……
コトブキ家 会議室
ヴァレリアシャトー
和「憂! 戻ってきたのね」
憂「あ、和ちゃーん!」ダッ
唯「和ちゃーん!!」ダッ
和「ちょッ……唯は別に久しぶりじゃないでしょ」
唯「え~、いいじゃーん」ギュウ
憂「三人で会えたの、久しぶりだね♪」ギュウ
和「ふふ、そうね」
……
恵「よかった、梓ちゃんたちみんな帰還してくれたのね。任務お疲れ様」
梓「あの……すみませんでした」
恵「気にしないで。それどころか、なかなか面白い人たちを連れてきてくれたじゃない。感謝するわ」
渡り鳥「おらおら、俺達も協力してやるぞ! 何すりゃいいんだ!?」
渡り鳥2「おー、コレがコトブキ家か……すげぇすげぇ」
渡り鳥3「こりゃ報酬も期待できそうだなぁ、ケケケ」
梓「あはは……なんかすいません、ぞろぞろと」
恵「いいのよ。渡り鳥の協力は不可欠なんだから。彼らには飛空機械に必要なエネルギー鉱石の探索にあたってもらうわ」
恵「じゃあ、私は彼らに作戦を説明するから……あとは頼むわね」
和「わかりました。じゃあ、梓ちゃんたちはこっちに。――こら、唯、憂、もう離れなさいって」
唯「えー、このままでもいいじゃーん」
憂「ねー」
和「もう、憂まで……」
……
和「全員揃ったらジャニスさんから話があるんだけど……まだ恩那組が任務から帰還してないのよ」
律「晶たちが? 苦戦してるとは思えないけどな」
澪「確か向こうはキャサリンたちに味方する渡り鳥の集団の相手だったな。梓たちが戦ってたのよりタチが悪そうだけど」
和「そうね……なんとも言えないけど、もしかしたらてこずっているのかも。だから、唯たち四人で様子を見に行ってほしいの。危ないようなら加勢して」
和「梓ちゃんたち五人はこの場に残ってもらうわ。ARMSについて説明するから」
梓「わかりました!」
唯「晶ちゃん、心配だね……」
紬「行きましょう? 急がなきゃ」
唯「うん!」
……
晶「こいつらがキャサリンたちに味方してるっていう奴らか……ハッ、力に怯えて従うなんて、渡り鳥の風上にも置けないな」
渡り鳥「なんだてめえらは……デス・ナイト・クォーターズに逆らう奴か?」
晶「力が絶対……絶対たる力を持つものが生き残る。それが荒野の掟だろう? はぁーッ!!」ズドーン!!
渡り鳥「ぐわぁ!!」ドサッ
菖「晶~、下っ端相手してても時間の無駄だよ! 早くリーダー探さなきゃ」
晶「……もう少しこのバカどもを叩きのめさないと気がすまない。先に行っててくれ」
幸「……晶。何を焦ってるの?」
晶「な……」
菖「ねぇ晶、そろそろその変なこだわりやめたら~? 私たちは晶が心配なの! また変に暴走するんじゃないかって」
幸「晶、絶対たる力にこだわりすぎだよ。その力を手に入れてどうするの?」
晶「どうって……力を手に入れたものが荒野で生き残る、それだけの話だろ」
幸「それじゃキャサリンたちと同じだよ?」
晶「――!!」
菖「そうだよ! あいつらだって自分たち以外弱いからみんな死んでくれって言ってるようなもんじゃん。晶もそうなりたいの?」
晶「いや、そこまでは――」
幸「じゃあ、その力は何のために欲しいの?」
晶「……私は……」
晶(私は……力が欲しいと思った。力を手に入れて、渡り鳥の頂点に立つって決めた。なんで、だ……それで、どうしようと思った……?)
菖「――あ、あれがリーダーじゃない?」
幸「ほんとだ。晶、行くよ?」
晶「あ、ああ。よし、リーダーを倒して――えッ!?」
菖幸「「――!?」」
……
唯「あ、あそこに渡り鳥がたくさんいるよ!」
澪「さっきの奴らとは違う……妙に統率がとれてるな」
律「……あれ、あそこにいるの菖と幸じゃないか?」
紬「ほんとうね。晶ちゃんが見当たらないけど……行ってみましょう!」
……
律「おーい! 菖~!!」
菖「あ、りっちゃん!」
幸「みんな……」
澪「大丈夫か? どうしたの、こんなところで突っ立って……」
唯「晶ちゃんは?」
菖「えーっとね、晶は……」
幸「この先で、敵のリーダーと戦ってるよ」
紬「え……一人で!?」
律「なんでだよ!? 助けに行かなくていいのか?」
菖「うん……ゴメン、晶一人でやらせてあげてほしいんだ」
唯「どうして……?」
幸「菖、晶のこと……」
菖「そうだね、話そうか……」
……
菖「これは私たちが出会ったばかりのころの話なんだけどね――」
過去 渡り鳥の集う酒場
菖『――キミ、新入りなの?』
晶『うん……』
幸『一人でいちゃ危ないよ。私たちとバンド組む?』
晶『う、うん。よろしくお願いします!』
律「――ちょっと待った~ッ!! いきなり話止めて悪いけど、誰だよ!? ほんとに晶か?」
幸「うん。晶は昔はすごく大人しかったんだよ」
菖『ねぇ、何で渡り鳥になろうと思ったの? ただでさえ女の子が少ないのに……晶、全然そんな風に見えないんだけど』
晶『ええと……あの渡り鳥のバンドのリーダーの、前田先輩がかっこよくて……』
律「ちょっとすいません、この子誰――」
澪「いい加減認めなさいッ!!」ゲシッ!
律「ぐはッ!?」
菖「フフ……それでね、晶は見た目は大人しかったけどすぐにARMの扱いが上達して、仕事も演奏もうまくいってきたんだ」
幸「女の子だけのバンドってのも珍しかったから、すぐに有名になったんだよ。それで、ある日ね――」
菖『私たちもずいぶん有名になったね~!』
幸『そうだね。でもちょっと回りの視線が気になるかな……?』
晶『わ、私……次に大きな仕事成功させたら、先輩に告白するッ!』
菖幸『『ええッ!?』』
紬「それで、それで!?」
菖「ムギちゃん落ち着いて! それで、晶の宣言どおり一つ大きな仕事を成功させて、そのあたりの渡り鳥の中では一番のバンドって評価を受けたんだ」
幸「それで晶が告白しようとしたときにね――」
渡り鳥1『おい、聞いたか? またあいつら、でかい話を成功させたんだとよ』
渡り鳥2『またかよ? まぁ、ある程度実力はあるっていうのは確かなんだろうが……ちやほやされすぎじゃねえか? どうせそれで多めに仕事が回ってきてんだろ』
渡り鳥1『ハッ、確かにな。本当の実力で判断してもらいたいもんだよ。あんな女ども、実際は大したことねぇだろ。女だからって調子に乗ってんじゃないか?』
渡り鳥2『そうだな……よし、あいつらに荒野のルールってのを教えてやろうか、なんなら、利用して捨ててやってもいいぜ、ケケ』
渡り鳥1『はは、いいねえ! なあ、そう思うだろ、前田?』
前田『え? ……まぁ、女だから人気が出て仕事が回ってくるってのはずるい、かな……?』
晶『――ッ!!』
前田『!! おい、晶……』
晶『そんなふうに、思ってたんだ……』
前田『違うんだ、これはだな……』
晶『……!!』ダッ
唯「ひっどーい! そんなこと言われたんだ……」
菖「それで、次の日……晶は髪をばっさり切り落として、今みたいな髪型にしてきたんだ」
晶『……先輩』
前田『あ、晶? 昨日のことなんだけど、俺、本当はお前たちの実力は本物だと――えッ!? お前、髪……!』
晶『先輩、私、決めました。女だから仕事が回ってきたって言わせないように……誰よりも強い、『力』を身につけます』
晶『――そして、渡り鳥の頂点に立って、先輩のこと見返してやりますッ!!』
菖「……そして今に至るんだよ~」
律「そんな過去があったのか……」
幸「それ以来、晶は『絶対たる力』を手に入れるって言って聞かなくて……ことあるごとに単独行動しては遺跡発掘とかしてたんだ」
菖「そ。だから心配でさ~! ムギちゃんちにも侵入して、迷惑かけちゃったしね」
澪「それであんな性格になったのか……確かに力に対するこだわりはすごかったな」
紬「でも、その力を手に入れて、どうするのかな? その先輩に告白?」
菖「そこなんだよね~。別に本人も告白するためだけに力を求めてるわけじゃないと思うんだけど。言い出しちゃった以上、躍起になってる感じ?」
幸「晶自身も、悩んでるよ。何のために力を手に入れるのか」
菖「そろそろ、あの変なこだわりに踏ん切りつけて、今直面してるファルガイアのピンチのために力を使って欲しいからさ~。だから、一人で行かせたの!」
唯「え? じゃあもしかしてこの先にいるリーダーって……」
幸「うん。前田先輩だよ」
……
晶(私は……やみくもに力を求めてきた。それなりの力をつけることはできた。でもそれは何のため? 考えたこともなかった)
晶(ただ力を手に入れたって意味はない……力を手に入れて周りを蹴落とすことが渡り鳥の美学だと思ってきたが、こんな馬鹿なことはない……キャサリンたちを見てわかった)
晶(なら、私は、この力を……)
前田「……晶、久しぶりだな」
晶「先輩……見損ないました。デス・ナイト・クォーターズに味方して、他の渡り鳥や一般人を襲ってるなんて。力を持つものが生き残るのが荒野の掟じゃなかったんですか?」
前田「その通りだよ。だから、あのデスなんとかに味方してるわけじゃないさ」
晶「どういうことですか……?」
前田「彼女らの言ってることはもっともだと思うんだ。強いものが生き残る。だから俺たちもそれに従って、力をつけているだけ。弱い奴は蹴り落とすしかない」
前田「そして、いずれキャサリンたちを倒す。強い奴だけが、あの宇宙船に乗る資格がある。ま、彼女らの言ってることそのまんまだけどね」
前田「俺たちは荒野の掟に従って動いてるだけ。晶も、そうだろう? ――いろいろ噂は聞いてるよ。やっぱり俺の思ったとおり、君たちは本当に強かったじゃないか」
晶「私は……違います……今は、もう違うんです」
晶「先輩。私は先輩に認めてほしくて、力を求めました。でも、今は違います。あなたを超えて……そして、過去の自分に……ケリをつけますッ!!」
――――――――――――――――
前田「ずいぶん変わったな、晶……本気で行くぞ!」
◆ボルトファニング
前田「それッ!!」ジャキン! バシュン!
晶「ぐッ!!」401 Force level up!
晶「負けません……先輩の技、覚えたんですからッ!」
◆ボルトファニング
晶「はぁぁぁッ!!」ジャキン! バシュン!
前田「ぐはッ!? やるね……」801
晶
HP860/1261
FP42 弦5/6
……
◆ショックスライダー
前田「これはどうだ!」シャキン!
晶「うわ!!」394 Force level up!
◆ショックスライダー
晶「……行きます! はぁッ!!」シャキン!
前田「ぐッ!? 晶、そこまで俺の技を……」759
晶
HP466/1261
FP63 弦4/6
……
◆マルチブラスト
前田「やるな……それ!!」バシュン ズガガガ!!
晶「うッ!?」350 Force level up!
○ミラクルベリー
晶「まずい……!」2000
晶
HP1261/1261
FP80 弦4/6
……
前田「どうした? ……やっぱり、体力が足りないみたいだな」
晶「――!!」
◆ライジングノヴァ
前田「これは晶も知らないだろう……はぁーッ!!」ジャキン! ズガーン!!
晶「ぐあああッ!!」1088
晶(これじゃ、回復が追いつかないッ……このままベリーを使い続けても、無くなるだけだ)
晶(なら……一発で決めるッ!)
△フルフラット
晶「女だからって、なめないでください――」
◆マルチブラスト
晶「覚悟してください、先輩ッ!!」バシュン ズガガガガガガガガガガガガ!!
前田「なに――ぐわぁああッ!?」2497 ドサッ
晶「……勝った……」
レベルアップ!
晶 level 24 HP1373 ライジングノヴァを覚えたッ!
――――――――――――――――
前田「ぐ……!!」
晶「先輩……私、決めました。私はもう、むやみに力を求めたりはしません。力に溺れて、自分を見失ったりはしません」
晶「この力は、菖や幸、私の仲間たちを……そして、私たちが住むファルガイアを守るために」
晶「大切なものを守るために、今までの自分を超える力。それが『絶対たる力』ッ! それが私の勇気ですッ!」
※『石の獅子王』が砕け散ったッ!
ジャスティーン「――我は人が失いし心の光、『勇気』を司るもの……」
晶「な……!? ガーディアン、ロード……!?」
ジャスティーン「我を呼び覚ましたのはそなたの想い……」
ジャスティーン「過去にとらわれず己自身を超えるためならば『勇気』の名の下に我が名を呼ぶがよい」ピカァァァ
※『勇気の紋章』を手に入れたッ!
晶「ミーディアム……勇気のガーディアンか……はは」
前田「晶……強く、なったんだな。ははは、完敗だよ」
晶「先輩……お願いです。私たちのファルガイアを守るために、力を貸してください」
晶「みんなで『力』を振るえば、きっとできるはずです。他人を蹴落とすための力じゃありません。守るための、力です」
前田「そうだな……わかったよ。みんなで、頑張ってみよう」
晶「ありがとうございます!! ……えっと、それで……先輩? ちょっと、伝えたいことが――」
前田「ところで、さっきからあそこの岩陰でこっちを見てる人がたくさんいるんだけど、晶の仲間かい?」
晶「!?」クルッ
晶「……」ジャーン バシュン!!
ドゴォーン!!!
唯「うわわ!?」ドテッ
紬「きゃあッ!?」ドテッ
菖「あちゃー、いいとこだったのに~」
律「見つかっちまったな」
晶「お前ら……何してるんだッ!!」
幸「見守ってただけだよ?」
澪「そ、そうだぞ! ちゃんと晶が過去を断ち切れるかをだな……」
晶「おいッ! まさか菖、私の過去を――」
菖「ごっめーん☆」
晶「う、うわああああーー!!」ヘナヘナ
律「あ、顔真っ赤になった」
唯「よかったね、晶ちゃん!」
晶「何がだ! ちくしょーー!!」
前田「ははは……えっと、よろしくな、みんな」
最終更新:2012年10月24日 22:35