――ショッピングモール地下駐車場。度重なる大雨によって雨水が流れ込んでおり、時が経てばここもまた一種の閉鎖された水槽にもなりうる場所
だが、そこで流れ漂う異質な液体――血、血、血
それは、こびり付いた黴の如くどす黒く、滲んでいる。それが雨水の中に混じっているのだ。まるで蛆虫の如く蠢いているようにも見えるその血の痕跡
駐車場の中心に――元凶は居た。まるで滑稽な道化師のごとく滑稽な格好をした赤い何か
道化師の足元には血がばら撒かれていた。仮面を被ったそれは、何かを今にも嗤いそうな顔で誰か追いかけている
道化の視線の先には、逃げるように走る青いフードの付いたコートを着た小柄な少女。フードに見え隠れする銀色の髪にはまるで牛の如き角のようなものが二本
少女の名はクムユ。鍛冶職人の家にて育った、空の騎空団のメンバーの一人
そしてそれを追いかける道化の名――アーカムシティに巣食う悪の秘密結社『ブラックロッジ』、その上位に立つ7人の幹部『アンチクロス』の一人、ティベリウス
なぜこのような状態へと至ったのか? それは少しだけ時を遡る
* *
始まりはクムユがこの地下駐車場に迷い込んだ事からだ。鉱山組合との一件が無事解決した途端に連れ去られた挙げ句謎の映画を見せられて、気がつけばこんな場所
多少改善したとはいえビビり性でもあった彼女は当所こそわけの分からぬ自体に困惑し怯えるも、逆にわけも分からず死んでたまると強がり一念発起
支給品の方には『大口径南蛮銃』と説明書に記載されたダブルバレルのソードオフ・ショットガンとその弾薬一式。小柄なクムユにも扱えるぐらいには程よい大きさだったこともありこれを一旦の主武装とすることに
まずは森嶋帆高を探そうと思った矢先に出会ったのがこのティベリウス。
ティベリウスはティベリウスで目の上のたんこぶがいなくなったと思えば唐突にこんな所に呼ばれた事態にフラストレーションこそ溜まっていたものの、気分発散としてクムユに目をつけ、襲いかかったのだ
クムユの方はティベリウスを魔物か何かと認識して発砲。見事命中したのが良いが、ティベリウスの傷はまたたく間に再生。分が悪いと判断して逃げ出したクムユをティベリウスが追いかけ、今に至る―――
* *
「待ちなさぁ~いおチビちゃぁん」
道化師が壁や柱を両襟から湧き出た鉤爪で抉り取りながら少女を追う。大柄な服装ながらその動きは獰猛な肉食獣のごとく
「誰がテメーみたいなグロテクス野郎なんかに捕まってたまるかです!」
それに負けじと少女は追いつかれまいと叫ぶ
「あらやだ、啖呵だけは一人前。まっ、そっちの方がアタシも唆るから良いんだけど」
「言ってやがれです化け物!」
道化の挑発に声を荒げるも、実のところを言えば一発もろに打ち込んだはずなのに何事もなく再生する道化――ティベリウスをどうこうする手段を必死に考えてるしかないクムユ
何しろティベリウスの方は鉤爪での攻撃以外に手の内を見せていない。それに対しクムユ側はまだ確認していない支給品を除けばこの大口径南蛮銃のみ。しかも反動承知で一度それなりに大きな一撃ぶち当てたのに再生される
(せめて、あの気持ち悪いのを一撃で吹き飛ばせるぐらいの何かがあれば……?)
鉤爪の猛威から逃げながらも支給品袋の中を漁る。取り出せたのは懐中時計と爆弾が引っ付いたような何か。そして付記された説明書を見て彼女は一つの可能性に賭ける
(……? でも、これなら……!)
○ ○ ○
「へぇ、うまく巻いたようねぇ」
一転して雨音以外静まり返った駐車場内でティベリウスは周りを見渡し、警戒を続けながらも関心する
本来ならばあの程度の小娘ならば歯牙にも掛けない。しかし追い詰められた鼠は猫を噛むとも言う。だからこそ見下しはしても油断大敵
「でーも、まだまだ甘ちゃん」
だが、ティベリウスの目線は地面の水溜り……に映るクムユの姿を捉えていた。慎重に動いて悟られないようにはしていたが、こうなってしまえばこっちのものだ
「アタシに啖呵切った根性だけは、認めてあげるわぁ」
そう皮肉るように、今度は獲物を拘束で仕留めようとするチーターが如く、その体躯に似合わぬ速さで、クムユが隠れた場所に迫る
「そこかしらぁ!?」
鉤爪を振るい、その場にあった柱の一つがさけるチーズの如く引き裂かれ、瓦礫と化す
「……あーら、既の所で避けたのかし―――」
クムユの姿は無く、運良く避けれたと判断したティベリウス。然し道化師の足元には時計に何かが付着したようなものが。カチカチと音を鳴らすそれが何かを判断する前に、ティベリウスの姿は爆風と水飛沫に呑まれたのであった
○
「ざまーみやがれです!」
爆発と同時に、別の壁からクムユが自慢げに口ずさみながらも、その顔には安堵の表情が浮かんでいた
クムユの支給品の一つ『微睡む爆弾(チクタク・ボム)』。懐中時計型のチェーンマイルの形をしたそれは、英霊メフィストフェレスの宝具でもある爆弾
本来ならばメフィストフェレスの力で相手の体内に潜り込ませるのだが、本来の持ち主ではないので純粋な爆弾として機能したまでのみ
だが、普通に炸裂させ直撃させればただの人間ならばひとたまりもない。一撃で木っ端微塵に出来ればどれだけ再生力があろうが関係ない。そうクムユが足りない頭を捻って考えた策、だったが―――
「―――なるほど、ねぇ」
「……えっ?」
クムユは、あり得ないものを見た
物言わぬ死体となったはずのティベリウスが、起き上がっていた。よ
く見れば衣装はボロボロで、穴が空いた腹からは腸のような物がはみ出したまま、蠢いている。壊れた仮面の内に秘めていた血に汚れた髑髏、その目の空洞が明らかにクムユの方を見据えていた
『微睡む爆弾(チクタク・ボム)』が本来発揮する、『爆弾を相手の体内に潜り込ませる』力。それはまず相手の呪術に対する耐性を参照に成功判定を行い、その結果によって仕込まれる爆弾の数も変わる
今回は本来の使用者でないのも含め、判定されるのは『威力』。だがティベリウスはアンチクロス屈指の呪術の使い手。『呪い』という分野だけならアンチクロス内でも随一である彼には呪いそのものに対する耐性があったのだ
勿論、爆発が直撃した事でこのような大ダメージを食らう事になってしまったが――
「――よ、く、も。やってくれたわねぇ?」
髑髏がカタカタと震えながら声を発する。蛇の如く飛び出た腸が蠢く
「ひ、ひいっ?!」
その悍ましきグロテクスな光景に、クムユは思わず恐怖が漏れ出してしまうが、それが仇となった
「あ、いやっ! はなせっ! はなせですっ!!」
道化の腹から湧き出した腸がクムユに向かって飛び出し、彼女の身体を拘束する
だがその拘束はクムユの力では振りほどけず、腸が柱に巻き付く形でクムユの身体を磔刑の形へと固定
眼前のティベリウスの傷は徐々に回復しているだ
「……でも、さっきのは流石に危なかったわよぉ?」
「どう、して……?」
「残念だけど、アタシはこの程度じゃ死なない身体なのよねぇ。――この『妖蛆の秘密』のおかげでね」
自慢気に語るティベリウスが懐から取り出したのは、鉄の表層がついた黒い大冊の本。表面にはびっしりとへばりついた蛆虫と、クムユ自身に付けられたのと同じような首輪みたいなリングが付けられている
「……しっかしあのババァも考えたものよねぇ。アタシのこの不死の力が『妖蛆の秘密』に大きく左右されてるからって、これに首輪つけちゃうなんて」
ティベリウスの所有する魔導書『妖蛆の秘密』。それは単純な死霊を操る力を授ける魔導書という点だけでなく、ティベリウス自身の持ちうる不死性そのもの。故にその利点は同時に弱点にもなりうる
だからこそ主催はティベリウス本体ではなく魔導書の方に首輪をつけたのだろう
余談ではあるが、魔導書に付けられた首輪は、魔導書がティベリウスから3m以上離れた場合自動的に爆発するという制約もある
そうこうティベリウスが愚痴っていれば、ティベリウス自身の傷はほぼ完治に近い形まで戻っていた。だが腹の穴とそこから湧き出す腸の触手は健在だ
「……ちょーっと話しすぎたわねぇ。ま、いいわぁ」
「ば、ばけも、の……」
クムユは目の前の人の形をした化け物に対しそう言葉を溢すしか無かった。自分の知っている人たちは強い。だが、目の前にいる道化の強さは『人としての強さ』ではなく、『化け物としての強さ』
外道に落ち、外法を習得し、外道を持って蹂躙する。――そのあり方はただ生きているだけで人を害する人知を超えた存在
「ありがと、アタシにとっちゃそれ褒め言葉よ? でぇも、ちょっとばかし―――やかましいわね」
ティベリウスのその言葉と共に、クムユの腹に打撃が走る。まるで鈍器で殴り飛ばされたような衝撃が伝わり
「お、おごっ、おごぉぉぉぉっ!?」
大きな嗚咽と共に血が混じった吐瀉物を水溜りへとぶち撒けてしまう。更にティベリウスが鉤爪を振るいクムユの衣服を切断。かろうじてブラや下着は切断されなかったものの、次の行動次第で切り裂かれてしまう事は火を見るより明らかだ
「あ……やめ……」
そしてクムユは激痛に苛まれた思考の中で察してしまう。そして恐怖と共に、絞り出すように言葉が漏れる
この道化が今から自分に対して何をしようするのか
「――じゃ、お楽しみタイムといきましょうか。ク・ム・ユ、ちゃぁぁん?」
○ ○ ○
もしこの光景を見ているものがいたとしたら、それは間違いなくクムユという少女にとっての地獄であり、絶望だ
身体中の穴という穴を穿たれ、かき混ぜられ、今にも溺れそうな快楽へと呑まれゆく。触手は彼女の心を染め上げるために彼女の身体を嬲り、弄ぶ
年端も行かぬ少女の肢体は蹂躙される。蟲は彼女の中に入り込み、刺激する。その度に少女は淫靡な声を上げてしまう
我慢したくても出来ない。頭の中が真っ白に染まっていく。家族のことも、団長のことも、大切なことを忘れたくないのに、それすら快楽の渦に呑み込まれていく
そして、道化師の合図とともに、ティベリウスからクユムの中に液体が迸り、放出される。それと同時に、クムユという少女がどうなったか――もはや言うまでもなかった
―――
ごめんなさい、くむゆはもうだめかもしれないです
だって、こんなきもちいいのたえられるわけないです。きもちよすぎてくむゆのからだはいやらしくなってしまったです
- わすれちゃいけないのに、おもいだしたいのに、おもいだせない。きくうだん? だんちょう? なんだっけ?
- あ、でもくくるねえとしるゔぁねえのことはおぼえてたままだったです
でも、もうもどれない。くむゆはもうもどれないです。だって、こんなにきもちいことおしえこまれたら、もうむりなんです
だから、くむゆはごしゅじんさまのものになります。だからくくるねえとしるゔぁねえはくむゆのことをわすれてほしいです
ごしゅじんさまのためならなんでもします、ごしゅじんさまにきもちよくしてもらうためならだれだってころします だから――――
だれでもいいから ねえさんたちをころしてしまうまえに くむゆを ころしてください
○ ○ ○
「ふぅ~……スッキリした。ストレス発散にもなったし、ついでに都合よく利用できる駒もゲットなんてツイてるわぁ~」
そう爽やかな気分となったティベリウスの背後には、光の灯らぬ漆黒の闇に曇った瞳のまま、数多の混合液に濡れたままただ立ち尽くしたクムユの成れの果てがそこにあった
今の彼女は騎空団の一人でも、三姉妹の三女でもない、ただティベリウスに快楽を求めるだけの肉人形、体よく利用される玩具であった。もはやティベリウスの命令ならどんな事でも従う、操り人形
「……さあってと。暇つぶしはこれぐらいにして」
ティベリウスは思考する。大導師と、目の上のたんこぶであったデモンベインが倒され、もはやアンチクロスに逆らえるものは誰もいないとなった状況。そんな状況で自分はこんな催しに呼び出された
「……森嶋帆高と天野陽菜チャン、ねぇ」
ルールの根幹にある二人の存在。ぞんざい言ってしまえばティベリウスは森嶋帆高には興味はない。が、彼が神社に辿り着かせるわけにはいかないので、捕まえた上で四肢をもぎ取って死なない程度に対処してしまえばいい
だが、巫女である天野陽菜が話は別だ。巫女としての力もアンチクロスとして利用できるものではあるが、ティベリウス自身も天野陽菜に対しては極上の女体としての価値を見出していた
「アウグストゥスはいないわけだし、アタシがお持ち帰りしても、文句は無いわよねぇ」
事実上の指導者であるアウグストゥスは確認できる限りはいない。彼の判断次第で天野陽菜の安否は変わるものの、今は
「せっかくうるさいのもいないわけだし、アタシは自由にやらせてもらうわね。――それと。あの子、アタシが頂いちゃってもいいかしら、ね?」
巫女としての力を利用するにしても、ティベリウスの玩具にするにしても、まずは彼女を確保しなければ話は限らない
「……あの帆高ってガキ、探しに行くわよ。どっちにしろあいつがいる限りはこっちの手綱は握られてるも同然だし」
「――はい、てぃべりうすさま」
「抵抗するようなら殺さない程度に好きにしてもいいわ。どうせなら両手両足もぎ取ってもいいわよ? もしアタシより先に捕まえられたらクムユちゃんにはご褒美あげちゃう」
「――ありがとうございます。くむゆ、ごしゅじんさまのためにがんばります。だから、もしつかまえられたら、いやらしいくむゆのもっともっときもちよくしてください」
不死の道化は嗤う。道化に壊された少女は淡々と続く
少女の未来は閉ざされた、七逆十字なる外道の一角の手によって
壊れた彼女の救いは、壊れた絶望だけである
【ティベリウス@デモンベインシリーズ】
[状態]:健康(負傷は再生)
[装備]:妖蛆の秘密@デモンベインシリーズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:アタシの自由にやらせてもらう
1:天野陽菜を手に入れる
2:森嶋帆高の捕獲
[補足]
※参戦時期は機神咆吼、デモンベインが撃破された後からの参戦
※鬼械神ベルゼビュートは召喚不可です
※首輪は『妖蛆の秘密』に仕掛けられています
【クムユ@グランブルーファンタジー】
[状態]:精神崩壊、陵辱による肉体へのダメージ(中)、衣服類の破損(大)
[装備]:大口径南蛮銃@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針:ごしゅじんさまにしたがう
1:もりしまほだかをつかまえる。つかまえてごしゅじんさまにきもちよくしてもらう
[補足]
※最低でも『メイクアップ&ゴー』エピローグ後からの参戦
【大口径南蛮銃@鬼滅の刃】
鬼殺隊隊員である不死川玄弥がメインウェポンとして所有する銃
外観こそ外観はダブルバレルのソードオフ・ショットガンに似るが、散弾ではなく超大口径の弾頭を撃ち出す為、十二鬼月クラスの頸にもある程度通用する
ただしその威力のため常人がこれを使用したなら両腕で構えていたとしても身体ごと吹き飛んでしまう
【妖蛆の秘密@デモンベインシリーズ】
ティベリウスが所持する魔導書。この魔導書の力によってティベリウスは不死の能力を得ているが、逆にこの魔導書が破壊されれば不死の能力を失い死に至る
最終更新:2021年01月25日 08:05