ざぁざぁと雨が降り注ぐ街。
そこに一人の少女の姿があった。
「はぁ、はぁ…」
ピンク色をした子供用の傘を片手に急ぐその姿は、10歳にも満たない幼女だった。
「えっほ、えっほ…」
その少女、鈴原小恋の頭にはさっき見た映画の内容がはっきりと刻まれている。
普段通り帰宅したはずなのに、どうして変な映画館にいたのかとか。
あのお婆さんはいったい誰なのかとか。
槍を持っていた女の人は本当に大丈夫なのかとか。
色々考えることはあるし、恐い気持ちもあるけれど。
それ以上に、映画に出ていた二人の事が気になった。
(このままだと、おにいさんとおねえさんは会えなくなっちゃう…)
小学1年生の小恋には難しい部分もあったけど、ホダカおにいさんとヒナおねえさんがお互いを好きなんだとは、何とくなく分かった。
そして、このままではおねえさんは消えてしまい、おにいさんとは二度と会えなくなってしまうと。
ふと、その境遇を自分に重ねてみた。
みのりちゃん。
お母さんがお仕事の間一緒に遊んでくれて、とっても優しい大人の女の人。
そして大好きなコイビト。
もしも自分がみのりちゃんと離れ離れになったら。
みのりちゃんが消えてしまって、二度と会えなくなったら。
それは凄く悲しくて、ちょっと考えただけでも涙が溢れそうになる。
そんな悲しい思いを、あのおにいさんたちもしてしまうんだろうか。
それは何だか凄く嫌で、放っておけなかった。
だからこうして走っている。
おにいさんが今どこにいるのかは分からないし、見つけたとして何をすれば良いのか、自分でも分かっていない。
それに2人が会っったら、自分たちが危ない目に遭ってしまうらしい。
だけど、じっとしてもいられなかった。
誰もいないお店から傘を「ごめんなさい」と言って借り、おにいさんを探しに走り出していた。
そうして、パシャパシャと音を立てながら足を動かしていたが、焦り過ぎていたのか足をもつれさせてしまう。
「わわっ!?」
そのまま倒れ、地面が目の前に近付き咄嗟に目を瞑った。
が、顔に来ると思っていた衝撃は来ない。
恐る恐る目を開けると、何故か視界が普段より高くなっていた。
「ったく、だから飛び出すなっつったろうがァ…」
声のした方を見ると、男の人が呆れたような顔をしていた。
視界が高くなったのは、地面に激突する直前に彼が襟首を掴んで持ち上げたからだと気付いた。
「で、でも急がないと…」
「それでコケてりゃ世話ねぇだろ。いいからもうちっと落ち着けや」
「あう……」
そう言われると言葉に詰まる。
確かに自分が慌てていたのは事実だ。
最初にこの男の人と出会い色々とお話したのだが、どうしてもおにいさん達が心配になり、止める声も聞かず飛び出した。
男の人は傘も差さずに自分を追いかけて来たのだろう、全身ずぶ濡れになっている。
傷だらけの顔をしていて、おまけに刀を持っていたから恐い人だと思ったが、本当は優しい人だったのかもしれない。
小恋は物凄く悪いことをしてしまった気持ちになった。
「ごめんなさい、さねみくん……」
◇◆◇
◇◆◇
どこまでもふざけている。
神子柴の開いた催しは、不死川実弥にとって苛立ちと嫌悪の対象でしかない。
自分含めた大勢を爆弾付きの首輪で支配し、一人の少年の殺害を強要する。
人の命をゴミのように見ているとしか思えない所業。
あの老婆は鬼舞辻無惨と同等の下衆に違いない。
(チッ、ざけんじゃねぇぞクソババアが…。あいつは無惨の仲間か?)
思わず舌打ちしそうになるが、小恋の手前やめておく。
鬼殺隊の宿敵であった鬼の首魁は既にこの世にはいない。
であるのなら、神子柴は生き残りの鬼なのだろうかと、実弥は考える。
大勢をこの奇妙な場所に拉致し、更には死んだ人間を生き返らせる。
どう考えたってただの年寄りに出来る事ではない。
そもそも死者の蘇生など、あの無惨ですら不可能なことだ。
(ならあのババアは無惨よりも格上の化け物ってことか?冗談じゃねぇぞ…)
無惨が死んだ事を好機と見て姿を現したとでも言うのか。
そんな馬鹿なと言いたい所だが、既に神子柴の異常性は見てしまっている。
それにあの映像が全て真実だとしたら、天野陽菜を贄に求めている神様とやらも実在する事になる。
人喰いの鬼を倒したと思ったら今度はは神様と来た。
これには実弥も頭を抱えたくなる。
だがこうして殺し合いに巻き込まれてしまったのは事実。
生きて帰る為には森嶋帆高を殺さなければならないそうだが、生憎と実弥にその気はない。
もしも帆高が人を喰う化け物であったなら、特に迷う事無く頸を斬り落としただろうが、相手は危なっかしい所がある以外は普通の人間。
そんな相手を胡散臭い老いぼれの言いなりになって殺すなど真っ平だった。
(あの帆高ってガキは惚れた女に会おうとしてるらしいが…それを指咥えて見てる訳にもいかねぇ…)
少年少女の恋物語に関しては特に言うことは無い。
甘露寺ならともかく、実弥にはその手の話に別段興味も無いからだ
しかし、帆高と陽菜が再会すると参加者が水底で息絶えるというのなら話は別だ。
少なくとも、このまま黙って帆高を陽菜に会わせる訳にはいかない。
無論実弥とて、何も陽菜がこのまま消えてしまえば良いと思っている訳ではない。
だからまずは帆高を見つけて、陽菜に会うのを少し待つよう話すつもりだ。
それから制限時間が過ぎる前に、帆高を死なせないようにしつつ、首輪を外す方法やこの場所からの脱出口を見つける。
そう簡単に事が進むとは思っていないが、現状では他に良い考えも浮かばない。
(まぁ、あのガキがこっちの話に聞く耳持たずってんなら、力づくになるだろうがなァ)
自分はまだ良い。
守りたかった家族は皆死に、痣の代償であと数年もしない内にこの世を去る。
だが小恋は、この幼い娘は自分とは違う。
帰りを待っている家族が、大切な人達がいるのだ。
そんな少女を己の我儘で死なせてしまうかもしれないと聞き、それでも陽菜に会うのを強行する気なら。
殴って気絶させるか、最悪骨一本はへし折って動けなくする必要があるかもしれない。
(とにかくあのガキに会わねぇと「もー!さねみくんってばー!」…あ?」
ふと見ると、小恋が膨れっ面をしていた。
どうやら持ち上げられた体勢のままなのが気に入らなかったらしい。
つい考え込んでしまっていた事に少しバツが悪くなりながら、「悪ぃな」と言って下ろしてやる。
(……こんなガキまで巻き込みやがってよォ…)
改めて思う。
神子柴なる老いぼれは気に食わない。
奴はわざわざ自分の傷まで治療していた。
上弦の壱との戦いで失った数本の指が、見事に元通り生えている。
おまけに支給品にはご丁寧に刀まで用意されていた。
これで森嶋帆高を斬ることでも期待していたのか。
それとも、願いを叶える為に邪魔者を斬るとでも思っていたのか。
玄弥たちを、大切な家族を生き返らせてくださいと泣きつく様でも想像していたのか。
(ハッ、いいぜ…お望み通りぶった斬ってやるよ……テメェの頸をなァッ!!ゴミクズババアが!!)
神子柴の正体が何なのかは分からない。
だが奴が人に仇なす存在だと言うのなら容赦はしない。
鬼殺隊が風柱、不死川実弥は新たな敵の出現に殺意を滾らせていた。
【鈴原小恋@お姉さんは女子小学生に興味があります。】
[状態]:健康
[装備]:子供用の傘
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:おにいさんとおねえさんを会わせてあげたい
1:おにいさんを探す
[備考]
※参戦時期は25話以降のどこか。
【不死川実弥@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:雪走@ONE PIECE
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:神子柴とか言うクソババアを斬る
1:小恋を守りながら帆高を探す
2:帆高に会ったら陽菜に会うのを待つよう話す。聞き入れないようなら力づくで止める。
3:首輪を外す方法と、会場からの脱出口を探す
[備考]
※参戦時期は無惨が死んだ後。
【雪走@ONE PIECE】
ロロノア・ゾロが所持していた良業物50工の一振り。軽量で扱い易い。
元々はローグタウンの武器商いっぽんマツの家宝だったが、ゾロの男気に惚れた彼から譲り受けた。
エニエス・ロビーでの戦闘で悪魔の実の能力者である海軍の大佐に破壊されてしまった。
最終更新:2021年01月24日 07:51