「ァ……ウン、俺のヨロイはァあん……」
その男は幸運だった。
「無敵ィ」
その男はツイていた。
「素敵ィ」
その男は神に見放されていなかった。
「カ・イ・テ・キ」
その男はラッキーを取り戻していた。
降りしきる雨と高層ビルのジャングルの中に、一際異彩を放つ二足歩行の機械。
より正確には二足に別れた足部の底に車輪があり、それを用い車のように走行している。
人間のように胴があり、二つに分かれた腕と頭部が存在する。
機械の巨人、それは遥か彼方遠い惑星に於いてヨロイと呼ばれる破壊兵器だ。
「俺は……俺はァ! ラッキーだ!!」
ヨロイに仕込まれた無数の射出口から弾丸や砲弾を発射し、両の腕に装備された砲口から自らへの祝砲を放つかの如くミサイルが放たれる。
そう、これは完全復活した自らの幸運への祝杯なのだ。
「あの、アンラッキーに奪われた俺のラッキー……戻ってきている……!!」
優に180は超えた体躯、それに見合う盛り上がった筋肉を震わせ、顎が二つに割れた色黒の男は歓喜に悦んでいた。
恍惚とした表情で、涎を垂らしそうな程に口を開け目は蕩けきる。
ラッキー・ザ・ルーレット。
惑星エンドレス・イリュージョンにて、盗賊団ワイルドバンチを率いるリーダーだ。
ラッキー・ザ・ルーレットにとって運とは、特別なものであり鍛えようも磨きようもない。故に試したくなる。
何かを賭け、相手とトランプで対決するのは勿論のこと、する必要もないロシアンルーレット等は日常茶飯事だ。
そして、今日までその全てを持ち前の運を発揮し、荒くれ者共を率いるまでになった。
それが、かつてとある町を襲撃した際に遭遇したタキシードの男、夜明けのヴァンにより敗れ去り、そのラッキーは完全に奪われてしまった。
あのヴァンと会ってから、トランプでの対決に敗北し、相手は正面から撃つという自身の掟まで破ってしまい
ヨロイでの戦闘で完膚なきまでに打ち負かされ、自らのラッキーを完全に失っていた。
「だが、どうだぁ? 今日の俺は!!」
舗装された道路が罅割れ、ビルなどの建造物は瓦礫の破片へと粉砕されていく。
あの「天気の子」という映画を見せられ、奇妙なバトルロワイアルを強制された時は動揺したが
蓋を開ければラッキー・ザ・ルーレットに支給されたのは、このラッキー・ザ・キャノンだった。
ヴァンに破壊された筈だが、修復したのか動作には何の異常もない。
バトルロワイアルのルールは、森嶋帆高を天野陽菜と会わせないこと。
そして先着で5名に何かしらの願いを叶える権利を与える。さしずめ金だろう。
乗っても良いとラッキー・ザ・ルーレットは考えた。
ラッキー・ザ・キャノンがある限り、敗北などあり得ないからだ。
他にヨロイがあれば、その巨体さの為目立つはずだが、ラッキー・ザ・キャノン以外にそれらしき姿はない。
つまり、ヨロイを配られたのはラッキー・ザ・ルーレットただ一人という事になる。
生身の人間が如何な武装をしようが、ヨロイに勝てる訳がない。
無論、特殊なモーションにより空から呼び寄せることのできる特異なヨロイを持つヴァンが居る可能性も考えた。
しかし、今のラッキーを考えればいない、よしんば居たとしてこの運ならば負ける気がしない。
「ラッキー・ザ・ルーレット、完全復活だぁ!!」
やることは一つ。
この広い会場内をチマチマ森嶋帆高を探すなどまどろっこしい。
ここにいる全員を殺してしまえば、その内の一人が森嶋帆高でゲームセットだ。先着5名を争う必要もなく、何なら5名分の権利を頂いたって良い。
片っ端から、ぶっ放せば全員死ぬだろう。
「おい、お前」
「あ?」
この破壊の限りを尽くした残骸の中、一人の青年がラッキー・ザ・キャノンの真正面に突っ立っていた。
「アンタ、随分とラッキーに拘ってるみたいだな」
まるで立ち塞がるかのように、強い眼光をコックピットのラッキー・ザ・ルーレットに向けている。
「当然だ。男は、毎日がテストだ。
男は欲望に、夢に、運に、全てに自分を試される。
そこから逃げない男だけが、ラッキーを手にすることができる」
「へえ、俺もラッキーには自信があるんだぜ? どうだい、俺と運比べで勝負ってのは」
イカれてんのかこのガキ。それがラッキー・ザ・ルーレットの最初の心象だった。
「俺のこのバッグ、まだ中身も何も確認していない。この中にそのデカブツを倒せるものがあるかどうか試してみないか?」
「ククク……正気か、お前? 銃やそこらでヨロイに勝てると思ってんのか」
ガキが持っているバックに入る武器なぞ、それこそ精々がマシンガンか手投げの爆弾程度の物だろう。
到底、ヨロイに傷一つ付けられる代物などではない。
「なんだよ。運には自信があるんじゃないのか?」
だが、そのガキは挑発するように口の端を釣り上げた。
結果は火を見るよりも明らかだが、ラッキーに自信があるとなれば、黙ってはいられない。
売られた運の比べ合いは買う。そして必ず勝つ。
それがラッキー・ザ・ルーレットの掟だ。
「ガキ、名は?」
「遊城十代」
ラッキー・ザ・キャノンの砲口を十代の眼前に向ける。
「良いだろう。やってみろ。俺のラッキーを覆せるものならなぁ!!」
トリガー一つで、跡形もなく消し飛び赤黒いミンチが辺りに散らばるであろう。
「フッ……」
「なんだ? 恐怖で笑うしかないってか?」
「まさか、ワクワクしてるのさ。
この引きで、アンタのロボットをぶっ倒せるモンを引けたら面白いだろ?」
「そんなもの、あるはず―――」
十代は不敵に笑った。
「でも、引けたら面白いよな!」
十代の手がバッグから引き抜かれる。
腕の先、人差しと中の指に挟まれて引き抜かれたのは、ちっぽけなカードだった。
それを見て、ラッキー・ザ・ルーレットは思わず吹き出す。
「なんだそれは? ただの紙っきれじゃねえか!!」
分かってはいたが、このラッキー・ザ・キャノンの前では何を引こうが無意味、不幸(アンラッキー)でしかない。
とはいえ銃や刃物ならまだしも武器ですらないとは、ラッキー・ザ・ルーレットですら半ば同情してしまいたくなるほどにツいていない奴だ。
「ガッチャ! 来てくれたぜ、俺の切り札(ラッキー)!」
「ほざけぇ! アンラッキー!!」
「!?」
これ以上茶番に付き合うのも時間の無駄だ。
トリガーに掛けた指を引き、爆音と共に砲弾が放たれた。
「さーて、次のアンラッキーな奴は誰か……」
ラッキー・ザ・キャノンの砲弾がコンクリートで敷かれた道路を砕き、灰色の破片が舞い上がり巨大なクレーターを空ける。
満足そうにラッキー・ザ・ルーレットはそれを見て、新たな獲物を探そうとヨロイの進行先を変えようとして。
「待てよ」
眼前に展開されるディスプレイに表示されるのは消え去った筈の標的、その照準がロックされたままだ。
「言っただろ? 俺は切り札を引いたって、これが俺のラッキーカード。
―――E・HERO ネオスだ!」
十代の瞳がオッドアイへと変わり、巻き上がった粉塵のなかから一体のHEROが姿を現す。
白い固く締まった筋骨たくましき戦士、その相貌は地球上の存在ではなく宇宙からやってきた事を表していた。
両腕を交差させ防御の姿勢を取り十代を守る姿から、ヨロイの一撃をこいつが防いだというのを一目で理解する。
そう、ヨロイの一撃を、生身の人間が防いだのだ。
ヨロイは同じくヨロイでなければ倒せない。
それほど強大な戦力を持っているのに対し、このガキはあの妙なカード一枚で切り抜けた。
「こ、いつ……!」
ラッキー・ザ・ルーレットの脳裏をあの月夜の光景が過ぎる。
自らの誇るラッキーを凌駕し、己の全てを斬り裂き奪い去った黒のタキシードと白のヨロイを。
消し去れねばならない。理由は分からないが、あの時の運を失っていく感覚と同じものを感じる。
この不幸(アンラッキー)は危険だ。
「……俺のラッキーは……まだ、枯れちゃいない」
巡ってきた二度目の好機(ラッキーチャンス)、これは試されているのだろう。
神に、運命に、幸運に。
ならば乗り越えてやろう。今までもそうだった。常に自らの幸運を試し全てを手にしてきた。
ヴァンに敗北し奪われたラッキー、それが運命だというならば今度こそは乗り越えるまでだ。
「消え去れ! アンラッキー!!」
破壊の限りを尽くす鋼鉄の巨人を前に遊城十代はワクワクしていた。
雨の降る都市のなか繰り広げられる少年少女のボーイ・ミーツ・ガールを巡った殺し合い、
死者の蘇生を行う等神の如き力を持つ老婆、そして正しく文字通りの天候を司る神。
そのなかで、提示された生還方法が少年と少女を犠牲にすること。
今、置かれているのは最悪の状況である。それを理解できない程、十代はもう子供じゃない。
天野陽菜を見殺しにする気はない。だが、森嶋帆高を放置すれば多くの死者が出る。
森嶋帆高の気持ちは痛いほど理解できる。十代も大切な親友を助けようとするあまり、周りを見ず身勝手に突っ走り多くの仲間を犠牲にした。
幸いにして、十代は仲間を取り戻せたが森嶋帆高はどうなるか分からない。
あの映画で帆高に良くしていてくれていた須賀圭介、須賀夏美、天野陽菜の弟の凪。
彼らは紛れもなく、帆高の仲間であり大切な絆だ。
もしもこの場に居るのであれば、帆高はその仲間すら傷付けるかもしれない。
大いなる力を持つ者として、多くの犠牲を払うことは出来ない。それは生贄として捧げられる陽菜も含めてだ。
そして個人的な私情から、帆高には誰も傷付けて欲しくない。当然、帆高自身にも傷ついて欲しくはない。
かつての自分がそうであったからこそ。
だからこそ、殺し合いを止める。
それを企てた神子柴達を倒す。
同時に、予測も出来ない異常事の連続に十代は心躍らせていた。
神子柴の持つ力も、神様とやらも……そして目の前にあるこの巨大ロボも、様々な経験を経た十代から見ても初めて見るワクワクの連続だ。
大人になってから、世界は楽しい事ばかりじゃないことを知った。自分の背には重大な責任が宿り、絶対に負けられない戦いだってある。
この殺し合いだって、死んでしまうかもしれない。怖くないかと言えば嘘になる。
「消え去れぇ、居なくなれぇ、砕け散れぇ!」
それでも何があろうとも、なくしちゃいけない大切なものがある。
どんな大人になろうと決して忘れちゃいけないものが。
「アンラッキィィィ!!」
「へへっ、アンタも神子柴も、この世界に居る神様も―――ぶっ倒すことにワクワクしてきたぜ!!」
【遊城十代@遊戯王デュエルモンスターズGX】
[状態]:健康
[装備]:E・HEROネオス@遊戯王デュエルモンスターズGX
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:バトルロワイアルを止め、神子柴達をぶっ倒す。
1:この巨大ロボを倒す。
2:帆高を探す。
[備考]
※本編終了以降から参戦です。
【ラッキー・ザ・ルーレット@ガン×ソード】
[状態]:健康
[装備]:ラッキー・ザ・キャノン@ガン×ソード
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:優勝し願いを叶える
1:十代を殺しラッキーを取り戻す。
2:ヴァンもいれば殺す。
[備考]
※本編一話終了後から参戦です。
【E・HEROネオス@遊戯王デュエルモンスターズGX】
実体化させてリアルファイト可能。
戦闘方法は肉弾戦であったり、ビームとか出す。
見た目はウルトラマンだが必殺技は「ラス・オブ・ネオス」というチョップ
【ラッキー・ザ・キャノン@ガン×ソード】
ヨロイと呼ばれる巨大ロボット。
巨大な主砲があり高い火力を誇るが、機動力は低い。
最終更新:2021年01月29日 08:18