分からない。
いったい自分はどうすれは良いのだろうか。

あの老婆への怒りはある。
今は人間同士で争っている場合では無いと言うのに、何故こんな馬鹿げた真似をするのか。
しかし、それ以上に「どんな願いでも叶える」という言葉が頭から離れない。

ただの戯言と片付ける事はできない。
勇敢にも立ち向かった女性が殺され、その後すぐに蘇生したのをハッキリと見た。
それだけではない。
今目の前に広がる光景は、あの映画に登場した街並みと全く同じだ。
遥か昔に失われたはずの地球の文明が、見事に再現されている。
神子柴が、自分では想像もできないような「力」を持っているのは否定できない事実であった。

それで自分はどう動くべきなのだろうか。

願いを叶える為には課されたお題を達成しなければならない。
森嶋帆高を制限時間いっぱいまで足止めする。
そうすれば願いを叶える権利が得られるらしい。

しかし、それを実行に移すのには抵抗がある。
森嶋帆高の想いと天野陽菜の命を犠牲にして叶えた願いは、本当に正しいと言えるのか。
しかも願いを叶えられるのは先着で5人までだと言う。
これでは例え森嶋帆高を制限時間が過ぎるまで拘束したとしても、主催者のいる所へ辿り着けなければ願いは叶えられない。
確実に願いを叶える為には、他の参加者の妨害をしなくてはならない。
その結果、相手の命を奪うことになったとしてもだ。

けれど願いを叶えるかどうかを抜きにしても、帰還するには森嶋帆高に死んでもらう必要がある。
これでもし森嶋帆高が人を人とも思わぬ外道であれば、躊躇せず引き金を引いたかもしれない。
だが森嶋帆高が映画の内容通りの少年だとしたら、殺さなければいけない程の悪党だとは思えない。

考える事はそれだけではない。

仮にもし、願いを叶える権利を得たとして。
何を願うのが正解なのか。

仲間に聞いたらこう答えるだろう。
「あの化け物を消し去る事を願え」と。

それは自分も正しいと思う。
あらゆる手を尽くしても、倒すことができなかった怪獣王。
両親を殺し、地球を我が物にしたあの忌々しい怪物を本当に滅ぼせるかもしれないチャンス。
少し前なら迷う事無くその願いを口にしただろう。

「ユウコ、俺は……」

けど今は、どうしても“彼女”の事を考えてしまう。
死者の蘇生が可能なら、ナノメタルに侵食された最愛の“彼女”を救う事も可能なはず。

人間1人の命と、この先も怪獣王に脅かされるだろう大勢の命。
重要なのは後者なのかもしれない。

それでも“彼女”の事を諦めるなど、今の自分には出来そうもなかった。

「もしここにお前がいたら、何が正しいのか教えてくれたか?メトフィエス……」

答えは返って来ない。
縋るような問いかけは、降り注ぐ雨音に空しくかき消された。


【ハルオ・サカキ@GODZILLA(アニメ映画)】
[状態]:健康、迷い
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:どうすればいいんだ…
0:?????
[備考]
※参戦時期は決戦機動増殖都市終了後。
最終更新:2021年01月29日 12:49