〈中野side〉


人は嘘をつく生き物です。
最初に嘘をついたのはいつだったでしょうか。
歯医者さんが怖くて「歯なんて痛くない」と言った時でしょうか。
それとも、除夜の鐘を聴いてみたくて、「まだ眠くない」と強がった時でしょうか。
幼い頃から大人になっても、小さな嘘を積み重ねて生きていくのが人間というものです。

こんな話をするのには理由があります。
今日、部室にいくと唯先輩がやる気を出していたのです。
なんでも昨日家でとても上手く弾けたらしく、それを私達に聴いて欲しいということです。
律先輩も唯先輩につられてか、やたらやる気を出してくれたみたいで、今日は存分に練習できそうです。

でも困ったこともあります。
今日は朝から風邪気味で、熱っぽいんです。
でも、それを口にするのは野暮というもの。
やる気になっている唯先輩に申し訳ないですし、私自身練習したいという気持ちもあります。
だから、澪先輩が私の顔を見て、「ちょっと赤いけど大丈夫か」と訊いてくれたとき、
「唯先輩が練習する気になってくれて、感慨深くて……」と小さな嘘をつきました。

練習はかなり長い間続きました。
かなりきつかったですが、ここまで熱の入った練習は久しぶりでした。
体調が悪かったからこそ、頭を空っぽにして演奏に集中できたのかな?
私のギターもいつも以上に走っていた気がします。

楽しい練習も終わり、帰り道。私はなんとか平常を装っていました。
まず律先輩と澪先輩が離脱。
それから唯先輩とムギ先輩と別れる場所につきました。
お別れの挨拶をしようとしたとき、ムギ先輩が言いました。

「私、ちょっとこっちに用事があるんだ。
 唯ちゃんは先に帰ってくれる?」

唯先輩はちょっと寂しそうにムギ先輩を見た後、「バイバイ」と言って去っていきました。
ふたりきりになった後、ムギ先輩に「何の用事ですか?」と聞きました。
ムギ先輩は無言で私のおデコに手をあてました。

「やっぱり……大丈夫?」

先輩は心配そうに私の顔を覗き込みました。

「気がついてたんですか?」

「家まで送っていくわ」

家につくまで会話はありませんでした。
ひどく居心地が悪かったのを覚えています。
嘘を暴かれた後って、たいていこうです。
気まずくて、居た堪れない気持ちでいっぱいでした。
黙々と歩いて行くと、すぐに家に着きました。

「おうちの人はいるの?」

「……いないみたいです」

「そう。じゃあ、あがってもいいかしら」

「……はい」

私は自分の部屋までたどり着き、ベッドの上に倒れ込みました。
それから数時間の記憶が、私にはありません。


〈琴吹side〉


梓ちゃんの体調が良くないことは最初から分かっていました。
澪ちゃんに顔が赤いことを指摘されたとき、梓ちゃんは嘘をついた。
嘘をついた理由もすぐにわかった。唯ちゃんとりっちゃんがやる気を出していたからです。

嘘をあばこうかとも思いました。
でも、思いとどまりました。
張り切る唯ちゃん達を見る梓ちゃんが、あまりに嬉しそうに見えたから。
それに高校生にもなれば、自分の体調ぐらいわかっていると思ったからです。
ある意味私の予想どおり、梓ちゃんはベッドまで無事たどり着きました。

私は心のなかで「お疲れ様」と呟きました。
それから俯けに倒れている梓ちゃんを仰向けにしてあげました。

梓ちゃんの顔は真っ赤になっていて、顔や手から汗が滲んでいます。
制服の下に手をいれると、じんわりと湿った感触が伝わりました。

汗を放置して置くと、気化熱で体温を奪われてしまいます。
このままではいけないと思い、着替えさせてあげることにしました。

まず、押入れのなかから替えの服を探しました。
無事に寝具と下着を見つけた私は、梓ちゃんを抱きかかえるように持ち上げました。
梓ちゃんの体は思っていた以上に軽くて、無理な体勢でも制服とシャツを脱がすことができました。
パンツを脱がすのはやめておきました。
合宿のお風呂で見たことはありましたが、勝手に脱がすのは申し訳ない気がしたからです。

パンツだけになった梓ちゃんの体を優しくタオルで拭ってあげました。
それからサッと下着と寝具を着せ、布団をかけました。
濡れタオルを頭の上にのせて、私の仕事はお仕舞いです。

梓ちゃんの顔は相変わらず赤くて、息は少し荒かったとおもいます。
この時になって、私は少しだけ後悔していました。
嘘をあばいていれば、こうはなかったかったはずなのに、って。

起きるまで傍にいようかと思っていましたが、梓ちゃんの御母様が帰ってきました。
私は事情を話して、家に帰ることにしました。

梓ちゃんから電話がかかってきたのは、その夜のことです。

『もしもし』

「あずさちゃん?」

『はい。今日はありがとうございました』

「体の方はどう?」

『だいぶよくなりました。ただ、大事をとって明日はお休みさせてもらおうと…』

「そう。それがいいわ」

『ひとつお願いがあるんです』

「お願い?」

『はい。体調が悪かったことを隠してたの、他の先輩たちには言わないで欲しいんです』

「言わなくても澪ちゃんあたりにはバレちゃうかもしれないわ」

『それは仕方ないです』

「誰にも言わなければいいのね」

『約束…してくれますか』

「ええ、約束」

『ありがとうございます。そして、おやすみなさい、ムギ先輩』

「どういたしまして。ぐっすりおやすみなさい、梓ちゃん」


次の日、電話で聞いたとおり、梓ちゃんは休みました。
梓ちゃんが休みだと知って、唯ちゃんは明らかにテンションを落としましたが、お菓子を食べると元気になりました。
それから唯ちゃんは、このお菓子をもって梓ちゃんのお見舞いに行こうと提案しました。

私達4人はお菓子を持って梓ちゃんの家に行きました。
梓ちゃんはだいぶ元気になってくれたようで、私のお菓子を美味しそうに食べてくれました。
しばらく5人でお話をして、何事もなかったように帰宅。
昨日の話はひとつも出ませんでした。


あの日のことは私と梓ちゃんだけの秘密。
不謹慎かもしれませんが、それが少しだけ嬉しかったんです。
しかも、嬉しいことはこれだけでは終わらなかったんです。


〈中野side〉


嘘をついてから3日間。ムギ先輩のことばかり考えていた気がします。
裸を見られたのはたいしたことじゃなかったはずです。
合宿のときだって見られていますし、見ています。

それでも、弱っているところを一方的に見られたというのは、少しわけが違うのでしょうか。
それとも嘘をあばかれて、弱みを握られてしまったからでしょうか。
お見舞いにきてくれたムギ先輩と、私は目を合わせることができませんでした。

先輩たちがお見舞いに来てくれた次の日から、私は学校に戻りました。
普通に純や憂とおしゃべりして、先輩たちと部室でおしゃべりする日々。
ただ、ムギ先輩とは相変わらず目を合わせることができませんでした。

そんな私のことをムギ先輩は気づいていたようです。
しかし、そのことをムギ先輩が気にしている様子はありませんでした。
鋭いムギ先輩のことですから、私の気まずさを察してくれていたのでしょう。

ムギ先輩は私に何も求めませんでした。
いつものように紅茶をいれ、優しく話かけてくれました。

頭ではそれが嬉しかったですが、心では少し嫌でした。
一方的に何かをしてもらっているだけというのは、居心地が悪いんです。

だから私はムギ先輩に何かお礼をしたいと考えました。
でもムギ先輩がよろこんでくれることってなんでしょうか。

私はムギ先輩の笑顔を思い浮かべました。

ムギ先輩は何よりお茶をいれているとき輝いています。
誰かに奉仕するのが好きなんでしょう。
しかし、私がお茶を入れてもらったのではお礼になりません。

ムギ先輩にはたくさん夢があるらしいです。
焼きそばを食べにいくこと、アルバイトをすること。
他にもいくつもあるみたいです。
そのうち幾つかは叶ったみたいですが、幾つかは叶っていないみたいです。
単純に考えれば、その1つを叶えるのが手っ取り早い。

けれども、私はムギ先輩の夢をあまりよく知りません。

ムギ先輩。
いつも微笑みかけてくれる優しい先輩。
軽音部のお茶係で、いつも楽しそうにしてる人。
おっとりしていて、それでいてちょっぴり鋭い人。

私はムギ先輩のことが好きです。
恋とかそういう意味ではなく、人として好きです。

だけども私は全然知りません。

ムギ先輩の家族のこと。
普段していること。
好きな食べ物のこと。
嫌いなこと。

色々考えた結果、私はムギ先輩とお出かけすることにしました。
お礼のために。
そして、ムギ先輩をもっと知るために。

電話で誘うと、ムギ先輩は二つ返事で承諾してくれました。

ムギ先輩と二人だけで遊びに行くのはこれが初めてです。
明日着ていく服のことを考えながら、私はベッドに潜り込みました。

あずにゃん明日が楽しみすぎて眠れなかったりして


〈琴吹side〉


梓ちゃんから電話がかかってきた。
休日にお出かけのお誘い。
はっきり言って、このお誘いはとても嬉しい。
高校に入って唯ちゃん達と仲良くなったけど、二人で出かける機会はあまりない。
もちろんみんなで出かけるのも楽しいけど、ふたりきりというのはまた違うと思う。

ふたりきりなら、みんなの違う顔を見ることができると思う。
私だって、みんなと一緒にいるときと、菫とふたりきりでいるときでは全然違う。
きっと他のみんなも、ふたりきりのときにしか見せない顔があるはずだ。
私はそれを見てみたいと思っていました。

だから梓ちゃんからのお誘いは素直に嬉しい。
でも、喜んでばかりもいられません。

梓ちゃんがなぜ私を誘ってくれたのか。
梓ちゃんに嫌われてるわけではないけれど、休日に遊びに誘ってくれるほど親しい間柄でもありません。
あの嘘に負い目を感じている梓ちゃんが、謝罪のため、そしてお礼のために誘ってくれたのでしょう。

きっと梓ちゃんにとって、今回のことはあまり楽しくないはず。
それでも、私との関係を元に戻したいと思って誘ってくれたのです。

少しだけ気を引き締めます。
できるだけ、梓ちゃんのことをわかってあげよう。
できることなら、楽しい休日にできるように頑張ろう。
そう決意して、ベッドに潜り込んだんです。

当日。
天気予報では晴れでした。
でも私と梓ちゃんが駅前に集まってすぐに、雨が降りだしました。
私たちは急いでコンビニに駆け込み、ビニール傘を手に取りました。

値段は500円。
私はまだ金銭感覚が身についていないので、安いと思ってしまいました。
でも梓ちゃんはその価格設定に文句を言いました。
そして「私が買いますから、ムギ先輩は買わなくていいです」と言ってくれたんです。

生憎の雨ではなく、相合傘の雨。
実は、相合傘をするのは私の夢でした。
菫から読ませてもらった漫画で見て「いいなぁ」と思っていたんです。

だけど、相合傘をするのはこれが初めてではありません。
学校の帰り道、傘を忘れた唯ちゃんをいれてあげたことがあったから。

安っぽいビニール傘。
梓ちゃんの手はちょっと震えています。
二人が濡れないように、傘を懸命にコントロールしているのが見て取れます。

唯ちゃんの時とは違う、ちょっとぎこちない感じ。
あの時のような立派な傘ではなく、外が見えるビニールの傘。
その事実に、私はなんだか無性にわくわくしちゃったんです。

きっと梓ちゃんはいたたまれない気持ちだったと思います。
そんな時にわくわくしていた私は先輩失格なのかもしれません。


〈中野side〉


傘を思うところに持っていくのがこんなに難しいなんて知りませんでした。
できるだけ濡れないように右に左に微調整しますが、二人共傘に収まるようにするのは難しくて。
歩幅も少しだけ違うから、左右だけじゃなく、前後にも気を遣わなくてはいけなくて。

ムギ先輩だけ雨にあたらないようにしようかとも思いました。
けど、そんなことをしても喜んでくれる人ではありません。

私はムギ先輩の心の内を考えるのが億劫でした。
傘を買わないように言ったのは私です。
だから、今こんなふうに二人が濡れているのは私のせいです。

でも、そういうわけにもいきません。
今日はムギ先輩との関係修復のためにきたのだから。
私は覚悟を決めて、おそるおそる先輩の顔を見ました。

ムギ先輩はほんのすこしだけ俯いていました。
視線を斜めに落として、なんだか愛おしそうに。
地面を楽しそうに見つめながら、軽快に歩いていたんです。

笑っているのでも喜んでいるのでもない、その顔の意味するところはきっと「期待」。
今日のお出かけをよほど楽しみにしてくれていたのでしょう。

私が見ていることに気づいたムギ先輩がこっちを向きました。
傘を差したまま、目があって、無言のまま。
そのまま、3分ぐらい歩きました。

いつの間にか、二人の歩幅は綺麗に重なっていました。
肩は相変わらず濡れていましたが、さっきまでの嫌な感じはもうありませんでした。

私はいつもムギ先輩がするように、微笑んでみました。
すると先輩も真似して微笑んでくれました。

歩いて10分ほどで目的の場所につきました。
私達がきたのは東急ハンズ。6階建てで、日用雑貨の類なら何でも揃うお店です。

先輩は身の回りにあるちょっと変わったものが好き。
だからハンズです。

思った通り先輩は目を輝かせてくれました。

1回の特設手帳コーナーから真剣に見入っています。

ムギ先輩はゆるキャラが表紙の手帳を指さして、「このキャラクターは何かな?」と訊きました。
私はケータイで素早く検索してあげました。
キャラクターの来歴を話してあげると、先輩はふむふむと真剣に聞いてくれました。
それから次の手帳を見て……。

どれも熱心に見ていましたが、先輩が特に注目したのは黒柴の手帳でした。
表紙で2匹の黒柴がじゃれあっていて、365ページにそれぞれ違う黒柴の写真が白黒で印刷されています。
値段は少し高めの3000円。

手帳をひととおり見てから2階の食器雑貨コーナーへ。
白鳥を象った銀のフォークや象がデザインされた木製のスプーンなどを先輩は興味深そうに見ていました。

3階、4階、5階も同じように時間をかけてまわりました。
ムギ先輩がはしゃいでいるだけなら退屈だったかもしれません。
でも、先輩は何かと私に質問してくれたので、私は色々教えてあげることができました。
このやりとりを通じて何か信頼関係のようなものが芽生えている気がして、私は嬉しかった。

5階でカレンダーをみているとき、私は嘘をつきました。
「お手洗いに行くから、ここで見ていてほしい」と伝えて、お手洗いには行かずそのまま1階へ降りました。
ムギ先輩へのプレゼントとして、あの黒柴の手帳を買うためです。

5階へ戻るとムギ先輩はレジに並んでいました。
手には和紙と細いリボンを持っていました。
何に使うのか聞いてみると、「押し花で栞を作ろうと思って」と教えてくれました。

6階を制覇する頃にはすっかり夜になっていました。
当初はハンズ以外もまわる予定だったのですが、雨だったのでハンズ一本に絞ったんです。
時間が余ることを危惧していた私としては、嬉しい誤算でした。

ハンズから出ると、もう真っ暗でしたが、雨もやんでいました。
私は先輩を連れて夜ご飯を食べに、ネットで調べたイタリアンレストランへ。

オーダーを済ませ、料理が出てくるまでの間に、私は黒柴の手帳をムギ先輩に渡すことにしました。

「あの、これを受け取って欲しいんです」

「あら、これは?」

ハンズの袋に入ったそれを見て、ムギ先輩は不思議そうな顔をしています。
今更になって、ムギ先輩にまた嘘をついてしまったことを後悔しました。

「ごめんなさい。さっきトイレに行くって嘘をついて買ったんです」

でもムギ先輩は笑ってくれました。

「そういう嘘なら、私は好きよ」

「……開けてもらえますか?」

「うん‥…あら、これ……」

「はい。ムギ先輩が見てたあの手帳です」

「手帳……ありがとう梓ちゃん」

口で「ありがとう」と言ったムギ先輩。
でもどこか違和感がありました。
なんだか嬉しそうな、そうでないような……。

「あの、ムギ先輩。何か気に入りませんでしたか」

「どうしてそう思うの?」

「ちょっと言い淀んでいたように見えたので」

「……梓ちゃんに嘘はつけないね」

「えっと……」

「実は来年の手帳はもう買ってあるの」

「そうでしたか……」

「あっ、そうだ! いいこと思いついちゃった!」

「なんですか?」

「手帳交換しない? 
 私が使う予定だった手帳をあずさちゃんが使うの。
 ……もし良かったらでいいんだけど」

「えっと……いいんですか?」

「もちろん!」

「それじゃあ、お願いします」

「なら、明後日学校にもっていくから」

こうして私とムギ先輩は手帳を交換することになりました。

ご飯を食べ終わった後、ムギ先輩と別れました。
この日のお出かけはこれで終わりです。


〈琴吹side〉


ハンズと言ったっけ。
あんなお店があるなんて私は知りませんでした。

私は知っていました。
この街にはハンズのように、宝石箱みたいな場所がたくさんあるって。
でも、世界をどんどん広げようとは思わなかった。

だって一人で広げるより、誰かと広げたほうがずっと楽しいと知っていただから。

今回の梓ちゃんとのお出かけは、最初からとても楽しかった。
二人で一本の傘を使って歩いたこと。
ハンズを一緒に見て回ったこと。
おいしい夜ご飯を食べて、手帳までもらってしまったこと。

ハンズで少しだけ心配だったのは、梓ちゃんが楽しめているかということでした。
私が手帳を見ている時、梓ちゃんは一歩下がってそれを見ていました。

私は色んな手帳を見れて楽しかったけど、
梓ちゃんは私なんか見て楽しかったわけがない。

でも、ハンズにいる間、私はそのことを考えないことにしました。
今回は梓ちゃんが私のために計画してくれたお出かけだから。
精一杯楽しむことこそ、私のやるべきことだと思ったから。

ただ、そんな心配は杞憂に終わりました。
最初こそ一歩下がって見ていた梓ちゃんでしたが、
四階の文房具コーナーに着くことには、私と一緒に熱心に品定めを楽しんでいました。

さっきまで緊張していたのか、遠慮していたのか、単純に興味の持てる商品があったのか。
そのどれかは分かりませんが、こうやって友達と一緒に買物するのは私の夢だったので、とても嬉しかった。

それからディナー。

ここで梓ちゃんからサプライズがありました。
手帳をくれたんです。
黒柴が印刷された、あのかわいらしい手帳。

ただ、困ったことがありました。
私は既に来年用の手帳を持っていたんです。

毎年、私はおじいさまから頂いたカタログから手帳を頼んでいるんです。

そこで閃きました。
手帳を交換しようって。
梓ちゃんはこの提案を快く受け入れてくれました。

もちろん梓ちゃんと食べるイタリアンはとても美味しくて、
最初から最後まで、とっても最高に素敵なお出かけになったんです。

月曜日。
私は梓ちゃんに手帳を渡しました。
手作りの栞を挟んで。

以前作ったスイートピーの押し花を古紙に糊付けして、小さなリボンをつけただけの簡単な栞。
お出かけのお礼として、私にできる精一杯としての栞。

梓ちゃんは栞と手帳。その両方をとても喜んでくれました。

唯ちゃんが栞に興味を持ちましたが、
梓ちゃんは「あげませんよ」と言いました。

私はそのことをとても嬉しく思ってしまったんです。


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最終更新:2013年07月11日 22:06