――― 部室・夕方
さわこ「みんな~、とってもびっくりなニュースよー」

唯「どうしたの?さわちゃん??」

律「おっ!?ついに私たちの活躍が認められてメジャーデビューか~」

澪「もう…そんな訳ないだろ。いったいどんなニュースなんですか?」

さわ子「実は明日、転校生がやってくるのですッ!!」エッヘン

律「おぉっ!!それは確かにニュースだな」

紬「でも、そんなにびっくりなニュースじゃないような…」

さわ子「フフフ、びっくりするのはここからよ。なんと、その転校生は男子生徒なのですッ!!」エッヘン

梓「えっ?男の子なんですか?」

さわ子「そうよ。来年から桜ヶ丘が共学になるのは知ってると思うけど、それに先駆けて男子を受け入れたのよ。たしか、梓ちゃんのクラスに入ることになるって聞いたけど」

唯「えぇっ!?そうなんですか~、よかったねー、あずにゃんっ!!」ギュッ

梓「もうっ…いちいち抱き着かないでくださいっ!!それに…別に良くないです。」

紬「あら~、とっても楽しそうだと思うけど」

律「うんっ!!きっと文化祭やクラスの行事が盛り上がるぞー」

唯「それに、もしかしたらすっごくかっこいい男の子かもしれないよ??」

梓「かっこいい男の子ですか???」

律「おっ!?なんだ、あずさー期待してるのか??」ニヤニヤ

梓「べっ、別に期待なんかしてませんよっ!!からかわないでくださいっ!!」プンプン

律「ははっ、ごめんごめん。でも、どんな奴が転校してくるのか気になるな~。澪はどんな奴だとおも…あれ?みおー、澪ちゃーん?」

澪「だ、男子が同じ学校に…」カクカクプルプル

律「もー、なに怖がってんだよー。中学までは共学だったろー??」

澪「うぅ…怖い。もし、廊下で出くわしたら…」プルプル

紬「フフ、澪ちゃんは相変わらずね」

梓「もうっ!!みなさんっ、転校生の話題はそれくらいにして早く練習始めましょうっ!!」プンプン

唯「えぇ~、もうちょっとだけおしゃべり…?」

梓「ダメですっ!律先輩もっ!!」

律「わかった、わかった、やるよー。ほら、澪もいつまでも震えてないでベース持て」

澪「うぅ…」

律「じゃ、【ふわふわ】からで。1,2,3ッ…」

ジャカジャカジャージャカジャカジャカジャージャジャッ…

梓(男の子か…正直、少し楽しみだな)///


――― 翌日の朝・梓の教室

ザワザワ…
ダンシガクルンダッテー イケメンラシイヨー アタシガンバッチャオウカナー キャハハー

梓(みんなも男の子の転校生が来るってしってるみたい…)

憂「梓ちゃんおはよう」

梓「あっ、おはよー憂」

憂「みんな転校生の話で持ちきりだねー」

梓「うん。憂はどんな男の子だとおもう?」

憂「うーん。なんとも言えないけど、仲良くできるといいね」ニコニコ

梓「そ、そうだね…。」(憂は平常心だなぁー。私は少し浮かれちゃってるのに…恥ずかしい。)

ガラッ
純「あ、あずさーーー、ういーーーっ!!今日っ、転校生g」

梓「もうみんな知ってるよ」(すごく浮かれてるやつもいる…)

純「きっとすごいイケメンだろうなー」ワクワク


――― ホームルーム

担任「…では、お待ちかねの転校生を紹介します。」

ザワザワ…

担任「それじゃ、入ってー」

ガラッ…スタスタスタ…

担任「じゃあ、自己紹介を」

向井「This is 向井秀徳」
シーン…

梓(え???????)

憂 ニコニコ

純(何…あのメガネ野郎…)

担任「え、えーと。他には何か…」

向井「MATSURIスタジオからMATSURIセッションを捻りあげてやって参りました
This is 向井秀徳」

担任「で、では。佐賀県から転校してきた向井君です。みなさん仲良くするように」

パチ……パチ……

梓(変な人だ…)

担任「向井君、座席は中野さんの隣です。あそこのおさげ髪の子ですよ」

梓(えっ!?)

スタスタスタ…ガチャ

梓「」チラ

向井 「」ジロリ

梓「ひぃっ!」ビクビク

向井「どーも」

梓「えっ?は、初めまして中野梓といいm」

向井「家猫娘」

梓「ふぇ??」

向井「」

梓「???」


――― 1時間目・英語の授業

英語教師「おはようございます。それでは教科書45ページから…ん??」

ザワザワ… ナンカケムタクナイ?? クサーイ

純「タバコの臭い??えっ!?」

梓「えっ!?」

向井「スパー フーーい」プカーーー

梓「む、向井くん…」

英語教師「ちょ、君っ!!なんでタバコなんかっ!!しかも授業中よっ!!」

向井「あー、タバコの吸い殻が燃えている…」

英語教師「ちょっとっ!!聞いてるの!?今すぐタバコの火を消しなさいっ!!」

向井「空気清浄器のフィルターが反応してしまう?」

英語教師「は、反応してしまうのは火災報知器ですっ!!」

向井「つまらん」

英語教師「なっ!?いいから早くタバコをしまいなさいっ!!転校生だからって容赦しませんよっ。あなたは今までどんな教育を受けてきたのっ!?」

向井「脳内刻まれた、数々の汚い言葉」

英語教師「~~っ、出ていきなさいっ!!」

向井「二度と会いたくなぁ~い…you make me feel so bad…」


――― 休み時間

純「ちょっとっ!!なんなのよアイツっ!!」

梓「ふ、不良なのかな?」

憂「うーん。ちょっと変わってるとは思ったけど、不良とか悪い人じゃないと思うよ?」

純「何言ってんのよ憂っ!授業中にタバコ吸うなんて不良に決まってるじゃない。それにちょっとじゃなくて、かなり変わった奴よ」プンプン

梓「おちついて、純」

純「落ち着いていられないわよ。こちとらイケメン転校生が来るとおもって期待してたのに、実際にきたのが変人メガネ野郎だなんて」

梓「それは八つ当たりじゃん」

純「梓、気を付けたほうがいいよー。隣の席じゃ何されるかわかったもんじゃないよー」

梓「お、おどかさないでよー」

憂「あっ、向井君戻ってきたみたい」

ガラッ
向井「繰り返される諸行は無常」


――― 2時間目・歴史の授業

歴史教師「それでは、前回行った江戸幕府末期の項から始めます。教科書は…」

向井「」ガタッ

梓(嫌な予感…)

歴史教師「な、なんだ君?」

向井「時は幕末、世の中に尊皇攘夷の風が吹きあr、荒れておりました」

梓(噛んだ…)

歴史教師「…早く座れ。講義は私がする。」

向井「今の高知っ、土佐藩では、坂本龍馬という人が日本の改革をしようと、血を流さない革命をしようと、一人立ち上がり…」

歴史教師「おい、座りなさい」

向井「長州…えーー薩摩?手をがっちりと結び付け革命にいたったわけです??え~今から150年前?」

梓(なんで知識が曖昧なのに自信満々に立ち上がったんだろう…)

歴史教師「みんな知ってるよ。君は何がしたいんだ?」イライラ

向井「そういったSAMURAIの心を忘れないで俺は…」

梓(俺は?)

歴史教師「俺は?」イライラ

向井「…」

梓(俺は?なんなの??)

歴史教師「俺はなんなんだ?言ってみろ?」イライライラ

向井「アサヒスーパードライを飲みながらっ!!」プシュッ

梓(なっ!?今度はお酒!?てゆーか、俺はなんなの?)

歴史教師「おいっ!!なんでビールなんだよ!?ノリで適当にしゃべるんじゃねぇっ!!いやっ!?未成年がなんで酒飲んでんだっ!!しかも今授業中っ!!」

向井「楽しくやろうっ!中野君っ!」カンッ、ゴクゴク

梓「えっ!?」(いつの間にか缶ビールが握らされてるっ!?)

梓「ちょっ、向井君なんで、わ、私ビールなんて飲めな…飲まないよっ!!」

向井「彼女が…初めてビールを飲んだのは17歳の時でした…」

梓「か、過去形にしないでよっ!まだ飲んでないってばっ!!」

歴史教師「こらーっ!!お前ら二人なんで飲み会始めてんだっ!!」

梓「ま、待ってください先生、わたしは飲んでまs」

向井「ウィスキーと純米酒が飲みてぇ」

歴史教師「完全に酔っぱらってるじゃないかっ!!二人とも出ていけっ!!」

梓「はい…」シュン

向井「ボウルにいっぱいのポテトサラダが喰いてぇ」


――― 廊下

梓「はぁ~、授業中に追い出されるなんて初めてだよ…」シュン

向井「センチメンタル過剰ですな」

梓 ムカッ「む、向井君なんで私にビール渡したのっ!?」

向井「ロックトランスフォームド状態におけるフラッシュバック現象」

梓「何言ってんのっ!?さっきから意味わかんないよっ!!」バンッ

向井「ディスコミュニケイション状態」

梓「~っ! とにかくもうわたしに関わらないでっ!!」プイッ

向井「意味が分からん言葉で~意志の疎通を図りた~い」

梓「…」

――― 昼休み

梓 イライラ ムカムカ

憂「梓ちゃん大丈夫?」

梓「」ムカムカイライラ

憂「梓ちゃん?」

純「憂、ダメだよ。怒って頭に血が上っちゃって聞こえてないみたい…」

憂「梓ちゃん…」

純「それにしても…」チラッ

向井「ズズーーズズズッ」

純「お弁当がどんぶりの醤油ラーメンだなんて…」

向井「プシュッ プハー」

純「普通に呑んでるし…」

梓 イライラムカムカ


――― 帰りのホームルーム

担任「それじゃあ、終わります。みなさんさようなら。」

サヨナラー ネーカエリドッカヨッテク? エーケービーノシンキョクデタッテー ウソーツタヤイコー

梓「ふぅ、授業中はイライラしっぱなしだったな…気を取り直して部活部活♪」

担任「中野さん、すこしいいですか?」

梓「はい?(やな予感…)」

担任「お願いなんだけど、向井君を部活見学に連れて行ってもらえないかしら?」

梓「えっ………私がですか?」

担任「うん。中野さん、向井君と仲がいいみたいだし、先生はこれから会議だから…」

梓「ぜ、全然仲良くありませんっ!!だれがあんな奴…それに私もこれから部活がっ…」

担任「ビールのこと親御さんに黙っててあげるから?」

梓「の、飲んでませんっ!!それはあいつが…」

担任「それじゃよろしくねー」スタコラサッサ

梓「あっ…」

梓「………」

梓「はぁー、仕方ないか…なんで私が…」ブツブツ

梓「む、向井くーん、先生が部活見学に行きなさいって(さっき関わるなって言った手前、少し気まずいかな)」

向井「」シャカシャカ

梓(あれ?なんか音楽聴いてて聞こえないみたい…。あんな変な人でも音楽は聞くんだな。なに聞いてるんだろ?)ジー

向井 チラッ

梓  ビクッ

向井「貴様も聴く?」

梓「(貴様って…)は、はぁ。じゃあちょっとだけ…」

シャカシャカシャカシャカ

梓「…」

梓「……」

梓「………変な歌」ボソ

向井「!!」

梓「あ、ごめん。口に出ちゃった…(余計に気まずくなってしまった)」

梓「な、何て曲なの?」

向井「IGGY POP【Lust For Life】」

梓「へ、へ~(全然わかんない…気まずい…)」

向井「…」

梓「あっ、あの、先生が部活見学に行きなさいって」

向井「モラトリアムの地獄絵図をお前らそんなに何度も見たいか?」

梓「はぁ~、またわけわかんないことを…」

向井「…」チラッ

梓「ん?あっ、これ?私のギターだよ。軽音部なんだ。」

向井「六本の狂ったハガネの振動」スッ 

梓「えっ!?それ、向井君のギター?」

向井「I feel FENDER Telecaster」

梓「(ま、まずい。でも話の流れ的には…)じゃ、じゃあ…軽音部…行ってみる?」

向井「IKUYO」

梓「…(入部してほしくないな)」


――― 部室

梓「こ、こんにちは~」コソコソ

唯「あっ!!あずにゃ~んっ!!」ギュッ

梓「もうっ、くっつかないでくださいってばっ!」

澪「どうしたんだ梓?コソコソ入ってきたりして?」

梓「えーと…実はですね…その…」

ガラッ

向井「This is 向井秀徳」

澪「ひぃっ!!」

梓「(あ~もうっ!!)向井君っ!!ちょっと待っててって言ったじゃないっ!!」

向井「急からしかっ」

梓「だから意味わかんないってばっ!!」

律「おっ!?そいつが例の転校生か?」

唯「もしかして軽音部に入部してくれるの?」キラキラ

紬「歓迎するわ~」ワクワク

梓「ちょ、ちょっと待ってください。向井君は見学に来ただけで…」

向井「MATSURIスタジオからMATSURIセッションを捻りあげてやって参りました
This is 向井秀徳」

律「おっ!やる気満々だな」

紬「よろしくね」ニコニコ

向井「タラチネタラチネタラチネ」

唯「あははー、おもしろ~い」

澪「」プルプルカタカタ

キャッキャ ワイワイ

梓(なんでこんなに早く馴染んじゃうの…変人なのに…先輩たちも先輩たちだよっ!!このままじゃ入部しちゃう………そうだ!!)

梓「ねぇ、向井君。せっかくギター持ってきてるんだから少し演奏してみてよ?」

唯「えっ!?ギターなの?私とあずにゃんとおんなじだねー」

律「よーし、じゃっお手並み拝見と行くか。おーい澪、いつまでも震えてないで向井の演奏聞こうぜ?」

澪「うぅ…」

梓(よしっ!あんな変人に上手な演奏ができわけないっ!!放課後ティータイムには既にギターは二人いるから、お荷物なギターパートが増えるとなったら先輩たちの歓迎ムードも無くなるはず。そしたら、さすがにあの変人も空気読んで入部し難くなるっ!!……ちょっとかわいそうだけど仕方ないよね。)

向井「」ジャキン

ギュワンギンギャンギュンジャギンキンキン

梓「え…」

律「こ、こいつ…」

紬「巧い…」

澪「な、なんなんだこの音。見たところギターはフェンダーテレキャスター62年製、アンプはノーマルなマーシャルの1.2インチを使ってるみたいだけど。とてもそれだけで出る音とは思えないっ!この金属が擦れあうときに響く振動のような音っ!!エフェクターを使わずに…凄い。」

テレテテレテレテレカッテレテレテカッレテレテレテカッレテカッレテレテレテレカッテレテレテレテレテレ

紬「そして分厚い音圧を切り裂くかの如く放り込まれるカッティング。なんてキレキレなの。すごいわー」

ギューンン ギュ ヒューギュウ ジャングン ギャガ ジャーン ジャガ

律「いや、何より驚くのは、コイツ、リズム感が異常だっ!!いったいどうやってリズムとってんだ!?」

ルトゥッルトゥッルトゥッギョーンテリリッリテーギンテリ―

唯「ねー、あずにゃんあんなコード見たことないよー?おもしろい音だね~……あずにゃん??」

梓 プルプル(巧すぎる……初めの一音を聞いただけで鳥肌が立った…こんな響く演奏聞いたことない……ギター一本でこんな演奏ができるなんて…わたしの演奏とは天と地ほどの差がある。こんなの…入部を認めないわけにはいかないよ…)

唯「よーしっ!わたしもやっちゃうよー!!」ジャガジャガジャッジャー

律「おっ!!ジャムっちゃうのか?おーしっ!!ほら、澪もいくぞ!!」

澪「うんっ!!」ワクワク

紬「わたしもっ!!」

梓(先輩たち…無理ですよ。あんなすごい演奏についていけるわけが……あれ?)

ドゥルル ダーダー ドゥルル ダーダー ドゥルル トットル テリテリ ドゥルル ダーダ

梓(曲になっていく…向井君の演奏技術はずば抜けているけど、それでも音が集合していく…曲ができていく。いままで放課後ティータイムじゃジャムから曲が作れたことなんかなかったのに…向井君が引き起こしているの?ケミストリーの爆発を…)

…ジャーン

唯「スゴーーイ!!」

澪「うん…こんなの初めてだ。」

紬「ねぇ?これ、このまま楽曲にしましょう!!」

律「当ったり前だいっ!!よーし曲名は…」

向井「【Himitsu Girls Top Secret】」


紬「かっこいいっ!!」

律「うん、いいんじゃないか」

澪「『秘密がある』と『Himitsu Girls』がかかってるのか…」

唯「ほんとだっ!!向井君スゴーーイ!!」ギュッ

梓「ちょ、唯先輩!くっついちゃだめですよっ!!相手は男の子なんですよ!!」

唯「えー、いいじゃんいいじゃん」スリスリ

梓「ダメです!!離れてください!!ほらっ、向井君も何か言って!!」グイー

向井「抑えきれん性的衝動」

梓「もうっ!!」グイッ

唯「も~、あずにゃんたら…むったんにヤキモチ?」

梓「そんなんじゃありませんっ!ん?…むったん?」

唯「そうだよー、向井だからむったん!かわいいでしょ?」

梓「えっ…でも、むったんは私の…」

律「おいおい唯―、こんなおっさん面したメガネつかまえてむったんはないだろー」

澪「おい律、失礼だろ。」

向井「わたくし、井上陽水さんではございませんからね」

律「全然気にしてないぞ?」

澪「もう、まったく…」

律「まっ、とにかくよろしくな、向井。部長の田井中律だ!!」

澪「コホン、秋山澪です。よろしく。」

紬「琴吹紬です。ムギって呼んでね」

唯「平沢唯です!!よろしくね、むったん」

梓「……よろしく」

向井「This is 向井秀徳」

アハハー キャッキャ ワイワイ

梓(むったんは…わたしのギター…ムスタングの名前なのに…)


――― 数週間後・部室

唯「ねー、むったん。むったんが出してるぎゅわわわーって、音どうやるの?」

向井「1フレットから24フレットへ、この広大な思索の荒野を練り歩く」ギュワワワー

唯「スゴーイ!!さすがむったんっ」ギュッ

向井「それでもやっぱり蘇る性的衝動」

律「おーい、向井、唯ーイチャイチャしてないではやくジャムろうぜー。今日はすごいのがきそうな予感がするんだ」ワクワク

向井「真昼間っから引っ付きあってー」

唯「了解しました!!りっちゃん隊長!!」ビシッ

律「澪、ムギ、梓も準備はいいか?」

澪「いつでもいいぞ」

紬「オッケーよ~」

梓「…」

梓(向井君が入部してから軽音部は変わった…とっても良い方向に。向井君の技術指導によってみんなの演奏技術は短期間で驚くほど上達した。向井君はギターだけでなくベース、ドラムはもちろんキーボードや打ち込み、ペットボトルに砂をいれたものもまであらゆる楽器に精通していた。練習方法もジャムセッションを主体としたものに切り替えられ、限られた練習時間の中で作曲と練習ができる効率的なものになった。そして…)

唯「りっちゃ~ん、オカズ入れるならもっと凄いのいれてよー」プンプン

律「言ったなー!みてろよー、ついてこれるかー」ドラドラドラッ

梓(唯先輩と律先輩がびっくりするほど真面目に練習に取り組むようになった。澪先輩とムギ先輩も技術、モチベーション共に上がってるし、放課後ティータイムは凄いことになるかもしれない。ただ…)

ギョーギョギョーギョーギョギャンギャンギャン テレッテレッボボボボンギュワワーン…

梓(ダメだ…ついていけない。)ギュイーン

澪「どうだ!!」ボボンボボボ

紬「~♪」テレテレテレテレ

唯「まだまだ~」ギュンギュンギュンギュン

向井「SIGEKISIGEKISIGEKISIGEKIが欲しくて堪らんの」ギュワギュワギュワギュワンンンン

梓(わたしだけ、みんなと足並みがそろわない…同じように練習してるのに。みんなと音が作れない…私の音じゃ作れない…全然響いてないよ…)

ジャーン…

律「よーし、こんなもんだろう。しかし、なかなかうまくいかないなー」

澪「当たり前だろ。最初の時みたいにポンポン曲が作れたら苦労しないって」

梓「…」

紬「でも、初めてのジャムは気持ちよかったわ~」

梓「…」

律「うん、あの時は何か違ったよな!」

梓「…」

唯「なんでだろうねー」

梓「あ、あのっ…」

澪「ん?どうしたんだ、梓?」

梓「わたし、軽音部やめますっ!」

唯・澪・律・紬「!!!」

向井「俺は動揺抑えきれん」

唯「な、なんでそんなこと言うの?あずにゃん?」オロオロ

澪「じょ、冗談だよな梓?」

梓「もうっ、冗談じゃこんなこと言いませんよ。本気です。」

紬「梓ちゃん…なんで?」ウルウル

梓「あっ!ムギ先輩泣かないでくださいよ。ほらっ…えーと、私、最近なんか邪魔してる感じだし。気にしないでください。」

律「邪魔?何言ってるんだよ。梓が邪魔になってるわけないだろ」

梓「その…ほらっ、ジャムる時とかわたしだけみんなについていけなくて邪魔じゃないですか。現に…一番初めのジャムセッションとか私がいなかったから、みんな凄く良かったみたいじゃないですか。わたしがいないほうが良い曲つくれるかなーって」

律「おまっ!そんな風に考えてたのかよ。そんなわk」

梓「それにっ!!」

梓「…わたし、向井君キライだしちょうどよかっ…あっ」ポロポロ

唯「あずにゃんっ!!」

梓「じゃあ、さようなら」バタン

唯・澪・律・紬「……」

紬「梓ちゃんがあんなふうに思ってたなんて…」

澪「最近の梓、塞ぎ込んでた…どうして気づいてあげられなかったんだ…」

唯「みんなっ、はやくあずにゃんを連れ戻しにいこうよっ!」

律「そうだっ。落ち込んで場合じゃない。早くみんなで…あれ…向井は?」

唯「あずにゃんのギターもなくなってるよー」


――― 公園

梓「はぁ~、もうちょっとスッキリと出てきたかったな…なんで泣いちゃうかなー。前々から考えてたことじゃない。まっ、いっか。これからは一人気ままに音楽しよっ。一人でも演奏する術はたくさんあるもん!!まず、パソコン買ってー、録音機器も充実させなきゃ、打ち込みもいいな、ネットにできた曲投稿しちゃったりして、それから……ヒグッグスッ
…なんで泣いちゃうかな…」ポロポロ

ポツンポツン

梓「はは…雨降ってきちゃった。こんな日はとことんだな……ん?」

向井「」

梓「む、向井君!?」

向井「」スッ

梓「何これ?…飴玉?いらないよ。もう、何の用なの?」

向井「」スッ

梓「いらないってば!」

向井「」スッガチャ

梓「だから、いらないってば…あれ?これわたしのむっt…ムスタング。ありがとう届けてくれたんだ。ちょうどよかったよ、これから一人で作曲活動をしy」

向井「これから曲を作るっ!!」

梓「えっ?」

向井「これから曲を作るっ!!手伝ってくれんかね?」

梓「な、なに言ってるの。相変わらず意味わかんないな。私は一人で作曲するって言って」

向井「梓ちゃんっ!!」

梓「」ビクッ

向井「頼むわ」

梓「…わかった」

向井「すまんね」スッ

梓「飴玉…もらうね」


2
最終更新:2013年04月14日 22:38