梓「えっと、編み針はこれでいいとして……次は毛糸だけど」
梓「うーん……どの色がいいかなあ……」
梓「明るい青より、ちょっと大人っぽく紺色に近いのにした方がもっと似合うかな」
梓「よしっ、この色の毛糸にしよう!」
・・・
純「おっ、あーずさっ! こんなとこでなにしてんのっ」
梓「あ、なんだ純か」
純「なんだとはなによー頼りになる友にして強敵(とも)、
鈴木純に向かってー」
梓「はいはい、頼りにしてまーす」
純「ひどい棒読み……ところでその袋、何買ったの?」
梓「え、これはその……」
純「ま、まさか!? ○ンキホーテでちょっとばかり大人が使うようなおもちゃを……」
梓「ばか、そんなわけないでしょ! 全然袋も違うし」
純「ああごめんごめん、いくら梓がエロ猫でもこのちっこい幼い外見じゃ購入自体100%中の100%無理…」
梓「ふんっ!」シュインッ
純「ぎゃあ! もふもふを引っかかないでー!」
梓「まったく……ばかなこと言うからだよ」
純「へいへい、で何買ったの?」
梓「別に……編み針と毛糸だよ」
純「む、これはまた珍妙な……ははーん?」
梓「な、何よまたニヤついた顔して」
純「いやね、もしかしたら誰かに手編みのマフラーでも作ってプレゼントするのかなーって思って」
梓「うっ、するどい」
純「そりゃこの材料見たら分かるって、そしてプレゼントする相手は澪先輩でしょー」
梓「うぐ……正解、誕生日のプレゼントにあげたいなって思って」
純「んんーいいねー、憧れの澪先輩へお手製の誕生日プレゼントだなんて!」
梓「そ、そうかな」
純「うん、今の寒い季節ならマフラーとかちょうどいいし」
純「頑張りなよ、上手くいけば澪先輩からお礼にぎゅーって抱きしめてくれるかもよ?」
梓「そ、それは……嬉しいけど///」
純「そしてめくるめく一夜を共に……あっ、澪先輩そこは……いいじゃないか、梓のここはいつでも準備OKみたいだ」
梓「ちょっと、変な一人芝居しないでっ!///」
・・・
梓「えっと次はこっちに毛糸を、と…」
梓母「梓、枕カバー洗ったから持ってきたわよー」
梓「あ、ありがとう」
梓母「あら、編み物してるの? 珍しいわね」
梓「うん、ちょっとね」
梓母「もしかしてというか……やっぱり、誰かにあげるために作ってる?」
梓「う、うん」
梓母「そっか……梓もそういうお年頃になったのね、何だかお母さんちょっと感動だわ」
梓「なんか釈然としない……」
梓母「それで、その形からすると作ってるのってマフラー?」
梓「うん」
梓母「なら分からない所あれば教えること出来ると思うから、もしよければ相談してね」
梓「え、お母さんマフラーとか編み物出来るの?」
梓母「ええ、私も昔はお父さんにもお手製のマフラーを上げたりしたし」
梓母「梓にだって小さい頃よく手袋やセーター作ってたんだから」
梓「そう言われると……やっぱりお母さん凄いなあ」
梓母「褒めてもおこづかいは上がらないわよ?」
梓「むう、残念……じゃあ分からない所あったら聞きに行くね」
梓母「ん、頑張りなさい梓。澪さんに喜んでもらえるように」
梓「もちろん! ……ってあれ、なんでお母さん私が澪先輩にプレゼントするって分かったの?」
梓母「それはだって梓、澪さんに頭撫でてもらった日とか嬉しそうにその事いつも私に話してくるし」
梓母「ほんとのお姉さんのように慕ってるから、あげるなら澪さんだろうなと思ったんだけど……当たったみたいね?」
梓「///」
・・・
澪「さ、センターまでもう一週間切ったしスパートかけてくぞ」
律「ひえー! 今でも頭がいっぱいいっぱいなのに」
唯「このままじゃセンター前に頭がパンクしちゃうよー」
澪「ここが踏ん張り所だ、今頑張らないでいつ頑張る?」
紬「今です!」
律「……ムギ、それ微妙に違うぞ?」
唯「それじゃ確か、こーめーの縄ってのになっちゃうよ」
梓「唯先輩、縄じゃなくて罠ですよ。孔明の罠です」
唯「あっ、そうだっけ?」
紬「最近ほとんどテレビも見てないからうろ覚えになっちゃってて…」
澪「今はそれより試験に出そうな問題を一つでも解けるように頭に覚え込ませないと」
紬「そ、そうね…」シュン
澪「全部終わったら最近巷で話題になってること、色々教えるからさ」
紬「ほんと澪ちゃん!」パァァ
澪「ああ」
律「色々ね……そういうの、むしろ教えられる側じゃないかな澪しゃん?」
澪「ん? 何が言いたいんだ律」パキポキ
律「ま、待てっ、悪かったから笑いながら拳を鳴らすのはやめてくれ」
唯「そうだよ、この時期にりっちゃんの元々悪かった頭がいっそうパーになったら……」
律「唯にんなこと言われたくないわー!」バッ
唯「きゃー! ロープロープ!」
梓「もう……センター試験が近いのに緊張感ないですね……」
紬「でも緊張しすぎてトゲトゲした雰囲気になるよりはいいんじゃない?」
澪「まあ、こうしてみんなといると私もいい感じにプレッシャーが薄まるし」
澪「今は一人でいると、ひたすら勉強してプレッシャーを少しでも跳ね退けるぐらいしか出来ないから…」
梓「澪先輩…」
澪「だからかな、梓がこうして近くにいると何だかほっとするよ」ナデナデ
梓「あっ…///」
律「血の繋がりはないって分かっちゃいるんだけどな…」
紬「やっぱり絵になるわ〜二人とも」
唯「澪ちゃんいいなあ」
澪「ああごめん、そろそろ勉強始めないと」
梓(よーし、私も頑張らないと!)
・・・
梓「やった、完成!」
梓母「よく頑張ったわね梓、初めて作ったとは思えない出来よ」
梓「分からないとことかは結構お母さんに助けられちゃったけどね」
梓母「でも、ほとんど梓一人で作り上げたんだからすごいわ。やっぱり梓は自慢の娘ね」ナデナデ
梓「えへへ……」
梓母「澪さんの誕生日はまだあさってだし、ある程度余裕も出来たのはいいけど…」
梓「?」
梓母「あさって、澪さんの誕生日ってちょうどセンター試験の日でしょ?」
梓「うん……そうなんだよね」
梓母「梓、これは私の提案なんだけど……」
・・・
澪「よし、じゃあ明日に備えて今日は早めに帰るか」
律「だな、明日はいよいよセンター試験か…」
唯「必ずみんなでばっちり合格するためにも頑張らないとっ!」フンスッ
紬「ええ、みんな頑張ろう!」
梓「皆さん、私は応援することしか出来ないですけど……頑張ってください!」
律「おお、任せとけって!」
唯「よーし、あずにゃん分をたっぷり補給して明日は頑張るぞー!」ダキッ
梓「ふわあっ、今日だけですからね……」
唯「ううーん、この変わらないあったかさと小ささは素晴らしいよー」
梓「小ささは余計です!」
・・・
澪「じゃあみんな、今日は早めに暖かくして寝て明日に備えるようにな」
紬「でも復習は忘れないように……でしょ?」
澪「うん、その通りだ」
唯「じゃあみんな、明日ねー!」
紬「じゃあ私もここで、明日は頑張ろう!」
梓「頑張ってくださいね、お二人とも!」
澪「ああ、二人とも明日な!」
律「あっ!」
梓「ひゃっ!?」
澪「ど、どうした律?」
律「いやさ、消しゴムを使い切っちまってたのを思い出して……ちょっと商店街寄ってから帰るわ」
澪「もう」
梓「じゃあ律先輩も明日、頑張ってくださいね」
律「おう、じゃな二人とも!」
澪「消しゴム買ったらまっすぐ家帰るんだぞー!」
律「わーってるー!」
澪「もう……じゃあ梓ともここで」
梓「あっ、待ってください」
澪「どうしたんだ?」
梓「あの……すぐに帰るので、ちょっと澪先輩の家におじゃましてもいいですか?」
澪「えっ、どうしてだ?」
梓「ここでは、ちょっと理由は……」
澪「?」
梓「お、お願いしますっ!」ペコリ
澪「わ、分かったよ。じゃあちょっと家においで」
梓「ありがとうございますっ」
・・・
澪「ただいまー」
澪ママ「お帰りー、今日も寒かったでしょ…?」
梓「お、おじゃまします」
澪ママ「まあ澪ちゃん、この可愛い子は?」
澪「ほら、よく話してるじゃないか。部活の後輩の梓だよ」
澪ママ「あら、じゃあ貴女が梓ちゃん? 澪ちゃんから話は聞いてたけどほんとに可愛いわね〜」
梓「え、えっと、ありがとうございます…///」
澪「ママ、梓が困ってるじゃないか」
澪ママ「ごめんごめん」
澪「私達、部屋に行くけど梓にお茶用意してくれないかな」
澪ママ「うん、りょーかい」
梓「あっ、私すぐ帰りますので…」
澪「いいからいいから、外寒かったしちょっとあったまっていきなよ」
梓「す、すいません」
・・・
澪「ちょっと今部屋散らかってるけどごめんな、その辺りに座って」
梓「はい」
梓(参考書や過去問ばかり……やっぱり受験勉強すごくしてるんだ)
澪「それでどうしたんだ? 私に何か用があるみたいだけど……」
梓「はっ、はい! えっと、ええっと」
澪「お、落ち着いて梓っ」
梓「す、すいません……ではあの……」ガサゴソ
澪「うん」
梓「こ、これを受け取ってくださいっ!」スッ
澪「この袋は?」
梓「中身、出してみてください」
澪「あ、ああ分かった……ん?」
澪「……これは、マフラーか? どうしてまた」
梓「い、一日早いけど澪先輩への誕生日プレゼントです!」
澪「え、誕生日……私の……あっ!?」
梓「やっぱり忘れてたんですね、澪先輩」
澪「あ、ああ……もうここ最近はセンターのことで頭がいっぱいで自分の誕生日のこと、すっかり忘れてたよ」
澪「けどこのマフラー、商店街とかで売ってるのとは違う……見かけないタイプだな」
梓「実はそのマフラー、私の手作りなんです」
澪「ええっ!? これ梓が作ったのか!?」
梓「初めてだったので所々でお母さんに編み方教わったりしましたけど……ほとんど自分で編んだんです」
澪「すごいよ、ほつれとかも全然見当たらないし……初めてとは思えない出来だよ」
梓「そ、そう言っていただけると嬉しいです」
澪「でもどうして一日早く渡したんだ?」
梓「それは……」
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梓母「梓、これは私の提案なんだけど……一日早く渡したらいいんじゃないかしら?」
梓「一日早くって……明日、誕生日の前の日に渡すってこと?」
梓母「ええ、今年は澪さんの誕生日とセンター試験が同じ日だから前日に渡した方が激励も兼ねられると思って」
梓「なるほど」
梓母「それに、あわよくばセンター試験に挑むのに梓が作ったマフラーを身につけてくれたら…」
梓母「きっと澪さん、心強く思ってくれるわ。梓がすぐそばにいるって感じて」
梓「そ、それはどうか分からないけど…///」
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最終更新:2014年01月15日 22:25