♪
廃部寸前だったのは予想外だったけど、どうにか部員も集められて一年半。
私は澪と少しずつ前みたいな関係に戻れてきた。
からかったりからかわれたり、叱られたり笑ったり。
私の犯してしまった過ちについて触れる事はお互い無かったけど、きっとそれでよかった。
あれはもう忘れた方がいい事なんだ。
合宿の時、澪の裸を見てドキドキした事も、忘れてしまった方がいい。
セックスをしてた頃よりもずっとずっとドキドキしたけど、あれは何て言うかきっとトラウマだ。
自分の失敗を思い出して嫌な気分になってしまってるだけなんだ。
そう思う事にした。
そのはずだったのに。
学祭直前、私の感情が変にざわつく事件が起こった。
澪と和の仲が妙に良い事に気付いちゃったんだ。
二年に進級して珍しく澪とクラスが離れたけど、私は安心してた。
澪との関係は悪くないくらいに戻せていたし、
セックスは勿論しないけどお互いの家に遊びに行くくらいの仲にはなれてたから。
クラスが別になる事くらい、何でもないって思ってた。
なのに、和と仲が良い澪の姿を見て心がざわついた。
分かってる、澪は和と普通に仲良くしているだけだって。
クラスメイトと仲良く話してるだけなんだって。
分かってるはずなのに。
それで部室で澪にきつく当たってしまった。
梓が不安そうに私達の仲を取り持とうとしてくれてるのに、逃げ出してしまった。
喧嘩じゃない。
私が一方的に嫉妬をぶちまけてしまった。
私の頭に色んな光景が浮かんで離れない。
和と手を繋ぐ澪。
和とキスをする澪。
和とセックスをする澪。
和に攻められてエッチな顔を見せる澪。
私にしか見せなかった顔を他の誰かに見せる澪の姿。
心がバラバラになりそうなくらい耐えられなかった。
何だよ、澪は……!
女同士のセックスはおかしいんじゃなかったのか?
あれは単なる方便で、私とセックスしたくないだけだったんじゃないのか?
私より好きな女の相手を待ってただけなんじゃないのか?
私ならもっと澪を気持ち良くさせてやれるのに……!
「馬鹿澪……!
馬鹿澪の奴め……!」
部屋の中で布団に包まって、澪への恨み言を何度も唸った。
頭の中では澪のエッチな姿が浮かんで離れなかった。
いつの間にか私の指先はアソコと乳首に伸びていた。
忘れられない澪の感触を必死で思い出す。
指先が触れる頃には、私のアソコはパンツが貼り付くくらいに濡れていた。
「澪……っ! 澪……っ!」
思い切り乱れてやろうと思ってた。
何もかも忘れられるくらい気持ち良くなりたかった。
なのに。
指先がアソコに触れた途端、私の頭の中に澪の泣き顔が浮かび上がった。
私の失敗が強く強く蘇った。
息を呑んだ。
何をしようとしてたんだよ、私は……。
同じ失敗は繰り返しちゃいけないだろ……?
私は澪ともう一回親友になるんだろ……?
こんな風に澪の事を考えてちゃ駄目じゃんかよ……!
アソコから指先を離す。
それだけじゃ足りない。
私はそれ以上自分の指先が勝手な事をしないように、
ドラムを移動させる時にまとめる用の紐で自分の手首を縛って、
必死で思い出そうとしていた澪のエッチな姿を今度は必死で振り払った。
ごめん……、ごめんな、澪……。
もう澪とそんな関係になりたいなんて考えないから。
落ち着いたら私の方から謝るから……。
だからまだ友達で居てくれるか……?
案の定と言うべきか。
色々な事を考え過ぎた私は、その日から風邪で学校を休む事になってしまった。
何日か後になって、澪がお見舞いに来てくれた時に仲直り出来たのは不幸中の幸いだったけど。
「寝る前で傍に居てよぉ!
ねえ、お願い澪ぉ!」
それがお見舞いから帰ろうとする澪を引き止めて言った私の最大の我儘。
それ以上の我儘はもう言わないようにしようって誓った。
大好きで溢れ出しそうになる気持ちはあるけど、それは心の奥底に仕舞っておく。
鍵を掛けて、もう開かない。
なあ、澪?
私達、いい友達のままで居られるよな……?
♪
三年に進級して学祭の直前、また予想もしていなかった事件が起こった。
「こ、恋人の声は白銀の様に優しくて……」
「駄目ザマス!
そんなんじゃ名女優にはなれないザマスよ?」
「誰だよ!」
私の部屋の中、小気味良い澪の突っ込みが響く。
私の部屋の中で二人きりで居る理由は、私達が学祭の劇の主役に選ばれてしまったからだ。
別に劇の主役になるだけなら嫌じゃない。
澪と二人で主役をやれるなんて最高の思い出になりそうだしな。
だけどその題目が『ロミオとジュリエット』だったら話は別だった。
しかも澪がロミオで私がジュリエットだ。
逆なら分からなくもないけどこれは無い。
澪の相方が私だってクラスの皆に思われてるみたいなのは嬉しいけど、それとこれとは別問題だ。
それにロミオとジュリエットなんて、成就しない私の想いみたいに思えて何か嫌だ。
「じゃあ律やってみろよ」
「うっ……、しょうがないな……」
確かに澪の演技にばっかり突っ込みを入れててもしょうがない。
私も台本を見ながら台詞を読んでみる。
「もう夜が明ける。
小鳥の足に囚人の鎖の様な……」
「ぷっ……あははっ、やっぱり似合わない……!」
「笑うなあっ!
台詞は間違ってないだろおっ?」
「間違ってないけど律が……あははははっ!」
「何だよー……」
似合わないのは分かってるけど、ここまで笑う事ないじゃんかよ……。
つーか枕に抱き着いて悶えるくらい笑えんのかよ……。
とか思ってたら、
「あはははっ! あはははははははっ!」
部屋の外から聞こえて来たのは聡の声だ。
あいつ盗み聞きしてやがったのかよ……。
後でこめかみぐりぐりの刑だな……。
「駄目だー……」
「台詞は何とか覚えられたけど」
「つーか澪、笑い過ぎだろ」
「だって律のジュリエットって……ぷっ!」
「思い出し笑いするほどですか!」
私の隣で文字通り笑い転げる澪。
あれから練習してみたけど、結局上手く演技は出来なかった。
抱き合う演技とかキスをする(振りの)演技とかがあったのも原因かもしれない。
もしかしたら澪と本当の意味で恋人になれた未来もあったのかも……。
閉じ込めたはずの想いが私の胸をチクチク痛める。
駄目だ駄目だ、澪との距離が近いからってこんな事考えてちゃ……。
「どうしたんだよ、律?」
私が頭を振っていたのに気付いたらしく、澪が身体を起こして視線を向けた。
笑いはやっと治まったみたいだった。
「いや、ジュリエットの演技は難しいなって思ってたところだよ」
私は咄嗟に誤魔化したけど、その言葉は嘘じゃない。
ジュリエットの演技は、本当に難しい。
ジュリエットはそれこそ死ぬほどロミオを愛した。
最終的には悲劇になってしまったわけだけど、その気持ちに嘘は無かったはずだ。
私はその覚悟を持って澪を好きで居られるんだろうか?
ずっと友達のままで居られるんだろうか?
「律はさ」
急に澪が上目遣いに私の間近に迫った。
無自覚なんだろうか、罪作りな奴だ。
私は心臓の鼓動を澪に悟られない様に深呼吸してから「ん」と応じた。
「何だよ澪」
「律はジュリエット演じるの難しくないか?」
「そりゃ難しいけど言っただろ、皆を見返してやろうって」
「うん、それはそうなんだけどさ、えっと……」
「?」
「私が相手だと、難しいんじゃないかなって」
「あっ」
言われて気付いた。
澪はずっとロミオを演じるのを嫌がっていた。
それは皆の前で主役を演じるのが恥ずかしかったからでもあるんだろう。
だけどそうか……。
もしかしたら澪は私と恋人役を演じるのが嫌だったのかもしれない。
そりゃそうだよな、私があんな事をしちゃったんだから。
あの時のセックスを思い出して、嫌な気分になっちゃってるんじゃないだろうか。
それで頻りにロミオ役を降りようとしてたのかもしれない。
切なさが込み上げて泣き出してしまいそうになる。
だけど泣かない。
それもこれも私の自業自得なんだ。
私がしなくちゃいけないのは泣く事じゃなくて、澪の気持ちを汲み取ってやる事なんだ。
だからこそ、私はまず澪に謝らなくちゃいけない。
「ごめんな、澪、分かってやれてなくて」
「律?」
「私が恋人役なんて、演技でも嫌だよな?
ごめんな、今まで気付けなくてさ。
ロミオ役、クラスの誰かにやってもらえないか頼んでみるよ。
もしかしたらいちごなんか似合うかもな、あいつは嫌がるだろうけど頼んでみる。
澪が本気で嫌ならする必要無いよ、ロミオ役」
言いながら胸が強く痛んだ。
部屋に澪が居なかったら大声で泣き出してたかもしれない。
それでも泣かずに、私は澪に言うんだ。
恋人役を演じるのを嫌がられてても、私は澪の友達で居たいから。
叶わなくても澪を好きな自分で居たいから。
沈黙。
お互いに黙り込んだままの部屋。
澪に私の心臓の動きが悟られそうで怖い。
何分くらい経っただろう。
不意に、
澪が私の手を握った。
「ごめん、律。
そういう意味じゃなかったんだよ」
「そういう意味じゃなかった……って?」
「律が私と恋人役を演じるのが難しいんじゃないかって思ったんだ。
だって私……、前に律に酷い事を言っちゃっただろ?
こんなのおかしいって、女同士なんておかしいって。
私が勝手な我儘を律に押し付けちゃって、それで……」
「澪、それは……」
それは澪の我儘じゃないだろ?
私の思春期が遅かったのが、恋が何なのか考えてなかったのが、それが間違いだったからだろ?
澪の事が好きだって分かった今ならはっきりと分かる。
あれはやっちゃいけない事だったんだ。
自分の気持ちもはっきりしないのに、ただ好奇心と楽しさでセックスをするなんて、完全に間違ってた。
だからそれは澪が気に病む事じゃないんだ。
それを上手く伝えられるかは分からない。
だけど私はそれを澪に伝えようと頑張った。
澪の事が今でも好きだって事は隠して、私の失敗を初めて謝った。
あの時の失敗を、ようやく初めて話す事が出来た。
あの時の事を謝れないままで、澪の親友には戻れないって心の何処かで思ってたから。
「よかった……」
澪が目尻の端に涙を浮かべる。
よかった、って言ってくれた。
それだけで私は救われた気分になれた。
私の方こそ嬉し泣きしたい気分だった。
「よかったよ、律……。
あの日の事、私ずっと怖くて律と話せなくて……。
話さなくちゃって思ってたのに、謝らなくちゃって思ってたのに……。
話せて……、よかった……」
「私も……だよ、澪……」
「私ね?
嬉しかったんだよ、律?
高校に入って律が軽音部に誘ってくれて。
酷い事しちゃった、律に嫌われてるんじゃないかって思ってたから。
前までと変わらず話し掛けてくれるようになって、泣きたいくらい嬉しかった」
「嫌ってなんかないよ、澪。
あの時は私が間違ってたんだ。
澪が気持ち良さそうにするのが嬉しかったって言っても、あれはやり過ぎだった。
澪の事が大切なら、ちゃんとその辺をはっきりさせておくべきだったのに……」
「私の事が……大切……?」
「うっ……。
あ、ああ、そりゃ大切だよ、澪。
大好きで大切な澪だ。
だからあの時はあんな事しちゃいけなかったんだ。
それを教えてくれたのが澪、お前なんだ」
「私の事、今でも、好き?」
「えっとそれは……」
「聞かせて」
「……好きだよ。
好きじゃなきゃ、あんなに勇気出して同じ部なんか誘うかよ。
だけど安心してくれ、澪。
もう澪が嫌がる様な事、私は絶対に……」
「律っ!」
瞬間、澪の綺麗な黒髪が私の目の前を舞った。
私の大好きな澪の、私の大好きな黒髪。
それに目を奪われている内に、澪の手はいつの間にか私の太股に触れていた。
触れている?
澪の手が?
驚いた私は絞り出すように呻く事しか出来なかった。
「止せよ、澪……」
私は言うのに、澪の顔が私の目前に迫って来る。
残り数センチで唇が触れそうな距離。
なのに澪の動きは止まらない。
もう一度、私は澪に強く伝える。声は震えていたけれど。
「澪!
またあの時の過ちを繰り返す気か?
あの時のは私の過ちだったんだ、間違いだったんだ。
私みたいにその場の空気でまた泣くような事をするつもりなのか?」
「そんなつもりはないよ、律」
澪は譲らない。
その場の空気に流されてる様子も無い。
澪はまるで、そう、ずっと前からこうする事を決めてたみたいに迷いが無かった。
吐息が触れる距離で澪が語り始める。
「あれから……、あれからずっと考えてたんだ。
どうして『好きな男』とって決め付けてたのかなって。
女同士なんておかしいのに……、どうしてこんなにも律と身体を合わせたいと思うのかなって」
澪が私と身体を合わせたい……?
それはつまり私とまたセックスしたいって意味だろう。
簡単には信じられなかった。
澪は女同士のセックスが嫌で私を拒絶したんじゃなかったのか?
だけど澪の表情は真剣で、その瞳にも嘘は無かった。
「ずっと……、三年間ずっと考えてて、やっと答えが出たんだよ、律。
私は女同士のセックスが怖かったんじゃない。
律とのセックスが気持ち良くて、気持ち良過ぎて、幸せで……。
それが怖かったんだ。
律とのセックスに溺れて、自分の気持ちが見えなくなるのが怖かった。
だから『女同士のセックスなんておかしい』って逃げたんだ。
それっぽい理由を付けて律を嫌いになる事から……、
ううん、自分の本当の気持ちに向き合う事から逃げてたんだ。
でも……、でもね、律。
律が変わらず私の傍で笑っていてくれて気付けたんだ。
私はやっぱり律が好きだったんだって。
その気持ちを受け容れるだけの勇気があの時の私に無かっただけなんだって。
本当に……、答えは簡単だったんだ。
性別は関係無い……。
人間はさ、『大好きな人』とセックスしたいって思うんだよ。
私にとってそれは……」
澪の唇がどんどん近付いて来る。
高まる鼓動。
目眩で意識が朦朧としそうだ。
「律なんだよ」
重なる唇。
最初は軽く。
少しずつ激しく。
あっ、と思った時には遅かった。
気付いた時には私の口の中に澪の舌が入っていて、私もその舌と自分の舌を絡めるのに夢中になった。
澪……、あれから何度も夢に見ていた澪の唇。
澪とのキス……!
「はあっ……、はあっ……!」
名残惜しく唇が離れた時、私は自分が息を忘れていた事にやっと気付いた。
息くらい忘れるよ。
だって澪とのキスは本当に何十回と夢に見てたんだ。
夢に見る度に罪悪感でいっぱいになってた。
だけど今は、罪悪感なんて感じる必要が無いキスを、現実に澪と交わせてる。
舌まで絡ませられてるんだから……!
私がそうしてぼんやりしていると、澪が照れ臭そうに笑った。
「そういえばさ、律」
「な、何……?」
「これってファーストキスだよね?」
「あっ……」
そうだった。
澪とは何十回もセックスして来たけど、キスだけはした事が無かった。
私は澪にキスしなかったし、澪からもねだって来なかったからだ。
あの時の私達でもそれくらいは分かってはいたんだ。
キスは……、キスだけは、本当に心が通じ合った恋人にしかしちゃいけないんだって。
セックスよりも単純な愛情表現だけに、私達は逆にそれを避けていたんだ。
お互いの事を恋愛対象と考えるには、まだ二人とも幼過ぎたから。
そんな私達がやっとキスをした。
とっても幸せなキスが出来た。
これが意味するのは、きっと……。
「ひょっとしてファーストキスじゃなかったの……?」
「ええっ?」
私が黙り込んでいた理由を勘違いしたのか、澪が泣きそうな表情を浮かべた。
そういう勘違いしちゃったか……!
「えっとだな……」
「そうだよな、私律に酷い事しちゃったし……。
あれだけ時間があったら律の事を好きって言う誰かも……んんっ?」
泣き出しそうな澪の唇を今度は私から奪う。
柔らかくて、温かくて、幸せになれる澪とのセカンドキス。
二人で後頭部を抱え合って、舌と舌を強く絡め合った。
「馬鹿澪め、ファーストキスに決まってんだろー?」
「りつぅ……、嬉しいよぉ、りつぅ……!」
唇を離して言うと、澪は嬉しそうに目尻の涙を拭った。
その仕種に私の胸はまた激しく鼓動する。
可愛い……、何て可愛い顔するんだよ、澪……。
今までセックスをして来て、澪がこんなに可愛い顔を見せるのは初めてだった。
やっぱり私は恋もキスもセックスも何も分かってなかったんだ。
想いの繋がったキスがこんなに幸せだなんて思ってもみなかった。
幸せが全身を駆け巡ってる気分だ。
「もう我慢出来ないよ、律……」
澪が制服を緩めながら私のシャツに手を掛ける。
その目は潤んでいて、身体も火照ってる感じに見えた。
私だって澪と同じ気持ちだ。
だけどやっぱり私は確認しておかなくちゃいけない。
「いいのか?」
「いいよ、律。
私、本当は律とずっとこうしたかった。
こうしたかったけど、怖くて伝えられなかったんだ。
律の事が本気で好き過ぎて、何も言えなくなってた。
あの時ちゃんと気持ちを伝えられなかった自分が嫌になってた。
だけどやっと……、やっと律に素直な気持ちを伝えられたんだ。
もう我慢出来ないし、好きって気持ちが溢れそうなんだ。
好き……、大好きだよ、律……!」
「私も……だよ、澪。
私だって好きだ! 澪の事が大好きだ!
澪と……、澪とセックスがしたい!
恋人のする本当のセックスがしたいんだよ……!」
「嬉しいよぉ、律ぅ……!」
言葉の後、あっという間に服を脱ぎ捨てる私達。
全裸になった澪を見るのも、全裸になった私を見せるのも珍しい事じゃ無いはずだった。
セックス自体は何回もして来た。
なのに興奮が止まらない。
裸を見てるだけで、裸を見られるだけでイッちゃいそうだ。
これが本当のセックス……!
今回こそ最高に気持ちを込めて澪を気持ち良くしてやるんだ……!
そう思ってたのに。
「こ……、これは違うっ!」
予想外の展開に私は叫んでしまっていた。
「何が違うの、律?」
私の乳首を舐めながら澪が顔を上げる。
澪に触れられてるってだけでイキそうだけど、これだけは言っておかなきゃいけない。
「今まで攻めてるのは私だったのに、どうして今日だけ澪が攻めてるんだよっ!」
そう、今までのセックスで攻めてたのは大体私だった。
澪が私を攻めたのなんて数えるくらいしかない。
私がやってみてってねだった時だけだったはずだ。
それなのに今日は私が何を言う前から澪が先に攻めていた。
こんなはずじゃなかった。
今までのお詫びの気持ちも込めて、澪を最高に感じさせてやるつもりだったのに……!
「私だって律を気持ち良くさせたかったんだよ」
「それは分からなくもないけど……ああっ!」
澪の左手の親指が私のアソコのクリトリスを弾く。
全身に電撃が奔ったような感覚。
溶けちゃうよ、澪ぉ……。
私が涙目を向けると、澪は満足そうに微笑んだ。
「そう言いながら律だってすっごい敏感じゃないか。
尋常じゃないくらいアソコが動いちゃってるぞ?
そんなに私に攻められるのが嬉しいの、律?」
「ああっ、だっ、だって……、私、ああっ、だってぇ……!」
言えない。
あれ以来、これまでオナニーもほとんどしてなかったなんて。
それで身体中が敏感になっちゃってるだなんて……。
「ああっ、ひゃっ、ああっ、澪っ、激しっ、激しい……っ!
ひゃんっ、ひゃっ、あっあっあっ……!」
「律、可愛い、可愛いよ、律ぅ……!」
「んあっ……、んああああああっ!」
「聞かせて、律の可愛い声、もっと聞かせて……!」
澪の攻めが止まらない。
私の全身にキスの雨を降らせて、おっぱいも激しく揉んで、
その可愛くてテクニシャンな舌は、いつの間にか私のアソコとクリトリスの場所に辿り着いていて……。
もう……イッちゃうよお……!
朦朧とする意識の中、私は澪の指が自分のアソコを弄ってるのが目に入った。
激しく指を出し入れさせて、アソコの液を溢れさせてる。
最後の抵抗として、私はどうにかそれを指摘してやる。
「なっ、ああっ、何だよ、澪……。
お前だってやらしくオナニー……、あんっ、しちゃってるじゃんかぁ……!」
「するっ……、ああっ、するに決まってるよっ……!
だってこんなに可愛い律の姿見てたら、我慢……、んああっ、我慢出来ない……っ!
律でオナ……、オナニーするの、ずっと我慢してたんだもん……っ!」
ははっ、澪も私と同じにオナニーを我慢してたんだな。
二人ともずっと同じ気持ちだったんだな……。
嬉しくて幸せで、限界だった。
「イクっ! 澪っ、澪っ、イッちゃう!
もうイッちゃう……っ!
ああっ、澪にイカされちゃう……っ!」
「いいよ、律……!
イッて……! イッて、イッて……!
私もイクからっ、すぐに追い掛けるからああああっ!
イッちゃってええええええっ!」
「ああ……、イクよっ!
澪に……、澪に攻められてイクううううっ!」
「律うううううううっ!」
澪のエッチな声を耳に響かせて、私は全身を震わせてイッた。
攻められて数分も経ってない。
なのに私は気を失いそうなくらい気持ち良くなっていた。
息をするのが苦しくて、すぐには体勢を戻せないくらいだ。
久し振りだってのもあるかもしれない。
だけどこんなに気持ち良くなれたのは、きっと澪と気持ちを通じ合わせられたからだ。
長い長い遠まわりをして、やっと本当のセックスをやれるようになったからだ。
私はそれが……。
それがすっごく幸せだ……!
「はあっ……、はあっ……!」
気が付けば澪も私と同じ様に肩で息をして震えていた。
澪も澪で久し振りで最高のオナニーが出来たんだろう。
昔見た時より成長したおっぱいやお尻、アソコが艶っぽくて興奮する。
何だろう、止まらない。
さっきイッたばかりなのに、溢れ出るエッチな液が止まらない。
溢れ出る澪への想いが止まらない。
「みーおっ」
私は震えてる澪のほっぺにキスしてから、どうにか身体を起こさせる。
向かい合って座った体勢になると、私は正面から澪を抱きしめた。
おっぱいとおっぱいが重なってちょっと気持ち良い。
「律……?」
「オナニー、気持ち良かったか?」
「オナニーとか平然と言うなよ……」
「さっきまでそれをやってたのは澪ちゃんでしょー?」
「そ、そうだけど……」
「んで、気持ち良かった?」
「そりゃ久し振りだったし……」
「私でオナニーするのを我慢してたんだって?」
「うっ……」
澪が顔を真っ赤に染める。
今までも真っ赤だったけど、今の真っ赤はそれ以上に真っ赤だ。
叩かれるかなって一瞬思ったけど、澪はそうせずに恥ずかしそうに呟いた。
「律におかしいって言っといて、自分だけオナニーなんて出来ないよ……」
「律儀だよなー、澪は」
「そ……、そういう律はどうだったんだよ?」
「私もしてなかったよ、澪。
何度も澪の事を考えてオナニーしようとしてた。
でも我慢したんだ。
そんな事したら澪に悪いって思ったから。
澪の友達のままで居られなくなるって思ったからさ」
「そっか……」
「だけどもういいんだよな?
私達は友達じゃなくて、親友でもなくて、恋人にもなれたんだよな?」
「こ、恋人……」
「嫌なのか?」
「う、ううんっ!
嫌じゃない……、嫌じゃないよ、律!
私、律の恋人になれて嬉しい!」
「へへっ、ありがとな」
微笑みながら軽くキス。
流れそうな澪の涙も舐め取ると、私は澪の耳元で囁いた。
最終更新:2013年11月16日 07:59