※けいおんで紬×梓。シチュは付き合って初めてのデート


―――――――――――――駅前
梓「…」

梓「…」ソワソワ

梓(今日は、ムギ先輩との初デート)
 (私の人生で初めてのデートでもある…)

梓(何もわからなくて、着て行く服も、どれにしていいか迷って)
 (結局最近買ったものを着てきちゃったけど)

梓(おかしく、ないかな…)
 (う~…緊張する…!)

紬「おまたせ~あずさちゃん」トテトテ

梓「あ、む、ムギ先輩っ!」
 「こんにちはです!」

紬「ふふ、こんにちは」
 「待たせちゃったかな…?」

梓「あ、いえ、私もついさっき来たところです」

紬「そっか、よかった~…」

梓(やっぱりムギ先輩は余裕があるなぁ)
 (いつも通りのムギ先輩…)

梓(…すごいや)

紬「あっ、梓ちゃん」

梓「あ、は、はいっ、なんですか?」

紬「今日の服、とってもかわいいわ」
 「すっごくにあってるわよ?」

梓「へっ!?あ、あ、ありがとうございます…」カァ

梓(よ、良かった!…服、変だと思われなかったみたい)
 (…いや、でももしかしたらお世辞かもっ…!?)

紬「ふふふ…」
 「じゃあ、そろそろ」

梓「あ、は、はいっ!」
 「今日は、どこに行きましょっか…」

紬「えっとね、私いろいろ考えていたんだけれど」
 「まずは映画を見たいなって思ったの」

梓「映画、ですか」
 「いいと思います!行きましょう!」

紬「よかった!それじゃあ映画館に向かいましょっか?」

梓「はい!」

梓「…っ!」
 (しまった、さっき私の服をほめてくれたのに…私は褒めてない)

紬「梓ちゃん、どうかした?」

梓(いや、ムギ先輩の服が魅力的じゃなかったわけではなくて、むしろその逆で!)
 (ただ、言うタイミングを見失ってしまったというか…)

紬「…梓ちゃん?」

梓「はっ!え、あ、あの、す、すいません!!」
 「つい、ムギ先輩が魅力的だったもので!!」

紬「…へっ?」ドキ

梓「…あ」

紬「も、もう、梓ちゃん、そんな大きな声で…」カァ

梓「あ、ああ、す、すいませんっ…!」

梓(や、やっちゃった!始まって早々に…!)

紬「…ありがとう」ボソ

梓「ムギ先輩、なにか言いました?」

紬「ううん、なんでもないっ!」

紬「それより、梓ちゃん」
 「何か観たい映画はある?」

梓「えっと、特にはないですけど…」
 「ムギ先輩は、どうですか?」

紬「私は、気になってるものがあるんだけど…」

梓「そうなんですか!じゃあそれを観ましょう!」

紬「本当!嬉しい!」

梓「…で、何が見たいんですか?」

紬「えっとね?」

梓(ラブストーリーとかかな…?なんて…)

――――――――――――――――――――――

梓「あ、アクション映画ですか…」

紬「うん♪たまたまテレビのコマーシャルを見ていたら」
 「すごく面白そうだなって思っていたの♪」

紬「やっぱり、駄目だったかな…?」

梓「あっ、いえ!そんなことないです!」
 (ムギ先輩らしいと言えばムギ先輩らしいかも…)

紬「そう、良かった!」
 「じゃあ入りましょう?梓ちゃん!」

梓「へっ?まだ、チケット買ってないんですけど…」

紬「あ、そっか、そうよね!」
 「み、観るのが楽しみで、そのことをすっかり忘れちゃっていたわ…」

梓「ふふっ、もう、あわてないでくださいっ」
 「すいません、高校生2枚くださいっ」

「はい、お席はどちらになさいますか?」
「今の席の状況ですと、こちらとこちらが…」

梓「えっと、どうします?ムギ先輩」

紬「ん~じゃあ、こっちでいいんじゃないかしら?」

梓「そうですね、じゃあこっちで」

「かしこまりました、ではJの…」
「料金は、3000円ですね」

紬「梓ちゃん、ここは私に任せて!」

梓「えっ?あっ…」

紬「はいっ、3000円ですっ!」

「ありがとうございます、3000円ちょうどいただきます…」

梓「そ、そんな、悪いですよっ!」

紬「うふふ、いいの」
 「私が見たいって言いだしたんだから」

梓「でもっ…」

紬「梓ちゃん!先輩の言うことは、ちゃんと聞くべきだと思います!」

梓「…ぅ、わかりました…ありがとうございます」
 「で、でもっ!次からは、半分こですよ!絶対!」

紬「うんっ!わかったわ」

梓(…と言っても、やっぱり申し訳ないですよっ!ムギ先輩!)


紬「あっ!梓ちゃん、ポップコーン買わない?」

梓「良いですね!何を買いましょう?」

紬「う~ん…塩味、バターしょうゆあじ…キャラメル味」
 「どれも、魅力的ね…」

梓「ココの映画館だと、キャラメル味がおいしいと思いますよ!」

紬「へぇ、そうなの?」

梓「はい!前に憂や純と来た時に、食べたのがおいしくって」

紬「梓ちゃんっ」

梓「って、はい?なんですか?」

紬「…」
 「…他の子の話は、しちゃいけないと思いまっす」

梓「!!」キュン
 「す、すいませんっ…」

紬「…む」

梓(嫉妬、してくれたんだよね…嬉しい、かも)
 「…ムギ先輩!」

紬「…なぁに?梓ちゃん」

梓「まだ、見ていないのにこう言うのはなんだか、変な感じですけど」
 「…また、来ましょうね、何度でも」

紬「あっ…」
 「…うん」

梓「じゃあ、私キャラメル味買ってきますね!」

紬「あっ、私が出

梓「駄目ですっ!ここは、私に払わせてください!」

――――――――――――――
紬「ふふ、ここね!」

梓「はい、Jの…11番と12番とですから、ここで間違いないと思います」

紬「どっちに座る?」

梓「えっと…じゃあ…11番にします」

紬「じゃあ私が12番ね!」
 「…あ~ふかふか♪」

梓「…くす」
 「ポップコーンは、私が持っていますから」

梓「食べたいときには取ってくださいね」

紬「…」

梓「ムギ先輩?」

紬「…あ~んって、してくれないの?」

梓「そっ!それは、ちょ、ちょっと恥ずかしいです…」 カァ
 「いくら暗くなるとは言っても…」

紬「なんてね、冗談よ♪」

梓「あっ!も~!ムギ先輩!」

梓「あっ!始まるみたいですよ!」

紬「いよいよね…」
 「ちょ、ちょっとドキドキしてきちゃった」

梓「私もです…」
 (なんだかんだで、アクション映画を映画館で見るのは初めてかも…)

梓(いきなり爆発なんてされたら、びくってしちゃいそ

ドゴォーンッ!!

紬梓「「きゃ!」」ビクッ

紬梓「「あっ…」」

紬「えへへ、びっくりしちゃった」ボソ

梓「わたしも、です」ボソボソ

梓(…こういうところで、一緒の気分になれることって)
 (なんだか、ちょっと嬉しいかも)

梓(…それにしても)

紬「…おぉ」ジイィ
 「…っ!」ガタ

梓(ムギ先輩を見てるととても面白い…)

―――――――――――――

梓(そろそろクライマックスだ)
 (ただのアクション映画かと思っていたけど)

梓(結構、ドラマチックな展開なんだ、これ)

梓(やば、ちょっと涙が…)チラ

紬「…」グスッ

梓「…あっ」
 (先輩はもう泣いてるんだ、涙がこぼれてる)

梓(…拭いてあげよ)フキフキ

紬「ぁ…」

梓「…」ニコ

紬「…ありがと、梓ちゃん」ボソッ

梓「いえ…」
 (やっぱり、ムギ先輩って、可愛いなぁ)



紬「はぁ!面白かった!」

梓「そうですね、私も見入っちゃいました」

紬「最後の方、つい泣いちゃったわ」

梓「フフ、先輩、今もちょっと目が赤いですよ」

紬「えっ!や、うそ…」カァ

梓「ちょっと、休んでから次の場所に行きましょう?」

紬「う、うん、そうね」



紬「お昼は、何食べよっか?」

梓「そうですね…」
 「あ、そういえば、この辺においしいハンバーガー屋さんができたみたいです」

紬「ハンバーガー!」

梓「あっ…そういえば、ムギ先輩、ハンバーガー屋さんでバイトしてましたよね」
 「やっぱり、もうハンバーガーはいらないって感じd

紬「そこにいこう!梓ちゃん!」

梓「あ…は、はい」

梓「だいぶ、目の赤みが引けましたね」

紬「よかった~…」
 「さすがに目が赤いまま梓ちゃんの隣を歩くのはちょっと…」

梓「ふふ、私は気にしませんけど」

紬「私は気にするの~!」

梓「…そういうと思ってました」


紬「そこのハンバーガー屋さんは、どこで知ったの?」

梓「あ、それは、たまたま見た情報誌に載って…」
 「機会があれば行ってみても良いかなって思っていたんです」

紬「そう!」
 「どんなメニューがあるのかしら?」

梓「メニューまでは載っていなくて…それは私も分からないんですよ」
 「どんなのが食べたいですか?」

紬「そうね…面白いものを食べてみたいわ!」
 「こう、クレイジーで、インクレディブルな…」

梓(そ、そんなのあるかな…?)

「いらっしゃいませー」

紬「ここが、例のハンバーガー屋さんね!」

梓「はいっ!…まぁ、私も初めてなんですけど…」

紬「ふふ、良いにおい」
 「この辺に座りましょう?」

梓「そですね」
 「…これが、メニューみたいですよ」

紬「わ、すごい」
 「いろんな種類のハンバーガーがあるのね」

梓「本当ですね」
 「全体的に、サイズが大きいような…口に入るんでしょうか?」

紬「本当ね!…あ、これ見て!」

梓「どれですか?…ってわ…これ」

紬「ハンバーグが5段になってる♪」

梓(こ、この流れは…もしかすると…)

紬「梓ちゃん、これにしよう!?」

梓(や、やっぱり!)

梓「ま、待ってください、でもそのハンバーガーは」
 「大きすぎやしませんか!?」

紬「…二人で食べればそうでもないと思うけど…」

梓「…ま、周りを見るとどれも大きいんですよ…」
 「きっと、普通のサイズが、一般的なサイズよりも大きめで…」

紬「サービス精神が旺盛ってことね♪」

梓「…」

紬「…梓ちゃん」

梓「だぁーっ!わかりました!これ、これ頼みましょう!」
 「なんなら、二人分…」

紬「さすがにそれは、勿体ないわ♪」

梓「…は、はい」

紬「すいませ~ん!注文お願いしたいんですけど…」

梓(がんばれ、私の胃!)

紬「ふふ、まだかしら?」

梓「やっぱり、あのサイズですし」
 「きっと作るのも時間がかかるんだと思いますよ」

紬「…そっか」ウズウズ

梓(…こういう時のムギ先輩、子どもみたいで可愛い)
 (後輩の私が言うのも、なんだけど…)

「お待たせしましたァ」

紬「あ!」

梓「…!!」
 (そ、想像以上にクレイジーなサイズ…)

紬「おいしそうね!梓ちゃん…」
 「これ、どこから食べればいいのかしら…」

梓「と、とりあえず!」
 「ナイフとフォークを使って…」

紬「駄目よ!梓ちゃん!」

梓「えっ!?」

紬「ハンバーグはね、とりあえずかぶりつく!」
 「それが、マナーよ!」

梓「でも、こ、これっ…」

紬「はむ!」パクン

梓(かぶりついた!)
 (…でも、全然かぶりつけてないっ!)

紬「…あふはひゃん…」

梓「…やっぱり…」

紬「…」モグモグ

梓「ナイフとフォーク、使って分けましょう」フキフキ

紬「ん…っ」
 「…そうね」



紬「…こっちの方が食べやすいわ~♪」

梓「だから言ったじゃないですかっ」
 「…ぁむ」モグモグ

梓「…あ…おいしい」

紬「ね~♪」

梓「…でもやっぱり、この量はちょっと多すぎる気がします」

紬「そうね」
 「でも、気がするだけで、きっと気のせいよ!」

梓「…そう思って、食べることにします」

紬「…ぁ」

紬「梓ちゃん」ヒョイ

梓「え?ん…」

紬「ソースがほっぺについてるわ」
 「…ぁむ」

梓「わ!!!」
 「ちょ、ちょっと、ムギ先輩!」

紬「…ん~おいしい♪」

梓「…せ、先輩にはかないませんです…」


―――――――――――――――――
紬「ふぅ、ごちそう様♪」

梓「お、お腹…いっぱいです…」

紬「確かに、なかなかボリュームがあったわね!」

梓「はい…」
 「…と、当分ハンバーグは見たくないです…」

紬「んふふ♪」
 「それじゃあ、すこし休憩したらどこかに行きましょっか?」

梓「そうですね…」
 「あ、先輩、私ちょっと行きたいところがあって…」

紬「あら、じゃあそこに行きましょう?」
 「私も実は、行きたいところがあるんだけれど…」

梓「先輩が行きたいところはどのあたりですか?」

紬「私はね、えっと…あの辺で…」

梓「じゃあ私の店の方が近いんで、そっちを先に…」

―――――――――――――――――
―――――――――――――
―――――――――
―――――

その日は、あっという間に過ぎていきました。

昼食を食べ終わり

見てみたいと思っていたギターのピックを見に行ったり

新しくCDが出ていたので、それを買いに行ったり

茶葉が売っているお店に行ったりだとか

何故かホームセンターに行ったりだとか…

こんなこと、デートじゃなくてもいけるじゃないか!って思う人がいるかもしれないけれど

やっぱり、隣にムギ先輩がいるってことが、何よりも大事なことで…

ムギ先輩と一緒に歩くだけで、すべてが特別に思えるっていうか

大切な思い出って、思えるというか…

とにかく、幸せ、そう、幸せな時間って思えたんです。


だから、夕方になって、夕日が沈みかけたとき

あ、幸せな時間は本当にあっという間に過ぎるんだなって思ったんです。


私たちは、最後に、公園に行くことにしました。

梓「結構、いろんなもの買っちゃいましたね」

紬「そうね、なんだか買いすぎちゃった」

梓「ふふ、ムギ先輩はホームセンターが本当にお好きですよね」

紬「えへへ…いろいろな形のものがあって」
 「とっても魅力的なんだもの…」

梓「それは、そうかもしれませんね…」


テク、テク


梓「…今日、もう終わっちゃいますね」

紬「…そうね」

梓「…ふー…」

紬「…」
 「梓ちゃん」

梓「はい、なんでしょうか」


紬「今日…どうだった?」

梓「へ?」

紬「今日…楽しかった…かな?」

梓「どうして、ですか?」

紬「…」
 「私ね、今日が人生で、初めてのデートなの」

紬「…だから、昨日もすごく緊張しちゃって」
 「約束してから、この日まで、ずっと緊張していたんだけどね」

紬「…いろんなこと、考えたんだけど」
 「結局、どうすればいいかっていう答えが見つからなくて…」

梓「…あ」
 (なんだ…)

梓(何も分からないでいたのは、私だけじゃないんだ)

梓(ムギ先輩はムギ先輩で、いろいろ悩んでたんだ)

梓(余裕があったわけじゃなくて)
 (あの時も、ずっと緊張していたんだ…)

紬「だから、ずっと不安でね…梓ちゃんがどう思ってるのかなって」
 「…気になって気になって、結局聞いちゃった」

梓「…」
 「…ふふっ」

梓「もう、ムギ先輩ってば」
 「緊張してるのが、ムギ先輩だけだと思わないでください!」

紬「へ?」

梓「私だって、今日までずっと緊張してたんですから!」
 「現に、今日だって…緊張して、変なこと言っちゃうし、ぼーっとしちゃうし…」

梓「…わたしだって、不安だったんですから」

紬「…梓ちゃん」

梓「でも、やっぱり」
 「ムギ先輩と一緒に、今日を過ごせて、本当に幸せでした」

梓「とっても、楽しい、初めてのデートになりました!」
 「…私の、大事な宝物になりましたっ」

梓「ムギ先輩は、どうですか?」

紬「…」
 「…」

紬「私も…ものすごく、楽しかったわ、梓ちゃん!」
 「…ありがとう」

紬「ありがとう、梓ちゃん!」

梓「えへへ…」
 「よかったです!」

紬「…へへ」

梓「あっ、そろそろ、電車の時間ですね」
 「駅に行かないと…」

紬「うん、そうだね」

紬「…梓ちゃん」

梓「はい、なんでs

梓「…んむ」
 「…!」

紬「…」

紬「…は…」

梓「…ふぁ」

紬「…」
 「大好きよ、梓ちゃん」カァァ

梓「…」
 「私も、です…ムギ先輩」カァ

―――――――――――――――帰りの電車の中
カタンコトン、カタンコトン…

梓「…」
 「ふぅ…」

ヴヴ…

梓「!」
 「…」パカ


『差出人:ムギ先輩
 宛先:中野 梓
 Title:今日のこと

 今日は、ありがとう、梓ちゃん。
 とても楽しい一日になったわ。
 また、近いうちに、どこかに出
 かけられると嬉しいな。

 あ、あと、帰り道に、空を見上
 げてみて?
 今日は、月がとてもきれいだ
 から               』

梓「…」フィ
 「…あ、満月」

梓「…先輩」


梓「…」

カコカコ
 カコカコ

梓「…」
 「よしっ」ピッ

梓「…ふぅ」

梓「…」

梓「…」ナデ

梓「ムギ先輩」

梓「本当ですね」

梓「月が、とても綺麗です」



              (終わり)


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最終更新:2013年04月01日 22:49