『…………姫殿下を……頼む』
激闘により消耗した魂――。
その対価として消えゆく肉体――。
あの時、あの場所で。
その仮面は、志半ばで倒れる漢の想いと志と共に、彼の友へと託された。
◇ ◆ ◇
自らの額に触れ、その冷たい感触を指先より確かめる。
次にそれを掴んで取り外し、その正体を視界に収める。
やはり、己が手中にあるのは仮面(アクルカ)――ヤマトの絶対的支配者である帝より認められた者にだけに下賜される忠誠の証であり、無双の力を誇る戦術兵器でもある。
何故――。
何故、自分がこれを保有している?
そして何故――。
こうして五体満足で逡巡する自分が存在する?
あの時――宿敵との闘争にて魂の全てを仮面(アクルカ)へ捧げた自分は、後の事を仮面とともに友へと託し、世界から消滅したはずだ。
よもや、この地が、常世(コトゥアハルム)や地獄(ディネボクシリ)といった類いの場所ということはあるまい。
しかし、自身がこうして自我を保ち、この地に存在する手前、現在の状況に対してどのような行動を採るべきか決定を下さねばならない。
選ぶべき道は二つある。
一つは自らの芯にある「ウコン」としての一面――つまりは「義侠の漢」として、主催者打倒を目指す道。
弱きを助け強きを挫く者として--他者の命をあたかも消耗品のように扱う遊戯を強いるあの老婆には、憤りを禁ずることはできない。
義侠としての道を採る暁には、必ず誅せねばならぬ存在である。
更に気掛かりなのは、あの摩訶不思議な絡繰によって投影されていた『穂高』なる少年の安否だ。
この少年は、この遊戯の規定故、老婆に唆された他の参加者に狙われる立場となる。
こちらも捨て置くことは出来ず、早急な保護が必要である。
そして、もう一つの選択肢――。
こちらは、自らに滾る義憤に駆られて主催者を討つ前者とは相反するものである。
それは、一度手放したヤマトの右近衛大将「オシュトル」としての責務を果たすべく、ヤマトへの早急な帰還を目指す道である。
今の自分は亡者の身――。
ヤマトのこと、幼き皇女殿下のこと――全てを“彼”へと託した。
いい加減で、お調子者で、楽ばかりしようとする男。
しかし何があっても、きっと何とかしてくれる--そう思わせてくれる……心地のよい陽だまりのような男。
だからこそ、この男ならば――と後の事を全て託した。
自分が志半ばで死滅したのは、精一杯やっての結果だーーそこに悔いはない。
だがもしもーー今一度ヤマトの地へと舞い戻る機会があれば、どうだろうか?
己が責務を全うすべくーー友と肩を並べて、再び姫殿下の元へと馳せ参じる可能性が僅かながらそこにあるのであれば、どうだろうか?
あの老婆は言った。
参加者に割り当てられたお題を完遂すれば、「如何なる願いをも叶えてやろう」と。
そして、それを実現しうる相応の力があることを、あの場で「死者の蘇生」という形で披露してみせた。
結果的に友へと押し付けてしまった己が使命を再び果たすため、義憤を抑え込み、主催者より与えられる「奇跡」を望むのも一つの道かもしれない。
だが同時にそれは、この悪趣味極まりない遊戯を肯定し、自らを修羅の道に堕とす所業となりえる。
それを選んだ時、『オシュトル』だった漢は、ヤマトに残した“彼ら”が知る『オシュトル』では無くなるかもしれない。
何れの道を採択するにしろ、時間が惜しい。
早急な行動が必要だ。
――それでは、選択することにしよう。
主催者に抗うか
主催者から齎される「奇跡」に縋るか、をーー。
【オシュトル@うたわれるもの 偽りの仮面】
[状態]:健康
[装備]:オシュトルの仮面
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:????????
1 : 主催者に抗うか、提示されたお題の完遂を目指すか、選択する
2:何故、託したはずの仮面が某の元に……?
※ハクではなく、本物のオシュトル(ウコン)です。
※死亡後からの参戦となります。
※主催者による制限で、仮面による変身は封じられています
最終更新:2021年01月17日 00:25