「クロケン参上!!」
「ピョンカラ上々!!」
「アニメ炎上!!」
「ウっ、ウッホ…特上!!」

「「「「世界の『?』を解き明かす! 我ら最強4人組!! 求Q究明団!!」」」」


A-7に設置された公園で四人の子どもたちがポーズを決めていた。

「…なお、『求Q究明団』のQはクエストのQである。フッ…決まった」
「ウッホ! お前まーたタイミング遅せーぞ!」
「ゴ、ゴメン」

降りしきる雨に濡れるのも構わず元気にはしゃぐ子供たち。
巻き込まれた殺し合いという非日常に、不安よりも興奮を覚えていた。

「なあ、アニメ!
今日の探検(クエスト)は決まってるよな!」

『クロケン』と名乗った少年の呼びかけに、『アニメ』と呼ばれた少年が答える。

「そうだね。
まず、今回俺らが巻き込まれたゲームについてまとめてみよう」
そう言って支給されたタブレットを取り出す。


「まず、これは小説や漫画なんかでよくあるような『最後の一人になるまで殺し合え~』っていうものじゃないらしい」
「そうだな。あの婆ちゃんも『制限時間まで大人しくしていれば帰れる』って言ってたしな」
「『帰れないこともない』ね。混同するのは危険だよ。
終了条件は『森嶋帆高の死亡』もしくは『森嶋帆高が天野陽菜に会うのを阻止する』の二つ。
極端な話、『誰かが達成してくれれば』僕らは隠れているだけでもゲームは終わり、家に帰れる」

メガネを持ち上げるアニメに、クロケンは不敵に笑いかける。

「でも、そんなのつまんねえよな」
「その通り」

どうやってこの場に自分たちを連れてきたのか。
何が目的でこのゲームが行われているのか。
本当に天気が天野陽菜によって決定されているものなのか。
このゲームを勝ち抜いた先に何があるのか。

解き明かすべき『?(ハテナ)』は山ほどある。

世界の『?』を解き明かす最強4人組たる『求Q究明団』としてそこに目を背けることはできない。

「だから俺達の手で森下帆高を捕まえよう。
 そうすればこのゲームで誰かが死ぬこともないし、このゲームの謎について、森嶋帆高が知ってることを聞き出せるかもしれないからね」
「そうなりゃ俺達、本物のヒーローじゃんか! スッゲェ!」
「でも抵抗されたらどうする?」
「大丈夫!ウッホの支給品があれば誰でも言うこと聞くって」
「う、うん……! 任せて!」

すっかりびしょ濡れになってしまった彼らだが、そんなことには頓着しない。

ヒーローとして人を助け、活躍する自分の姿を思い浮かべ熱狂する。


「そうと決まりゃあ早速行動開始だ!
クロケン参上!!」
「ピョンカラ上々!!」
「アニメ炎上!!」
「ウっ、ウッホ特上!!」

「「「「世界の『?』を解き明かす! 我ら最強4人組!! 求Q究明団!!」」」」



求Q究明団の戦いが今始ま―――
「なんか、寒くね?」
ピョンカラの呟きが、歩み始めた彼らの足を止める。

「確かに。これだけ濡れれば当然とも思ってたけど、ちょっと寒いな」
「みんなだらしねーぞ! そんなんじゃ森下帆高を捕まえらんねーだろ!」
「クロケンはマフラーしてるだろ! ずりーぞ!」
「け、喧嘩はよくないよ…」
「そーだ! そんなことより早く建物の中に入ろう!」

多少の言い争いと共に走り出す四人。
しかしその足も、急激に下がった気温に止められてしまう。

木々が凍てつき、地面には霜が降り、空気中の水分すら凍結し宙を舞う環境下で、雨に濡れた少年たちが生き残れる道理など存在しない。

「あ……」
「さ、さむ……」
「な…んで……」
「たす、け……」


こうして、求Q究明団の戦いは『全員の凍死』という形で終わりを告げた。


【クロケン@神さまの言うとおり弐 死亡】
【ピョンカラ@神さまの言うとおり弐 死亡】
【アニメ@神さまの言うとおり弐 死亡】
【ウッホ@神さまの言うとおり弐 死亡】




「まったく、傍迷惑なことだ」

A-7エリアの中心部にて独りごちる男がいた。

何の変哲もないグレーのスーツに緑のネクタイ、ピチリと七三に分けられた髪型。

一見ただのビジネスマンにしか見えないこの男こそ「ナンバー4」「ストームレイン」こと洗谷。
世界的大企業であるジャジメントの日本支社における非合法活動部隊の長であり、気象を操る超能力者でもある。


「しかし、この雨はいったいどうしたことか。
天候を操る私の能力でも降りやませることができず、気温を下げても雪にならない。
そのくせ雨を強くすることには何の支障もない」

首をかしげる洗谷
だが、すぐに「どうでもいいか」と頭を切り替える。
答えの出ない疑問にかかずらっている暇などないという風に。


洗谷はとある作戦の準備中、気がついたらこのゲームに参加させられていた。

雨が降り続くこの街で、制限時間まで森嶋帆高を天野陽菜に会わせてはならない。
さもなくば街は雨で水没し、森嶋帆高以外の参加者は全員溺死することになるのだという。

馬鹿馬鹿しい話だが、現在洗谷は作戦行動中。
その真偽を確かめるよりも、可及的速やかにこの状況を終わらせて作戦行動に復帰することが最優先。

映画を見る限り、森嶋帆高に戦闘能力は備わっていない。
普通のか弱き一般人だ。
そして、名簿を見る限り大神博之や犬井灰根といった味方陣営の人間もどうやらいないらしい。

以上の事柄から、洗谷は会場すべてを凍てつかせ、片っ端から参加者を殺害することで速やかに事態を収拾することにしたのだ。


雨に濡れた体でおよそマイナス90℃まで下がったこの環境に置かれて、生存していられる人間などそうはいない。少なくとも森嶋帆高には不可能だろう。

かろうじて生き延びた人間がいたとして、超低温下ではまともに体を動かすこともできない。
そんなものは鳥を前にした芋虫に等しい。
雷やカマイタチで止めを刺せばそれで済む。

どこにいるかもわからない森嶋帆高を探して歩き回るよりは、会場を片っ端から死の世界にする方が余程効率的というものだ。


「さて、早いところ終わらせるとしよう」
そう呟いて、洗谷は東へ進路を取った。


【洗谷@パワプロクンポケット】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:速やかにこの状況を終わらせ、作戦行動に復帰する。
1:森嶋帆高の殺害を最優先。
2:すべてのエリアを氷漬けにする。
※制限により能力の及ぶ範囲は1エリア分に留まります。また、洗谷が離れてから10分で元の気候に戻ります。
※以上の能力制限に気づいていません。
※参戦時期はホンフーとの決戦直前です。
最終更新:2021年02月14日 18:20