「なんだよ、チョコくらい用意しとけよな」
デイバックを漁りながら、その人物は愚痴る。
その体躯は人間よりもはるかに小さく、人間サイズのデイバックを見分するその様は、まるで残飯を漁る鼠のようだ。
しかしその種族は、鼠ではなく妖精。
そしてその妖精の名は―ミルモといった。
「しっかし、妙なことに巻き込まれちまったぜ」
ミルモは改めてここに連れられてくる直前のことを思い出す。
御子柴という老婆は、人間にも関わらず魔法を使って見せた。
しかも…一度殺した人物を蘇生させるというとんでもない魔法だ。
その光景に、ミルモは一つの仮説を立てた。
「まさか…ダアクの奴が蘇ったのか?」
ダアク。
それはかつてミルモたちが倒した悪の化身。
そして彼は、江口沙織という一人の少女を利用していた。
ダアクに操られた沙織は、人間にも関わらずそのフルートで魔法のような力を使ってみせた。
あの時と同じく、御子柴という老婆もダアクに操られているのではないか。
ミルモはそう考えたのだ。
「楓の奴も、いるかもしれねえな…」
南楓。
人間である彼女は、ミルモのパートナーである。
そしてダアクは生前、楓を消そうとしていた。
もしもダアクが関わってるなら、巻き込まれている可能性が高いだろう。
「あいつのことだ、きっと帆高って奴を陽菜って子になんとか会わせようとするだろうな」
南楓は優しく、お人好しな少女だ。
きっと彼女なら、あの映像を見てそう動くだろうという確信が、パートナーのミルモにはあった。
「まあ、楓一人じゃ頼りねえからな。手伝ってやるとするか」
犠牲を出さない解決方なんて分からない。
それでも、楓のパートナーとして、恋の妖精として、彼はその道を選ぶ。
犠牲を出さずに、帆高と陽菜を会わせるという道を。
「さてと、そんじゃあ行くか…ミルモでポン!」
ミルモは、支給された自身の魔法道具であるマラカスを構えると、魔法を使う。
魔法をかけられたデイバックは、地面を離れて宙に浮いた。
その状態でしばらく歩いた彼は、やがて一人の参加者と出会った。
その参加者の名は、甘露寺蜜璃。
恋柱と呼ばれる鬼殺隊の剣士。
恋の名を冠する称号を持つ二人が、顔を合わせることとなるのだった。
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「え!?袋が宙に浮いてる!?それに…小人!?」
密璃がミルモと出会った第一声は、まあ当然の反応であった。
鼠のような小さい人間と宙に浮くデイバックなどというものを見れば、彼女が現代人だったとしても同じ反応をしていたことだろう。
「よう姉ちゃん…って、なんだ俺のこと見えるのか?」
「え、ええ…見えるけど」
「てことは、姉ちゃんも妖精のパートナーか?」
「ようせい?ぱーとなー?」
ピンと来てない様子の密璃に首をかしげつつ、ミルモは自分のことを説明する。
しかしそれでも密璃は、なんのことだか分からない。
「ごめんなさい、そのまぐかっぷ?っていうのも、ようせいっていうのも、何のことか分からないわ」
「本当かよ、うーん、てっきりここにいる人間は、全員妖精のパートナーで、俺たちのこと見えるんだと思ってたんだけどな…」
妖精は、基本的に妖精と契約を結んだ人間にしか見えない。
沙織のような例外はいるが、あれはダアクの力によるもので、ダアクの支配を離れた後は、アクミという妖精と契約を結ぶまでミルモたちのことが見えなくなっていた。(一応、ここにいるミルモとは別の世界線には銀河という素で妖精が見える人間もいるにはいるが、このミルモは知らない)
だとしたら、これは御子柴…あるいはその背後にいるかもしれないダアクの仕業なのだろうか。
「まあいいや、それで姉ちゃん…密璃は、これからどうするつもりなんだ?」
「決まってるわ!帆高君を、陽菜ちゃんに会わせてあげるのよ!」
そう言う密璃は、興奮した様子で腕をグッと握りしめる。
「あんなキュンキュンした映像見せられて、あの二人を引き裂くことなんてできるわけないわ!」
「おお…燃えてんなあ」
ミルモには、密璃の背後に炎が見えるような気がした。
まるで、彼女の元師匠が見守ってくれているかのようだ。
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「ところで密璃、お前チョコ持ってねえか?」
「チョコって…チョコレートよね?それなら確か…」
そういって密璃は、デイバックからチョコを取り出す。
「おー、チョコだー!」
チョコを目にしたミルモは、密璃の許可も取ることなくそれにかじりつく。
「…ん?」
「どうしたの?」
「いや…なんか普段食うチョコと感じが違うなあって思ってよ」
「口に合わなかった?普通のチョコだと思うけど」
「いや、別にそういうわけじゃねえ。これはこれでうまいんだけど…なんか懐かしい味と言うか、不思議な感じだ」
ミルモが食べたチョコレートは、大正時代のものだった。
それ故か、平成の人間界を生きるミルモには、不思議な感覚があったのだった。
「お、キャラメルもあるじゃねえか。…アクミを思い出すぜ。あいつ今頃どうしてるだろうなあ」
ちなみに密璃に支給されたのはお菓子の詰め合わせであり、チョコ以外にも色々あった。
「支給品といえば…そういえばミルモくん、剣とか支給されてない?私の支給品の中にはなくて困ってたの」
「剣?…あるには、あるぜ」
「本当!?」
剣があると聞いて、密璃は喜びの表情を浮かべる。
しかし、ミルモの方は何故か気まずそうな表情だった。
「…これだ」
「やったあ!これで戦え…」
ぺらっ
「……………え」
「ペラペラ剣…まあ、名前通りの剣だ」
「ペラッペラじゃない!」
剣であればこの際日輪刀でなくてもいいと思っていたが、しかしさすがにこんなペラッペラな剣で戦うのはきつい。
密璃の日輪刀もしなやかに曲がったりするものの、この剣はしなやかというよりしなびたという表現の方が正しい。
「ま、まあそう落ち込むなよ!その剣、お湯にかければ強くなるんだよ」
「お、お湯に…?」
「おう、実際にこの剣を使った俺が言うんだから間違いないぜ!」
「ううん…それじゃあとりあえず、お湯を探そっか」
こうして二人は、出発した。
その目的は、犠牲者を出すことなく帆高と陽菜を会わせること。
その為に彼らは探し求める。
二人を会わせる方法…ではなく、お湯を。
【ミルモ@わがまま☆フェアリー ミルモでポン!】
[状態]:健康
[装備]:マラカス@わがまま☆フェアリー ミルモでポン!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針:犠牲者を出すことなく帆高と陽菜を会わせる
0:お湯を探す
1:楓がいるかもしれないので見つけたい
【甘露寺蜜璃@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:ペラペラ剣(未覚醒)@わがままフェアリー ミルモでポン!
[道具]:基本支給品、お菓子の詰め合わせ@鬼滅の刃、ランダム支給品0~2(少なくとも剣はない)
[思考・状況]
基本方針:帆高君と陽菜ちゃんをなんとか会わせてあげたい!
0:お湯を探す
【マラカス@わがまま☆フェアリー ミルモでポン!】
ミルモの支給品にして彼が魔法を使うための道具。
一度壊れてしまったが、修理の際にパワーアップした。
【ペラペラ剣(未覚醒)@わがまま☆フェアリー ミルモでポン!】
ミルモの支給品。
無印74話「坊ちゃまクエスト・ペラペラ剣の謎」でゲームの世界に登場した伝説の剣。
が、真の力を取り戻す前のためペラペラで役に立たない。(鈍器としては使えなくもないが)
お湯をかけて真の力を取り戻した時…その剣は【わかめ剣】となり剣先がわかめになる!
…一見くだらないかもしれないが、伸縮自在で新体操のリボンの要領で使えるため、実は密璃との相性は悪くない。
【お菓子の詰め合わせ@鬼滅の刃】
甘露寺蜜璃の支給品。
小説版鬼滅の刃「しあわせの花」第3話「占い騒動顛末記」にて、かまぼこ隊がさやという娘からもらった大量のお菓子。
最終更新:2021年01月21日 21:05