで手を潰されてしまったが、特に問題ない。
 参加者名簿を開いた瞬間……ニィ、と彼は不気味な笑みを浮かべた。


 雨が降り続ける街の一角にて、悪意を蠢かせる彼の名はガムテ。
 またの名を輝村照(きむらてる)。殺人の王子様(コロシのおうじさま)にして、輝村極道(きむらきわみ)の息子である極道(ごくどう)だった。


【ガムテ(輝村照)@忍者と極道】
[状態]:健康、片手欠損
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:この死亡遊戯(ゲーム)を思いっきり楽しむ。
1:死亡遊戯(ゲーム)を盛り上げる為、まずは森嶋帆高を捕まえる。
2:帆高を捕らえたら、彼を餌にして他の参加者達をおびき寄せる。
最終更新:2021年02月13日 22:39