「――?!」

北条かりんが意識を取り戻した先にあったのは、大雨降り注ぐ大都市の交差点
本来ながら人々でごった返すそこはただ鳴り響く雨音以外に存在せず、困惑に塗れる少女の身体をただただ濡らすのみ。少し経って思考が働きすぐさますぐ隣の建物の近くに飛び込む

北条かりんの脳裏には、御剣総一の事が―――余りにも濃く焼き付いていた
あの『ゲーム』で、様々な事がありながらも脱出することが出来た。好きな人が出来た。だけどその彼は自分たちを守るため自ら犠牲となった

『ゲーム』をクリアし、鉄の牢獄から脱出した彼女を待ち受けていたのは謎の老婆とそれが見せた謎の映画、そして再びの『ゲーム』という現実

「……私、また、巻き込まれたんだ」

北条かりんには妹がいる。前の『ゲーム』において、妹の治療費に為に殺し合いに乗ろうとしていた時期もあった。昔の誰も信じられなくなった自分では、真っ先に帆高を殺す選択をしただろう

「……でも。……ううん、そんなことぐらい、分かってるよ」

けど、今は違う。そんなことをして元に戻った所で自分にとって大切な人が喜んでくれるはずもない。それを、あの『ゲーム』の中で、御剣総一に教えてもらった

「―――もうちょっとだけ待っててね、かれん。私は必ず、かれんの所に帰ってくるから」

少女は再びの思いを秘め、彼女にとっての狂った『ゲーム』の続きは幕を開ける




「――森嶋帆高、か」

あの老婆が示したこのゲームの鍵を握る存在、森嶋帆高
このゲームを終わらせる条件は制限時間が終わるまで森嶋帆高を天野陽菜の所まで辿り着かせない。もしくは森嶋帆高の『死滅』
『死滅』という言葉が無性に引っかかるが、どちらにしろ森嶋帆高を犠牲にする選択など取るつもりはない。けれどかつての自分同様大切な人のために周りを見ずに突っ走ってしまうような人だと感じた

「あの人を何とかしない事にはどうにもならないけど」

まずは森嶋帆高をまず見つけ出さない事には何も始まらない。あのまま森嶋帆高が天野陽菜と出会ってしまえばもっと多くの人が死んでしまう。事情を説明したとして聞き入れてくれるかという点も心配ではある

「……うわぁ」

最低限自衛のための道具が無いかとデイバッグの中身を探る。最悪小柄な身体を活かせるものが無いかと探してみれば……出てきたのは白亜の鷹を彷彿とさせる白の長銃

「いや確かに便利かもしれないけれど。これはちょっと……」

自動拳銃ならば最低限使えそうかなとは思っていたが流石にこれを扱える気はしない。高山さんあたりなら使いこなしてそう、などと内心思うが考えても仕方のない。なので他を確認しようと思った矢先

「あー! それ私の銃!」
「あ」

声がしたほうを振り向けば白ベレー帽の女性が、自分の持っていた長銃を指差し叫んでいる

「まって! 私は殺し合いに乗ってない!」

反射的に言い訳じみた言葉を叫んでしまった。流石にこれで信用してもらえるかと言われれば総一達と出会う前の私だったらまず疑う

「……えーっと、ごめん。そういうつもりで叫んだんじゃないから、ね?」
「ククル、さん? この人、一体……?」
「あー禰豆子ちゃん? 大丈夫、悪い人ではなさそう。……話、いいかな?」

だが、その不安とは裏腹に、ククルと呼ばれた白ベレー帽の女性は、続けて現れた黒髪の少女――ククルが「ネズコ」と呼ばれた少女に対し、自分が敵でないことを知らせた上でこちらとの話を所望してきた

○ ○ ○

「へぇ、ククルさんも『お姉さん』なんだ」
「その年でお姉ちゃんやってるかりんちゃんもククルお姉ちゃんから見たら十分立派だよね」
「……ええっと、ククルさんから見たらやっぱり私も妹扱い的な?」
「うん。なんというか見かけによらず逞しい所とかなんというかクム坊みたいで可愛いよ。あ・と、私のことは『ククル姉さん』って呼んでもいいのよ?」
「あ、あはは……」

かりんのの当所の心配は一気に吹き飛んだ。白ベレー帽の女性の名はククル、そして黒髪の少女名前は竈門禰豆子。二人はこの建物の中で偶然出会い、なし崩し的に一緒に行動することになったらしい
ククルとは『姉』繋がりと言うことでかりんとは話は弾んでいったものの、流石に妹扱いは少々文句を言いたくなりそうになるのであった
余談であるが例の銃は元々ククルの持ち物だということなのでククルに返却した

「ええと、禰豆子ちゃん、だっけ?」
「はい。かりんさん……ですよね」
「……ええと、その。……大変、だったんだよね?」
「……大丈夫です、かりんさん。確かに辛いことは沢山ありましたし、もう家族はお兄ちゃんしかいません。でも、だからってもうお兄ちゃんには何もかも背負わせたくはないんです。……鬼じゃなくなってしまったから、私はもう足手まといかもしれないけれど、それでも何かしないままよりは何か出来ることを頑張りたいんです」
「……そうなんだね。強いんだね。禰豆子ちゃんは。……『お姉ちゃん』として、かっこ悪い所見せられないかな?」
「じゃあククルお姉ちゃんがかりんちゃんに手取り足取り」
「いや、それは、その……」

竈門禰豆子の方は、全てを思い出したタイミングでこの『ゲーム』に呼ばれたとのことらしい。鬼舞辻無惨とかいう腐れ外道に兄以外の家族を皆殺しにされて、禰豆子自身も鬼にされ、兄や他のみんなのおかげで何とか正気を保ち、そして――兄たちが戦っている最中に兄の危機を察知して走り出した最中に思い出したのだ。
だが、そんなタイミングで呼ばれたのだ。彼女の心境がどのようなものなのか北条かりんには察せられるものではない。だが、妹の為に戦ってきた兄を、かれんの為に一人頑張っていたかりんとしては何かと共感できるものを感じていた
だからこそ、『妹』を持つ者として、かりんは改めてこの『ゲーム』を打ち破り、妹の元へと帰る決意を胸の内に灯す


準備を整える中、少女たちはそれぞれ思う

北条かりんは妹のため、そして今は亡き愛した男の為に

ククルは騎空団の一人として、一人の姉として

竈門禰豆子は未だ戦っているであろう兄のため



姉と妹。永遠に続く雨の中のトラワレビトたる彼女たちは、この雨曇(ゲーム)を晴らさんが為に


【北条かりん@シークレットゲーム -KILLER QUEEN-】
[状態]:ずぶ濡れ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:このゲームを止めて、生きて妹の元へ帰る
1:まずは帆高を探す
[備考]
※参戦時期はかりんルート、ゲームクリア直後から

【ククル@グランブルーファンタジー】
[状態]:健康
[装備]:ホワイトホーク@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~3
[思考・状況]
基本方針:どちらにしろこのゲームは止める
1:シルヴァ姉とクム坊の事が気がかり

【竈門禰豆子@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~3
[思考・状況]
基本方針:お兄ちゃんのことが心配
1:足手まといにならない程度には二人のことを手伝いたい
[備考]
参戦時期は原作22巻、記憶を取り戻した直後

『支給品紹介』
【ホワイトホーク@グランブルーファンタジー】
SSRククルの解放武器で、彼女が使う白亜の長銃。
ゲーム中のスキルである水属性対象の霧氷の刮目及び渦潮の攻刃の再現が可能かどうかは不明
最終更新:2021年01月28日 22:15