【第十七話】
和「投票の結果、文化祭での、このクラスの出し物は、
ロミオとジュリエットに決まりました」
曜子「よしよしよし……」
俊美「ふふふ……計画通り……!」
アカネ(佐々木さんと柴矢さんの方からとてつもないオーラを感じる)
エリ(なにかを企んでいる……?)
澪(な、何故か酷い寒気が……!)
和「続いて役を決めたいと思います。まずはロミオとジュリエットの役ですが」
まき(そういえば三花ちゃん、どうせ劇やるならお姫様やりたいとか言ってたなー)
とし美(ならここはジュリエット役に、三花を推薦するべき?)
三花(みんな、信じてるよ〜)
和「投票で決めたいと思います」
和「白紙を配りますので、そこにそれぞれの役に相応しいと思う人を、
書いていってください」
* * *
アカネ(さて、投票タイムだ)
アカネ(ジュリエット役には三花を入れるとして……。
ロミオ役は誰だろう)
アカネ(このクラスって結構カッコいい人多いから決め辛いけど……。
ここは、澪ちゃんでいいかなあ。去年のライブも見たけど結構良かったし、
本番になれば決めてくれそうな気がする)
俊美(フフフ……)
アカネ(……)
アカネ(この投票、裏で強大な力が働いているような気がする……)
曜子(秋山さんのロミオ! 秋山さんのロミオ!!)
* * *
和「では、開票を始めます」
和「秋山さん。秋山さん。えー……私。岡田さん」
澪(さっそく二票も!?)
まき(自分の名前を見て、明らかに嫌そうな顔してたなー、和ちゃん)
和「秋山さん。松本さん。秋山さん。秋山さん」
美冬「はっ、私!?」
ちか「入れといたよー!」
美冬「余計なことを……」
澪(今度は三票もー……)
和「秋山さん。岡田さん。私。立花さん」
唯「和ちゃんもいいペースだね、頑張れ〜」
姫子「和を応援してるの?」
唯「うん! 私の中のロミオは和ちゃんなんだよ〜」
和「……そこ、私語は謹んで」
姫子(ご機嫌斜めのロミオさん……)
和「秋山さん。秋山さん。私。秋山さん」
アカネ(和ちゃんも頑張っている方だけど、澪ちゃんが圧倒的だね。
これは決まりかな)
澪(もういっそのこと殺して)
和「秋山さん。岡田さん。佐藤さん。私」
アカネ「……はっ?」
和「佐藤さん。秋山さん。立花さん。秋山さん」
アカネ(な、なんで私に投票されてんの!?
……いや、犯人はあの子たち以外考えられない……)
三花「てへっ」
エリ「てへっ」
アカネ(案の定すぎるでしょー!)
和「私。佐藤さん。岡田さん。秋山さん」
アカネ(しかももう一票!?)
とし美「てへっ」
アカネ(とし美かあああ!)
和「岡田さん。秋山さん。私。秋山さん」
ちずる「春菜も大人気だね」
春菜「うん、投票した人を三人まで言い当てられるぐらい、
なにか仕組まれているような気がするけれどね」
ちずる「人聞きが悪いな〜」
春菜「顔に出てるよ?」
圭子(ばれてる)
しずか(ばれてる)
和「立花さん。秋山さん。松本さん。秋山さん」
澪(……現実に別れを告げる時が来たか)
和「立花さん。秋山さん」
和「……というわけで、三年二組の出し物“ロミオとジュリエット”のロミオ役は、
秋山澪さんに決定しました」
唯「おお、澪ちゃんが主役!」
紬「すごいわ〜」
曜子・俊美(いよっしゃああああ!!)
律「良かったなー、澪! ……あっ」
澪「……」
律「あーきやまさーん」
澪「……」
律「……気絶してるな」
アカネ(そこまでっ!?)
* * *
アカネ(その後の澪ちゃん必死の異議申し立ても実らず)
アカネ(結果、りっちゃんをジュリエット役に道連れすることで、
主役決めは幕を下ろした)
アカネ(それから他の役と、道具製作にあたる人を決めて、
一先ずの活動を終えた私たちは……)
三花「……」
エリ「……」
とし美「……」
まき「……」
アカネ(なんとなく招集をかけていた)
三花「えっと、アカネ? これだけ人を集めて、どうしたのかな〜?」
アカネ「んっ?」
三花「怖い怖い目が笑ってないごめんなさい」
アカネ「まあ私が言いたいのは、この一点のみ」
アカネ「……なんで私に入れたの」
三花「面白そうだから」
エリ「面白そうだから」
とし美「面白そうだから」
アカネ「異口同音ッ!」
とし美「そんな怒るほどに嫌だったの?」
アカネ「怒ってるわけじゃないけど、本当勘弁してよ……。
私は主役なんて柄じゃないんだしさー……」
三花「そんなことないよ〜。アカネはカッコいいし〜!」
エリ「よっ、このイケメンッ!」
アカネ「ありがとう、それは女子にとって褒め言葉かは疑問だけど」
アカネ「ところで三花に五票入ってるのは、
ここにいる五人が投票したからってわかるんだけどさ」
三花「あれ、さりげなく私が自身に入れたことになってないかな〜?」
アカネ「私には三票しか入ってないのよね。
ここにいる四人が入れたとすれば、四票入れられているはず……」
まき「……私だよ」
アカネ「……まあ探すまでもなく、消去法でそうなんだけど」
まき「理由、聞かないの?」
アカネ「一応聞いておこうかな」
まき「私にはどうしても許せなかったんだよ」
アカネ「私がロミオをやること? そうだったなら大歓迎なんだけど」
まき「ううん、アカネちゃんにはロミオをやって欲しかったよ」
まき「でもそれなら、エリちゃんがジュリエットじゃないと駄目でしょ!?」
エリ「えっ、私!?」
まき「エリちゃんが相手じゃないアカネちゃんのロミオなんて……」
まき「即興で組まされたお笑いコンビでしかないよ!!」
アカネ「お笑いコンビなの!?」
まき「ここで圭子ちゃんのさっきの言葉を借りるとね」
まき「アカネちゃんがロミオだったら、ジュリエットはエリちゃんしかいないじゃん!」
三花「それは盲点だった!」
アカネ「いやいやいやー……」
まき「ボケがいなかったら、ツッコミが困るでしょ?」
アカネ「結局お笑いコンビかっ!」
* * *
とし美「まあ結局他人事になったわけだしさ」
アカネ「そうは言うけど、とし美だって私に投票したんでしょ?」
とし美「まあね。折角だし、いいんじゃないかなと思って」
アカネ「その無邪気さがえげつないんだよ……」
とし美「私は結構本気でアカネのロミオも見てみたいと思っていたよ?」
アカネ「……とし美には完敗だわ」
とし美「えっ?」
まき「ところで三花ちゃんはパリスって人の役になったみたいだねー」
アカネ「私、ロミオとジュリエットの話は知らないんだけど、
そのパリスってどんな人なの?」
とし美「えーと、一言で言ってしまえば……」
とし美「ジュリエットと結婚しようとする、ロミオの恋敵?」
アカネ「なにがなんでもジュリエットを自分のものにしたいのか、あの子は……」
まき「それは捻くれすぎだよ、アカネちゃん」
第十七話「桜高バレー部の投票」‐完‐
最終更新:2014年04月06日 15:35