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 タロットカード、十六番目のカード『塔(タワー)』。
 二十二枚の大アルカナで最も不幸とされる存在のカード。
 悪魔や死神でも逆位置は良い意味を持っていた李はするのだが、
 塔だけは正位置、逆位置問わずに凶となる暗示しか存在していないからだ。
 解釈次第では別、と言う声もあるが基本的には占いでこれは引くべきではない。
 意味は悲劇、自傷行為、突然のアクシデント、そして不幸。
 決してこのタロットに幸福の二文字はない。





「タワー!? どこにいるんだ!?」

 雨が降り注ぐ音に包まれながら、とあるビルの中を駆ける男がいる。
 紺色のローブを羽織った姿はファンタジー寄りの姿であり、
 この都会の真っただ中にあるようなビルには全く似合わない恰好をしていた。
 しかもここは人がいないのか音はダイレクトに響き渡っており、
 その存在感は単純な資格だけでは収まることはない。

 似合う以前の問題だ。
 彼このような世界に生きてはいない。
 壮大な碧空に浮かぶ島々で生きる人間だ。
 空の民、その世界ではそう呼ばれていた。

「タワー! 何故俺を殺さないんだ!?」

 そして空の世界でも指折りの狂人である。
 名前はロベリア。自他ともに認める天才魔術師だ。
 自分の幸福のために生きると言う、言葉だけなら響きのいいものだ。
 しかし彼の言う幸福は、少なくとも常人の感性とはかけ離れている。

 ロベリアの幸福の根源は『音』だ。しかもただの音ではなく、
 人を破壊した時の音や悲鳴を、クラポティと言う巻貝に録音して聴くのが彼の幸福。
 母を殺したときの音を再生しながら食べるパスタは格別という程の狂いっぷりだ。
 『人は誰であろうと幸福に生きる権利がある』と言う両親の教えを、
 自分が幸福になる形で恩返しするための行動した結果がそれである。
 彼にとって殺しはそのための手段でしかなく、目的ではない。
 人知れず、しかし殺し続けたことで破壊してきた人達の音を録りつづけた。
 大半に共感されることのないことであり、彼もそのことは理解している。
 理解できる人は、同じ破壊者ぐらいだろうと。

「キミがいなくてどうするんだ!?
 俺もキミも、あのときが満たされていたはずだろ!」

 そんな彼が辿り着いた幸福の極致は、自分の破壊である。
 破壊すれば死ぬだろ。言われればそうなのだが彼は特殊な立場にあったのだ。
 彼が契約した星の獣は、一度でも契約者が破壊に失敗すれば今まで破壊しきたた人数分、
 同じ殺され方を実行し、死亡しても強制的に蘇生させる、それが塔(タワー)の代償。
 ある騎空団との戦いに敗れた彼はその代償を無限とも言える程に受けることになった。
 父を殺したときのように破裂し、母を殺したときのように骨を四肢の先から砕かれ、
 端から見れば因果応報でも見るに堪えない光景ではあっただろう。
 だが、これでよかった。贖罪ではない。彼の求めてた幸福がそこにあったから。
 自分が壊れ、自分が死にゆく音。これが自分にとって求めた音であり満たされる。

『俺はっ、ようやくっ!!! 幸福に、なれた! 幸福にぃっ!! 生き果せたぁっ!!』

 ロベリアは同じ賢者である戦車の男のような痛みを感じないわけではない。
 痛みに悲鳴を上げ、苦痛にのたうち回るので間違いなく痛みは伴っている。
 しかし、それでも自分は生き果せたことに対して笑える、紛れもない狂人だ。
 だからこそ今このように焦っている。いつ破壊されるか分からずとも構わない。
 人を驚かせることにはなってしまうが、それ以上に彼にとってはそれが幸福だ。
 その幸福を与えてくれる唯一の存在であるタワーの気配が、欠片も感じられなかった。
 アーカルムシリーズの契約者はつながりが強く、何かしらを感じることができる。
 だが今は契約する前の時の状態に戻されたかのような、繋がりのなさ。
 どこを探しても、いつの間にか背負ってたデイバックにもそれらしいものはなく。
 ひとしきり探し終えて、雨がよく見える窓を前に膝をつくロベリア。

「何故だ……? 俺は幸福に生きたかっただけなのにっ!!」

 八つ当たりの如く近くの壁を魔法で破壊する。
 派手な音共にパラパラと壁の破片が崩れていく。
 建物への配慮や存在を示してしまう愚行とか、
 最早そんなことを考えられないぐらいの状態だ。
 お前が言うな、彼の所業を知ってれば誰もが言いたくなる、
 まさに自己中心を極めたかのような発言である。
 自分の幸福が奪われると言うパターンは想定しなかった。
 今まで自分がやってきたことをまさかされ返すことになるとは。
 無限に死に続けることが幸福なんて思える存在は普通いない。
 誰も奪いやしないだろうものを奪われて、酷く憔悴していた。
 永遠の幸福と言う絶頂から転落し、彼らしからぬ取り乱し方をする。

「ハッ! まさかあのヴィエイヤール……!」

 思い出せばあの老人は何をしていたか。
 姿を見せた後、女性を蘇生させていた。
 そう、タワーの破壊と再生の如く。

「タワー、キミはそこにいるのか!?」

 厳密にはタワーの蘇生はあれほど自由ではない。
 契約者に死んだ人間を蘇生できるものなど、タワーと契約した彼が理解している。
 だが契約の代償を全て無に帰されてしまった今の状況を考えれば、
 老人が持つ力はアーカルムシリーズを凌駕してる可能性もあった。
 となれば、ありうることなのではないか。
 もしそうなあ最優先事項はタワーの奪還。
 それにアーカルムシリーズは極めて危険な存在だ。
 元々新世界創造の為の星晶獣であるのだから、
 野放しは団長になんていわれるか分からない。
 勿論それは二の次で、タワーの奪還は自分の為だが。
 そういうことなので、ゲームが終わってしまっては困る。

「確か、ホダカを制限時間までに止めればいいのか。」

 冷静になったことで漸く自分の目的を把握した。
 こんなに憔悴してるが、意外と映画はちゃんと見ている。
 彼の世界では映画と呼べるようなものはなかったので、
 大音量で展開される物語には興味があるにはあったからだ。
 ストーリーについては……まあ彼なので余り言わないでおこう。
 下手をすれば真面目な感想を抱く視聴者から非難されかねない。
 タワーの気配がないと感じたのはこのビルへ転送された後だ。
 彼の目的である帆高の到着を阻止することへの躊躇は全くない。
 他人を気に掛けるほどお人好しではないと理解している。
 だからこそ、他人の幸福を平然と奪える殺しができたのだから。

 阻止すること自体は簡単だ。
 それこそ帆高を破壊すればいいだけ。
 タワーがない以上国を滅ぼすレベルの力はないが、
 彼はそもそもタワーがなくても人を壊し続けてきた。
 だから殺すことに関しては問題はないかもしれない。

「問題は団長がいるかだな。」

 そうさせないのが、彼が身を寄せる騎空団の団長の存在。
 自分の求めた音を提供してくれた団長達に彼は礼をしたかった。
 そのお礼の内容が『自分の力を今後人の為に振るうように』と言うもの。
 今まで殺してきた分(彼自身は欠片も反省してないが)贖罪の為に振るう。
 だから彼を止める手段で殺すと言うのはそのままではしてはならない。
 団長や騎空団の団員がいなければ別かもしれないが、
 不用意な行動を今するわけにはいかない。

(それに、少し奇妙だ。)

 おかしいこともある。
 帆高を殺せばそれで皆すんなり帰れてしまう。
 だったら皆殺しにかかってしまうのが当然だ。
 そうしなければ全員死ぬ。当たり前なことだし、
 自分だって団長との約束がなければそうしてた。
 団長のようなお人よしであれば別だろう。
 タワーの契約を無効にするなんて手の込んだことをして、
 下手をすれば一分もかからず終わる催しをするのか。

(ホダカの『死滅』も引っかかるし、気になるな。)

 死亡ではなく死滅。複数でもいるかのようなワードだ。
 これが単なる誤字であれば気にも留めないが、
 ただの殺害したらそれで終わる気がしてならなかった。
 とりあえずは彼と出会って老人との関係を知っておく。
 最悪老人からタワーを奪い返すことさえできれば、
 彼が陽菜と出会おうと出会わなかろうとどうでもいい。
 外の雨に耳を傾けながらロベリアはこの建物から出ることを決める。



 天性の破壊者と呼ばれた魔術師。
 不幸を意味する塔の呪縛から解き放たれた彼は、
 もう一度幸福を手にするために動き出す。
 端から見れば不幸の果てを目指しながら。

【ロベリア@グランブルーファンタジー】
[状態]:タワーがいないことによる精神摩耗(中)
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3(確認済み、タワーのカードはない)
[思考・状況]
基本方針:タワーを取り戻し幸福に生きる。
1:ホダカに出会い老人との関係を調べていく。
2:そのまま殺すと何か引っかかるものがあるので気を付ける。
3:団長達団員がいれば必要以上の殺しはしない。いないのであれば……?
4:ルールの違和感について語れる人が欲しい。説明は下手だが。

※参戦時期は主人公の団へ加入済みです
 主人公の性別は現在表記していません(どちらでも問題ないように)
※タワーとの契約が解除されてるため、
 致死量のダメージを受ければ蘇生できません
※紫がタワーを現在所持、或いは自由に使えてると推測してます
 ただ使役の仕方が自由すぎるのでタワーとは別の可能性は考えてます
※帆高の『死滅』や一分で終わりかねないルールに違和感を持ってます
最終更新:2021年01月05日 23:56