「糞! くそっ! クソクソクソクソ!」

絶え間ない雨の雫が滴り落ちていく中、人気の無い路地裏で一人の少年は、不快げに顔を歪めながら激しく地団駄を踏み続ける。思いっ切り水溜りを踏み抜いた瞬間、虚しく聞こえるのは水飛沫の音だけ。よく見ると彼の首には首輪が嵌められていた。

「誰よりも平和主義者で穏便に暮らしていた僕を問答無用で誘拐、長年に付き添った大事な妻達の仲を無惨に引き裂き、更には強欲の権能まで枷を掛けるなんて何たる悪逆非道だぁ!これって権利の侵害だよねぇ!」

了承も無しに遊戯の参加者として連れて来られた事で自分が被害者であるように、つらつらと釈明を述べる。
暫くして怒りで滲み出る言葉の嵐が止み、少年は長い溜息を吐く。そして肩を竦んで落ち着いた彼が口元を動かしていくと、

「近頃、悪趣味の遊戯を催した老害の考えは全く分からないなぁ。そもそもさぁ、わざわざ声を掛けたって言うのに無視するなんて礼儀知らずもいい所じゃない。本当に神経を疑うよねぇ、しかも急に凶器を持った野蛮な少女が割り込んできて、そっちのけで血みどろの争いをするんだもの。偶にこういう奴らも居るんだよ?言葉で分かり合える筈が残虐性を隠そうともしない蛮族の集まりが。まぁ、そんな彼らとは正反対、寛容で見守ってきた僕にも限度があるから許せないよね」

演説する並みの政治家も顔負けの主張を饒舌に言い切って見せた。

「確か、アマノヒナを連れ戻すモリシマホダカかぁ。きっと自分の周りが盲目で女体しか興味が無い。あのろくでなしの主催者から殺害指令が出されるなんて、よっぽど悪事に手を染めたんだね。自業自得な悪人がうろつかれては平和主義の僕にとって危険極まりない事だ。せめて強姦魔の手が届かないように無欲の僕が守ってあげようじゃないか」

ゲーム開始前の映像と老婆の言葉を思い出す少年は、いとも簡単に今後の方針を決めてしまった。しかも彼と同じ被害者であろう森嶋帆高の人物像を、映像から見ただけで独り善がりに決め付ける。

「果たして彼女は僕の妻に相応しい条件を満たしているのかな?顔は見事に文句無しだけど、あの男に大事な処女を奪われていたとしたら胸が張り裂けそうだ。そうだ、偏見はよくないよね。彼女の夫として務めなくてはいけない僕が、直接確かないと」


例え前述から矛盾していようと彼は恐らく自覚していないだろう。何故なら全てが自己完結に終わるのだから。
少年の名はレグルス・コルニアス。彼が居た異世界では畏怖の象徴たる魔女教に属し、『強欲』の大罪司教と名乗って多数の妻を引き連れていた狂人だ。

【レグルス・コルニアス@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:森嶋帆高から守り、天野陽菜を自身の妻候補として定め、彼女と出会った時に処女かどうかを見極める。
1:天野陽菜を捜索し妻に相応しいか見定める。
2:森嶋帆高に鉄槌を下す。
※参戦時期はお任せします。
※一応、強欲の権能である『獅子の心臓』と『小さな王』は発動します。しかし疑似心臓が無い為に制限時間は僅か五秒しかありません。
最終更新:2021年01月09日 03:49