●東京ソラマチ 1F ハナミ坂

澪「……」

澪「ふぅ」

澪「……き」

澪「緊張したぁ~……」

澪「こういう時律ならすんなり会話できるんだろうけど……」

澪「……」

澪「いやないか。まず英語が聞き取れないだろうな」

澪「……」

澪「ぷっ」

澪(……しかし)

澪(小中高大とずっと一緒なんだよな)

澪(腐れ縁ってやつか)

澪(思い返せばいつもいつも……まあ助けてもらった事もあるけど)

ヴーーーー ヴーーーー

澪(けどこの先はそうもいかない)

ヴーーーー ヴーーーー

澪(こういう風に遊ぶ機会も減っちゃうのかな。でも今はもう少しだけ……)

澪(って今はちょっとアレだけど)

澪(…………。仕方ないな)

  「澪ちゃーん!」

澪「え?」

唯「おーい」

澪「唯! 和に憂ちゃんも!」

唯「やっぱり澪ちゃんも来てたんだ」

澪「やっぱりって?」

和「さっき律に会ったのよ」

澪「律に?」

澪「律どこに向かった?」

唯「天望デッキかなぁ? りっちゃん行きたいって言ってたよ」

澪「はは……言う事コロコロ変わる奴だなぁ」

澪「……私も天望デッキ行ってみるか」

唯「おおっ?」

和「あら」

憂「ふふ」

澪「?」

和「それがいいと思うわ」

澪「ごめん、もっとゆっくり話したいんだけどな……」

和「律と仲直りしてからでもいいんじゃない?」

澪「う゛……知ってたのか」

憂「律さんが真っ直ぐ天望デッキに向かってたら今頃チケット売り場に並んでるかもしれません」

和「今から澪が並んでも追いつけないかもしれないわね」

唯「そうだ! 澪ちゃんにこれをあげよう。発券したてホヤホヤの天望デッキのチケット!」

澪「いいのか? ていうかチケットって――」

唯「細かい事はいいから仲直り頑張ってね!」

澪「う、うん、ありがとう! 行ってくる!」

唯「頑張ってね~」

和「二人とも元気そうね」

唯「みんな元気だよー」

憂「梓ちゃんもスカイツリーに誘えてればよかったなぁ」

唯「そうだねー。いやあでも余ったチケットが無駄にならずにすんだよ」

和「あんた自分のチケットなくしたりしてないわよね?」

唯「当然ですよ! えっと、この辺に……」

唯「えっと……」

和憂「……」

唯「…………あ、あったーーー!!」

唯「ふっ、いつまでも昔の私だと――」

ビュバアアァァ!

憂「きゃっ! すごい風!」

唯「あーー!? 私のチケットがーーーっ!!」ピュー

和「はあ……」

唯「待ってーーーー!!」ダッ

和「ちょっと待ちなさい唯!」

憂「おねえちゃ~~~~ん!! ……いない」

憂「どうしよう和ちゃん! おね、お姉ちゃん迷子になったりしたら……!」

和「落ち着きなさい。携帯あるでしょ? それに唯も大学生なんだし大丈夫よ」

憂「うん……そうだよね」

憂「……」

和「憂?」


●4F 東京スカイツリーチケットカウンター

律「うへーめちゃくちゃ混んでる……」

律「やっぱり予約しとくべきなんだろうな」

律「……天望デッキ行くのやめよっかなぁ」

さわ子「あらりっちゃん!」

律「え? あれさわちゃん!?」

さわ子「久しぶりねー元気にしてる?」

律「さわちゃんも相変わらずだなー」

さわ子「もしかしてりっちゃん今から当日券買うの?」

律「そのつもりだったんだけどめちゃくちゃ混んでてさー。やっぱりやめようかなって」

さわ子「そうなの……。そういう事ならこれあげるわ」

律「ん? これって天望デッキのチケットじゃん! いいの!?」

さわ子「いいのよ……これで楽しんできなさいよねっ!」ダッ

律「えっ!? さわちゃん!?」

律「……何で泣いてたんだろう」


●東京ソラマチ 1F ハナミ坂


和「どうしたの?」

憂「うん……お姉ちゃんが心配で」

和「憂は気にし過ぎじゃない? あれでもちゃんとやってるみたいよ」

憂「うん……私もそう思う」

憂「お姉ちゃんが一人暮らし始めたから、私もお姉ちゃんを見習って頑張ってるんだけど」

憂「なんていうか……私の方がお姉ちゃん離れ出来てないのかも」

憂「ほんとはね、今でも寂しくなる時があるの」

和「あなた達いつも一緒にいたものね」

和「それじゃあ憂もN女子大学に行くつもり?」

憂「候補のひとつ……かな」

和「そうなんだ」

憂「和ちゃんはどう? 留学ってどんな感じなの?」

和「そうね……不安もあったけど何もかもが新鮮で楽しいわよ」

和「生活や人や習慣が全然違うの。勉強以外にもすごくためになってると思う」

和「留学してよかったって思ってるわ」

憂「ふうん……すごいなぁ和ちゃん」

和「別にすごくなんてないわよ」

憂「……」

和「そろそろ唯を探しに行こうか」

憂「そうだね。ついでにお手洗い寄らせて?」


●2F West Yard フードマルシェ


晶「スカイツリーで魚売ってるのか……」

晶「スーパーみたいだな」

  「わー魚売ってる! あっとんかつおいしそう!」

晶「……」

  「焼きドーナツ! シュークリーム! わーアップルパイもある!」

晶「……そろそろ行くか」

  「あれー!? 晶ちゃんだー!」

晶「げ……」

唯「やっほー」

晶「ぐああ……」

唯「晶ちゃんもスカイツリーに来てたんだねぇ」

晶「……まあな」

唯「晶ちゃん1人なの?」

晶「菖と幸も一緒だ。今は別行動してるけど。そういうお前こそ何で1人なんだ?」

唯「実は天望デッキのチケット風で飛ばされちゃって……」

晶「うわあ……てか風ってここ室内だぞ」

唯「それでチケット追いかけたんだけど見失っちゃったから戻ろうとして、その前にちょっとお腹空いたなーって」

晶「……」

唯「ねえねえここすごいよ! 美味しそうなのがいっぱい!」

晶「切り替え早いなお前……」

唯「晶ちゃんも何か食べようよ!」

晶(こいつは放課後ティータイムの中では一番恋愛とはほど遠いか)

唯「おお~ジェラートもある~!」

晶(……いや、案外こういうのがウケたりするのか?)

晶(まあ容姿は可愛い部類だし、人懐っこいし、ちょっと抜けてるところが逆に……)

晶(かと言ってこれは真似しようがないぞ)

唯「晶ちゃん?」

晶「……え? なんだよ」

唯「なんだか難しい顔してたよ?」

晶「お前には関係ねー」

唯「ええー……あっ! この前の告白の事考えてたんでしょ!」

晶「」グサッ

晶「お~ま~え~は~……!」

唯「おああっゴメンナサイッ!」

唯「あれっ? あそこにムギちゃんがいるよ! ほらほら!」

晶「誤魔化すな! あとムギは本当にスカイツリーに来てるぞ」

唯「だから本当にいるんだって! ムギちゃーん」

晶「え? あ」

紬「唯ちゃん! 晶ちゃんも!」

晶「あれ? 連れはどうした?」

紬「実はまだ澪ちゃんを見つけられなくて……電話も出なかったし」

晶「律には連絡しないのか?」

紬「うん……出来れば今回は澪ちゃんからりっちゃんにっていうのがいいかなって……」

晶(何が違うんだ……?)

唯「澪ちゃん探してるの?」

紬「そうなの。どうしてもこのチケットを渡さないと……」

唯「天望デッキのチケット? それなら私が澪ちゃんにチケットあげたよ~」

紬「そうなの!?」

唯「うん。実は二人がケンカしちゃってさ~。だからチケットをあげて仲直りさせようと――」

紬「私も仲直りしてもらいたくて探してたの。うまくいくといいんだけど――」

唯「そっか~」

紬「唯ちゃんグッジョブ~」

晶「……」

晶「そのチケット唯が貰えばいいんじゃないか?」

紬唯「へ?」

紬「どうかしたの?」

唯「実はチケットを風に飛ばされちゃいまして……」

紬「そうだったの。そういう事なら遠慮なく使って!」

唯「ムギちゃ~ん!」

紬「うふふ。……あっ! ベストシーン逃しちゃう! 私そろそろ戻らないとそれじゃあ行くわね!」ピュー

唯「よかったぁ~これで憂と和ちゃん待たせずに済むよ」

唯「本当にありがとうムギちゃ……いない」

晶「お前運だけはいいな」

唯「えっ!? そんな照れるよ~」

晶「褒めてねえよ」

晶「ところで1階に行きたいんだけどお前はどうするんだ?」

唯「じゃあ私も途中までついてくよー」


●2F West Yard


和「あの子絶対寄り道してるわね。食べ物関係の場所で」

直「琴吹先輩どこに行っちゃったんだろう……」

さわ子「私どこに行くのかしら……」

和直さわ子「あ」

和「先生お久しぶりです」

さわ子「あら直ちゃん……それに和ちゃんじゃない! 元気にしてた?」

直「……?」

さわ子「この子今年軽音部に入部した子なの」

直「どうもです」

和「ちゃんと部活続いてるんですね」

さわ子「そうなのよ~お茶が出来て嬉しい限りだわ」

和「そういえば今お付き合いしてるとか」

さわ子「……」

直「?」

和「先生?」

さわ子「……」

和「あ、あの、唯を見ませんでしたか?」

さわ子「……見てないわね」

和「そうですか……」

和直さわ子「……」

和直さわ子「……」


●2F West Yard


菫「おまたせー」

直「うん」

菫「お姉ちゃんまだ戻ってきてない……」

直「さわ子先生に会ったよ」

菫「えっ!? もしかして彼氏さんにも……?」

直「先生1人だった」

菫「あ、そうなんだ。それって……」

紬「おまたせ~!」

菫「お姉ちゃん! 遅いよー」

紬「ごめんね。それじゃあ私達も天望デッキに向かいましょうか」

菫「うん。そうそう直ちゃんがさわ子先生に会ったんだって」

紬「まあ! 私も会いたかったな~」

直「あ、でも先生フラ……」

紬「?」

直「……何でもないです。今年も部室でお茶ができてよかったと言ってました」

紬「うふふ。菫がいる間は先生もお茶できるわね」

菫「でも来年になったら梓先輩達いなくなっちゃう……」

直「……」

紬「ねえ菫、軽音部は好き?」

菫「もちろん!」

紬「直ちゃんは?」

直「大好きです」

紬「よかったぁ……私も軽音部が大好きでね」

紬「新しく来る後輩にも同じ気持ちになってほしいって思ってたの」

紬「梓ちゃんはしっかり受け継いでくれたのね」

菫「私達だってここで軽音部を終わらせるつもりはないよ!」

直「うん」

紬「あんまり無理はしないでね。それに梓ちゃん達もまだいるんだし今は今の軽音部を楽しんだ方がお得だと思うよ」

菫直(お得……)

紬「でも来年はどんな軽音部になるのかなって梓ちゃんも期待してるかもね。梓ちゃんも軽音部が大好きだから」

菫「梓先輩も……頑張ろうね直ちゃん!」

直「うん!」


●スカイツリーもうすぐそこ


梓「あーもー! 純がケチって自転車で行こうとか言うから!」

純「ほらもう少しだってば!」

梓「あっつ……はあ……はあ……」

純「風強くて寒くない? それにしてもでっかいなー」

梓「着いたら飲み物飲みたい」

純「安いとこでよろしく。……ん?」

梓「何?」

純「何か飛んでる……あ、お札!?」

梓「そんな訳ないでしょ」

純「……あー、うん、お札じゃなさそう」

純「ほっ! やったナイスキャッチ!」

梓「ゴミつかむくらいなら純が自転車こいでよ……はぁはぁ」

純「あれ……あーーーー!?」

梓「うわっ!? 純うるさい!」

純「梓これっ! これっ!」

梓「なによもー……」

純「天望デッキのチケットだよこれ!!」

梓「ええっ!?」


●東京ソラマチ 1F


さわ子「……」

  「ねえねえこれ買ってよ~♪」

さわ子「チッ……公衆の全面でイチャイチャしてんじゃあねーぞ……あら?」

晶「自分で買えばいいだろ」

唯「いけず~」

さわ子「唯ちゃん?」

唯「へ? あっさわちゃん!」

さわ子「唯ちゃんも来てたのね~すごい偶然!」

唯「先生久しぶり~!」

さわ子「あら、お友達?」

唯「この子は私の友達の晶ちゃん! 晶ちゃんもN女子大学の軽音部なんだよ~」

晶「ども」

さわ子「唯ちゃんの通っていた高校で教師をしている山中さわ子です。唯ちゃんがお世話になってるみたいねぇ」

晶「あ、いえ……」

さわ子(中々にロックな子ね)

晶(この人が唯の言ってた高校の時好きだった先生か)

唯(よそいきさわちゃんだ)

さわ子「迷惑かけてるでしょうけどこの子のことよろしくお願いね」

唯「ええ~迷惑ってなにさー」

晶(確かに若くて綺麗でしっかりしてる先生だな……私はプロになるつもりだけど、もし先生になるとしたらこんな感じになりたいかな)

晶(それに優しそうだし面倒見もいい。これはモテるだろうな……あと髪も長い)

唯「さわちゃんはギターすっごく上手いんだよ」

さわ子「そんな事ないわよぉ」

晶(おまけにギターも上手いのか……先輩もこういう人好きなのかな)

晶(……うん、やっぱり目標にするならこういう人だな!)

唯「――っていう感じで」

さわ子「へぇ~唯ちゃんと同じ学部なのね」

晶「あのっ! よかったら今度お話を聞かせてもらえませんか? 教師の事とかその他にも……」

さわ子「おほほ、私なんかでよければもちろんいいわよ」

さわ子「そういえば和ちゃんが探してたわよ?」

唯「あっ……そうでした」

さわ子「それじゃ私は行くわね」

唯「え~一緒に見て回らないの?」

さわ子「ごめんねぇ」

さわ子(唯ちゃんに傷を抉られたらやだし……)

さわ子「それじゃ。ええと、晶ちゃん? いつでも相談に乗るからね」

晶「ありがとうございます」

唯「ばいばーい」

晶「本当にいい先生ぽいな」

唯「いい先生だよ~。……あ、晶ちゃんとは気が合うかも」

晶「え、なんで?」

唯「なんとなく」

リリリリリリン リリリリリリン

唯「あっ電話」

唯「もしもーし」

晶「やべ、菖達に連絡するの忘れてた」プルルルル

唯「へ? えっとねー1階の食べ物が売ってる所だよ!」

唯「そうなの? えへへ~流石和ちゃん♪」

晶「もしもし? だー悪かったって」

晶「うん、今1階、そう、んーわかった」

唯「あっ私がそっちに行くよ! 食べたいものあるし! はーい」ピッ

晶「はいよ」ピッ

唯「2階で友達と妹が待ってるって」

晶「菖達も2階にいるらしい」

唯「おお~それじゃあ行きますか」

晶「だな……ってくっつくなよ!」

唯「ええー」

●スカイツリー到着


梓「やっと着いたぁ……」

純「どうする梓ー天望デッキのチケットだよ!」

梓「それってクレジットカードが――」

純「大丈夫だって!」

梓「てか1枚しかないじゃん」

純「……梓スカイツリー来るのあんまり乗り気じゃなかったよね」

梓「はあっ!?」

純「じょ、冗談冗談……とりあえず3階にフードコートあるらしいからそこ行かない?」

梓「まったく……」

梓「……」

梓「……え」

梓「あ……あ……!」

純「どした?」

梓「ゆ……」

梓「唯先輩がいる!!」

純「さっすが梓もう見つけたの? 人ごみで全然わかんないんだけど」

梓「ユイセンッ…なっ!?」

純「今度は何よ」

梓「ゆ……唯先輩が男と腕組んでる……? しかもちょっとガラの悪そうな人と……」

純「うそっどこ!?」

梓「そ、んな……いやそんなはずない!」ダッ

純「ねー梓どこ? ねえってばー……あれ? 梓がどこ?」


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最終更新:2013年08月17日 00:28