●銀座線浅草駅⇒東京スカイツリー間


律「……」

澪「……」

律「ついてくんな」

澪「はあ!? 私はスカイツリーに行くんだ! 律こそ帰ればいいだろ!」

律「なんでだよ! 私が行きたくて行くんだっての!」

澪「はぁーこんな事なら今日はやめて改めて幸達と来ればよかった」

律「だからついてくるなよ!」

澪「この道が一番近いんだからしょうがないだろ!」

律「……ふんっ!」

澪「ふんっ!」


●東京ソラマチ 1F East Yard ソラマチ商店街

菖「おおー色んなお店があるね」

幸「カフェに雑貨にカレー屋もあるよ」

晶「うへーすげえ人ごみ」

菖「お昼過ぎちゃってるしどこかで食べない?」

晶「そうだな……あ、ケンタッキーがあるぞ」

幸「ここまで来てケンタッキー……」

菖「じゃあ晶はケンタッキーね。私達はクレープ食べるから」

晶「いやケンタッキー食べるなんて一言も……ちょ、まって」


●東京ソラマチ 1F West Yard ステーションストリート


唯「はぁー美味しかった。ムーミンカフェにして正解だったね」

憂「内装も可愛かった~」

和「でもちょっと割高よね」

唯憂「和ちゃん……」

和「え? ……あら、あれって律じゃない?」

唯「えっどこどこ?」

和「ほらあれ」

唯「あっほんとだ! りっちゃーん!」

律「え? おおー唯!」

唯「りっちゃんも来てたんだ~」

憂「こんにちわ律さん」

和「久しぶり」

律「和も憂ちゃんも久しぶりだなー!」

唯「りっちゃん1人? 澪ちゃんは一緒じゃないの?」

律「え゛っ? いや……う、まあ1人かなー……」

唯和(……これはケンカしたな)

唯「ケンカはダメだよりっちゃん!」

和「だめよ唯、もしかしたら澪の方が悪かったって可能性もあるでしょ」

律「お前ら酷い言い草だな……」

憂「そうだよお姉ちゃん。律さんは天望デッキ行くんですか?」

律「天望デッキかー……せっかく来たんだし行っておくのも悪くないな。てか行きたくなってきた」

唯「だよね~一度は昇ってみたいよねえ」

憂「よかったら一緒にどうですか?」

律「えっいいの?」

和「ちょっと待って。ねえ律、澪もここに来てるの?」

律「え、は? し、しらねーし」

憂「そっか……私達だけで天望デッキに行ったら澪さんに会えないかもしれない」

唯「それは困ったね」

律「いや、澪が来てるなんて一言も言ってないんだけど」

唯「……」

律「だからさ、お邪魔じゃなかったら私も一緒に行きたいなーって」

和「邪魔なわけないでしょ。ただ……」

唯「あー澪ちゃん発見!!」

律「!!」ピュー

憂「えっ澪さん?」

和「どこ?」

唯「なんちゃってー……ってあれ? りっちゃんは?」

和「見当たらないわ」

唯「あちゃー、どうしよう」

憂「お姉ちゃん……」

和「やっぱり澪も来てるみたいね。スカイツリーに着いてすぐにケンカしたのかしら」

憂「どうする? とりあえずチケット発券しておく?」

唯「そだね~」

和「チケット発券したらそのままエレベーターに乗るんじゃなかった? それに時間指定も……」

憂「大丈夫だから! 今回は大丈夫だから!」


●東京ソラマチ 3F West Yard ソラマチ タベテラス(フードコート)


さわ子「……もぐもぐ」

さわ子「……」

さわ子「ビビンバおいしいぃ……」

さわ子「モグモグ」ポロポロ

さわ子「……ごちそうさま」

さわ子「多少気が紛れたような気がしなくもないわ」

さわ子「やっぱり天望デッキ行ってみようかしら……気も紛れそうだし」


●東京ソラマチ 1F ソラマチ広場


澪「何で私が回り道しないといけないんだ……バカ律」

菖「あっ澪ちゃん!」

澪「えっ?」

菖「やほー」

澪「あれ? 今日はスタジオ行くって言ってなかった?」

幸「そのはずだったんだけど晶のせいで」

晶「仕方ないだろ」

菖「ところで澪ちゃん」

澪「ん?」

菖「りっちゃんは?」
幸「りっちゃんは?」
晶「律は?」

澪「う……」

澪「り、律なんて知らない! あんな馬鹿……」

晶菖幸(……ケンカしたな)

菖「じゃありっちゃんは来てないの?」

澪「それは……」

幸「来てるんだ?」

澪「た、多分」

菖「んー、とりあえず私達と一緒に見て回る?」

澪「いいのか?」

幸「もちろん」

晶(……そういや澪って男に人気ありそうだよな。彼氏とかいたことあるんだろうか)

晶(普段はそんな事聞く機会なかったからな……参考にするか)

菖「それじゃいこっか!」

幸「人がいっぱい」

菖「さすがスカイツリーだね」

晶(こいつらの前でそういう話すると絶対いじられるからな……よし)

晶「澪、ちょっと」コソコソ

澪「なに?」

晶「ちょっとこっち」

澪「え、でも菖と幸が……」

晶「いいから」

澪「う、うん……?」

晶「……」

澪「2人とはぐれちゃうんじゃないか?」

晶「いいんだよ、後で追いつけば」

澪「何か見たいものでもあったの?」

晶「と、ところで澪はさ……」

晶「か、彼氏っていたことある?」

澪「…………へ?」

澪「な、ど、どうしていきなりそんな……////」

晶「いやちょっと……」

澪「……い、いないけど」

晶「1度もない?」

澪「な、ないけど」

晶「なんだ……はぁ」

澪「何だその溜息」

晶「よくよく考えるとお前らってそういうのとは無縁そうだもんな」

澪「……」イラッ

澪「そ、そんなことないぞ!」

晶「そうなのかぁ?」

晶「……あー言われてみればそうかもな。律とか」

澪「えっ!?」

晶「あいつ誰とでもすぐ仲良くなるし明るいからな」

澪「そ……そ……」

晶「今あいつ1人なんだろ? ナンパとかされちゃってたりしてな」

澪「ッ?!」

男1「あっスカイツリーで一番かわいい人発見!」

女「笑」

男2「どうもー」

男1「スカイツリー昇りました? どうでした?」

晶「ちょうどあそこにいる奴らみたいなのがさー」

澪「」ブルブル

晶「なーんてそんな事万に一つもありえね――」

澪「わ、私律探しに行くっ!!」ピュー

晶「えっ……えっ!?」

晶「……いっちまった」


●東京ソラマチ 2F East Yard ファッション&雑貨



直「――というわけで学園祭前あたりから突然抱きつかれるようになって」

紬「あの梓ちゃんが……うふ、ふへへ」

菫「お、お姉ちゃん前見て歩かないと危ないよ!」

紬「可愛い後輩に抱きつくのは軽音部の伝統……その通りよ!」わきわき

菫「お姉ちゃん……?」

直「……」ササッ

菫「え、ちょ、だめだよこんな所で! 直ちゃん助け――いない!?」

紬「えーいっ!」

菫「あーっ!」

直(……本屋もあるんだ)

直(このフロアは服とか雑貨が多いなあ)

直(そういえば弟達の靴下に穴空いてたっけ)

直(でも子供用の靴下が売ってるようなお店はなさそう……)

紬「そういうのは別の階にあるかも」

直「!?」

紬「後で行こうね」

直「は、はい……あれ、菫は?」


●東京ソラマチ 1F


菖「わーあそこのカフェの中犬がいるよ!」

幸「愛犬とくつろげるドッグカフェ、だって」

菖「へぇ~。澪ちゃん見てよあそこかわいーよ……あれ、澪ちゃんは?」

幸「さっき晶がどこかに連れて行ったよ」

菖「え!? なにやってんの晶は~」

菖「……てゆーか気付いてたのに止めなかったの?」

幸「なんだか面白そうだったから」

菖「それはそうかもしれないけど……」

菖「……」

幸「ごめん」

菖「それはいいんだけどさ、うーん……」

幸「どうしたの?」

菖「最近の晶って張り切ってるよね。今日だってさ」

幸「あ、うん」

菖「振られちゃったけどまだまだ先輩のこと諦めてないし、それに……」

菖「本当にプロになるつもり……なんだよね」

幸「うん」

菖「いざプロって言われると流石に色々考えちゃうなぁ」

幸「不安?」

菖「そりゃあねー。幸はどうなのよ?」

幸「……ちょっとは」

菖「そっか」

幸「だけど不安よりも嬉しいって気持ちの方が強いかも」

菖幸「3人でバンド続けられるし!」

菖「……だよね!」

幸「うんっ」

菖「よし! こうなったらとことん晶に付き合ってやるかー!」

幸「おー」


●東京ソラマチ 2F Tower Yard フードマルシェ


晶「おい待てって澪!」

  「はい?」

晶「あ……すみません人違いでした」

  「どうしたの?」

  「ううんなんでもない。いこ」

晶「……」

晶「今の人澪にそっくりだったな……眼鏡してたけど」

晶「あれ……じゃあ澪はどこいったんだ?」

菫「こっちは食品関係のお店があるみたい」

直「フードマルシェって食品売り場のことなのかな」

紬「マルシェはフランス語で市場っていう意味だから」

晶「ん?」

紬「あら?」

晶「よう」

紬「晶ちゃん! わぁぁこんな所で会えるなんてすごいね!」

菫「!!?」

菫(この怖そうな人とお姉ちゃんが知り合い!?)

紬「こちら妹の菫とそのお友達の直ちゃん」

菫「こ、こんにちは……」
直「こんにちは」

晶「あ、ども」

晶(すげー、思いっきり外人なのに思いっきり日本語だ)

菫(お姉ちゃんのお友達……だよね。でも……)

晶「?」

菫(この怖そうな人が……? お姉ちゃん大丈夫なのかな……)

紬「晶ちゃん1人なの?」

晶「いや、菖達と来てたんだけど澪とも会ってな。色々あって澪を見失っちゃってさ」

紬「澪ちゃんも来てたんだ~。じゃありっちゃんも?」

晶「来てるらしいけどあいつらケンカしてるっぽいぞ」

紬「えっ!?」

晶「どうせつまらない事でケンカしたんだろうけどな」

晶(ムギか……綺麗だし物腰柔らかいし先輩もこういうのがいいんだろうか)

晶(あと髪も長いしな)

紬「りっちゃんと澪ちゃんがスカイツリーでケンカ……ブツブツ」

紬「ブツブツ……そんな二人が地上数百メートルの天望デッキで仲直り……ナイスボール!!!」

晶「」ビクッ
直「」ビクッ

紬「それは一大事ね! 二人が心配だわ!」

晶「思いっきりニコニコしてんじゃねーか」

紬「私今から澪ちゃんにチケット渡してくる! 丁度1枚余ってたから」

晶「いやそんな事システム上できな――」

紬「いいの! できるから! 二人ともゴメン、ちょっと行ってくるね!」

菫「え、あ、お姉ちゃん!? ちょっと待って! ああ……」

直(琴吹先輩って変わった人だなぁ……)

晶「……」

菫「あ、あのっ!」

晶「ん?」

菫「ええと、お嬢様はああいう所もあったりして、純粋な人だからもしかしたら(貴方の様な)人に騙されやすいかもしれなくて……だから……!(お姉ちゃんに酷い事だけは……!)」

晶「あー、ムギは(唯と比べて)すごくしっかりしてるからその辺は大丈夫だと思うぞ。楽しくやってるみたいだし心配するような事はないと思う。もしあったとしても同じサークルのよしみで助けてやるよ」

菫「あ、えっと……ありがとうございます」

菫(なんだか思ってたよりいい人だった……!)

菫「ってお姉ちゃん追わなきゃ! お姉ちゃんどっちに行ったんだろう」

直「下に行ったよ」

菫「よし行こう直ちゃん! あ、あの失礼します!」

晶「あ、うん」

晶「……」

晶「ムギのやつマジでお嬢様だったんだな……」

晶「さて、もう少しこの階で探すか」

菫「あれぇ……どこ行っちゃったんだろう」

直「電話してみたら?」

菫「そうだね」

  「Excuse me」

菫「へ?」

  「Chotto iidesuka?」

菫「わ、私ですか!?」


●東京ソラマチ 1F


澪(いくら律でも見ず知らずの男について行くなんてありえないよな……?)

ヴーーーー ヴーーーー

澪(でも万が一……なんて事になったら)

ヴーーーー ヴーーーー

澪(ナンパされて、そのまま2人で過ごして……いや、相手が1人とは限らないんじゃないか?)

――――――――――――――――――――――――

男1「あっスカイツリーで一番かわいい人発見!」

律「笑」

男2「どうもー」

男1「スカイツリー昇りました? どうでした?」

――――――――――――――――――――――――

澪(そ、そのまま○○に連れて行かれて○○されて○○なんてことに……?)

澪「うわあああぁーー!?」

  「!?」

ザワッ

澪「あ……////」

澪(お、おちつけ私……)

澪(まずは律が向かった1階のWest Yardに行ってみるか。電話は……気まずいし)

  「あ……の」

  「Where is――」

澪(あ、綺麗なブロンドの子だなぁ……可愛い。さすが東京の新名所だなー海外の人も見に来てる)

澪(どこの国の人なんだろう)

  「Ticket uriba dokodesuka?」

菫「あ、あ、あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ!」

澪「」ガクー

  「OMG……」

菫「ど、どうしよう直ちゃん!」

直「えっと……」

  「OK、OK……umm……ticket uriba sagasitemasu」

菫(ええー!? 英語喋れないって伝えたはずなのに!)

菫「あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ!」

  「OK……SKYTREE ni noborutameno……」

菫(ええぇぇ……あ! 英語が理解できないって言った方がいいのかな? ええと……ええと)

菫「な、直ちゃぁん……!」

直「あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ」

菫「ええーーっ……えっとえっと……!!」

澪「……あの」

澪「Ticket uriba ha 4F desu」

  「Oh~ thank you so much!」

澪「い、いえ……」

菫「あ、あのっ、ありがとうございます~!」

澪「ああ、いや、たまたま聞き取れただけだから」

菫「本当に助かりました!」

澪「いえいえ。それじゃあ」

菫「……かっこいいなぁ」

直「あの人どこかで見た気が……」

菫「あれ? そういえば私も……」

菫「……はぁ、英語もっとちゃんと喋れるようになりたいなあ。せめて意味が分かる位には」

直「私さっきの質問ならわかったよ」

菫「え!? どうして言ってくれなかったの!?」

直「場所知らなかった。あと英語で伝えられない」

菫「ああ……」

菫「もっとしっかりしなきゃなぁ」

直「?」

菫「だって来年になったらきっと私か直ちゃんが部長になるんだよ?」

菫「もし外国人の後輩が出来たら……」

直「そうそうないと思うけど」

菫「それだけじゃなくて……」

直「私達が上級生……部長」

菫「うん、最近考えてるんだ。梓先輩や憂先輩みたいな先輩になれるかなって」

直「そっか……来年は私達が」

菫「うん」

直「先輩たちいなくなっちゃうからね……」

菫「うん……」


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最終更新:2013年05月07日 23:52