紬「ですのーと?」
唯「うん。最近はまっちゃったんだ」
紬「死神さんが出てくるお話ね」
唯「ムギちゃんも知ってるんだ?」
紬「菫に借りて読ませてもらったから」
唯「読ませてって、原作は小説なの?」
紬「あっ、唯ちゃんは映画を見たんだ」
唯「映画もあるの? 私が観たのはアニメだよ?」
紬「私が読んだのは漫画。漫画が原作なの」
唯「ふぅん。それじゃあ漫画も読んでみないと。でも映画もあったんだ……」
紬「唯ちゃん?」
唯「うん。どうせなら映画館の大きなスクリーンで見てみたかったなって」
紬「うーん」
唯「どうかした?」
紬「映画館はさすがに無理だけど、私の家で見る?」
唯「あっ、大きなテレビがあるんだ?」
紬「それもあるけど、ホームシアターがあるの」
唯「ホームシアター?」
紬「うん。ちょっと大きな画面で映画とかを楽しめる部屋のこと」
唯「行く行く! 大きな画面で見てみたいし」
紬「それじゃあTSUTAYAに寄ってから、私の家に行きましょうか」
唯「ここがホームシアター?」
紬「うん」
唯「スピーカーしかないけど」
紬「ぽちっとね」ポチ
ういーん
唯「あっ、スクリーンが降りてきた」
紬「それじゃあ見ましょうか。あっ……」
唯「どうしたの、ムギちゃん?」
紬「前編だけで126分もあるの。後編は140分だって」
唯「長いね」
紬「うん。90分ぐらいだと思ってたのに……」
唯「遅くなると都合悪い?」
紬「私は大丈夫だけど、唯ちゃんは?」
唯「私も大丈夫だよ」
紬「でも、憂ちゃんは?」
唯「今日は和ちゃんの家に泊まるんだって」
紬「憂ちゃんと和ちゃん、付き合い始めたんだよね?」
唯「うん。つい一ヶ月前からね。最近あの二人熱々でこっちが照れちゃうよ……」
紬「少し、寂しい?」
唯「……ちょっとだけ」
紬「寂しいなら、そう憂ちゃんに言えば?」
唯「それはいいよ」
紬「どうして?」
唯「だって付き合い始めたばっかりだし、寮に入ったらどうせ離れ離れになっちゃうんだから」
紬「……そう。じゃあ、今日は精一杯唯ちゃんをおもてなししなくっちゃ!」
唯「それよりさ、DVD早くみようよ」
紬「うん!」
唯「ふぅ…」
紬「ふぅ…」
唯「普通かな」
紬「そう? 私はわりと良かったかなって思ったんだけど」
唯「どこが良かった?」
紬「ちゃんとわかりやすかったから」
唯「わかりやすい?」
紬「うん。それぞれのキャラクターをちゃんと描けてたし、感情移入していけるつくりになってたから」
唯「なるほど……」
紬「後半はお夕飯を食べてから見ましょうか」
唯「うん」
唯「……お腹いっぱい」
紬「ふふっ、唯ちゃんは本当に甘いモノが好きね」
唯「御飯の後にケーキが待ってるなんて油断してたよー」
紬「なにも全部食べることはなかったのに」
唯「無理無理。残すなんてもったいなさすぎるもん」
紬「明日の部活に持っていく分がなくなっちゃった」
唯「えっ?」
紬「冗談よ」
唯「ふぅ……びっくりしたよ」
紬「明日の分もちゃんとあるから安心して」
唯「うん!」
紬「それじゃあ後編を見ましょうか」
唯「ふぅ……」
紬「ふぅ……」
唯「良かったね」
紬「ええ」
唯「アニメの最後って漫画と同じかな?」
紬「多分そうかしら」
唯「私は映画の終わり方のほうが好きかな」
紬「うん。綺麗に終わってよかったよね」
唯「ムギちゃんも映画版のほうが好き?」
紬「私はやっぱり原作がいいかな」
唯「なんで?」
紬「映画も良かったけど、ちょっと綺麗過ぎると思うから」
唯「ん……綺麗に終わったほうがいいんじゃないの?」
紬「私、綺麗過ぎるオチはあんまり好きじゃないの」
唯「どうして?」
紬「なんだか、全部終わっちゃったって感じがして」
唯「ふぅん。ムギちゃんは変わってるね」
紬「そうかもしれないね」
唯「さて、そろそろ帰らなきゃ」
紬「帰っても誰もいないんでしょ?」
唯「だけど、いつまでもお邪魔してるわけにはいかないよ」
紬「……泊まっていかないかな?」
唯「でも……」
紬(迷ってる。それなら……)
唯「……」
紬「アイスもつけちゃう」
唯「お願いします!!」
紬「やった!」
唯「……でも、迷惑じゃない?」
紬「ううん。全然そんなことないんだから」
唯「それじゃあ、お願いするよ」
紬「お願いされました」
唯(それから二人でお風呂に入ってトランプをやった)
唯(最初はババ抜きをやったけど連戦連敗してしまった)
唯(私は考えてることが顔に出ちゃうらしい)
唯(次はポーカーをやったけど、これもボロ負けだった)
唯(最後にスピードをやった。4勝3敗。勝ったご褒美と言ってムギちゃんはアイスを用意してくれた)
唯(それから寝る時間になった)
唯(ムギちゃんは私のために客室を用意してくれた)
唯(だけど、断った。ムギちゃんのベッドはとても大きいから。二人で寝ても十分余るぐらい大きいから……)
唯(ううん、それは嘘。本当は――)
唯(ムギちゃんと一緒のベッドで寝たかったから)
唯「ムギちゃん?」
紬「……」zzz
唯(よく寝てる)
紬「……」zzz
唯(眠り姫みたい……)
紬「……」zzz
唯(お客さんより先に寝るなんてずるいぞー)プニプニ
紬「……」zzz
唯(ぐっすり寝てるとキスしちゃうよー)プニプニ
紬「……」zzz
唯(うーん。眠れないや。何かすること……そうだ)
紬「……」zzz
唯(ムギちゃんが用意してくれた漫画版DEATH NOTEでも読もうかな)
唯(邪魔にならないように、勉強机に座って、小さなライトをつけて)
唯「……」ペラ
唯「……」ペラ
唯「……」ペラ
唯「……」ペラ
唯「……」ペラ
唯(ふぅ……ちょっと休憩)
唯(……)
唯(ムギちゃんいつもここで勉強してるんだ)
唯(……)
唯(……)
唯(///)
唯(……うん、続き読もう)
唯「……」ペラ
唯「……」ペラ
唯(あっ、このシーン……)
唯(デスノートを二重底の引き出しの中に隠すシーン。映画ではなかった気がする……)
唯「……」ペラ
唯「……」ペラ
唯(……まさか)
唯(ないない。でも……気になる)
唯(ムギちゃん、ごめん)
唯(引き出しを開けて、底を確認…………!)
唯(本当に二重底になってる!?)
唯(ま、まさかムギちゃんもデスノートを!)
唯(いやいや」、絶対ないって。デスノートがあるのは漫画のなかだけだよ。……映画やアニメにもあるけど)
唯(って、これは……)
唯(ノート……ピンク色の。表紙に何か書いてある……つむぎノート?)
唯(中身は……『◯友達とハンバーガーショップに行きたい』『お祭りで焼きうどんを食べたい』)
唯(『友達の家に泊りに行きたい』『◯友達と一緒にバンドをやりたい』)
唯(『◯漫画みたいな恋がしたい』『お茶碗を作ってみたい』『◯白いブラックサンダーを食べてみたい』)
唯(……これは)
唯(ムギちゃんの夢……)
唯(このノートにはムギちゃんの夢が書いてあるんだ)
唯(◯がついてるのは叶った夢かな)
唯(……あっ、ここからりっちゃんについて書いてある。『◯りっちゃんと駄菓子屋にもう一度行きたい』)
唯(『りっちゃんと映画を見に行きたい』『◎りっちゃんのオデコにデコピンしてみたい』……)
唯(次は澪ちゃんについて書いてある。『◯澪ちゃんと二人で遊びに行きたい』『×澪ちゃんと一緒に2kg痩せる』……)
唯(今度はあずにゃん。『◯梓ちゃんにギターを教えてもらいたい』『梓ちゃんに猫耳だけじゃなくて肉球もつけたい』……)
唯(……ムギちゃん、ちょっとマニアックだよ)
唯(次は私かな……)ドキドキ
唯「……」ペラ
唯(あれ……ない。次は和ちゃん、その次は憂、純ちゃん、更にその次はしずかちゃん、その次は……)
唯(わ、私のはきっと最後にあるんだよ……)
唯(ほら!)
『軽音部のみんなとずっと一緒にいたい』
唯「……」
唯「……」
唯(ムギちゃんってひょっとして私のこと嫌いなのかな?)
唯(夏休みに何度も家に泊りにくるように言ったのに、全部断られちゃったし)
唯(……)
唯(ううん。ムギちゃんが私のことを嫌いなんて……そんなはずないよ! きっとどこかに……)
唯「……」パラパラ
唯「……」パラパラ
唯「……あっ!!!」
唯(お、思わず大声だしちゃった)チラッ
紬「……」zzz
唯(うん……。ちゃんと寝てるみたい)
唯(でもこれって……)
唯(私のことが小さく一行だけ……)
『唯ちゃんの妹になりたい』
紬「……」プニプニ
唯「……」zzz
紬「……」プニプニ
唯「……」zzz
紬「……」プニプニ
唯「……」zzz
紬「……」プニッ
唯「うーいーもうちょっと寝かせて……」
紬「あら、憂ちゃんじゃないわよ」
唯「……もう……ってあれ」
紬「おはよう、唯ちゃん」
唯「あっ、ムギちゃん。そういえば私……昨日はムギちゃんの家に泊まったんだ」
紬「うん。思い出した?」
唯「……うん」
唯(つむぎノートのことも全部思い出しちゃったよ)
紬「それじゃあ、着替えて朝ごはんを食べに行きましょうか」
唯「……うん」
紬「ふふっ、唯ちゃん。まだ眠たそう。枕が変わって眠れなかった?」
唯「そんなとこかな」
紬「……それはごめんなさい」
唯「あ、謝らなくて大丈夫だよ。本当はデスノート読んでて夜更かしちゃっただけだから」
紬「あっ、そうなんだ。漫画版はどうだった?」
唯「それがあんまり覚えてないんだ」
紬「そうなんだ?」
唯「うん」
唯(つむぎノートの衝撃で全部忘れちゃったよ)
紬(あの日から唯ちゃんが余所余所しくなった)
紬(唯ちゃんが私の家に泊まってくれた、あの日から)
紬(何か失敗してしまったのかと思ったけど、心当たりはない)
紬(それに……嫌われてるというより、距離をはかりかねてるように見える)
紬(希望的観測だけど……)
紬(……)
紬(あの日から私のことを意識してしまったとか?)
紬(……ないない。唯ちゃんに限ってそれはないはず)
紬(理由が思い当たらないけど、今の状態は少し辛い)
紬(だからつむぎノートに『唯ちゃんと仲良くしたい』と書こうかと思ったけど、やめた)
紬(だって、それは違うから)
唯「あのっ」
紬「唯ちゃん?」
唯「今日一緒に帰らない?」
紬「うん!」
唯「それじゃあ帰ろっか」
紬「ええ」
最終更新:2012年10月19日 20:44