前触れもなくいきなり映画が始まった時、最初は夢だと思っていた。
 前にロエル達やトゥーラみたいに俺の夢に入って来る、何かとメッセージだと考えてた。

 とりあえず見ていた映画の内容は、素直に面白かった。
 主人公の帆高がわざとじゃないとはいえ銃を撃ったり、警察から逃げたのはどうかと思ったけど、それでも気づけば映画にのめりこんでいた。
 俺もツインテールを奪う敵がアルティメギルみたいに正々堂々しておらず、警察を使って攻撃してくるなら同じことをするかもしれないし。
 だけど映画は途中で終わり、代わりに出てきたのは映画とは関係なさそうな、神子柴と呼ばれたお婆さん。
 神子柴の言うまるで映画の内容が実際に起こったことみたいな物言いは気になったが、それよりも殺し合いだ。

「殺し合いなんて、絶対止めないと……」

 そうして移動させられた雨が降り続くバトルロワイアルの会場で、俺、観束総二は決意する。
 必ずこの殺し合いを止めて、その上で映画に出てきた帆高と陽菜を会わせてあげようと。
 ん? でもそれだとあの映画は本当に起きたことなのか?
 俺の知っている限り、東京で雨が降り続いていたなんて話がないのは、あの映画の内容が俺がいる世界とは別の世界で起きたことだろうからいいとする。
 実際にあったことが映画になっているのも、前に似たようなことがあったからそれと同じようなものだろう。
 じゃあこの殺し合いにいる帆高達はなんなんだ?
 まさか映画はあそこまでしかできてなくて、残りはこの殺し合いを基にして作るのか?

「いや、どっちにしてもまずは他の人と会わないと……」

 殺し合いという時点でアルティメギルの残党は絡んでいないだろうし、ここが異世界の可能性が高い以上、俺のことは誰も知らないかもしれない。
 でもとりあえずテイルレッドに変身したほうがいいと思った俺は、いつも通りに右拳を胸の前に構えるが――

「テイルブレスが……ない!?」

 テイルレッドに変身するための重要なアイテムが、俺の体から消えていた。
 高校の入学式の日、トゥアールと出会ってからずっと右腕に付けてたのに!
 というか、外れないから落とすとか無くすとかありえないはずだぞ!?

「まさか、盗られたのか!?」

 あの神子柴、まさかトゥアールと同じくらいの科学技術があるのか!?
 それでも念のためデイバッグの中を調べると、俺のテイルブレスはあっさり見つかった。

「……なんで一回没収したんだ?」

 疑問に思いながらも、俺はとりあえずテイルブレスを右腕につける。
 そして今度こそ変身しようとしたところで、視界に人が移った。
 ……変身するより先に、他の人と話しておいた方がいいか?
 そう思った俺はその人をを呼び止める。

「おーい!」

 俺が呼び止めると、向こうは特に何かをするわけでもなくこっちへやってきた。
 段々近づいてくると、俺が呼び止めた相手が男なことが分かる。
 この人デカい。身長が190以上あるんじゃないか。
 そしてなぜか上半身裸で、まるで見せつけているかのようなすさまじい筋肉がそこにはあった。

「あの、もし良かったら俺と――」
「俺の名前は東堂葵」

 俺が話しかけようとするが、それより早く目の前の男に自己紹介をされてしまった。
 そして東堂……さんだよな? 年上っぽいし。
 東堂さんはそのまま俺に問いかける。

「お前、どんな女が好み(タイプ)だ?」
「はあ?」
「まあ聞け」

 いきなり女の好みを聞かれて、俺は思わず唖然としてしまう。
 だが東堂さんは俺の答えを予測、というか似たようなことが何度もあったのかよどみなく質問の意図を説明し始めた。

「まず俺は殺し合いに乗つもりはない。森嶋帆高をどうこうするつもりもない。
 呪術師として一般人を傷つける訳にはいかんし、何より女の好みは違うが惚れた女の為にあそこまでやれる男は、つまらない男ではないだろう。
 そいつを守るために動きたいとも思う」

 そこで東堂さんは一度話を止め、俺を見る。

「しかしお前が信頼できるかは別だ。
 流石に一般人ならただ守るだけだが、お前は見た限りどうにも違うようだしな。
 それでも、殺し合いに乗るつもりはないがあの森嶋帆高をどうにかして解決するつもりなら俺達は相容れない。
 全員とは言わないが、せめて背中を預けるなら信頼できる人間がいいというのが俺の本音だ」

 一方的ではあるが、言いたいことは分かる。
 要するに、俺を信頼できる証拠が欲しいということなんだろう。
 でもそんなの証明する方法が――

「そこで性癖だ」
「何でだよ!?」

 信頼と性癖になんの関係があるんだよ!?

「性癖にはソイツの全てが反映される。
 性癖がつまらない人間は全てがつまらない」

 成程、ツインテールを見れば持ち主のことが分かるのと一緒か。
 ツインテールは見えるけど、性癖は見えないもんな。

「だから問う。お前、どんな女が好み(タイプ)だ? 男でもいいぞ。
 ちなみに俺は、尻(ケツ)と身長(タッパ)がデカい女がタイプです」
「そういうことなら……」

 東堂さんの言い分は分かった。
 そして性癖、つまり好きな女の子タイプか。

「東堂さん。あなたを納得させられるかは分かりませんが、俺の答えは決まってます」
「ほう。聞かせてくれ」
「俺の名前は観束総二。そしてツインテールの女の子がタイプです」

 俺はこれまでいろんな性癖の持ち主と出会ってきた。
 巨乳、貧乳、ぬいぐるみ、眼鏡、ポニーテール。それ以外にも沢山。
 だが俺の答えはこれしかない。
 俺はツインテールの為なら、どんな困難にだって立ち向かえる。
 異世界の敵と戦うことになったって、五感を消失したって、俺の思いは消えない。
 そう

「俺のツインテールは――――永遠だ!」

 俺は嘘偽りない思いを東堂さんにぶつけた。
 これで拒絶されるなら、もう諦めるしかできない。
 だがその心配は杞憂だった。

「――総二。今日から俺達は、友達だ!」

 なぜなら東堂さんは、涙を流しながら感激してくれているから。
 良かった。これで同行はできそうだ。

「高田ちゃんはツインテールだからな。きっとお前もファンなんだろ?」

 高田ちゃんが誰かは分からないが、どうにもツインテールらしい。
 ツインテールなら俺が知らないわけがないから、やっぱり東堂さんは異世界人とみて間違いないな。

「じゃあ早速行きましょう。東堂さん」
「おいおい総二。俺達はもう友達だ、敬語はいらん。そして下の名前で呼んでくれ」
「……ああ、分かったぜ葵!」
「おう!」

 こうして、俺と葵は行動を共にすることになった。
 まずは俺と葵が異世界人であるということを説明しないといけないけど、信じてもらえるだろうか。


【観束総二@俺、ツインテールになります。】
[状態]:健康
[装備]:テイルブレス@俺、ツインテールになります。
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める
1:葵と行動する
2:帆高と陽菜を会わせてあげたい
3:葵や帆高達は異世界の住人なんだな

※参戦時期は20巻終了後です


【東堂葵@呪術廻戦】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:呪術師として、殺し合いには乗らない
1:総二と行動する
2:俺と総二は、友達だ!

※参戦時期は虎杖と親友になった以降です


【テイルブレス@俺、ツインテールになります。】
観束総二に支給。
総二がテイルレッドに変身するための道具。
なお、本来なら総二以外には見えないようになっているが、このロワでは参加者なら見えるようになっている。
最終更新:2021年01月25日 07:53