……
コトブキ家 会議室
ヴァレリアシャトー
ジャニス「さて……みんな揃ったわね」
晶「さあ、今度こそ話してもらうぞ……デス・ナイト・クォーターズの正体」
ジャニス「ええ。長くなるわよ……まず、あのキャサリンたちの演説だけど、半分は嘘だと思ってくれて構わないわ」
梓「半分も!?」
唯「ほら! やっぱり、いい人たちなんだね!」
律「いや、半分だしな……わからないぞ」
憂「でも、違和感はなんとなく感じてました。本心なのかな、って……」
菖「私も変な感じしてたけどやっぱりそうだったんだ!」
ジャニス「ふふ、まぁ全部聞いてから判断してもらおうかな? これは一年前の話なんだけど――」
ジャニス「一年前。キャサリンたちと、私を含む7人は、ちょうど大きな仕事を成功させたの。荒れ果てたファルガイアに生命エネルギーを供給して、緑溢れる世界にする計画」
ジャニス「『ユグドラシル計画』をね」
紬「――!! やっぱりあなた方が、七人委員会だったんですねッ!」
ジャニス「ええ。私たちの顔と名前、研究内容は最重要機密。コトブキ家から援助を受けているとはいえ、ムギちゃんにすら秘密だったのよ」
澪「それで、ムギも知らなかったのか……」
ジャニス「七人委員会は、かつての大戦で魔族が残した情報ライブラリ『ヒアデス』を解析して、ロストテクノロジーを駆使してユグドラシル計画を進めてきた」
ジャニス「そしてついにユグドラシルが完成。コトブキ家にも報告して、いざユグドラシルを起動しようとしていたある日――」
……
過去 ユグドラシル コンピュータルーム
キャサリン『ちょっと、何よこれ……ガーディアンの生命エネルギー反応におかしな値が出てるわ』
ジャニス『どれどれ? ……ホントだ、何コレ。新たなガーディアンが出現した? いや、ガーディアンじゃ、ないわ……』
キャサリン『死のガーディアン、ギィ・ラムトスの力が少し弱まったわね。まるでギィ・ラムトスから何かが生まれたような』
ジャニス『デミ・ガーディアン……』
……
ジャニス「ギィ・ラムトスの持つギロチンの刃から零れ落ちた破片……それが元となって、『絶望』のデミ・ガーディアンが生まれた」
ジャニス「計器類が示していた値からは、そうとしか判断できなかったの。信じられないことだけど」
晶「話がずいぶんぶっ飛んでるな……まず、デミ・ガーディアンってのは何だ?」
ジャニス「通常のガーディアンと似ているけど異なるものよ。死のガーディアンの持つ『絶望』の相を受け継いだ、異質な存在なの」
ジャニス「なんでそんなものが生まれたかっていったら……この世界の人々があまりにも『絶望』してるから」
ジャニス「ガーディアンはファルガイアに生きるもの全ての源であると同時に、ファルガイアに生きるもの全てから影響を受けるもの。ガーディアンロードが力を失っていたのも同じ理由」
ジャニス「荒れ果てたファルガイアで、人々の心が荒んでいくうちに……絶望を糧とするデミ・ガーディアンが生まれてしまった」
ジャニス「その名は『デスデビル』。秩序の輪から外れた絶望のガーディアンは、人々をさらに絶望に陥れ、それを糧に力を得ようと、ぐんぐん成長していった」
ジャニス「そして、私たちが発見してから数日後には、もう実体化する寸前にまで力をつけていたのよ」
紬「ガーディアンのほとんどが実体を失って概念だけの存在になっているのに、そんな短期間で実体を身につけるなんて……」
幸「そんなに、みんなの絶望が大きかったのかな」
ジャニス「……ええ」
……
デラ『まずいな……このままデスデビルが実体化して暴れ始めたら、ファルガイアが死の星になってしまう』
ジェーン『どうにかなんないの!? 実体化するんなら、ARMを総動員してぶっ倒せば――』
デラ『いや……この計測データを見る限り、無謀だろうね。とても人間の力で倒せる相手じゃない。相手はガーディアンだ……』
ジェーン『じゃあ……封印、するしかないのかな?』
……
ジャニス「――封印。それしか手はなかった。でもどこに? あまりにも急なことだったから、十分に作戦を練れなかったこともあって、私たちが出した答えは――」
……
ジャニス『嘘でしょ!? そんなこと、本気でできると思ってるの!?』
キャサリン『しょうがないじゃない! 時間がない……これしか、ないのよ!!』
クリスティーナ『デスデビルが実体化する前にその概念を四分割して、私たち四人の内的宇宙に封印。だいじょーぶ、『ヒアデス』に書いてあることに従えばできる範囲内だって』
ジャニス『でも! そんなことしたら……』
……
ジャニス「デスデビルの力を四つに分散させて体の中に封印する。結局、これしか案は出せなかったの」
梓「そんな……体内にガーディアンを封印だなんて。どんな感じがするんだろう……」
純「てか、なんとなくわかった。あのキャサリンたちの変身能力のこと」
ジャニス「そう。名乗り出たのはキャサリン、クリスティーナ、デラ、ジェーンの四人」
ジャニス「でも、いくら分割したとは言っても、強大なガーディアンの力を体内に封じ込めたら体が持たないの。すぐに負けて、デスデビルが出てきてしまう」
ジャニス「だから、あの四人は人間の体を捨てた……魔族の智慧を駆使して、自らの肉体を改造して……パナケイア流体が血の代わりに流れる、半機械生命体。すなわち『魔族』に」
ジャニス「魔族の肉体を手に入れた彼女たちは、デスデビルの精神を押さえ込むことに成功したわ。そして、デスデビルの力と魔族の力が拮抗した結果――」
晶「あの変身能力、か……」
ジャニス「そう。『デスナイト』に変身する力を得たの」
菖「魔族の体にそのなんとかガーディアンの力の二つも持ってたのかー……どうりで強いわけだね」
幸「パナケイア流体? って、確かどんどん濁っていって浄化しないといけないんだったよね」
ジャニス「ええ。魔族はファルガイアにとって異質の存在だからね。存在するだけでファルガイアから拒絶されるのよ」
ジャニス「……それで、封印に成功したことで一時は落ち着いたかに見えた。でもね――」
……
ジャニス『デスデビルの力が、大きくなってる……?』
キャサリン『そうなの。日に日に違和感が増していく……今はまだ大丈夫だけど、そう遠くない未来に抑え切れなくなるのは間違いないわ』
ジャニス『人々の絶望を糧にしてるってことかな……』
キャサリン『そうね。……だから、デスデビルの復活は逃れられないわ。それで、その対策なんだけど――』
……
ジャニス「キャサリンから聞かされたのは、衝撃的な作戦だったわ……」
ジャニス「――デスデビルの復活前に、過去の大戦の遺物、宇宙船『マルドゥーク』を発掘。その起動に必要なエネルギー確保のために、全てのガーディアンのエネルギーを吸収する」
ジャニス「そして、すべての人間をマルドゥークに乗せてファルガイアを脱出させて、自分たち四人はファルガイアに残る……ッ!!」
律「なんだって!?」
澪「そんな……!? じゃあ、キャサリンたちは――」
ジャニス「……ファルガイアとともに、復活したデスデビルによって滅ぼされるわ」
唯「どうして……!? 死ななきゃいけないの……? そんなの、ひどいよ!」
ジャニス「私たちも当然反対したわ……そして結局、デスナイトの四人と、私たち三人で意見が対立。あの四人のほうが圧倒的に強いから、私たちは負けて散り散りになってしまった」
ジャニス「――ここまでが、私たちの過去。この時点で七人委員会は解散。負けて荒野をさまようことになった私たちに代わって、キャサリンたちが後始末してくれたみたいね」
紬「はい、七人委員会に関する情報は全く残っていませんでした……」
ジャニス「私はそれから、彼女たちの行方を追い続けて――今に至る、ってわけ」
梓「でも……それならどうして、キャサリンたちはあんな演説を? デスデビルを召喚して滅ぼすなんて嘘をついたら、今みたいに混乱が起きるのはわかってたんじゃ……」
ジャニス「そこなんだけど……これは予想だけど、この展開は彼女たちの狙い通りなんだと思う」
ジャニス「もし、彼女たちが正直に話していたらどうなると思う?」
律「えーと……私たちの体にはデスデビルが封印されています、もうすぐ復活します、みなさんこの宇宙船に乗って逃げましょう! ってか?」
晶「……なるほど。誰も信じやしないだろうな」
ジャニス「そう。彼女たちは、わざと悪を演じることで、みんなの関心を向けさせようとしたんじゃないかな」
ジャニス「悪が現れれば、ファルガイアのみんなが一致団結する。そしてその中から『英雄』が現れて彼女たちを倒す。しかし死の瞬間、彼女たちは悪あがきでデスデビルを召喚」
ジャニス「英雄の導きで、人々はマルドゥ−クへと乗り込み、無事に宇宙へ脱出。こんなストーリーを、彼女たちは期待してるんじゃないかしら」
純「じゃあ何、私たちがキャサリンたちを倒そうとしてるのもあいつらのシナリオ通りってわけ? なんか気に入らないな~」
憂「それに、倒したとしても……デスデビルの復活を止める方法はあるんですか? それがなければ、結局同じことに……」
ジャニス「……」
晶「……? なんだ、答えろ――」
ジャニス「――もう一つ、知っておいてほしいことがあるの。彼女たちがなぜユグドラシルのコアを持ち去ったかということ」
紬「そういえば、そうでしたね。何かに使うのでしょうか……?」
ジャニス「ええ。マルドゥークを使って宇宙に飛び立つには、すべてのガーディアンのエネルギーを吸収する必要があるの。それだけ膨大なエネルギーを必要とするのよ、あれは」
ジャニス「それで、彼女たちは地水火風のガーディアンのエネルギーを得ることに失敗した。しかもガーディアンロードについては最初から計算に入れてないわ、力を失っていたし」
ジャニス「だから、実はあのマルドゥークはあれ以上高度を上げられない。この星の周りを回っているぐらいが限界よ」
紬「まさか……」
ジャニス「そう。残りのエネルギーは、ユグドラシルを逆流させて……ファルガイア中のエネルギーを吸い取ることで補うつもりよ!」
澪「そんな! じゃあ、前にムギが話してくれたみたいに、本当に緑が一切無い世界になるってことか?」
紬「うん……それどころか、青い海も砂でまみれて、黄色くなってしまうと思う」
純「海が砂に!? そんなの、絶対やだよ……」
晶「ハッ、結局、やることはそんなもんか」
幸「ほんとにファルガイアを捨てるつもりなんだね」
菖「でも、それ以外に方法が思いつかないからそんなことするってことだよね。うーん……」
唯「……私、止めに行くよ」
律「唯?」
唯「まだ、あきらめちゃだめだよ! 絶対、ファルガイアをあの綺麗な世界にするって決めたもん!」
晶「威勢がいいのは結構だが……考えはあるのか?」
唯「え、えーっと、それは……これから考えます!」
晶「おい! ……まぁでも、奴らを止めに行くのは賛成だな。他の方法が無いって決まったわけじゃない以上、あいつらが勝手に暴走するのを黙って見てられない」
梓「私も……キャサリンたちのやり方には、共感できません。何か考えがあるわけじゃないですが……止めなきゃいけない気がするんですッ!」
唯「みんなも、いいよね?」
律「ああ! ここで何もしないでぼーっとしてるわけにも行かないしな」
ジャニス「ふふ、そうこなくっちゃね。……それじゃ、次の作戦に取り掛かってもらっていいかな?」
……
恵「それでは、次の作戦を伝えます」
恵「仲間に加わった渡り鳥の方々は、既に飛空機械に必要な鉱石を探しに行ってもらっています。ですが、まだファルガイア中の協力を得られたとは言えません」
恵「引き続き、各地で未だに暴れている渡り鳥を説得して回ること。特に、海の渡り鳥の説得を優先してもらいたいのですが――」
純「あ、それなら私が引き受けます!」
梓「純……って、そっか、海の渡り鳥なんだっけ。一人で大丈夫なの?」
純「うん、ちゃちゃっと話つけてくるからさ」
梓(妙に自信満々だな……どうしてだろ?)
恵「ではお願いします。あと、アームマイスターである直さんには既に飛空機械の製作にあたってもらっています」
菫「あ、直ちゃんいないと思ったらそうだったんだ……」
梓「どうしよう、私たちのバンドはだいぶ人が抜けちゃうな……」
憂「それなら、私とスミーレちゃんはここのお手伝いをすることにして、梓ちゃんはお姉ちゃんたちと一緒に行ってきたら?」
梓「! 憂……」
唯「あずにゃんカモーン!」
梓「……もう……。またよろしくお願いします、先輩方」
律「おうよ! 再結成ってとこだな」
澪「また五人でできる時がきてよかったよ」
紬「がんばろう、梓ちゃん!」
梓「――はい!!」
憂「ふふ。いいよね、スミーレちゃん?」
菫「はい! じゃあ私、アームマイスターのみなさんのお世話を……」
恵「助かるわ。例の機械の製作は急ピッチで進めるから、結構ハードになると思うし」
恵「それじゃ、2チームに分かれて各地を回って、渡り鳥及び住民に鉱石探索の協力要請、及び各地に出没しているキャサリンの捜索をお願いします」
唯「了解です!」
晶「よし……行くぞ。キャサリン、今度こそ倒す!」
……
直「あ、みなさん。実はみなさんのARMをさっきの会議中に改造しておきました。どうぞ」
澪「え、いつの間に!?」
晶「か、改造だと!? 私のロザリーに何を――」
唯「え? え? ギー太、大丈夫なの――」
律「お前ら名前つけてたんかい……」
梓「……」
純「……むったん」
梓「こら、純ーーッ!!」
菖「どれどれ……おお、すごい! なんか軽くなってる!」
※菖はレイザーシルエットを覚えたッ!
幸「ちょっと威力が上がったような気がする……」
※幸はEZミサイルマイトを覚えたッ!
紬「すごい、アルカナの使える幅が増えたわ!」
※紬は高位魔法を覚えたッ!
澪「ほんとだ、シンクロしやすい……もっと強い攻撃ができそうだな」
※澪はリニアレールキャノンを覚えたッ!
律「へぇ……重さを感じないな。シンクロしてるからか」
※律はエースインザフォールを覚えたッ!
純「お、さらに軽くなったじゃん。動きやすい!」
※純はあたしに続いて☆を覚えたッ!
憂「使いやすくなってる……直ちゃん、すごい!」
※憂はエアリアルガードを覚えたッ!
菫「私、ちょっと強くなれた気がする……」
※菫はスラッシュレイヴを覚えたッ!
唯「へー、見た目は変わってないのになんかすごくなった気がする! よかったぁ~」
晶「ほう……悪くないな。さすがコトブキ家の技術ってとこか……」
直「よかった……お役に立てたようですね。それでは、私は作業に戻りますので」
菫「あ、私も行くよ!」
憂「私も手伝うよ~。頑張ってね、お姉ちゃん!」
唯「うん! 行ってきますッ!」
……
唯「ん~、でもどこから行けばいいんだろう……」
澪「特にあてはないからな……とりあえずどこかの町に行って聞き込みするしかないか。渡り鳥のこととキャサリンのこと」
律「適当に歩いてればばったり出くわすかもしれないしな」
紬「ねぇ、それならついでなんだけど……風詠みの祭壇に行ってみない?」
唯「風詠み?」
紬「そう。希望を運ぶ西風が吹くと言われている、祭壇よ。もしかしたら、希望のガーディアンを呼び覚ませるかもと思って」
梓「そうですね。勇気と愛のガーディアンは、既に呼び覚ますことができました。今なら、きっと……」
律「なるほどな。どうせ行き先が決まってないなら、そこにしようぜ!」
……
澪「ここって……バスカーの民の村じゃないか」
唯「バスカーってなんだっけ……」
澪「ガーディアン信仰をしている民族のことだよ。……ガーディアンが本当にいるなんて思ってなかったけど、今となってはバスカーの民は正しかったんだな……」
紬「ここの町外れにその祭壇があるの。行ってみましょう?」
律「ああ。って、ここの人たち、みんなムギと同じ髪の色だな……そういや、ムギの先祖はバスカーの民なんだったか」
紬「……うん。だから、こっそり――」
民「お前は……その髪色、コトブキ家の人間だな」
紬「――!」
民「何をしに来た、魔族の技術に堕ちた異端者め! 貴様らのせいで今ガーディアンたちが瀕死になっているのはわかっているぞッ!」
律「なんだこいつら……おい待て、ムギはな――」
紬「いいの、りっちゃん。私は禁忌を犯して集落を出た人の子孫。魔族の技術、ARMを使っている限りはここには戻れないの」
律「で、でも……今はそんなことこだわってる場合じゃないだろ……? この人たちにも、できれば協力してもらいたいんだし」
紬「彼らに信じてもらうには、行動で示すしか……希望のガーディアンを呼び覚ませれば、きっと……」
梓「そうですか……律先輩、今ここで事を荒げても仕方ありません。まずは祭壇に向かいましょう……」
律「……だーッ! まぁいいや、あとで誤解は解くぞ!」
唯「……ムギちゃん……も、なんだ」
紬「唯ちゃん?」
澪「……唯、気にするな」
唯「……うん、行こう」
唯(私も、村から追い出されたんだった……あれからいろいろあって忘れてたよ、えへへ)
唯(でも、大丈夫。みんながいるから、それに憂にも和ちゃんにも会えたから。大丈夫――)
……
風詠みの祭壇
紬「ここよ。希望のガーディアンの力があるときは、ここには西風が吹くのだけど……」
律「まったくの無風だな」
梓「来てみたはいいんですけど、どうすればいいんですか?」
澪「えっと……希望を持てばいいのか?」
律「希望を持つったってなぁ……ファルガイアは助かるッ! って念じてみるか」
唯「ファルガイアは……助かるよッ! ……うーん、何も起きないや」
紬「ダメなのかしら……」
キャサリン「なーにやってんのかしら?」
梓「――キャサリンッ! いつの間に!?」
キャサリン「最初からいたわよ。あんたたち、きっとここに来るだろうと思ったからね。ラフティーナとジャスティーンを解放したみたいだけど……ゼファーはさすがに無理かしら?」
唯「……」
キャサリン「? 何よ、その目は……ああ、さてはジャニスから全部聞いたのね。なら説明の手間が省けるわ。――来なさい」
狼「グルルル……」
律「な、なんだよ、そのモンスターは?」
紬「うそ……ルシエド!?」
キャサリン「よく知ってるじゃない。その通り、ルシエドよ。最近急に現れたのよね」
澪「ルシエドって、確か欲望のガーディアンの……?」
紬「そうよ。信じられないわ……ルシエドがどうしてあなたのもとに? しかも、ほとんどのガーディアンが力を失っているのに、実体を保っているなんて!」
キャサリン「私だってわからないわ。でも、ルシエドがここに存在するってことは、確かに私の『欲望』を糧にしているってこと――」
梓「なんの欲望ですかッ!!」
キャサリン「私自身、ルシエドが現れて初めて認識したんだけど……私は――みんなを救いたいッ! ファルガイアに住む全ての人間を救いたくてどうしようもないのよッ!!」
キャサリン「それだけを考えて、この一年間ずっとやってきたのよッ!!」
唯「でも、でも! 自分たちは死のうとしてるんでしょ!?」
律「そうだそうだ! しかもファルガイアからエネルギーを吸い尽くそうとしてるんだろ!? そこまでして救いたいのか!?」
キャサリン「だって――しょうがないじゃないッ! 他にどんな方法があるっていうのよッ!?」
澪「そ、それは……」
キャサリン「デスデビルの力は強大よ。倒すなんて考えるもんじゃないわね。封印ももはやできる方法はないわ。なら、星を捨てて逃げるしかないじゃないッ!!」
紬「……ッ!」
キャサリン「絶対に、みんなを救い出してみせるわ。邪魔はさせない……あ、違うわね。邪魔はさせてあげる。見事私たちを倒して『英雄』になってみなさい」
キャサリン「そして、全ての人間を導いて救い出してちょうだい……私たちの代わりに。それは英雄にしかできないことだわ」
唯「……まだ、他にも方法があるかも知れないよ? あきらめちゃダメだよ……!」
キャサリン「……考えてみなさい。すぐに絶望的な答えがはじき出されるわ。さあ、始めましょう。あなたたちは私を倒しにきたんでしょう?」
梓「そんな……ただ倒しに来たわけじゃないです。お願いです、もう少し話を――」
キャサリン「戦う気がないならこっちから行くわよ。――ルシエド」
ルシエド「――グォォォォッ!!」
キャサリン「さぁ、覚悟しなさい、『英雄』さんたち――アクセスッ!!」
最終更新:2012年10月24日 22:37