……

崖の上

晶「へえ、やるじゃん唯のやつ」

菖「助けに入ろうかと思ったけど大丈夫だったねー」

幸「あの変身女さんたち、しばらくは大人しくしてくれるかな?」

晶「いや……まだ何か企んでるだろうな。唯たちも無事だったことだし、奴らを追うぞ」

菖「フフ、了解」

幸「……」ニコニコ

晶「なんか含みを感じるな……まあいい、出発だ!」




……

コトブキ家の船
荒波を越えて 

律「ぷはーっ! やっぱお茶に限るな~」

唯「癒されますなあ……」

紬「はい、今日は元気ドングリのクッキーよ♪」

唯「おお……おいしい! 元気が出るね~」グテー

澪「元気ドングリ食べてもそれか……」

梓(……えーと、お茶飲んだら出発かな?)

律「さて、休憩もしたし――」

梓「――出発ですかッ!?」ガタッ

律「いや、そう焦るなって。さわちゃんのとこ寄ってかない?」

紬「そうね、しばらく会ってないし……」

唯「うんうん、行きたい!」

梓(あれ……?)


……

海辺の街 酒場『バンドマンズ・ヘヴン』
渡り鳥が集う水辺 

律「たのもー!」バタン

澪「ちょ、律……また他の渡り鳥に目をつけられるってば!」

律「あ、ごめん……」

紬「でも今日はみんな静かね」

唯「あ、さわちゃんがいるよ!」

さわ子「あら、いらっしゃい。久しぶりね」

梓「あ、お久しぶりです」

律「さわちゃん! どこ行ってたんだよ? いてくれないと男どもが……」

さわ子「私は忙しいのよ、無理言わないで。……梓ちゃん、やっぱりこのバンドに入ったのね。お似合いよ」

梓「え? は……はい! えへへ」

唯「さわちゃんも一緒にお茶しようよ!」

さわ子「もう、だから私は忙しいって――」

紬「ケーキもありますよ?」

さわ子「――いただきますッ!!」


……

さわ子「――それで、最近体力もなくなってきて、正直ここのマスターとの掛け持ちもつらくて……」グチグチ

律「はは……」

紬「お茶おかわりいかがですか?」

さわ子「あらありがとう。ムギちゃんは気が利くわね……うちに欲しいわ」

梓(酒場のマスターなのにお茶淹れてもらってる……)

梓「マスターってこんなキャラだったんですね……知りませんでした」

さわ子「何よ、悪い? ……ふむ」ジーッ

梓「な、なんですか?」

さわ子「ネコミミとか似合いそうね……ちょっと待ってなさい」ガタッ

律「これは……梓、観念するんだな」

梓「一体何が始まるんですか?」

澪「ごめんな梓、あの人ちょっとおかしいんだ」

さわ子「ちょっと! 失礼ね……はい梓ちゃん、コレ」

梓「コレ、って……ネコミミ?」

さわ子「ええ。さあどうぞ」

梓「どうぞって……てかなんでこんなもの持ってるんですか」

紬「梓ちゃん、きっと似合うわ!」

唯「梓ちゃんつけてつけて!」

梓「ええっ!? ……う~、じゃあ……」スチャ

唯紬「「かわいい~!!」」

律「ふふ」ニヤニヤ

さわ子「私の目に狂いはなかったわね」

唯「あだ名はあずにゃんに決定だね!!」ギュゥゥ

梓「に゛ゃっ!? ちょ、ちょっとやめてください唯先輩!!」

澪「周りから注目されてるぞ……」

渡り鳥達「「……」」ニヤニヤ

梓「い、いやぁーーーッ!!」ポイッ

唯「あ、外しちゃだめだよあずにゃん! 可愛いのに~」


……

梓(……何やってんだろう、私。早速ガーディアン解放の旅に出るんだと思ってたのに……さっきからみなさん雑談ばかりだし)

梓「あの……まだ出発しなくていいんですか?」

唯「もうちょっとおしゃべりしようよ~」

律「せっかくさわちゃんにも会えたしな」

梓「世界の危機なんじゃなかったんですか……?」

紬「そうだけど……」

澪「梓の言うことももっともだぞ。そろそろ出発しなきゃ――」

梓(あ、澪先輩――)

律「澪ちゅわんは周りの男たちの視線が怖いだけじゃないんでちゅか~?」

澪「ひぃっ!? お、思い出させるな!」ゴチン!

律「ぐぇッ!?」

梓「……」

紬「あ、お茶おかわりいる、梓ちゃん?」

梓「あ、はい……――ッ!!」

梓(まずい、この空気に慣れてきちゃってる……)


……

唯「ねえムギちゃん、あのお船の名前はなんていうの?」

梓(もう完全に違う話題に……)

紬「特に決まってないけど……」

律「じゃあなんか名前つけるか?」

唯「ロケットえんぴつ号とかどう?」

律「なんだそれ……?」

澪「えっと……じゃあ、ポップコーンハネムーン号とか……」

律「ネタはいいからちゃんと考えようぜ」

澪「な……本気だったのに……」

律「ま、マジで!?」

唯「唯とゆかいな仲間たち号!」

律「ちょっとお前はだまってろ」ギチギチ

唯「ぐぇ……ぐるじい……」ギチギチ

澪「……あ、ちょこれーと☆ぼやーじゅ号、とか!」

梓「さっきから甘々なものばかりですね……」

さわ子「……」イライラ

紬「うーん、漂流期間とかどうかしら?」

律「縁起わるッ!?」

さわ子「だーーーーーーーーーーーッ!!! そんなもの適当に決めればいいのよ! 『スイートティータイム号』、はいムギちゃん決定ね」

紬「は、はいッ!!」

律澪唯「「勝手に決められたーッ!?」」

梓「はあ……」


……

律「さて、今日はもうこの町に泊まっていくか……」

唯「さんせーい!」

澪「結局今日は出発できなかったな……」

紬「うふふ、一区切りついたし、いいんじゃないかな?」

澪「そうだけど……また明日からもだらけそうだけどな」

梓(……本当にみんな世界を救う気あるのかな。キャサリンたちもまだ何か企んでいるみたいなのに……)

梓(世界の危機が具体的になんなのかすらわからないのに、どうしてこんなにのんびりしてるんだろう……取り返しのつかないことになるんじゃ……)

梓(危機に立ち向かうために、みんなが協力し合える世界にしなきゃいけないのに……そのために、ARMを正しく使う人たちとバンドを組んで、悪い人たちをやっつけなきゃいけないのに…… )

梓(それができると思ってこのバンドに入ったんだけど……ここじゃだめ、なのかな)

梓(みなさん……すいません)


宿屋 


……

翌朝 宿屋
不安から焦燥へ 

唯「……ふああ……おはようあずにゃん……あれ?」

紬「唯ちゃん、大変!!」

澪「梓が……いないんだ……」

唯「え……あずにゃんが!?」

律「……ああ。梓の荷物も全部ない。ちょっと外の空気を吸ってるわけでもないみたいだな……」

唯「どうして……」

澪「昨日、だらけすぎちゃったからかな……」

律「う……すまん」

紬「私もちょっと浮かれちゃってて……ごめんなさい」

澪「しょうがないよ。ほら、唯。梓を探しに行こう? 会って話を聞いてみないことにはわからないだろ」

唯「うん……行こう!」

唯(あずにゃん……ごめんね。でも私は、あずにゃんと一緒にバンド組みたいよ――)


……

数日前 辺境の村
希望 

和「憂、いる?」コンコン

和「……あれ、またいないわね……最近よくいないけど、どこに行ってるのかしら」


……

和「憂~? どこにいるの~?」

和「……まさか、遺跡のほうに……?」

ガサガサ…

憂「……和ちゃん……?」

和「憂! 探したわよ。何してたの?」

憂「えっと……えへへ、これ見つけちゃった」

和「!! ギターじゃない……しかも、唯のと同じようなARM。もしかして、ここ数日遺跡に入っていたの?」

憂「うん……」

和「もう……遺跡は危険だってわかってるでしょ。大丈夫だった?」

憂「大丈夫。ごめんなさい……どうしても、お姉ちゃんを探しに行きたくて……あ、それでね、和ちゃん」

和「……まさか」

憂「うん、私もARMを扱えるみたい。えへへ、これで私も村から追放だね」

和「何ニコニコしてんのよ、追放されるのに……ふふ」

憂「和ちゃんこそ……。一緒に、お姉ちゃんを探しに行こう?」

和「そうね。憂だけでも武器があるなら、荒野に出るのに心強いわ。……今度は私も行くから、村の人に見つからないように準備しましょ」

憂「うん!!」

?「あの、ちょっといいかな?」

和「――!? 誰ですか?」

憂「ARMのギターを持ってる……もしかして、渡り鳥ですか?」

渡り鳥の女性「ええ。安心して、私はあなたたちに危害を加えにきたわけじゃないの。ちょっとだけ、頼みがあるんだけど」

和「なんですか?」

渡り鳥の女性「デス・ナイト・クォーターズっていう集団を知ってるかな?」

憂「デス……? すみません、知らないです」

渡り鳥の女性「そう……さすがにここまでは噂は来てないか。それに対抗するための組織に参加してくれる人を探してるんだけど……」

憂「すみません、私はこれから姉を探しに旅に出たいので……」

渡り鳥の女性「姉……? あ、もしかしてあなたのお姉さんって、今凄腕の渡り鳥集団にいるって噂になってる唯さんかな?」

憂「え!?」

和「うそ……本当ですか!?」

渡り鳥の女性「あ、やっぱり。渡り鳥の間では有名で、似顔絵も出回ってるんだけど……あなた、その唯さんとそっくりだから」

憂「お姉ちゃん……有名になったんだ……」

和「にわかには信じられないわね」

渡り鳥の女性「今どこにいるかはわからないけど、私もその子にこれからコンタクトをとるつもり。協力しろとは無理に言わないけど……一緒に来る?」

憂「は、はい、是非ッ! ……でも私ギターは初心者なので、お役には立てないと思いますが」

渡り鳥の女性「へえ……じゃちょっと練習してみる? どっちにしろ荒野に出るのにARMの技術は必要だからね。ほら、ちょっと私相手にやってみてよ」

憂「そんな……できません」

渡り鳥の女性「遠慮しないでいいよ。これでも私、渡り鳥歴長いんだから頑丈よ」

憂「じゃ、じゃあ……お願いします。えっと――」

ジャニス「ジャニス、って呼んで。さ、どーんとかかってきなさい!」


――――――――――――――――

enemy; ジャニス
束ねる力 

ジャニス「ほら、ギターに意識を集中して……音を増幅して」

◆ショット
憂「お姉ちゃんがやってたみたいに……えい!」ジャーン バシュン!!
ジャニス「いいわね!」15 GUARD



HP105/105 
FP15 弦5/6


……

ジャニス「いい筋ね。じゃ、ちょっと私の攻撃を避けてみてくれる?」

憂「え?」

◆ショット
ジャニス「行くよ~、はい!」ジャーン バシュン!!
憂「――きゃ!!」35

ジャニス「ごめん、さすがにいきなりはきつかったかな……」

◆リフレッシュ
憂「いたた……」キュルリン 60 Force level up!

ジャニス「な……キーボードソーサー!? いや、近いけど少し違う……ギターであんなことできる人初めて見たわ」



HP105/105 
FP26 弦4/6


……

◆ショット
憂「ジャニスさんのさっきの攻撃、あれを真似して……」
◆クリティカルヒット
憂「――たぁッ!!」ジャーン ズドン!!
ジャニス「!!」80

Win!

ジャニス「なかなかの才能ね……十分すぎよ。自信持ってね?」

憂「は、はい! ありがとうございます」

レベルアップ!
憂 level 7 HP435 プロバイデンスを覚えたッ!


――――――――――――――――

希望 

和「すごい……憂、がんばったわね」

憂「そ、そうかな?」

ジャニス「思った以上ね。えっと、名前は?」

憂「憂、と申します」

和「和です」

ジャニス「よろしくね、憂ちゃん、和ちゃん。和ちゃんにも頼みたいことがあるの」

和「私はARMは使えないんですが……」

ジャニス「ううん、いいの。まあ協力してもらえるかは別として、憂ちゃんのお姉さんには会えるよう探してみるわ。さ、一緒に行きましょ」

憂和「「はい!!」」



……

現在 

雷音の檻
ダンジョン・遺跡系2 

晶「さて……あのクリスティーナの奴を追ってきたらこんなとこまで来てしまったわけだが」

菖「ずいぶん遠くまで来たね~……疲れた」

幸「こんなところに遺跡があったなんてね」

晶「ああ、ここは初めて知った。おそらくまだ誰にも見つけられてないだろうな。おそらくここにまたガーディアンが……」

菖「でもさ、あの変身女さん、アークセプターもないのに何しに来たんだろうね? あれがなきゃ何も起きないのに」

晶「それはわからないが……何か企んでるのは間違いないだろ。行こう」

ダンジョン・遺跡系2 





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最終更新:2012年10月24日 22:15