……

もう夜になっていた。
私達は車でゲーム会社の本社ビルへと向かい、堂々と正面から入る。
受付に適当にゲームのバグの件でと事情を説明すると、すぐに社長に連絡してくれた。

受付「社長室にご案内します」

唯「すごーい、揚げ物さん顔パスだね!」

原作者権限で顔が利くおかげで、スムーズに事が進んでよかった。

澪「だ、大丈夫かな…社長室に入ったら黒服の男達が…」

律「落ち着けって澪、そもそも神様ぶっ倒しに来たんだろ?今更怖がるなって」

紬「でもこうも普通の世界だと、逆に怖いわ…変に手出しもできないし」

エレベーターに乗り込む。

梓「…唯先輩、うっかり能力発動しちゃダメですよ。ここは普通の日本なんですからね」

唯「わ、わかってるよ~」

憂「落ち着いて話し合いで解決しなきゃだね。緊張するなぁ、社長さんなんて会うの初めて」

純「いかにもな感じのおじさんなのかな…?ぷぷっ、スーツ来たおじさんが神様ってなんかおかしいね」

「社長は若いですよ。宇宙シミュレーションシステムを考えた天才技術者でもあります」

和「天才…過ぎて、こんな事態になってしまったのね」

「そうとも言えます。本人はどういうつもりで作ったのか知りませんが、まさに神になる行為ですからね…。彼は、諸外国からは堕天使と呼ばれ批判されています」

最上階に着いた。
社長室の入口両脇には、2人の警備員の姿。
前回、無知な私がここにサインをしに来たとき、こんな人達はいなかった。
やはり、警戒されているのは間違いない。

警備員の無言の威圧をくぐり、扉を開ける。
社長…と、なんと役員全員が勢ぞろいしていた。
私の後に続き唯達が部屋に入ると、役員達からは驚きの声が上がった。中には、後ずさりして拳を握りしめたり、睨みつけてきたり、ポケットに片手を突っ込み恐らく中に入っているであろう凶器を握りしめる者もいた。
ゲームのキャラクターが現実に現れるという怪奇現象に、やはり驚いているようだ。

社長「…にわかには信じられんが、手の込んだ偽物というわけではなさそうだ」

律「…なんだよ、それが挨拶かよ!勝手にうちらのこと消そうとしておいて…」

「お、落ち着いて…」

事を荒げては危険だ。こちらには、唯の絶対的な破壊能力があるし、向こうもそれを知っている。
向こうの役員達は、殺されるかもしれないとピリピリしているようだ。
果たしてこの空間で唯の能力がちゃんと使えるのかはわからないけれど。

唯「…お願いです、私達を消さないでください!」

憂「私達は、みなさんに危害を加えたいわけじゃありません」

和「代弁者や執行者を送り込むのをやめてください…そうしてくれれば、私達は戻って普通に生活するだけです」

社長「…消去プログラムのアンインストールが望みか。ふむ…」

役員1「しかし社長、バグを放置するわけには…」

紬「バグではありません、私達はれっきとした人間です!」

純「目の前に存在してるのにまだバグとか言うわけ…?」

役員1「話を遮るな、データの分際が!」

梓「なっ…人のことをなんだと思ってるんですか!」

役員2「落ち着け!差別的発言はよせ!話が進まなくなる」

役員1「だがどうする!バグはバグだ、ここで消去プログラムをアンインストールしたらバグは放置だぞ?また同じことの繰り返しになるのは目に見えている!」

憂「私達はそんなことしません!」

社長「そういう問題ではない。お前達が今後何もしなくても、数十、数百年後の未来や、別のパラレルワールドで同じことが起こりうるという意味だ。やるならば徹底的に除去し、再発防止プログラムを組まなくてはならない」

律「だからって…私達を殺すつもりか?」

「すべてのパラレルワールドに住む人間に人権があるはずです。全体のために、彼女達を犠牲にしてはいけません」

役員3「社長…このように、人権侵害の批判はもう防ぎようがないところまできています。今回の事件もハッカーによって暴露されるのは時間の問題です。我々が彼女達を殺したと知れればもはや会社存続の危機になります」

役員1「だからと言ってバグを放置してみろ!今度はもっとうじゃうじゃと画面から出てきて民間人に被害が出るかもしれないんだ、それこそ会社存続の危機だ」

和「結局みんな会社のことしか考えてないのね…」

紬「ひどい…」

紬が怒りに震えている。多分、家柄的に企業のトップというものを知っているから、思うところも多いのだろう。

役員2「落ち着け、落ち着け。極端に考えすぎだ。バグ消去は当然批判対象になるし、この目の前にいる人達を殺すことになる、そうそうできるもんではない。だが何も対策をしないわけにもいかない。ゲーム内の人物の人権を守るがあまり民間に被害が出たり、我が社の社員が雇用を失うわけにもいかないんだ」

役員1「ならどうしろと…」

役員2「そこが交渉すべきところだろう。この者達の命を奪いはしないが、バグは除去する。幸いにもこちらの世界に出てきてくれているんだ、こちらでの生活を保証するというのはどうだ?」

唯「…私達のお父さんお母さんは?さわ子先生はどうなるの…?」

役員2「当然保証させていただく。こちらへ移住してもらうことになるが…」

律「なんだそれ!?こっちに住めってか!?私達の家はどうなるんだよ!」

役員3「そのような方法では人権侵害に変わりはない!向こうに返して元の生活を保証しなければいけないでしょう」

役員4「彼女達のパラレルワールドを隔離するのがよい、技術的にも可能だ」

社長「それは根本的解決にならない。そもそも次元を超えてこちらの世界に出てくるような技術をもったバグだ、隔離したところで破られるのは目に見えている、イタチごっこになるだけだ」

役員4「ならそれを上回る技術を開発するのみだ。社長、どうしたんです。天才技術者の発言とは思えない」

話が難しくなってきた。確かに、どうしたらいいのか、純粋に考えてもわからない。
いやいや、何を考えているんだ。彼女達の命を、生活を取り戻すことを考えるんだ。

「イタチごっこで何が悪いんです。このゲームを生み出したのはあなた達の責任なのです。彼女達を元の生活に戻し、ハッカー対策をし続けて行くことこそが義務ではないですか?」

役員1「責任ならお前にもあるだろう、何を偉そうに!」

「ぐっ…」

澪「や、やめてくれ!揚げ物さんは悪くない!この人はちゃんと私達のことを考えてくれてるんだ!」

紬「そうよ!この方はこのゲームの中のすべての命のことを考えてくれているの!自分の身のことしか考えない貴方達とは違うわ!」

律「そうだそうだ!」

役員3「社長!どうするんです!これでも彼女達を削除するつもりですか?ただごとではすみませんよ…?」

役員1「お前はどちらの味方だ!」

憂「み、みなさん、落ち着いて…」

役員1「黙れ!データはデータらしくしていろ、親に改造された実験動物めが!」

唯「!!」

パキン!という音がして、唯の周りに紋章が浮かび上がった。
ま、まずい!!

役員2「お、おい!口を慎め!!」律「ふ、ふざけんな!」純「信じらんない…!!」梓「ひどい…ひどすぎです」紬「……!!」澪「…あんまりだ…!」憂「お、お姉ちゃん…ダメ…!」和「唯、よしなさい!」

唯「憂は…和ちゃんは…私は…!」

紋章はかなり乱れ、バチバチと音を立てて壊れたテレビのようになっている。
この世界ではうまく発現できないのだろうか。このままでは、まさか、暴走…

役員1「うわ!まずい!やる気だぞこいつ!」

役員3「申し訳ありません、こちらの失言をどうかお許しください!」

役員2「お、おい!警備員!」

警備員が慌てて入ってくるが、唯を見るなり、化け物だと言って逃げ出してしまった。

役員4「まずい。あの警備員に情報を漏らされては困る。すぐに…」

役員1「それどころじゃない!ひ、ひいっ!助けてくれ!」

ど、どうしたら…
憂と和が唯を抱きしめているが、唯の紋章は収まっていない。

「…社長っ!!早く決断を!」

社長は何を考えているのかわからない。
表情一つ変えず唯を凝視している。
しばらく両者の睨み合いが続いた。

社長「…もうよい。無礼は詫びよう。お前達の望み通り、消去プログラムはアンインストールする」

律「…へ?」

役員2「社長!?」

社長「隔離も行わない、対症療法にしかならん」

役員4「どうするつもりだ…正気か、社長」

社長「アンインストーラーを渡しておこう。これはゲーム内で発動しなければ効果がない。元の世界に帰ってから使うことだ」

社長はスタスタと歩き始めると、ポケットからスマートフォンのような端末を取り出し、唯に差し出す。

社長「…これで満足か?」

唯「……ありがとう」

それを受け取ると、唯の紋章は収まった。
社長はそのまま歩いて部屋を出てしまった。

役員1「ついにトチ狂ったか、天才とバカは紙一重とはまさにこの事だな!もうおしまいだ」

役員2「ど、どうするつもりですか、社長!?何か策があるんですか!」

役員4「堕ちたものだ。文字通りの堕天使になったな」

役員達が後を追って去って行く。

役員3「…数々の無礼をお許しください。ゲームへのログインなら、隣の客室にある端末をお使いください。…念のため言っておきますが、そのアンインストーラーは本物です。社長が何を考えているのか存じませんが、そこだけは信じていただければ幸いです。では」

社長室にぽつんと残された私達。
これは…成功なんだろうか?

憂「お姉ちゃん…大丈夫?」

唯「…うん、ごめんね。えへへ、あんなに怒ったの初めてだぁ」

和「唯…よく耐えたわ」

最悪の事態は避けられたことに、皆も私もほっとした。

律「なぁ…なんかあっさり解決したけど、ホントにこれでいいのか?」

澪「わからない…あの社長、なんか考えてそうだな」

紬「もしかして、このアンインストーラーも罠なんじゃないかしら…」

梓「でも…あの役員さんの言い方からして、アンインストールできることは間違いなさそうですね」

純「やるしかないんじゃないですか?行きましょうよ!!」

「そうですね…不安ではありますが、それを使いましょう」

一同は隣の客室へ向かう。
そこには、客へのプレゼン用だろうか、大画面のディスプレイにゲーム画面が表示されていた。
人が入り込むには十分な大きさだ。

「みなさん、私はここまでです。大してお役に立てずすみません」

唯「ううん、ありがとう揚げ物さん!」

憂「揚げ物さんが匿ってくれたり、案内してくれたお陰でここまで来れました。ありがとうございます」

「いえいえ…一応、アンインストールの様子はここから見守っています。またこちらに動きがあったら伝えます」

律「ありがとうな!よーし、じゃぁ行こうぜ!えっと、どうすんだっけ…」

澪「行きと同じで、和の能力でこの画面から入れるんじゃないか?」

和「そうね。やってみるわ」

和が画面に手をかざすと、紋章が発動した。

和「…大丈夫そうね。行きましょう!」

梓「揚げ物さん、本当にありがとうございました。またいつか!」

皆、一人一人律儀にお礼を言って画面へと入っていく。
本当にいい子達だ…。

「…みんな、元気で」

………

真っ暗な公園。
街灯に照らされたモニュメントから、唯達が出てきた。

唯「ふう~、戻ってきたぁ…って、ええっ!?」

そこには代弁者と執行者が多数、待ち構えていた。

律「げっ、待ち伏せかよ!?」

梓「しまった…武器は揚げ物さんの車に置いてきちゃいましたよ!」

紬「唯ちゃん、早くアンインストーラーを!」

唯「え、えっと、これどうやって使えば…」

澪「の、和!パソコン詳しくないか!?」

和「うーん…さすがにFD人の技術は…とりあえず唯、貸して。あなたは敵を…」

唯「う、うん!」

と、同時に執行者達が攻撃を開始する。
唯は翼を出して飛び回り敵を撹乱し、その隙に皆は逃げながら、武器防具になりそうなものを拾っていく。
それを憂が強化し、一応の迎撃態勢は整った。しかし、肝心のアンインストーラーの使い方がわからない。

和「ええと…わかんないわね、これ私の能力で何とかなるものじゃないみたい」

暗闇の公園に、戦闘による激しい閃光が飛び交う。
それを見つけ、近くで待機していた平沢夫妻が車で駆けつけた。

平沢父「唯ーっ!」

唯「あ、お父さん!ねぇ、アンイン…なんだっけ」

憂「お父さん!これ、使い方わからない…?執行者をアンインストールできるはずなんだけど…」

和「これです。ちょっと難しくて…」

平沢父「アンインストール…そういうことか…」

平沢母「なんとなく予想ついたわね。これならいけるんじゃない?」

平沢父「うん、できそうだよ。ちょっとばかり、敵を抑えててくれるかい」

アンインストール、の一言で夫妻はこの世界の真実を理解したようだ。
端末を夫妻に託すと、唯を先頭に一同の反撃が始まった。

平沢父「この世界はプログラム…そう考えればいろいろ説明がつくね」

平沢母「紋章っていうのは要するにプログラム言語のことだったのね…何でもっと早く気づかなかったのかなぁ」

平沢父「いやぁ、でもこれで大分やりやすくなった…よし、これでOKだろう」

夫妻はあっさり解析を終了し、アンインストーラーが起動される。
突然、すべての執行者、代弁者が動きを停止。もがき苦しみ始め、足元から粉になるように消えていった。

平沢父「やった!」

唯「おおーっ、みんな消えちゃった!」

梓「よかった…これで、解決したんですね」

純「…んー、あの社長は結局何考えてたんだろ?」

皆が喜ぶ中、急に地震が起こった。

澪「うわ、地震だ…!」

律「えーっと、これまさか…やっぱりそういう展開なんですかねぇ」

紬「やっぱり、罠…? あ、あそこを見て!」

紬が指差した先には、暗闇で見づらいが、どす黒いワームホールのようなものがあった。
そこから出てきたのは、これまた見えづらいが、巨大な人の形をした真っ黒な生命体。
目が妖しく光っており、かろうじてその位置を認識できる。

…やはり、社長に何か仕込まれたみたいだ。

梓「なんですかあれは…やっぱり、騙されたんですね!」

純「あの黒いの、明らかに目がヤバいって!強いんじゃない!?」

何が起きたんだろう?
確かにあのアンインストーラーは本物で、執行者は消え去った。
というか、社長はどこへ向かった…?
何を考えてる…?

平沢父「なんだあれは…!」

父が端末をいじりはじめた。
そうか、この人…この人なら解析できるのかもしれない。

黒い生命体は奇声を発しながら、竜巻を起こした。
かなり大きい。これはみんな巻き込まれてしまう!

憂「危ない!みんな逃げて!!」

憂は最大限に能力を使用する。
逃げ回る皆の服をできるだけ強化し、舞い上がる砂をできるだけ無効化し、自らも走った。
しかし、完全に無効化できないほど、その竜巻は強力だった。上空へ飛んで避けた唯以外が吹き飛ばされる。

梓「きゃぁぁぁ!!」

皆地面に叩きつけられ、呻き声を上げる。これは危ない。
離れたところにいた夫妻を除き、一気に唯以外戦闘不能になってしまった。

平沢母「憂っ!!」

憂「あ、危ない、お母さん…来ちゃだめ…」

憂のもとへ飛び出してきた母を狙い、黒い生命体が奇怪な動きで走り寄ってくる。

唯「だめぇぇぇぇ!!!」

そこへ高速で唯が突っ込んできて、背中のあたりに直撃する。
黒い生命体は勢い良く弾き飛ばされる。しかし、貫通はしていない。
すぐに起き上がると、翻って唯へ反撃を開始した。

平沢父「…わかった。アンインストールを引金に別の消去プログラムが発動するように仕組まれていたんだ。プログラム名『断罪者』…急ぎで作ったのか、荒が目立つよ。執行者より強力だけど…なんとか妨害できないか…」

…まさか、社長はこの数分の間にトラップとなるプログラムを組んでいたって言うのか!?

唯と『断罪者』の戦闘は続いているが、思ったように攻撃が通じないようだ。

平沢母「憂…大丈夫?」

憂「大丈夫…ちょっと足痛めただけ…」

唯と断罪者の一対一の戦闘が続く。
少しずつ、唯が押され始めているようだ。

平沢母「…憂、まだ能力使える?」

憂「…うん」

平沢母「うちの車に使ってほしいの…今から言う文字列を頭に思い浮かべながらやってくれないかな?」

憂「えっ、車を…いいの?」

平沢母「ふふ、さっきの竜巻の砂ぼこりでもう傷だらけよ。いいの」

母は暗号のような意味不明な文字列を憂に伝える。
この世界がプログラムだと知ったからか、憂の能力を強化するような方法を思い付いたのだろう。

憂が平沢家の車の性質を変えると、車の存在があやふやになったかのように、バチバチと音を立てて乱れ始めた。
母はそれに乗り込むと、断罪者に向けてアクセル全開で突進する。

平沢母「えええぇぇぇーーい!!!」

唯「お母さん!?」

車の直撃を受けた断罪者は不自然なぐらいに激しく吹き飛び、公園の木に衝突して落下した。
ピクピクと痙攣し、明らかにダメージを受けている。

平沢母「ビンゴね!」

平沢父「よし、解析できた!アンインストールはできないけど、少し弱体化したよ!唯!今なら!」

唯「うん、いっくよー!!」

唯の渾身のレーザーが放たれる。
今度は攻撃が効いた。断罪者は、一撃で消滅した。

唯「…はぁ、はぁ…よかった」

やっとのことで敵を倒したが、唯と憂は力を使いすぎて消耗し、仲間達も竜巻で吹き飛ばされた際の怪我で動けない。

平沢父「この端末は便利だな…全部はできないけど、ある程度ハッキングしてプログラムを改築できるよ。残酷なようだけど、私達がプログラム生命体なら、こういうこともできる…」

父が端末を操作すると、なんと皆の傷が回復した。

律「ありゃ?治った…?」

純「すご、まるでゲームじゃん!」

梓「そうだね…ほんとにゲームなんだ…」

平沢父「あ…なんだか申し訳ない」

律「いやいや、悪いのは社長ですって!ってかあの社長どこいったんだ?」

紬「社長室から出て行ったっきりね。FD空間に戻って追いかけなきゃ!」

平沢父「あ、ちょっと待ってくれ!その社長?らしき人は、こっちの世界にいるよ」

ええっ!?
…と、驚く皆に合わせて私も声をあげてしまった。
社長はどうやってゲームの中に?精神を投影しているんだろうか。
…まさか、ゲームのキャラになりきったり、自己を投影させたオリジナルキャラクターであの子達と交流したり…そういう機能もあったのだろうか、このゲーム。
批判を受け、隠していたとしてもおかしくない。

平沢父「この世界に特殊な空間を作って、そこにいるみたいだ。そこには多分、マスターコンピュータとでも言うのかな、このゲームの中枢があると思う。それでプログラムを改築して断罪者を放ってきたんだ」

なぜわざわざゲーム内に?
そのマスターコンピュータはこちらの世界よりも性能がいいのだろうか?
社長の考えが読めない…何を考えているんだ。

平沢母「そこには行けそう?管理者権限が必要なんじゃないかな」

平沢父「行けるはず。管理者権限を偽装できるよ、和ちゃんの能力なら」

和「…私が、ですか?」

平沢父「うん。桜高の音楽室の近くに亀のモニュメントってあるかな?」

唯「うん、階段のところにたくさんあるよ!」

平沢父「ビンゴだ。音楽室の近くにあるやつが、管理者の空間に入るための端末だよ。それに和ちゃんの手で触れれば、侵入できるはず」

平沢母「じゃ車で学校まで送って行くわ!みんな乗れる?」

憂「乗れるかな?8人も…」

純「あ、私後ろのトランクでもいいですよ!」

律「私は車の上でもいいぜ!こんな緊急事態でしかできないしな」

澪「いや、やめろって!車に傷つけちゃうだろ」

平沢母「何でも大丈夫!さっき断罪者に突っ込んだからもうボロボロよ」

やいのやいのと騒ぎながら、なんとか8人が車にぎゅうぎゅう詰めで乗り込んだ。
しかし、父は乗り込まない。

唯「お父さんは?」

平沢父「ごめんよ、一緒にはいけない。断罪者はもう各地に現れてるんだ。この端末で対処していかないと…」

平沢母「私もみんなを送ったら戻ろうか?」

平沢父「うん、お願いするよ。真鍋さんにも連絡しなきゃ。全力でこれを解析しよう」

平沢母「わかった!じゃぁ出発しましょう」

唯「お父さん…またね!」

憂「気をつけてね!」

平沢父「ああ、またね。頼むよ…この世界を!」

一同は桜高へと出発した。



4
最終更新:2014年01月13日 15:24