――強く焦がれ、強く焦がれ
◇◆
灰色の雲が天を覆っている。
冷たい雨が全身を濡らす。
それを意に介さず男は静かに考え込んでいた。
自身に降りかかった不可解な現象に、思わず六眼を歪める。
(私は無限城に居たはず……何が起きた……?)
つい先ほどまで自分たちの拠点で、鬼殺隊を待ち構えていたはずだ。
それが何の前触れも無く唐突に奇妙な映像を見せられたかと思えば、こうして見知らぬ場所に放り出されている。
全く持って訳が分からない。
「急ぎ……戻らねばならぬ……」
何故自分を選びこの地に連れて来たのかは分からないが、今はこんな事をしている場合ではない。
猗窩座に続き童磨までもが敗れ、残る十二鬼月は自分と鳴女の二体のみ。
加えて主はまだ解毒が済んでいない。
こんな所でもたついている間にも、鬼狩り共の手が主に迫っている。
ならば森嶋帆高なる少年を殺すのが、手っ取り早く帰還出来る方法だろう。
だが
(願いが叶う……あの老婆は確かにそう言った……)
くだらぬ妄言、と一笑に付すことはできない。
実際に神子柴が死者を蘇生するのを、この目で確かに見た。
自分を無限城から連れ去ったことも含めて、神子柴が得体の知れない力を持っているのは間違いないだろう。
であるならば、太陽の克服という主の悲願も叶うのだろうか。
いやそれ以上に、ついぞ勝利することが出来なかったあの男にも手が――
『お労しや、兄上』
ギチリ、と。
刀を握る手に、力が入る。
こんな状況だというのに、こんな事を考えている場合ではないというのに。
憎悪が、嫉妬が、劣等感が。
心の内から溢れ出す。
「……何にせよ……あの少年を見つける必要がある……」
脳裏に浮かんだ光景を振り払うように呟く。
帰還か願いか。
どちらを優先するにせよ、まずは森嶋帆高を確保しなければ始まらない。
そう己に言い聞かせ、男は足早に動き出した。
灰色の雲が天を覆っている
冷たい雨が全身を濡らす
この身を滅ぼす日の光は微塵も姿を現さない
だというのに
未だ脳裏に焼き付いている、『継国縁壱』という名の日輪は
絶えず男の心を焼き焦がしていた
【黒死牟@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:虚哭神去@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:急ぎ無惨様の元へ戻る。もし本当に願いが叶うのならば…
1:森嶋帆高を確保する
[備考]
※参戦時期は無限城で時透無一郎と遭遇する前。
【虚哭神去@鬼滅の刃】
黒死牟の体内で生み出された刀。
無数の目が浮き出ており、刀身には血管のような筋が走っている。
破損しても瞬時に再生できる他、複数の刃を生やすことも可能。
最終更新:2021年02月18日 17:48