梓「はぁぁ!?唯先輩遅れると!?」
憂『そうみたい。あと30分くらいかかりそうだから待っててあげて』
律「いつも通りだな」
澪「清々しいくらいにいつも通りだ」
紬「こんなこともあろうかと、ちょっと摘まめるお菓子も持ってきたの〜♪」
梓「(……相当に訓練されてるな。この人たち)」
唯「み、みんな……ごめ……」ゼーハーゼーハー
律「だいたい予想してたから大したことないぞ、唯」
律「ほら梓、唯の肩持って」
梓「あ、はい……」ヒョイッ
唯「ありがと……あずにゃん……」ゼーハーゼーハー
梓「喋ったら体力減りますよ」
梓「(しかし、やっぱ柔らかいんだな。女の子って)」
律「よぉしっ、気を取り直して行くぞーっ!」
ザザーン ザザーン
梓「でけぇ別荘にプライベートビーチ……ムギ先輩って一体何者なんだよ」プルプル
紬「大したことないわよ」ニコ
ワハハハー アハハハー ウミダー
梓「そして例のごとく遊び出すか唯先輩と律先輩は」
梓「しかもそれを止めに行った澪先輩までいつの間にか加わってるし」
紬「夏の海の魔翌力よね〜」ニコ
紬「ところで梓くんは加わらないの?」
梓「俺はパスです。あの中に男一人入られても困るでしょ」
梓「(それ以上に目のやり場に困りますし)」
澪「あはははー」プルンプルン
梓「(目の、やり場に、ね)」ジーー
紬「(あー、やっぱり澪ちゃん凝視してるわねー)」
梓「っは!」ブルブル
梓「まあ、そんなわけで別荘の屋上で体でも焼いてますよハハハハハ(煩悩退散煩悩退散煩悩退散)」スタスタ
紬「サンオイルは洗面所にあるわよー(なんか見てて面白いわね)」
唯「あずにゃん随分焼けたねー」
梓「そうですか?あはは……」
澪「焼けすぎてなんか海の人みたくなってるぞ」プクク
梓「海の人って……」
律「取り合えずそのサングラスとパーカーやめてくれ」プクク
律「物凄くおかしく見えるから」プクク
梓「なんスかそれっ!」
紬「なんか石原裕次郎みたい……」プクク
澪「あず大将……」ボソッ
唯律澪紬「ぶううぅぅぅぅっ!!」
梓「やめて下さいっ!!」
梓「ったく。下らないことしてないで練習しますよ」スチャッ
澪「そうだぞ。文化祭まで時間ないんだからな」スチャッ
唯「……」
唯「……ギターを持った、あず大将」ボソッ
唯律澪紬「ぶううぅぅぅぅっ!!」
梓「なんだよこれ」
梓「いいですか。メシ食ったら真面目に練習しますからね!」ムグムグ
梓「結局さっきはあず大将でまともに練習できなかったんですから!」ムグムグ
澪「本当にそろそろ練習しないと合宿の意味なくなりからな」
梓「澪先輩も正論言ってるみたいですけど、さっきあず大将で一番盛り上がってたのあんたですからね」
澪「う」
紬「焼きそば焼きそば〜♪」
唯「ムギちゃん随分楽しそうだね」
紬「だって焼きそばですものー♪」
唯「そうなの?」
紬「ええ」ニコ
律「ムギ、焼きそばには紅しょうがを乗せるんだぞ!」
紬「そうなの!?りっちゃん!」
唯「青のりも忘れちゃだめだよ!」
梓「………」ムグムグ
梓「聞いちゃいねえ」
♪〜
唯「こんな感じ!?」
澪「かもな」
紬「新曲の練習はここまでにして、そろそろ寝る?」
律「さんせー。もう1時じゃん……」
梓「あ、ムギ先輩。毛布と枕どこにありますか?」
紬「え?」
梓「流石に女の子と同じ部屋で寝れませんからね。俺は居間のソファーで寝ますよ」
唯「えー、あずにゃんと寝たかったのにぃ」シュン
梓「やめてください。これ以上はセクハラで訴えますよ」
唯「ちぇー」シュン
紬「梓くん、毛布と枕ならリネン庫にあるはずよ」
梓「了解っす」
唯「んむー……」ムクリ
唯「むー……」
紬「えっへへ……ゲル状がいいのー……ムニャムニャ」グッスリ
唯「おしっこ……」トテトテ
ジャアアア
唯「むー……」
唯「あれ?あの部屋明かりついてる?」
♪〜
梓「ちげー……全くちげーな」ブツブツ
梓「メロディがエロ過ぎる。俺の曲ならともかくも軽音部のふわふわイメージじゃねえ」ブツブツ
梓「もっと快活なメロディで……」
唯「……あずにゃん?」
梓「うわぁぁっ!!」ビックウウッ
梓「って、唯センパイ?」
唯「驚きすぎだよお、あずにゃん」
梓「すんませんね。さっきまでラジオの心霊特集聞いてて」
唯「それで怖くなったんだ。あるよね、そう言うの」
唯「ところであずにゃんは何してたの?ギター持って」
梓「……ちょっとなんとなく曲とかギターソロとか考えてたんですよ」
唯「ぎたーそろ?」
梓「俺って元々ジャズ屋なんで。なんかソロパートとか欲しくなって……」
梓「みんなで合わせるのもいいけど、ソロパートでぎゃんぎゃん自分の個性出して弾きまくるのもいいんじゃないかなと」
梓「流石にあんまりおこがましいんで、やりませんけどね」
唯「……でもちょっと聞いてみたいかも。あずにゃんのソロ」
梓「それが、どうも上手く行かなくて」
梓「なんとなくメロディがエロくなったりちゃうんですよね……よく聞いてる音楽のせいなのか」
唯「エロいメロディって……ちょっと気になるかも。どんな感じなの?」ワクワク
梓「……だいたいこんな感じなんですよね」
♪〜
ラジオ『時刻は午後0時を回りました』
梓「結局一睡もせずにギターソロ考えて、そのまま二人一緒に朝日を拝んでバタンキューとは……」
紬「梓くんも唯ちゃんも、夜更かしはめっ、よ!」
唯「でも色々面白かったよね。わたしも途中からギー太持ってきてギターソロ考えたし!」
梓「(技量はギターソロ以前の問題なんだけど、凄いメロディの直感はあるからなあ。この人)」
律「ソロパートかぁ……あたしのドラムソロとか間に入れて叩きまくるとかかっこいいかも……」
梓「(あんたも技量の問題でアウトだよ)」
澪「私は……別にいいかも」スッ
梓「(この人は途中で恥ずかしさのあまりにテンパッて自爆しそうだからなぁ……去年の縞々事件の話とか聞くに)」
紬「今ふわふわ時間の譜面に入れてみる?梓くんのソロパート」
梓「……え?いいんスか?」
紬「ちょうど間奏に入れられる箇所があるでしょ?短いけどそこに入れられるんじゃないかなって」
梓「……これだけあれば十分ッスよ。ありがとうございます!」
律「待て待て待てぃ!梓!お前にソロパートを弾ける資格があるのか、私が試してやろう!」スチャッ
梓「はい?」
律「『ふわふわ時間』でお前がソロパートを弾ききれるかっ!そしてそれがあたしが認められるものなのかっ!」
律「今ここで証明してみせろっ!」ビシイッ
唯「受けて立とうじゃあないかりっちゃん!さああずにゃん!行くよ!」スチャッ
紬「真剣勝負ね!」スチャッ
澪「全く……こうでもしないと練習できないのか……」スチャッ
梓「……だんだんこのノリに慣れてくる俺が怖いな」スチャッ
律「じゃあ行くぞ!」
律「ワンツースリーフォー!」
数日後・平沢家
憂「で、認められたの?梓くんは」ワクワク
梓「見事に認められましたとも」
梓「まあ、ソロパートつっても唯センパイのボーカルのツナギだから大したことはないけど」
憂「でもお姉ちゃんの歌に梓くんのギターソロもついて、なんか今年の文化祭余計楽しみになってきたかも」ワクワク
梓「そんな凄いもんじゃないから。唯センパイの歌のツマみたいなもんだから」
梓「で、その当の唯センパイは?」
憂「和ちゃんと出かけて夜まで帰ってこないって」
梓「なるほどね……平沢がギー太持ってるわけがわかったよ」
憂「……」
梓「じゃあ練習行くか?」スチャッ
憂「……」ムスッ
梓「どうしたんだ?ひらさ」
憂「うい」
梓「はい?」
憂「お姉ちゃんは名前で呼ぶのに、私だけ苗字で呼ぶのはなんかイヤ」ムスッ
梓「ああ……それはセンパイ達が下の名前で呼ぶようにって言うからさ、それで……」
憂「じゃあ私のことも憂って呼んで」
梓「……それは」
憂「ダメなの?なんで?」ムスッ
梓「……鈴木とかに冷やかされそうでさ」
憂「理由になってない」ムスッ
梓「男はそこんとこ色々あるんだよ……」
憂「じゃあ、二人だけの時は」
梓「それなら了解した。うい」
純「よっ、梓」ヒョコッ
梓「なんだよ鈴木」
純「お、憂は下の名前で呼ぶのにあたしは苗字かい」
梓「だっ……何でそれ知ってんだよっ!」
純「憂がノロケてきたもん」
梓「平沢ぁぁぁっ!」ゴアアアアア
純「それはいいんだけどさ、梓ってジャズ詳しいんだよね」
梓「……親父と母さんの後着いてジャズバーに出入するくらいにはな」
純「いやさ、文化祭までにウチのジャズ研の練習見てって、なんかコメント欲しくてさ」
梓「……別にそのくらいなら、ティータイムしてる時間割けるからいいけどさ」
純「いやったぁ!ジャズ屋呼んでくるって先輩に見栄切った甲斐があった!」グッグッ
梓「ただし」
純「へ?」
梓「150円よこせ。下の自販機で紅茶買ってくるから」
♪〜
梓「(なんつーか、評価しがたいな)」
♪〜
梓「(ビッグバンドやスウィングは俺でなく吹奏楽部の出る幕だろうに。)」
♪〜
梓「(勢いとノリのあるビッグバンドやスウィングは確かにウケるけどなぁ……)」
ジャズ研部員「どうかしら、中野くん」
梓「あ、はい。個人的にはいいかなと」
梓「ただ曲が全てビッグバンドとスウィングなのが気になりますかね」
ジャズ研「うちは大所帯だし、文化祭だと物静かな曲は向かないからね。中野くんは不満?」
梓「あ、いや。そうでないんですが」
梓「なんか演奏がきちっとし過ぎてると言うか、プチ吹奏楽部みたくなってて」
梓「即興派の俺だと評価しにくいなーって」
ジャズ研「成る程ね」
梓「とは言え即興は技量に関わりますから、変に即興やるよりはビッグバンドで行くのもありだと思いますよ」
ジャズ研「中野くんって確か軽音部よね」
梓「っすね」
ジャズ研「放課後にいつも音楽室でお茶して、楽器の音は滅多に聞こえてこないってあの軽音部よね」
梓「っすね」
梓「(やべえ、的確すぎて言い返せねえ)」
ジャズ研「ねえ中野くん。それならうちに来ない?」
梓「へ?」
ジャズ研「あなたのギターの腕をお茶会集団で埋もれさせるのも残念じゃない?」
梓「そんな。俺、それほど上手くありませんって」
ジャズ研「鈴木さんから聞いてるわ、あなたの腕前は。横浜のジャズバーでギターソロもやったことがあるんですってね」
梓「それはたまたま親父が……」
ジャズ研「あなたの腕前があればギターは相当な戦力増強になるし、次のコンクールにはきっと今年以上の成績も夢じゃないわよ……」
梓「……」
梓「すんません。やっぱその誘いなかったことにしてください」
ジャズ研「え?」
梓「コンクールのためとか、勝つための音楽とか、そう言う体育会系の音楽って中学の時の吹奏楽部で懲りてて」
梓「だから、今の軽音部くらいのノリが俺にはちょうどいいんですよ」
梓「それじゃ。あと、演奏は文句なしに良かったですから、安心していいと思いますよ」ガチャ
純「はあぁ……」ポカーン
梓「(とかジャズ研の人には言ったけどさ)」
律「誰だよーハートの4止めてる奴ー」
唯「スペードの8もだよぉ……パス」
梓「なんで七並べやってんすか俺らは」
紬「いいじゃないいいじゃない」
梓「よかないっす。もうそろ真面目に練習しましょうよ」
梓「結局セッションしないことにはどうしようもならないんですから」
唯「ちぇー。あずにゃん固いんだからー」
梓「これ一回終わったら練習しますよ」ペラリ
梓「だから澪センパイ、止めてるカード素直に出してください」
澪「……何のことだ?梓?」ダラダラ
梓「さっきから明後日の方向向いたり、挙動不審だったりでバレバレですから」
梓「??♪」ギュイイ
梓「っと、こんなもんか」
憂「すごいすごーい!」パチパチパチ
梓「悪いな、うい。練習付き合わせられなくて」
憂「もうすぐで文化祭だもん。気にしてないよ」
憂「最近お姉ちゃんも家で気合入れて自主練しだしてるし」
梓「あのセンパイが?」
憂「うん。ギー太持って居間で遅い時間まで練習してたり」
梓「……奇跡が起きたのか?それともアルマゲドンの予兆か?明日は爆弾が降ってくるんじゃないだろうな」ワナワナ
憂「それは言い過ぎだってば」
梓「だってあの唯センパイだぞ?」
梓「常にいつも最後までぐだってる唯センパイだぞ?」
憂「やるときはやるよ。お姉ちゃん」
梓「そうなのかねぇ」
♪??
梓「(けっ)」
憂「どう?」
梓「(結局憂の練習も付き合っちまうんだよな)」
梓「(まー、ギー太はセンパイが使ってるし、俺のマスタング使うしかないからな)」
♪??
梓「(そして練習曲はふわふわ時間と)」
ジャーン!!
憂「どう……かな?」
梓「……すげえ。唯センパイの代わりに弾いてくれないか」
憂「それは無理だってば……」
最終更新:2014年01月21日 14:54