【第十七話】


 ‐桜が丘高校‐

 ‐二年二組教室‐


 冬休みも終わりを告げ、三学期が始まりました。
 私たち二年生は三学期になっても気楽なものですが、
 三年生の教室は張り詰めた空気が漂っていました。

 そして、一月から漂い続けていた空気は緩まることなく、二月。

 相変わらず、あずにゃんは純ちゃんと共に猫を探しています。
 文恵ちゃんも一緒に探しているようで、
 軽音部も部活の休みの日には捜索に参加しています。
 ですが、目立った成果はあがっていません。

 私は自席に座りながら、一人頬杖をつき、窓の外を眺めていました。

 この教室は三年生と同じく、二階にあります。
 ですが雰囲気には大きな違いがあり、
 それはちょうど窓から見える空にふよふよと浮かぶ、
 雲のようなものでした。


唯「チョコ、手作りの方がいいのかなあ」


 受験の悩みというものはまだ、私たちに関係のないものなのです。


 * * *


紬「市販のチョコを買って、湯煎で溶かして、
 それを型に入れて固めるだけでも十分だと思うの」

唯「それだけで?」

紬「問題は送る側の心よ~」


 私はムギちゃんに手作りチョコの作り方を聞いていました。
 ムギちゃんが言うことには、味は結局市販のものなのだから、
 心がいくらこもっているかだそうです。


紬「でも、唯ちゃんは誰にあげるの?」

唯「お世話になってる、みんなにあげるんだよ!」

紬「それって、特に澪ちゃん?」

唯「うぇっ!?」


 虚を衝かれ、うろたえてしまいました。
 ムギちゃんは口元に手をあてて、くすくす笑うと、
 いかにも愉快そうな声で聞いてきました。


紬「慌てちゃって。どうしたの、唯ちゃん?」

唯「い、いやあ、なんで澪ちゃんなのかなーって……」

紬「最近とっても仲良しじゃない、二人とも?」

唯「そ、そうかもねー……?」


 つい、目を逸らしてしまいました。


唯「でも、ムギちゃんと私も、仲良しだよねー?」

紬「当然よ。で、澪ちゃんと最近とっても仲良いよね?」


 先程ムギちゃんは、わざわざ“とっても”仲が良いと言ったのです。
 恐らく私と澪ちゃんの関係に気付いているのでしょう。
 驚異的な観察力と洞察力です、ムギちゃん。


唯「……うん、その通りだよムギちゃん」

紬「なにかきっかけとかあったの?」

唯「うん。夏に、澪ちゃんの方から“好きだ”って言ってくれて、
 それで文化祭で色々あって、今に至るんだけど……」


 しばらく言ってから、私はあることに気づきました。
 ムギちゃんが口に両手を当てて、顔を赤らめていることに。


紬「そこまで進展していたのね!」

唯「……えっ」


 完全にしくじっていました。

 どうやらムギちゃんは、澪ちゃんの只ならぬ好意には気付いていたものの、
 私と付き合う段階まで進んでいることには気付いていなかったようです。
 ものの見事に自爆してしまいました。

 ムギちゃんは他言しないと約束してくれました。
 人の隠し事を無闇やたらに言ってはいけません。



 ‐昇降口‐


 今日は部活が休みのため、
 私たち軽音部は猫探しに参加することになっていました。
 あずにゃんたちは先に行っていました。

 下駄箱で私は、不思議なものを見つけました。
 自分の下駄箱に手をかけると、そこに白い紙が挟まっていたのです。
 丁度、怪盗レインボーを思い出すようなものでした。

 しかし、他の人の下駄箱には何も挟まっておらず、
 私の下駄箱にだけ手紙が挟まっていました。
 澪ちゃんたちも訝しげにそれを眺めていました。
 私はそれを引き抜き、紙面を見ました。

 そこに書かれていた内容に、私は愕然としてしまいました。
 手から力が抜けてしまい、紙がひらりひらりと床に落ちていきました。


律「なんて書いてあったんだ、唯?」


 私は質問に答えることなく、沈黙を続けました。
 りっちゃんは落ちた紙を拾い上げ、それを読みました。


律「なんだよこれ」


 途端にりっちゃんは顔を歪めました。
 その紙を渡された澪ちゃんとムギちゃんも、
 同様の反応を見せました。

 その紙には、こう書かれていました。

 “憂さ晴らしに来ました。猫を預かっています。
  是非を言わず、お付き合いください。
  詳細は、下駄箱の中をご覧ください。”

 下駄箱の中を見ると、もう一枚の紙。
 そして、猫の写真が一枚入っていました。
 お腹から目の下ぐらいまで白く、あとは黒い。

 まさにそれは、純ちゃんの猫でした。



 【Mi-side】


 唯の下駄箱にあった二枚の紙には、それぞれ文字が貼られていた。
 文字が書かれていたという言い方では、正確でない。

 恐らく雑誌かなにかの切り抜きであろう、
 文字の書かれた紙を白紙に貼り付けてあるのだ。
 色つきのため、新聞紙ではないことがわかる。

 二枚目の紙には次のような文字が貼られていた。

 “申と酉の間、猫の歩く道を行け。”

 それは猫の誘拐犯が仕掛けてきた、明快な“謎々”だった。


律「この謎を解かないと、猫は返さねえってことか?」

唯「そういうことだろうね」

律「ふざけたこと言ってくれるもんだな……」


 律は怒りを噛みしめた表情をしていた。

 私はこの時点で既に、嫌な予感がしていた。
 一枚目の紙に書かれていた“憂さ晴らし”。
 そして、わざわざ手書きではなく、この方法を選んだ理由。

 筆跡鑑定の出来る人間がいたら別だが、
 それ以外の状況でこの方法をとる意味は薄い。
 無意味に気取って、この方法をとったとも考えられるが、
 そうなると犯人は自分に酔っている面があるか、
 この件を楽しんでいる面があるかだろう。

 私は一つ、提案をしてみることにした。


澪「一先ず今日、猫探しに参加するのはやめないか」

紬「そうね、こうして猫が誰かに捕まってる以上……」

律「いや、それ以上に問題なのが、
 今の状況じゃ犯人から一方的すぎるところだな……。
 この謎々を一つクリアしたところで、猫を返してくれるとは思わん」


 律にしては鋭い。


澪「そうだな。現時点では、犯人にルールが支配されている。
 もしかしたら謎々が百個用意されているかもしれない」

唯「ひゃ、ひゃっこ……?」

澪「そこで、ここは二手に分かれた方がいいと思う。
 謎々を解くグループと、犯人を突き止めるグループ」

紬「梓ちゃんたちにはどうするの?」

澪「このことは、鈴木さんだけに伝えよう。
 梓に伝えると、また自分が不幸を呼び込んだと思ってしまう……」


 今、梓は賢明に頑張っている。
 それは自分の力だ。他人の勝手な力で、それを妨げることはしたくない。


唯「二手に分かれるんだよね?
 私、犯人を追うよりは、謎々の方が得意かも」

律「私はどっちでもいいぞ。頭使うのは、どっちにしろ苦手だ」

紬「私も、どっちでもいいわ」


 唯が謎々を解く側に回ってくれると言ったのは、
 私にとって出来すぎたぐらい都合が良かった。
 私は目を瞑り、少し考えた。


澪「唯とムギが謎々を解いて……、私と律で犯人を突き止めようと思う」


 私の提案に三人ともが同意の声をあげる。


澪「解いた謎の正解は、私たちにも伝えてくれ。
 こっちでもわかったことは随時連絡しようと思う」


 四人の顔が引き締まったものになった。
 私が頷くと、それぞれが自分の役目を果たそうと、散開していった。


 * * *


 私はまず鈴木さんにメールを送った。
 とはいえ、こちらからの連絡だけ。返信を待っている暇はない。

 一旦私の家に寄ることを、律に提案する。
 律はすぐに頷いてくれた。駆け足で、自宅へ向かう。

 道中、律が尋ねる。


律「それでまず、どうするつもりだ」

澪「この紙を使う」


 唯の下駄箱に挟まっていた紙を見せる。


澪「この紙に貼られた紙で、ある程度犯人を特定出来ないか検討するんだ」

律「ってことは、これを一文字一文字剥がすってことか?」


 律は嫌な顔をした。
 細かいことが嫌いな律だ、それも仕方が無い。


澪「嫌ならいいんだぞ?」

律「そう言われて引っ込む私じゃねえっての!」


 律が走るスピードを上げて、私の前に出る。
 その背中は、とても頼りがいのあるものに見えた。



 【Yi-side】


 ‐昇降口‐


 私は謎々の問題が書かれた紙を、じっと凝視していました。


唯「申と酉の間、猫の歩く道を行け……って、どういうこと?」


 謎々は得意な方だと思っていましたが、意外や意外。
 まるで太刀打ちできません。
 ムギちゃんもうんうん唸ってはいますが、
 答えはなかなか出ない様子です。


和「あら、唯にムギ。なにしてるの?」


 偶然、帰宅しようとしている和ちゃんと鉢合わせました。
 和ちゃんは、私の持っている紙を不思議そうに眺めていました。


和「謎々?物々しい書き方してるみたいだけど」

唯「和ちゃん、わかる……?」

和「そうね。申と酉を猿と鳥って書かなかったことに、意味はあるの?」

唯「そんなことわかんないよー!」

和「はあ……ムギはどう思う?」

紬「干支かな、とは思うんだけど」


 確かに干支では、このように表記します。
 それはつまり、


唯「干支ってことは、申と酉の間の干支にならないと、
 私たちは謎々を解けないってこと!?」

和「……申年の次が酉年なんだけど」

唯「あれっ?」

紬「唯ちゃん……」


 こほん。咳払いを一つ。


唯「じゃあ干支じゃないってことだね!」

和「そう決めつけるのは早いわ。
 干支は暦以外にも方角を示すことだってあるのよ」

唯「そうなの?」

和「他に時間も表わせるの。ほら、丑三つ時って聞いたことない?」

唯「どこかで聞いたことあるよな……」

紬「それよ和ちゃん!」

和「えっ!?」


 ムギちゃんは突然叫んだかと思うと、
 和ちゃんに顔を近づけました。


紬「きっとこの申と酉は時間を表してるんだわ。
 申の刻は十五時から十七時、酉の刻は十七時から十九時だから、
 この文章がさしている時間はその間、“十七時”の周辺だと思うの!」

和「なるほど……それならこの漢字を使った意味がわかる」


 ムギちゃんの名推理が炸裂しました。
 現在時刻は十六時。あと一時間はあります。

 あるいは、既に指定された時刻に突入しているのかもしれません。
 十七時ちょうど以外は認めないといった、
 厳しい時間制限がないことを祈るばかりです。


唯「残るは猫の歩く道だね!」


 猫の歩く道と聞くと、狭い道を想像できます。
 ですが狭い道はどこにでもあり、到底探し切ることは出来ません。


和「これもなにかの言い換えとみるべきね。
 ……言っておくけど唯、猫は干支にないからね」

唯「それぐらいわかるよ!」

紬「猫、猫、猫……梓ちゃん、大丈夫かな」

唯「純ちゃんと文恵ちゃんが一緒のはずだから、大丈夫だよ。
 でも、猫の歩く道かあ……走ったらダメなのかな?」

紬「うーん、もしかしたらそれも暗号を解くキーワードなのかも」

唯「“猫”と“歩く”がキーワード、つまりCat WalkがKey Word。
 ……なんちゃって~」


 私が丁寧な発音で冗談をかましたにも拘わらず、
 二人の引き締まった顔は一つも緩まりませんでした。
 それどころか和ちゃんは目を見開いていました。


和「唯。今言ったこと、もう一度言って」

唯「えっ、聞こえなかったの~?」


 それなら冗談に無反応でも仕方ありません。
 しょうがないなあと呟きながら、さっきの言葉を繰り返しました。


唯「“猫”と“歩く”がキーワード、つまりCat WalkがKey Word。
 ……再びなんちゃって~」

和「それよ、唯!」

紬「唯ちゃん凄い!」

唯「え~、今の冗談そんなにレベル高かったかな~?」

和「……冗談言わないで」

唯「ええっ!?」



 ‐体育館‐


和「ここがキャットウォークって呼ばれる場所よ」

唯「へえ、キャットウォークっていうんだ」


 そこは体育館の左右の、ちょっと高いところに
 取り付けられた細い通路でした。


和「似たものにギャラリーと呼ばれるものもあるんだけど、
 厳密な違いは良く知らないわ。
 でも、この学校のキャットウォークといわれたらここでしょ」


 早速、なにか異常はないか目を走らせて、探し始めました。
 異常はすぐに見つかりました。

 紙が一枚、通路の中程に落ちていました。
 私は急いでそれを拾い上げました。

 “おめでとうございます。
  後日も伺いますのでよろしくお願いいたします。”


紬「まだ終わらないってことなのね……」

唯「……そうみたいだね」

和「ねえ、二人とも。一体これはなんの遊びなの?」


 和ちゃんは眉間にしわを寄せて、尋ねました。
 私はムギちゃんをちらっと見た後、事情を説明しだしました。



 【Mi-side】


 ‐秋山宅‐

 ‐澪の部屋‐


 メールの着信音が鳴った。
 どうやら唯とムギは和に協力を仰ぎ、
 そして答えに辿り着いたらしい。
 しかしそこに犯人はいなく、後日同様の謎々を出すという。

 鈴木さんからの返信もきた。
 梓には黙っておいてくれたらしい。

 一方、私たちの作業も終盤に差し掛かっていた。
 全ての文字が今、剥がされようとしている。


律「……これで、最後だ……」


 律が慎重に最後の一枚を剥がす。
 ネットで調べたのりの剥がし方を参考に、律は手をかけた。
 そっと、文字が剥がされる。熱くもないのに、汗が一筋に垂れる。


律「……よし」


 作業は終了した。床には剥がされた文字が散らばっている。


澪「お疲れ様。一旦、飲み物を取ってくるよ」

律「おう、サンキュー」


 律は一仕事終えたということで、溜め息を吐いていた。

 しかし私は、内心非常に焦っていた。
 その文字は雑誌から切り取られたものだと推定されていたが、
 それは的中している。

 私を追い込んでいたのは内容だった。
 恐らく、その雑誌の内容は……。


 * * *


 麦茶をグラスに入れ、部屋に持ち込む。
 それを手渡すや否や、律はぐいと一飲みする。


律「やっぱこういう細かい作業には向いてねえわ」

澪「私も一人でやっていたら、多分嫌気がさしてたよ」 

律「澪でもそれなら、私はてんでダメだったろうなあ。
 ……さて、早速わかることはないか調べてみようぜ」


 律は床に散らばった紙片をかき集める。
 それは雑誌の切り抜きなので、
 文字の面の裏側には当然別の内容の文字が書かれている。

 律はそれを見るため、集めた紙片を裏返した。


律「これで全部だな」


 律は顎に手をあてて、唸った。


律「んー……なんかジャンルが統一されてるよな」


 私と同じことに気付いていた。
 そしてそれは、私の嫌な予感に直結するものだった。


澪「私も思ってた。律、ちょっと言ってみてよ」

律「そうだな、この雑誌は“映画関係”のものじゃないか?」

澪「やっぱりな、私も全く同じことを思っていた」

律「おっ、じゃあ今回の私の推理は当たりか~?」


 律は悪戯っぽい笑みでお茶らけて見せた。
 しかし私は苦い笑顔しか作ることが出来なかった。

 私の嫌な予感は刻々と、現実のものへ姿を変えようとしていた。


 * * *


 外はすっかり暗くなっていた。
 律が家に帰り、残された私は一人で考え事をしていた。

 まだこの段階で決めつけるのは、良くない。
 確定したわけではないのだ。
 私は今後の行動指針を立てるべく、もっと深く考えに耽ることにした。

 不意に、唯の笑顔が思い浮かぶ。
 次の瞬間、唯の顔から笑顔が消えた。
 その向かいにいるのは私ではなく……、梓だった。



 ‐外‐


 次の休日、私と律は自転車を走らせていた。
 身を切るほどに冷たい空気は、自転車を走らせていると顕著だ。
 真夏の、汗だくの自転車というものも考えものだが、
 どちらにしろこの時期の自転車は少々辛い。


律「この角を右だな?」

澪「ああ」


 私たちは図書館に向かっていた。
 それも最寄りのものではなく、少々遠くにある図書館で、
 最寄りの図書館より規模が大きい。

 信号が赤に変わった。
 ブレーキをかけ、横断歩道の手前で止まる。
 目の前の車道をいくつもの車が走り抜けていった。


律「……澪、本気なのか?」

澪「当たり前だろ」

律「確かに図書館には雑誌が置いてあるし、
 規模の大きなものなら量もあると思うけどよ。
 だからってこの紙片から雑誌を特定するなんて、気が遠くなる話だぞ」

澪「律がいるから、少しはマシになるんだろ?」


 律は首の後ろを掻いた。


律「……あーあ、どうせなら謎解きの方してれば良かったぜ」

澪「今更なに言っても遅いぞ。
 それに、唯と律じゃあ謎解きは難しいだろうしな」

律「なんで唯と私なんだ?ムギはどうなんだ?」

澪「……唯はこの件と距離を置かなくちゃいけないんだ。
 私の嫌な予感が的中していたらの話だけど」

律「嫌な予感って、なんだよ?」

澪「絶対の自信を持てたら、律にも言うよ。それまでは地道な調査だ」


 私は視線を前に向けた。目の前の信号が青に切り替わる。
 ペダルを強く踏み込んで、私はゆっくり前に進みだした。



 ‐図書館‐


 図書館には、静謐な世界が広がっていた。
 早速、雑誌が並べられている棚へ向かう。
 映画専門誌を中心に数冊手に取り、近くにあった席に座った。


律「本当にこの雑誌の中にあるのか?」

澪「……どうなんだろう」

律「お前が自信を無くしてどうする」


 律は私の肩を叩いて、にっと笑った。


律「幸い、この紙に書かれてる映画は最近上映してるもんだ。
 砂漠に落とした一粒の砂を探すよりは、マシだと思うぞー」

澪「例えが極端すぎるだろ」

律「そうか?」

澪「間違ってはいないけど……」


 律も無茶苦茶なことを言うものだ。
 尤も、初めにこの策を考えたのは私だし、自信を失ってはいけない。
 どうも雑誌を目の前にして、尻込みしているようだ。
 自身の頬を両手で叩き、自分を鼓舞する。


澪「よしっ、始めるぞ!」

律「おう!」



 【Yi-side】


 ‐平沢宅‐

 ‐キッチン‐


憂「お姉ちゃん、大丈夫?」

唯「流石に湯煎ぐらいなら私にも出来るよ~」


 本日は休日。バレンタインデー前の、最後の休日です。
 というわけで私は湯煎で溶かして固める、
 いたってシンプルなチョコを作ろうと奮闘していました。

 憂が心配そうにこちらを見ています。
 私も釣られて、憂に手伝いを乞いそうになってしまいますが、それは厳禁です。
 今回、私は一人で心を込めたチョコを作ろうとしているのです。

 チョコの溶け具合が、いい塩梅になってきました。
 しかし、ここで私は気付いてしまいました。


唯「憂ー、チョコに丁度いい型ってあるかなー?」

憂「それは作る前に聞いておこうよ、お姉ちゃん……」


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最終更新:2013年03月16日 21:44