止まぬ雨の中、1人の青年が立っていた。

「…我々との意思の共有が行われない。
だがいい、私は理解した。あの女が抱き、あの見せしめにされた女が抱いていただろう憎しみという感情を、映画の概念を、天気の子という映画の存在を、あの老婆が話したルールを…私は、我々の意思を代行する」

淡々とした声色のまま、青年は1人言葉を溢す。
彼には名前が無い。彼はフェストゥムと呼ばれている、身体の99%が珪素で構成されているシリコン生命体。それらを束ねるべき存在であるミールの意思の代行者、マスター型と呼称される個体であった。最も、彼等フェストゥムは「この段階では」一部の個体を除き、個という概念が確立していないのだが。
故に彼には名乗る名前も、呼ばれる名も無い。なので此処では、便宜上彼を「イドゥン」と呼称する。

この殺し合いに呼ばれる前のイドゥンは、「情報」という概念を理解した上で、自分達フェストゥムを滅ぼし得る新型ファフナーの情報収集を行っていた。
その過程で彼は、新型ファフナーの一機「マークニヒト」と、それに搭乗していたパイロットの狩谷由紀恵を同化し…そして、彼女が抱いていた「憎しみ」という感情を理解した。その直後にイドゥンは、この殺し合いに招かれたのである。

ミールとの意識の共有が切れている事に僅かばかりの困惑を抱くが、それに自分では気付かないまま、彼は目的を定める。
この殺し合いでのイドゥンの目的は二つ。
一つは、理解した憎しみのままに、森嶋帆高や神子柴も含めた、この場にいる人類を全て殺し尽くす事。
もう一つは、人類以外のこの場にいる者に対して、同化と言う名の祝福を与える事である。

しかしイドゥンは気付いていない。
ここに来る前、同じマスター型でありながら、人類を同化する対象か殲滅する対象としてしか見ていなかったイドゥンとは違い、人類との共存の道を探そうとし、意見を違えたミョルニル(こちらも便宜上の呼称)相手に、言葉を使った「対話」による意思疎通を行なってしまっているという事実に。
既に自らが、「個」や「存在」という概念を理解しつつあるという事に。

本来の歴史ではイドゥンは、人類軍と竜宮島部隊との総力戦の果てに、北極のミールを破壊され、そこから切り離された末に「個」を確立してしまい、最終的には「痛み」と「消滅」への恐怖を抱きながら同化された。
しかしこのイドゥンがどのような道を迎えるのかは…今後の彼次第である。

【イドゥン@蒼穹のファフナー Dead Aggressor】
[状態]:健康、人類に対する強い憎しみ、無意識の内に抱いた困惑(微小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:この憎しみのままに神子柴を含めたこの場の人類を皆殺しにする、そうでない者は同化(祝福)する
1:私は私によって、映画「天気の子」とこの殺し合いのルールを理解した。
2:森嶋帆高を殺す前に、試しにE-1の廃ビルと鳥居の破壊を試みる。
3:マークニヒトの捜索。
[備考]
※第23話『劫掠~おとり~』にて、狩谷由紀恵を同化し憎しみの感情を学んだ後からの参戦です。
※フェストゥム形態への変化は可能ですがサイズはある程度の大きさまで縮小されます。
※名簿上でもおそらくはイドゥン表記になると思われます。
最終更新:2021年02月14日 20:55