うまい棒×3、コーヒー、地図、名簿、半径100m程の首輪レーダー、そしてウサミミ少女のブロマイド数枚。
――これが、御坂美琴に与えられた支給品の全てだった。
「急に戦えなんて言われたと思ったから……何よこれ!」
美琴は怒りに打ち震えていた。
一食分にも及ばないおやつ程度の食料に、意味不明な支給品。
「ランダムなんて言っておいて、完全に人を選んでるじゃない!」
美琴には『電撃使い』という能力があり、『超電磁砲』として恐れられる程の実力を持っているが、こんなガラクタを押し付けられて不満が無いわけがなかった。
その内、明らかに使いようがないブロマイドを鞄にしまうと、美琴はもう一つの支給品を調べ始める。
「このレーダー、中心の黒い点が私ってことよね……」
自分の首輪を確認すると、そこにはレーダーの点と同じ色の首輪がはめられている。
能力で外せないか試そうかとも考えたが、下手にいじって爆発されたらいくらレベル5でも助かる見込みはない。
「私が黒ってことは赤い首輪はどれだけ化物なのよ……吸血鬼とか、冗談じゃないわよ」
彼女らの世界にも吸血鬼は存在するのだが、美琴はそんな事は知る由もない。
美琴の脳内には上条当麻や一方通行の存在がよぎるが、この会場では彼らとて黒首輪――つまり、弱者として選ばれた者達なのだ。
美琴は見通しの良い海辺で目覚めており、このままではいつ奇襲に遭ってもおかしくない場所にいる。
地図から
現在位置を把握することは困難だが、周囲を見る限りどちらかの島の端にいることは間違い無い。
最も近い遮蔽物である森の中に身を隠すようにして、美琴は移動を開始した。
―― ―― ―― ―― ――
それから10分、美琴は能力で生物の気配を感知しながら、同時にレーダーも駆使して森の中を歩いていた。
本当に吸血鬼なんて存在がいるのだとしたら、美琴の感知に引っかからない存在だって十分に考えられるのだ。
レベル5だからといって、慢心することのない美琴の姿がそこにはあった。
――その時。
美琴の索敵と、レーダーの両方に反応が現れた。
レーダーの色は赤、どうやら名簿では分からなかった首輪の色は、レーダーには反映されているらしい。
美琴は反応のあった方向から身を守るようにして木に張り付き、赤い首輪の人物を確認する。
そこには支給品のブロマイドに映っていたウサミミの少女と思わしき影があった。
辺りは暗く、影しか確認はできないが、特徴のある頭部の装飾は同一人物だと確信するには十分である。
(あの子が私以上の化物だって訳?)
写真に映っていた笑顔の少女からは、とてもじゃないが恐怖を感じることはなかった。
――あのウサミミは人外の証かもしれない、と美琴は息を呑んで目の前の影を追った。
美琴が少女を追ってから数分、急に辺りの景色が変化した。
そこはどうやら小さな集落の様で、外れにある小屋からは弱々しく光が漏れている。
変わらずレーダーは赤く点滅しており、否応もなく少女が赤首輪だと示していた。
しかし、そこで美琴は異常に気付く。
レーダーの赤い点滅と、美琴自身の黒い点滅が重なっているのだ。
確かに美琴は慎重になりながらも、10m近い距離まで少女に接近している。
だが、先程までは反応は隣り合う程度の距離を保っていた。
(え?……)
少女の影が小屋に近づき、その姿が光に照らされると、その顔がはっきりと露になった。
――否、露になったのは顔だけでなく、その首筋も同様である。
(首輪が……無い!?)
そう、ウサミミ少女の首には赤どころか首輪自体無く、参加者ではないことを物語っていた。
――ガサッ
音は美琴の脇、つまり森の茂みの中から発生していた。
――まずい、と思った時にはもう遅く、美琴が振り向いた先には大量の巨大なアリが武器を美琴に向けていた。
中心には、首輪をはめた一匹のアリ。
その首輪の色は、レーダーに映っていた者と同じ色をしていた。
(電撃で……でも首輪は赤、一発で仕留められなかったら私がやられる!)
それ以前に全方位から武器で狙われている以上、最善でも相打ちが決まったようなものである。
後手に回りたくはないが、先に動いても怪我は免れない、一種の「詰み」の状態であった。
幸いなのか、アリたちは武器を構えているだけで襲ってくる気配はない。
美琴が危険は存在なのか思案しているのだろうか。
通常ならば、このような膠着状態では話し合いが為されるものだが、美琴には一つ懸念があった。
――言葉通じるの、これ?
相手はアリである。
しかし、あの黒幕の言葉通りに殺し合いに参加している意思があるのなら、言語を理解している可能性はある。
もとより詰みの状態ならば、乾坤一擲の勝負に出てみるほか、選択肢は無かった。
「……私は殺し合いをするつもりはないわ。アンタ達、というかアンタみたいな赤い首輪の参加者がどんな存在なのか見てただけなのよ」
これは事実である。
美琴は例え赤い首輪の者を殺せば脱出できると解っていても、殺すつもりは毛頭なかった。
自分の為に人を殺す事は、美琴に一方通行と妹達のことを想起させ、嫌悪感しか抱けない。
美琴の言葉にアリ達は少しばかり武器を下げるが、まだ仕舞う様子はない。
しかし、その時美琴の方が優しく2度、叩かれた。
美琴が驚き警戒をしながら振り向くと、そこには先程まで追っていたウサミミ少女が立っていた。
少女はやさしそうな顔をキリッと力強く引き締め、右手でピースサインを作ってみせた。
美琴は状況を理解できずに困惑するが、少女は頷くとピースサインをアリ達にも向ける。
すると、アリ達は一匹、一匹と姿を消し、遂には赤い首輪のアリだけが残った。
少女はそのまま無造作にアリに近づき、その小型犬程度の大きさのアリを抱え上げる。
アリもさっきまでの剣呑な空気をすっかり収め、瞳を細めて楽しそうにしている。
「アンタ達も殺し合いはしないってこと?」
美琴がそう尋ねるとアリは頷き、まるで周囲に音符が見えるほど陽気に踊りだした。
恐らく意思が通じた事による喜びの感情表現なのだろう。
美琴は彼らを敵ではないと判断し、かねてからの疑問を口にした。
「この写真、アンタよね? なぜか私に支給されてたんだけど……」
美琴はデイバッグからブロマイドを取り出すと、ウサミミ少女に渡した。
こうして本人を目の前にしてみると、なんだか写真よりも実物の方が見た目が粗くに感じてしまう。
写真の方は紛れもない美少女なのだが、実物は目の大きさもかなり小さい。
少女は写真を受けとると、しばらく眺め、やがて首を横に振った。
どうやら写真の人物とは別人だと言いたいらしい。
すると、少女の腕に抱えられていたアリが、4本しか無い足の前足にあたる部分をせこせこと動かし、写真を要求し始めた。
アリは写真を受け取ると、今まで以上に上機嫌になり、頬を赤く染めて写真に頬ずりし始めた。
「別に私はいらないし、そんなに気に入ったならアンタにあげるわ」
美琴がアリにそう告げると、アリは感謝の意を込めてコクコクと頭を下げた。
「あ り か゛ と う」
いままで無言だったウサミミ少女は、初めてたどたどしく言葉を発した。
美琴はその素直な言葉に、少し照れくささを感じてしまう。
「べ、別にお礼なんて良いわよ。……ここから脱出するために、仲良くやっていきましょ」
そうして同盟を組んだ1人と1匹とNPCは、ウサミミ少女の先導で小屋に向かった。
そして美琴以外もう一人の参加者であるありくんは、写真を眺め、一つのことに気がついた。
その写真の背景が、どう見ても都会ではなく、島の何処かで撮られていること。
そして、自分たちがいるこの場所が、島であるということ。
この2つから導き出される答え。
ありくんはこの島の何処かにいるであろうHSI姉貴に会う事、そして一緒に脱出することを胸に誓った。
そして、小屋に向かう道中、ブロマイドにムラムラしたありくんは、ウサミミ少女の腕の中で自慰をし、果てた。
【H-8 集落】
【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康、混乱
[装備]:なし
[道具]:首輪レーダー
[思考・行動]
基本方針:生きる(脱出も検討)。
1:この子達は信用してもいいかもしれない。
2:当麻を探したい。
3:蟻……???
【ありくん@真夏の夜の淫夢派生シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品0~2、HSI姉貴のブロマイド写真
[思考・行動]
基本方針:HSI姉貴を探し、一緒に脱出したいと思っている。
1:MSK姉貴と協力しようと思っている。
2:偽物だが参加者に協力的そうなHSIさんとHSI姉貴ブロマイドは守ろうと思っている。
※『偽物だが意思を持つありくん』を100匹まで召喚できます。
※『偽物だが意思を持つありくん』は意思を持ちますが、ありくんが意思を統括しています(ありくんネットワーク)。
※『偽物だが意思を持つありくん』は一般軍隊アリ~一般大型犬並の大きさに自在に変体でき、マスケット銃や剣、盾等の武器や火を噴く個体もいます。フェニックスもいます。
【NPC】
【偽物だが参加者に協力的そうなHSIさん】
会場で生活するHSI姉貴のそっくりさん。いい奴そう。
踊るかもしれないが、錬金術も使わないし、冷奴でも筋骨隆々でもこの世全ての悪でもない。
GAME START |
御坂美琴 |
036:勝利へのV |
GAME START |
ありくん |
最終更新:2018年01月20日 15:11