「地球外生命体のエボルトを死闘の末、生意気にも撃破し新世界を創造した仮面ライダービルドこと桐生戦兎。その世界では馬鹿の万丈以外とは記憶を共有できず、仕方なく男二人のむさ苦しい生活を始めるのだった」
「…って、むさ苦しいは余計だろ!大体なんでお前がナレーションやってんだよ!?」
「おいおい、そんな冷たい事言うなんざ悲しいねぇ、戦兎ォ?別に良いじゃねえか、声の仕事は得意だしなぁ」
「全っ然良くねえよ!あと声の仕事とか言っちゃ駄目だろろうが!?」
「そもそもお前は消えたんじゃねえのかよ!?それと馬鹿って言うな!せめて筋肉つけろ!」
「そこはどうでも良いんだよ、この馬鹿!」
「お前まで馬鹿馬鹿言うんじゃねえ!この発明馬鹿!」
「喧嘩はそこまでにしとけ。お前らが新世界でよろしくやってる間、俺の方も色々大変だったんだぜ?――だが、消滅したはずのエボルトは奇妙な場所で目を覚ます。そこで謎の老婆から告げられたのは、とある少年を殺せとの命だった…。果たしてエボルトの運命は如何に!?」
「……とりあえず、お前がまたロクでもない事しようとしたのは分かる。分かりたくないけど…」
「なぁ、奇妙な場所ってどこだよ?謎の老婆って誰のことだ?」
「んなもん俺が知る訳無いでしょーが…」
「それでは本編どぞー☆」
――――
「妙な事になっちまったなぁ…」
小奇麗なマンションの一室。
そうボヤいたのはモデルのような長身の男、石動惣一。
…ではなく、彼に擬態した地球外生命体のエボルト。
リビングにあるソファに腰掛け、これまで身に起きた出来事を思い出す。
氷室幻徳の悪足掻きのせいで動きを封じられ、万丈諸共パンドラパネルのエネルギーに飲み込まれた。
何とか万丈を吸収し、自分を追ってきた戦兎を殺そうとした。
が、忌々しいことに体内で万丈が抵抗し、その結果戦兎に敗北。
そのまま新世界創造の為のエネルギーとして、塵一つ残さずに消滅。
そのはずだったが…
「何故かこうしてピンピンしてる、と…。どこの誰かは知らないが大したもんだ」
あっけらかんとした口調だが、内心ではあの老婆への敵意と警戒心が渦巻いている。
自分を復活させた事は良い。
だがこうして首輪を嵌め、都合の良い駒のように扱うのは面白くない。
しかもどういう訳かこの首輪、体を流動体に変化させても外れなかった。
神子柴本人か、若しくは背後に何者かがいるのかは不明だが、自分よりも上の力を持つ者がいるのはほぼ間違いない。
加えて気になったのは森嶋帆高が主役の映画の内容。
あの映画の中には不可解な事にスカイウォールや三都の存在に一切触れられなかった。
自身が10年前に引き起こした『スカイウォールの惨劇』により、日本が3つに分かれたのは全国民にとって周知の事実である。
だと言うのに映画の中では、まるでスカイウォールなど最初から存在しなかったとでも言わんばかりの光景が存在した。
(ま、大方エニグマみてえな装置をあの婆さんが持ってるってこったろ)
それは最上魁星という科学者が開発した装置。
以前エニグマが原因で万丈がスカイウォールの存在しない世界に飛ばされた事があった。
あの時は自分の計画が台無しになりそうでヒヤヒヤしたものだ。
(それはともかくとして…あの映画の後で女を蘇生させた件も含めて考えると、『何でも願いを叶える』ってのもあながち嘘じゃねえってか……)
森嶋帆高を制限時間が過ぎるまで捕えておけば、願いを叶える権利が手に入るらしい。
もっとも、エボルトには素直にお題を達成する気も、帆高を殺す気も今の所は無い。
神子柴の目的が帆高に邪魔されず天野陽菜を神へ捧げる事だとして、それなら何故自分で帆高を殺さないのか。
映画の通りなら帆高はごく普通の人間。
超常的な力を持つ神子柴なら簡単に殺せるだろうに、こんな回りくどい真似をする意味が分からない。
(そもそも実際にお題をこなすなり帆高を殺すなりやったとして、奴が素直にこっちの言う事を聞く保障がどこにある?
仮に無事帰してくれたとしても、一度拉致されて目を付けられてるなら、またこうして首輪付きの手駒にされるのがオチじゃねえのか?
…どうにも信用できねえんだよなぁ)
極端な話だが神子柴の気まぐれで参加者全員の首輪が爆発する、という事態だって有りえなくは無い。
故にまずは自身を縛るこの首輪をどうにかして外す。
戦兎のような頭脳を持った者なら首輪の解析も可能だろう。
それから森嶋帆高の確保。
ロクに神子柴への対策も取れていない段階で天野陽菜に再会されるのは、流石に阻止しなければならない。
「後は俺自身の力をどうにかする、ってとこかねぇ」
チラリと視線を向けた先には、ソファとテレビの間に置かれたテーブル。
その上にはエボルト自身にも馴染み深い武器、トランスチームガンが置かれている。
デイバッグにはスチームガンだけでなく、ご丁寧にフルボトルまで支給されていた。
並大抵の相手ならブラッドスタークで難なく蹴散らせるだろう。
しかし、並以上の敵を相手取るのにブラッドスタークでは限界がある。
特に得体の知れない主催者と戦うなら、自分の本来の力である仮面ライダーエボルにならなくては話にならない。
その為のエボルドライバーやエボルトリガーはバッグに入っていなかった。
他の参加者に支給されているならどうにかして取り戻したいところだ。
「気が利かねえな」と愚痴りつつ、荷物を纏めて立ち上がる。
大まかな方針としては、やはり森嶋帆高の迅速な確保。
それと並行して、葛城親子のような首輪を解除できる技能を持った人物を探す。
とりあえずはこんな所だろう。
「ま、それはそれとして」
玄関に置いてあった傘を手に取り、扉を開ける。
「このゲームは楽しませてもらうけどな」
今の所は帆高を殺す気は無い。
神子柴はどうにも信用ならない。
主催者の命令に大人しく従う気はない。
それらは本当だ。
だが忘れてはならない。
この男は善人などではなく、ましてや愛と平和の為に戦うのヒーローでは決してない。
幾つもの星を滅ぼして来た凶悪な生命体。
人間を、自分を楽しませる為の最高の玩具としか見ていない外道。
たとえ今は本来の力を失っているとしても、その本質は変わらない。
森嶋帆高と天野陽菜の恋物語も、彼は笑いながら無残に踏みにじるだろう。
軽薄な笑みを浮かべる星狩りの怪物は、雨が降り注ぐ街中を軽やかな足取りで歩き出した。
【エボルト@仮面ライダービルド】
[状態]:健康、石動惣一に擬態中
[装備]:トランスチームガン@仮面ライダービルド、コブラロストフルボトル@仮面ライダービルド、大人用の傘
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針:ゲームを楽しみつつ、神子柴への対策を取る
1:森嶋帆高を探して確保する
2:首輪の解除が可能な人物、またはその方法を探す
3:エボルドライバーとエボルトリガーを取り戻す
[備考]
※参戦時期は最終話で消滅した直後。
※体を変化させても首輪は外れないようです。
【トランスチームガン@仮面ライダービルド】
葛城巧が開発した拳銃型の変身ツール。
ロストフルボトルをセットする事でトランスチームシステムの怪人に変身できる。
武器としても使用可能で、エネルギー弾を発射する他、煙幕を張って撤退する、特殊なガスを散布し人間をスマッシュにする等の機能がある。
【コブラロストフルボトル@仮面ライダービルド】
トランスチームシステムの変身に用いられる人口フルボトル。
これをトランスチームガンにセットしトリガーを引くとブラッドスタークに変身できる。
最終更新:2021年01月25日 07:54