【第十二話】


 【Az-side】


 ‐三年一組教室‐


 神聖なる文化祭を冒涜せんとする
 怪盗レインボー。許せません。
 私は決死の覚悟で三年一組の教室へと
 足を踏み入れました。


梓「あの、いえ、違いますって」

 「いいのいいの、可愛いんだから!」


 そしてついに、念願のファッションショーに
 出演することになりました。いえい。

 いやいやいや。

 どうしてこうなってしまったのでしょう。
 私はこんなことをしに、此処へ来たのではありません。

 憂。純ワン。ヘルプミー。
 この人を説得して、なんとかこの場を抜けだして……!


 「キミ、ジャズ研の子だよね?
  私の友達が可愛い髪型のベースの子が
  入ってくれたって、言ってたよ~」

純「え、えー、可愛いですかねえー?」

 「あっ、キミって平沢さんの妹さん?
  お姉ちゃんと同じぐらい可愛いよ!」

憂「そ、そんな私なんか……」


 逆に説得されていました。




 【Yi-side】


 ‐三年二組教室‐


 三年一組の教室は出演者の着替え用、
 ファッションショー自体は三年二組の教室で
 行われるようです。

 ということで、私と澪ちゃんは
 三年二組の教室に立ち寄りました。
 教室内はある程度混雑しています。
 私たちは廊下と反対側、窓側へと
 誘導されました。

 どうやら教室に取り付けられた二つのドアを
 出演者が通ることで、ショーを成立させるようです。
 その出演者が通る道には、
 赤い絨毯のようなものが敷かれています。

 一方窓側にはブルーシートが敷かれ、
 私たちはそこに腰を下ろしました。
 不意に、こんな会話が耳に入ってきました。


 「ねえねえ、怪盗が出たんだって!」

 「聞いた聞いた。この中にいるかもね~」


 怪盗の噂は全校生徒の間に
 広まっているようです。
 恐らく目立ちたがり屋の怪盗レインボーとしても、
 大成功の出来栄えなのでしょう。

 ここであることに気づきました。
 教室に、あずにゃんの姿が見えません。


唯「ねえ、澪ちゃん。あずにゃんはどこに……」

澪「唯がウエディングドレスで、
 私がスーツっていうのもアリかな……」


 なんて独り言ぬかしてるんですか、この子は。
 話が発展しすぎています。
 赤い絨毯を見て、式場でも連想したのでしょうか。


澪「むしろ唯がスーツ?
 カッコよくてきりっとした唯に迎えられる、私?
 ……それもアリだな」


 ロマンチックな澪ちゃんの片鱗、ここにあり。
 溜め息を吐き、妄想に更ける澪ちゃんの肩を
 揺すりました。

 我に帰った澪ちゃんは私を見て、


澪「唯、結婚しよう」


 ダメだこりゃ。


 * * *


 澪ちゃんの正気を取り戻すことに奮闘していると、
 教室に大きな声が響きました。


 「まもなくファッションショー開演です!」


 その声でついに澪ちゃんが正気を取り戻しました。
 澪ちゃんは目をぱちくりさせた後、
 辺りをきょろきょろ見ると、


澪「あれ、梓は?」


 今更かーい!


唯「それが見当たらないんだよねえ」


 かぶりを振って、そう答えました。
 実のところ何となく見当はついていますが。
 まあ、確認の必要はないでしょう。


唯「それより、始まるみたいだよ!」

澪「ん、そうみたいだな」


 観客の視線が教室の扉に集まる中、
 曲が流されました。
 割と名の知られているガールズバンドの曲でした。

 だから、めいくあっぷ!えぶりで~!

 そして二つの扉が同時に、勢いよく開かれました。


唯「……あっ、やっぱり」



 【Mi-side】


 始めに教室へ入ってきた人物に、
 私は目を見開いた。
 その姿はとても神秘的で、神々しさを感じさえする。
 私たち人間に救いの手を
 差し伸べるような存在……そう、天使。


澪「梓じゃないか」

唯「みたいだねえ」


 唯は溜め息混じりにそう言った。
 何故ファッションショーに出場しているのか。
 梓はレインボーを捕らえようと
 したのではないか。

 ……まあ、色々あったんだろう。色々。


唯「あずにゃん、可愛い~!」


 自分の名前を全力で呼ぶ声に気付いた梓が、
 こちら側に満面の笑みを向けた。

 小さな観客席からは
 力いっぱいの拍手と歓声が送られる。
 可愛いー、といった声も聞こえる。

 ……今気づいたが、梓はノリノリだ。

 梓は劇の時のように、白いワンピースを着ていた。
 丈は短すぎない膝上。黒のタイツを履いている分、
 劇の時よりは寒くなさそうだ。
 一番違う点は、背中に羽がついていないことか。

 梓は観客席一帯に笑顔を振り撒いた後、
 入ってきた方とは別のドアから
 教室をあとにした。


唯「あずにゃん、可愛かったね!」

澪「最初からファッションショーに
 参加する気だったんじゃないか、と思えるぐらいにはな。
 レインボーはどうしたんだよ」

唯「もう、澪ちゃんは真面目なんだから~」


 唯は私の肩を揉みながら言った。


澪「わ、私は後輩のためならいつだって真面目だ!」

唯「おお!」


 唯は肩を揉んでいた両手を上げ、
 本当に驚いた仕草をしてみせた。


唯「私、澪ちゃんのそういうところ好きだよ~」

澪「……そう言うこと言われると、照れる」


 唯は悪戯っぽく笑った。
 その笑顔を見た私の心臓が、どきりと大きく鳴った。
 その音が辺りに聞こえるのを恐れ、
 心臓のあたりを両手で抑える。


唯「澪ちゃん?」


 私の一番好きな笑顔、
 唯の無邪気な笑顔がそこにはあった。


唯「変な澪ちゃん」


 私は笑って誤魔化すことしか出来なかった。


 * * *


 あとから憂ちゃんと鈴木さんも
 教室に入ってきた。
 梓に巻き込まれたようだ。ご愁傷様。

 因みに二人はカボチャを
 モチーフにしたアイテムを多くつけていた。

 特に鈴木さんのジャック・オー・ランタンの
 被り物はとても迫力があった。
 というか鈴木さんの面影がどこにもなかった。
 ここは仮装パーティ会場か。

 ただ、鈴木さんは友人を
 呼んでいたようで、その友人たちからは
 大好評の笑い声が上がっていた。
 よく本人だとわかるなあ、と感心してしまう。

 なお、唯曰く、


唯「三人ともずるいよ。あんなに可愛いなんてさ!」


 だそうだ。あのジャック・オー・ランタンもか?


 他にも二年生や三年生の子が
 赤い絨毯を通っていったが、
 特に仲の良い人はいなかった。

 ただ一人、こちらに視線を向け、
 ウィンクをしてくる人物がいた。
 正確にはこちらではなく、唯に、だ。


澪「唯、知り合いか?」

唯「ううん……知らないなあ。見たことあるぐらい。
 同じ学年だけどクラス違うからね」


 と、唯も首を捻っていた。


唯「でも大人っぽくて可愛い人だったよね」


 私はその表現に賛成できなかった。
 大人っぽくて可愛い、それはわかる。
 ただ私はそこにもう一つ、
 ちょっと怖いという印象を付け加えたかった。


 * * *


 ファッションショーが一通り終わった。
 唯が世界で一番可愛いのは憂かもしれないと言ったので、
 私は憂ちゃんと唯は顔が似ていると言ったら、
 すぐに黙ってしまった。

 少し意地悪だったかもしれない。


唯「そ、それは澪ちゃんからすれば、
 そうかもしれないけど~……」


 唯は身体をくねくねさせた。
 若干俯き、上目遣いで私を見る。


唯「私はそんな、世界一可愛くなんてないよ~」


 ああ、なるほど。


澪「私の見た世界の中では、一番だよ」

唯「もう、澪ちゃんの口説き上手!」


 そう言って、唯は後ろを向いた。
 その動作が、私には照れ隠しに見えた。




 【Yi-side】


 どうしましょう。顔が熱いです。
 こんな顔、澪ちゃんに見せられません。

 見せちゃったら……?
 ああ、また熱くなる。

 恋愛感情を持ったとか、そういうことじゃありません。

 ただ、なんというか、そこまで言ってくれることが
 嬉しい一方で気恥ずかしいのです。
 私には勿体無い言葉に思えるのです。

 でもきっと、そんなこと言ったら、
 澪ちゃんはきっぱり否定してしまうことでしょう。
 ぴったりだよ、と。


唯「いやん、恥ずかしい~」

澪「えっ、なに?」


 一人悶えていると、澪ちゃんが
 怪訝そうにこちらを見てきました。
 誤魔化すように咳払いをして、平静を取り戻しました。


 ‐廊下‐


 あずにゃんがいつの間にか三年一組から
 姿を消し、おかげで探す羽目になりました。

 教室から廊下に出て、辺りを見渡しても、
 あずにゃんの姿は見当たりませんでした。
 長い黒髪のツインテール、
 まさか近くにいたら見逃すことはありえません。
 既に違う場所へと移動したのでしょうか。


唯「どうする?」

澪「移動するかってことか?
 そうだな、このまま二階の教室を
 見ていくのもいいと思うけど」

唯「純粋に文化祭を楽しむってこと?」

澪「事件が起きなければ、梓もアクションを起こさない」


 自身満々に言われたものの、
 本当にそうかわからないので、
 私は腕を組んで首を傾げました。
 すると澪ちゃんは、私の腕を引っ張りました。


澪「……私だって、唯と色々見て回りたい」


 手を口に添えて、耳打ちをされました。
 慌てて澪ちゃんの腕を振り払い、
 両手で左右の耳を抑えました。
 耳が真っ赤になるのが、自分でもわかります。


澪「……」


 私の様子に澪ちゃんは戸惑い、
 不安そうな表情を浮かべています。
 俯いてぼそっと、ダメだったかな、と
 口から零しました。

 私は左右の耳に手を被せたまま、
 思い切りかぶりを振りました。


唯「だ、ダメじゃないんだよ。
 ……あの、じゃあ。色々なとこに……一緒に行こう?」


 私の言葉を聞いた途端、
 澪ちゃんは顔を上げ、
 表情をぱあっと明るくしました。


澪「よし、行こう!
 今の私なら、なんだって出来る気がするぞ!」

唯「じゃあお化け屋敷!」


 澪ちゃんの表情が早速曇りました。


 * * *


 二階の廊下をそのまま北側に進み、
 二年生の教室が並ぶ廊下に来ました。
 そういえば二年三組のオレンジジュースも
 盗まれたと聞いています。
 だとすれば、あずにゃんもここにいるのでは
 ないでしょうか。

 いえいえ。今は、それは別です。
 澪ちゃんと二人きりで満喫するのです。

 そう思いながら悠然と歩いていると、
 背後から突然声をかけられました。
 振り向くと、正面には大人っぽい顔立ちの
 女の子が立っていました。
 髪型や服装も相まって同年代には
 思えませんが、リボンの色からわかるように
 同学年のようです。


?「また会ったね、平沢さん」


 友好的に語りかけるその人は、
 確かにどこかで会ったような気がします。
 そういえばと、一つだけ思い当たる節がありました。


唯「えーと……。あっ、ファッションショー?」

?「正解」


 そうです。彼女はファッションショーで、
 こちらにウィンクをしてきた女の子です。

 私は腕を組み、その子の名前を
 思い出そうとしますが、
 結局出てきませんでした。


唯「ウィンクしてきたよね?」

?「平沢さんが可愛かったから、ついね」


 彼女は、自分の胸に手をあてました。


姫子「私は立花姫子。二年四組」


 よろしくと言って、姫子ちゃんは
 大人っぽい落ち着いた笑みを浮かべました。
 動作の一つ一つが大人、
 そう感じてしまうような子でした。


唯「姫子ちゃんっていうんだ~。よろしく!」

姫子「ふふっ、よかった仲良くなれそうで。
 実は私、平沢さんのライブを見て、ファンになっちゃったの」


 言いながら、姫子ちゃんは
 私の頭を撫でてきました。
 ファンというより、むしろ子供にのように
 見られている気がしてきました。

 あ、これはこれで、なんだか気持ち良い。

 一方、隣の澪ちゃんは不機嫌そうでした。
 それもそうです。二人きりの文化祭巡りは
 出鼻をくじかれた形になったのですから。

 姫子ちゃんは一通り頭を撫で終えると、
 たった今初めて気付いたように、


姫子「勿論、秋山さんも凄かったよ」


 と、付け加えました。
 お願い、今の澪ちゃんを刺激しないであげて。


澪「で、立花さんはどんな用があるの」


 澪ちゃんはむすっとした声で、
 姫子ちゃんに尋ねました。

 姫子ちゃんはふーん、と呟きながら
 澪ちゃんの顔をじっくり見つめ、
 また落ち着いた笑みを浮かべました。


姫子「平沢さんが可愛かったからだよ?」


 【Mi-side】


 ‐二年三組教室‐


唯「私のことは唯って呼んでいいよ」

姫子「本当?じゃあ、唯」

唯「なーに、姫子ちゃん」

姫子「唯はギター上手いよね。
 一杯練習してきたんだ?」

唯「ま、まあね!」

姫子「へえ、偉いなあ唯は」


 ……何が偉いなあ、だ。
 こちとら偉い迷惑だ。

 私たちは何故か三人になり、
 立ち話もなんだからということで
 喫茶店を開くクラスに入った。

 三人だったので四人席を選び、
 私の正面に唯、その隣に立花さんが
 座っている。


姫子「偉い偉い」


 立花さんはまた唯の頭を撫でる。
 安易に唯の頭を撫でないでもらいたい。
 そうやりたくなる気持ちはわかるけども。

 目の前の光景を見ていても気分が悪いので、
 椅子に座りながら、教室を見回す。

 教室の中は壁に白いカーテンを貼り付け、
 黒板などが見えないようにしており、
 黒板よりはよっぽど清潔感がある。
 そのカーテンには花形に切られた紙などの
 装飾がつけられている。

 席は四人席を中心に並べ、
 二人席を空いたスペースに設置している。
 各席にはテーブルクロスが掛けられ、
 その模様は白を基調とした生地に
 小さな花柄があしらわれたシックものから、
 単なる豹柄という奇抜なものまで。
 実に幅広い。

 私たちの席には、
 白い生地に緑色の水玉模様の
 テーブルクロスが掛けられている。


姫子「ゆーい」

唯「えへへ……」


 あっ、こら!唯もあんまり照れるな。
 ……くそう、だけどそんな唯も可愛い。

 席に座る前に受け取ったタピオカは
 使い捨てのクリアカップに入れられていた。
 確かオレンジジュースもあると
 文化祭パンフレットには書いてあったが、
 売り物が書かれる看板には、
 “盗まれちゃいました”と紙が貼ってあった。
 その紙の裏には“オレンジジュース ○○円”と
 書かれていたのだろう。

 その楽観的な文面が、
 梓の憤りとはまるで対極的で
 思わず苦笑いが浮かんでくる。

 ……そういえば、梓はここに来ていないのか。

 教室中を見渡すが、
 梓の姿は見当たらなかった。
 辺りをきょろきょろ見回す私に
 気付いた唯が、首を傾げて尋ねてきた。


唯「澪ちゃん、なにやってるの?」

澪「いや、梓がいないかと思って」

唯「確かにここレインボーが出て来た店だし、
 あずにゃんがいてもおかしくないけど……いないね」

姫子「梓ちゃんって、あの後輩クン?」


 私は、立花さんが梓のことを
 知っていることに驚いた。
 が、少し考えるとそれも当然だと気付く。
 ライブで見たのだろう。


唯「うん、そうだよ~」

姫子「その子なら私たちが店に入るとき、
 ちょうど出て行ったけど?」

唯「えっ!?」

澪「入れ違い、か」


 梓の動向を全て追うつもりはないが、
 近くにいたはずのものを
 取り逃すのは、少し悔しい。
 そんな冷静な私とは違い、唯は取り乱していた。


唯「ど、どうしよう、澪ちゃん!?」

澪「落ち着けって。次の事件が
 起きるまで辛抱だって、言っただろ?」


 無意識に出た言葉が、悲劇を生むことはよくある。
 まさか今日この瞬間にそれを体験することに
 なるとは思っていなかったが。


姫子「事件?」


 ああ、今のは失言だった。
 言ってから、そう後悔する。
 てっきり事情をしった者だけが、
 ここにいると勘違いしていた。

 しかし聞かれてしまったものを
 忘れてくれと言うのは、無理がある。
 私は渋々自分たちの立場と経緯を話し始めた。


 * * *


姫子「うん、それで」


 立花さんは時折相槌を打ち、
 真剣に聞いてくれていた。

 話をしてみてわかったが、
 この人は良い人かもしれない。
 第一印象はちょっと怖い人だったけれど、
 とても真面目な一面があって、
 普通に友達になれそうだ。


姫子「……事情はわかった。
 なるほど、怪盗から後輩クンを守りたいわけだ」

澪「そうなんだ。
 そのためにも、怪盗を私たちが先に捕える」

姫子「でも、それじゃあ秋山さんたちの方にも
 危険は伴わないの?」


 私は口を噤んだ。
 なにも言い返せない。


唯「私たちは二人いるし、
 澪ちゃんは頼りになるんだよ!」


 唯は自慢げに言った。
 あれでも反論しているつもりなのだろう。
 しかし立花さんは、まるで子供を
 なだめるように言った。


姫子「向こうは三人でしょ。
 いくら秋山さんが頼りになるっていっても、
 人数は多いほうが良いに決まってるよね」


 唯は言葉を続けられなかった。
 いくら私が頼りになる人間だとしても、
 二人が三人に勝る道理はない。
 そもそも、私はそんな立派な人間じゃない。

 実際問題そうだとはわかっていても、
 こうせざるを得なかったのだ。
 だから自身の危険性を度外視していたのは
 自明でもあった。

 しかし立花さんの反応は変わっていた。
 そこで、と言って立花さんは頬杖をついた。


姫子「私たちも、三人にならない?」


 二人に微笑みかけた立花さんの提案の意味は、
 実に簡単なものだった。

 私も加えて、三人にならない?

 そう言っているほかない。
 確かに立花さんは、頼りになりそうではある。
 見た目も含めて。

 唯と目を合わせる。
 目と目で、どうするかを相談する。
 あーでもない、こーでもないと
 二人の間で綿密な会議が行われる。

 ……わけでもなかった。
 唯の目は煌々と輝いていた。
 明らかに期待していた。
 私は唯のわかりやすさに肩を落として、
 唯の期待に応えることにする。


澪「いい提案だと、思う。
 私たちも三人になれば対等だ」

姫子「じゃあ決まりね。よろしく、二人とも」

唯「うん、よろしく!」


 唯の顔が晴れ晴れと輝いていた。
 そうだ、唯はいつも新しい出会いや機会を
 求めているようなやつなんだ。
 だからこそ、こんなにも嬉しそうなんだ。

 だが私は、そんな輝く唯とは対照的に、
 陰を落としていることが自分でもわかった。


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最終更新:2013年03月16日 21:34