梓「クラスに男は俺一人とか」
梓「去年共学になったっつっても、やっぱ名門女子高のイメージあるからな。桜ヶ丘って」
梓「お陰で教室でのいたたまれなさ半端なくて俺の精神ゲージがガリガリけずれていきやがる」
梓「せっかくレベル高いとこ入れたのに、これから三年ずっとこの重い空気の中生きてくとか……ないわー」
ワイワイガヤガヤ
ネードノブカツハイルノー?
アタシバレーブ
梓「(部活、ねぇ……)」ポツーン
梓「(そいやここ、ジャズ研とかあったっけ)」
梓「(一人で教室いるよりなんかやってた方が気が楽かもな)」パラリ
梓「(文化系の部活は放課後に講堂で紹介……か)」パラパラ
憂「(放課後はお姉ちゃんの演奏聞きにいかなきゃ)」ワクワク
講堂
ジャズケンノハッピョウデシター
ワイワイガヤガヤパチパチパチパチ
梓「……違う」
梓「なんかあそこ、スウィングとビッグバンドみたいなノリいいのだけを扱ってジャズって呼んでそうだな……」
梓「……絶対この話、オヤジが聞いたらキレそうだ」
梓「(っと、独り言喋りすぎた)」
ツギハ、ケイオンガクブノハッピョウデス
梓「軽音楽部?」
梓「そんな部活あったんか」
憂「あるんだよ」
梓「ってうわぁ!」ビクッ!
憂「中野くん、だよね。わたし同じクラスの
平沢憂」
梓「あ、どうも宜しく(いきなり声かけられてビビったわ……)」バクバク
憂「中野くんは部活見に来たの?」
梓「あ……あ、うん」シドロモドロ
梓「(女の子と話すの慣れねぇー……)」バクバク
憂「わたしはお姉ちゃんの演奏を聞きにきたんだ」
憂「わたしのお姉ちゃん、軽音部のボーカルなの」
梓「へ、へぇー」シドロモドロ
梓「(頼むから俺に絡まないでください平沢さん)」
♪~
梓「(軽音部って聞いて、てっきり定番のバンプかラルクでも弾くんかと思ったら)」
梓「(まさかオリジ曲とは)」
梓「(しっかし、歌詞もボーカルの声も甘ったるすぎやしねーか?)」ダツリョク
梓「(茨城名物MAXコーヒー耳から流し込まれてる気分だ……)」ダツリョク
憂「お姉ちゃん頑張ってー!」
フワフワターイム!
梓「(まぁ)」
梓「(楽しそうではあるかもな)」
音楽室
律「で、新入部員はいまだ来ない。と」ズズー
澪「もう諦め時か?」ズズー
紬「部活見学期間はもう今日で終わるしね」コポコポ
唯「ムギちゃん?このお菓子のジャム何?」ムシャムシャ
紬「ハスカップよ♪」ニコ
唯「ハスカップかぁ……」
唯「で、ハスカップって何?」
律「」ハァ
梓「すいません、軽音部ってここでいいんスか?」ガチャ
律唯澪紬「!?」
律「キミ入部希望者!?何組!?っていうか男の子!?」ズザザァァッ
唯「名前なんていうの!?あとハスカップってなんだかわかる!?」ズザザァァッ
梓「うわぁぁぁっ!」ビクゥッ
澪「二人ともやめろ!驚いてるだろ!」
紬「(……今の驚き方、なんか可愛いかも)」
梓「てなわけで、1年3組、
中野梓と申します。宜しく」
梓「あ、どうも宜しくお願いします」
梓「宜しくお願いします」
澪「……」ススッ
梓「(初っぱなから嫌われたか?俺)」
律「あ、澪のは只の人見知りだから気にしなくていいから」
梓「(よかった。嫌われてなくて)」
律「で、今中野くんのお茶注いでるのがキーボードの
琴吹紬、通称ムギ」
紬「どうも~」コポポ
梓「宜しくお願いします(あのブロンド、地毛か?綺麗な人だなぁ)」ズズ
梓「あ、おいし」
律「そんでもってここでお菓子食ってんのがギターの
平沢唯」
唯「よろしくぅ~」
梓「あ、どうも(ついに出たか甘甘ボイスの人……)」
梓「ん、平沢……?」
梓「ああ、平沢か」コクコク
律「なんだ!?中野くを既に唯の事を知ってたのか!?」
唯「わたし実は有名人!?どうしよ!サイン頼まれたら!」
律「ずるいぞぅ唯ばっかりぃ!」
梓「(……ノリいいなぁ、この人達)」ズズー
紬「ちなみになんで唯ちゃんのこと知ってたの?」
梓「あ、平沢先輩の妹さんとクラス同じで」
紬「成る程、憂ちゃんと同じクラスなのね」
梓「ですね」
澪「ところで、中野くんは楽器の経験とかある?」
律「そうだよ!そこんとこ聞こうとしたんだよ!」ヒュバッ
唯「実際なんにも出来なくてもいいよ!わたしも去年まで、ギター弾いたこともなかったし!」フンスッ
澪「それは威張って言うことじゃ無いだろ」
梓「あ、一応ギターは多少なら弾けます」
紬「へえ。男の子ってやっぱりギターに憧れるのね」
梓「いや、オヤジがジャズギタリストやってて、結構付き添いでその手のクラブとか出入りしてて、その影響ですね」
梓「自前のギターも持ってますよ」ピッピッ
梓「はいこれ」
澪「フェンダー・ムスタングかぁ。小さくないか?」
梓「ですね。中一の時に貰ったんで、今はちょっと」
唯「あ、ここにステッカー貼ってある」
紬「アメリカ軍のマーク?」
梓「横須賀でオヤジと演ったときに、米軍の人から貰った奴なんですよ」
律「本物のバンドマンかよ……」
律「で、そんなバンドマンな梓の腕前はどのぐらいなのかね!」ズイッ
梓「(最早呼び捨てかよ。まあその方がいいけど)どのぐらい、と言われても……」タジッ
律「大丈夫!ギターならここにあるから!」シュバッ
唯「あぁん、私のギー太ぁぁ」
梓「(……ギー太?)レスポールっすか。慣れないギターなんで上手く出来るかわかりませんけど」スチャッ
梓「それじゃ行きますよ」チャキッ
梓「ポルノグラフィティで、『ヒトリノ夜』」
♪~
律「凄い……楽器がギターしかないのにこの迫力って」
澪「弾きやすく、迫力を出すために色々楽譜をアレンジしてるんだ。相当にこの曲弾いてるぞ」
紬「いえ、唯ちゃんの演奏よりも力強いのも確かよ」
紬「同じギー太でも弾き手次第ではこんなに違うのね……」
♪~
梓「だからロンリロンリーっせつなくてーっ!」ギュイイ
澪「あ、ノリ過ぎて歌い出した」
唯「歌はあんま上手くないね」
梓「さけぶヒトリノよーるっ!」ギュイイイイッ!!
梓「……」
梓「(やべ、ノリノリになりすぎて後半熱唱しちまった)」
唯紬澪律「………」
梓「(あちゃー……ドン引きじゃねーか)」
梓「あ、あの」
唯「す」
梓「は?」
唯「凄すぎるよっ!」ヒュバッ
梓「えっ!?」タジッ
律「唯の言う通りだ!梓!ぜひ入部してくれ!」ヒュバッ
梓「は、はぁ」タジタジッ
澪「詰め寄るな二人とも。中野くん困ってるだろ」
澪「でも私も入部お願いするよ。中野くんがいれば百人力だ」
紬「私からも、ね」ニコ
梓「あ、はい。みなさん宜しくお願いします……」ペコリ
梓「あと平沢先輩、ギー太……でしたっけ。返しますね」
唯「そんなかしこまらなくていいよー」
唯「唯で大丈夫だから」
梓「あ、はい。唯先輩………」ペコリ
翌日・学校
梓「(結局学校まで持ってきちまったなムスタング)」
梓「(元ネタにちなんでって米軍の国籍表ステッカー貼ってある俺のムスタング)」
梓「(そもそも元ネタって本当に戦闘機の方なのか?車の方じゃないのか?)」
憂「おはよー、梓くん」ニコ
梓「あ……平沢、さん」タジッ
憂「梓くん軽音部に入ったんだって?お姉ちゃんから聞いたよ」
梓「あ、うん。まぁ」
憂「それ、梓くんのギターだよね。見せて見せて?」
梓「(やべ、俺この子苦手かも)……わかったよ。今出すから」シュルル
憂「うわー……ギー太と大分違うね……」
梓「(そりゃ構造からして違うもん)」
純「あれ?それ中野くんのギター?」
梓「そ、そうだけど」
憂「あ、純ちゃん」
梓「(知り合いなのか……)」
純「かっこいいじゃん!そのステッカーとかイカすよ!」
梓「……ギターとか興味あるの?」
純「まあねー」
梓「あ、うん。よろしく」
放課後・音楽室
梓「こんにちはー」ガチャ
唯「あ、梓くんこんにちはー」
律「遅かったじゃん♪」
梓「(本当に毎日茶ァしばいてんのかよ。ここ何の部室なんだよ)」
さわ子「こんにちは~」
梓「あ、どうも」
梓「(って、誰だ?)」
唯「あ、紹介するね。顧問のさわちゃん」
梓「(あ、顧問のセンセね)中野梓です。よろしくお願いします」ペコリ
さわ子「聞いたわよ。昨日はこの子達驚かせるような演奏したんですって?」
梓「まあ、それほどでも無いですけど……」
さわ子「……」
さわ子「中野くん」
梓「は、はぁ」
さわ子「身長今何cm?」
梓「……っと、確か161cm……」
さわ子「……」ギュピーン
澪「(あ、良からぬ事企んでる目だ)」
さわ子「ちょっとみんな、中野くん借りるわね!?」スタスタスタガシッ
梓「ちょ、借りるって」ズリズリガチャッ
律「行っちゃったな」
紬「行っちゃったね」
澪「すまん梓……」
ズリズリズリガチャッ
さわ子「お待たせ!さあ入って入って!」
梓「………っ!」
スタスタ
澪「お、おぉ……」
律「まさかの女子制服に着替えた梓……」
紬「しかもツインテールのウィッグとネコミミ装備……」
紬「それが凄い似合ってるのがまた恐ろしいわ……」パシャパシャ
唯「あずにゃんだ……」
唯「あずにゃんだよこれ!」
さわ子「やっぱり私の眼に狂いは無かったわ」
さわ子「中野くん、女顔だから女装が似合いそうだと思ったのよね」ファサー
紬「流石ですさわ子先生!(女装男子!こういうのもアリね!)」パシャパシャ
梓「(今すぐ死にたい)」ドヨンド
梓自宅
アルヒソーラレイミズハソーラレイ
梓「ったく……酷い目に合った」
梓「会って三分の人間女装させるかっつの普通」
梓「あんなのが続くなら俺軽音部辞めるぞ畜生」
ブーブー
梓「ん?着信か?」
梓「画像添付メール、平沢憂……なんだ?」
梓くんの写真、お姉ちゃんに見せてもらったよ。
すごくかわいかった♪
(あずにゃん写真)
憂
梓「ぁんの沢庵マユゲの仕業かああぁぁぁーっ!!」ズゴアアアアアアアッ!!
音楽室
唯「あーずにゃんっ♪」ギュッ
梓「だあぁ、離れてくださいっ!」グイ
唯「えー、どうして?」
梓「貞操的な問題です!」
梓「(唯先輩が抱きつく度に体が反応するんだよ……沈まれ、俺の息子よ)」
澪「(なんか梓が前屈みだ)」
律「(反応しちゃったんだな)」
梓「ってか練習しましょうよ練習」
梓「いくら何も無いとは言え、個人で練習した方がいいですよ」
澪「それもそうなんだけど、な……」チラッ
紬「今日はレモンチーズケーキよ~」ニコ
律「とりあえず、これ食べてからかな」
梓「……おいおい」
梓「っと」ジャラーン
唯「すごいすごーいっ!」
梓「いや、極めて普通の事しただけっスよ」
梓「ふわふわ時間はそれほどテクもいらないし、進行もあんまムズくないから練習さえすればこんなもんですって」
紬「初心者の唯ちゃんもいたし、クセの強い曲は難しいかなって思ってそうしてみたからね」
律「流石ムギ、そう言うとこまで気配りしてたなんてな」
紬「えっへん」フンス
梓「(玄人ぶって弾けもしないような進行ぶち込むような人じゃなくて本当に良かったぜ)」
梓「(そうだったら俺もついていけなくなりそうだからな)」
下校中・商店街
梓「ムスタングの弦そろそろ買い替えるかね……」
梓「ギー太の弦の張り替えも手伝わなきゃならないんだよな、そういや」
梓「……しーざらてぃけとぅなーぁ♪」
ピロリロピロリロ
憂「あ、梓くん」ヒョコッ
梓「……平沢。それ、夕飯の材料か?」
憂「うん。うち、両親が海外だから」
憂「ご飯は私の仕事なの♪」ニコ
梓「……唯先輩は?」
憂「んー、手伝わせたらそっちの方が怖いから、ゴロゴロしてもらってる」
梓「(なんて予想通りの答えだ)」
憂「梓くん、さっき何歌ってたの?」
梓「え?」
憂「ふーふふふふふふーん、って歌。さっき歌ってたよ」
梓「あー、知らないうちに歌ってたのか」
梓「涙の乗車券って曲だよ。ビートルズの」
憂「そうなんだ……」
憂「そうだ」ポン
憂「梓くん、今日ご飯どうするの?」
梓「今日は……オヤジも母さんも横浜でライブだからな」
梓「適当にインスタントラーメン作って食うつもりだわ」
憂「それならうちに来てご飯食べていきなよ!」
梓「え?」
憂「ちょっと多目に作るから多分梓くんの分も出来ると思うよ?」
梓「いや、そんな。平沢や唯先輩だって迷惑だろ」
梓「(それにあの人と部活以外で顔会わすのも疲れるし……平沢の前だと特に)」
憂「大丈夫だってば。ほらほら」グイグイ
梓「おい待てって……!俺はまだ了承してもいないって!」ズリズリ
平沢邸
唯「あずにゃぁーん♪」ゴロゴロ
梓「(断りきれずにつれてこられてしまった)」ムグムグ
梓「つか唯先輩、離れてください。飯食ってるとき行儀悪いでしょ」ムグムグ
唯「ちぇー」ションボリ
唯「ごちそーさまー」
唯「お風呂入ってくるねー♪」スック
憂「行ってらっしゃーい」ヒラヒラ
憂「冷蔵庫にアイスあるからお風呂上がりに食べてねー」
唯「わっほい♪アイスゥ♪」
梓「(やっぱアレが通常運転なのか)」
梓「食器片付けようか?」
憂「それは後でわたしがやるよ」
憂「その変わりに、ちょっと」
梓「え?」
憂「ギター、教えてくれるかな?」
梓「……どうしてまた」
憂「お姉ちゃんの見てて、凄い楽しそうだと思ったの」
梓「へぇ……」
憂「どう……かな?」
梓「……いいよ。俺でよければ」
憂「本当?」パアア
梓「(上目遣いでおねだりされたらそりゃ……ねぇ)」
梓「と、軽音部に入って3ヶ月が過ぎたわけで」
梓「相変わらず部活では大半は茶ァしばいて、たまに練習しての日々」
梓「むしろたまに平沢にギター教えてる時間の方がギター触れてる気がするのです」
梓「でもさすがに文化祭控えてそれはヤバイと澪先輩とムギ先輩が合宿を計画しました」
梓「この二人はマジで軽音部の良心ですね」
梓「んでもって迎えた合宿当日な訳ですが……」
最終更新:2014年01月21日 14:53