【第二十四話】
‐機内‐
エリ「んんー……」
エリ「……」
エリ「…………」
エリ「……んっ?」
エリ(……目、覚めちゃった)
エリ(皆はまだ……寝てるよね)
エリ「……」
エリ(行きの飛行機で寝ないと、初日楽しめないっていうしね、ハワイ)
エリ(……私、いまハワイ行きの飛行機に乗ってるんだなー)
エリ(いまいち実感が沸かないけど、ハワイ着いたら違うのかな?)
エリ(よくわからないけど、まあ……とりあえずもう少し寝ておこう……)
エリ「……おやすみ…………」
‐ハワイ‐
まき「……ついに着いたよ、ハワイ!」
三花「ん〜、やっぱ座ったままは身体によくないね〜。身体がカチコチに固まった感じだよ〜」
とし美「さ、まずは荷物をホテルに預けちゃおうか」
まき「ところで今何時ぐらいなの?」
とし美「大体八時ね」
まき「おー、まだまだ朝なんだねー。遊びたい放題だよー」
とし美「帰りは昼に出ちゃうけど、こっちに着く時間が朝っていうのは、
遊びたい側から見ればありがたいね」
とし美「……一歩間違えると、ああなるけど」
アカネ「あー……つら……」
エリ「だ、大丈夫?」
とし美「夜に出て、朝に着く。
飛行機で寝れない人にとっちゃ、オールで遊ぶみたいなもんでしょ?」
まき「なるほどー……。今のアカネちゃん、オールしてる状態なんだね」
三花「それじゃ、早いとこホテルに行って、アカネを休ませてあげよ」
アカネ「面目ない……」
‐ホテル‐
エリ「着いたよ、アカネ」
アカネ「あー、ダメ……頭痛い……」
エリ「アカネが体調管理に失敗するなんて、珍しくない?」
アカネ「実は昨日……というか一昨日……?
まあ飛行機に乗る前の日も寝れなかったんだよね……」
エリ「えっ」
アカネ「飛行機乗るの、実はこれが初めてでさ……。
柄にも無く、飛行機に乗る前の夜から興奮しちゃって……」
エリ「それ意外だなあ。まるで遠足前日の子供じゃん」
アカネ「悔しいけど、否定できないわ……」
エリ「全員が合格もらったからって、油断しすぎだよ。
体調管理も立派な大学生の務め!」
アカネ「気をつけます……」
アカネ「……そういえば他の三人は……?」
エリ「隣の部屋。そこのドアで行けるよ」
アカネ「ああ、コネクティングルームってやつ……」
アカネ「……んん、んむー……」
エリ「眠いなら横になりなって。もう椅子じゃなくてベッドなんだからさ」
アカネ「ほんと、面目ない……おやす、み……」
アカネ「……すー…………」
エリ「……おやすみ、アカネ」
‐???‐
アカネ「……んん」
アカネ「……」
アカネ「……あれ」
アカネ「どこ、ここ?」
エリ「どこって学校に決まってるじゃん」
アカネ「えっ、えっ。ハワイは?」
エリ「なーに寝ぼけてるのさ」
まき「どうしたのー?」
エリ「アカネが寝ぼけてハワイ旅行してた」
まき「風が吹けば桶屋が儲かるぐらい、わけのわからない話だねー」
アカネ「……夢……?」
三花「三人ともなにやってんの〜! 早くこっち来ないと、見逃しちゃうよっ」
エリ「ごめんごめん、今行く!」
まき「いやー楽しみだねー」
アカネ「なにが? なにが見れるの?」
エリ「なにって、今日はとし美の出発の日じゃん」
アカネ「出発……?」
まき「それにしても凄いよねー」
まき「まさか特賞の“火星一週間の旅”を当てちゃうなんて」
アカネ「……は?」
エリ「私も行きたかったなあ、火星」
アカネ「え……、なにそれ……?」
「ゴゴゴゴゴ……!」
アカネ「な、なに? 凄い音だけど……」
まき「ついに出発だね」
エリ「ほら、校庭を見てみなって」
アカネ「校庭……?」
アカネ「……」
アカネ(あの……校庭からロケットが発射しようとしているんですが……)
三花「とし美〜、行ってらっしゃ〜い!」
エリ「楽しんできなよー!」
アカネ「おかしい……絶対におかしい……」
まき「おかしいって、なにが?」
アカネ「いやだって、校庭にロケット発射台がある時点でおかしいでしょ!?」
まき「そもそも火星旅行の時点でかなりアレだと思うけどねー」
まき「でもね、実は一番おかしいのはアカネちゃんなんだよ」
アカネ「えっ?」
まき「だってこれは全部アカネちゃんが作り上げて、
アカネちゃん自身で見ていることなんだからー」
アカネ「……つまり」
まき「全部夢だったってことだね!」
‐ホテル‐
アカネ「……」
エリ「あ、起きた。どう、よく眠れた?」
アカネ「悪夢とも言い切れない、微妙な夢を見た」
エリ「どんな夢?」
アカネ「とし美がロケットで火星旅行する夢」
エリ「えっ」
アカネ「……」
エリ「……アカネ、もう一度寝とく?」
アカネ「…………」
* * *
とし美「それを聞いた私はどんな反応すればいいの?」
アカネ「私にもわからない……」
三花「火星旅行はちょっと現実味に欠けるかな〜」
三花「あと特に行きたい理由も無いよね!」
エリ「火星に行ったところで、美味い飯が食えるわけでもないしね!」
まき「だよねー」
まき「というわけだよ、とし美ちゃん。わかった?」
とし美「どうして私が諭されてる体になってるの」
とし美「私だってハワイアン料理の方が食べたいよ。ラウラウとか、ポイとか」
エリ「ポイ……?」
とし美「……金魚をすくう方じゃないからね」
エリ「わ、わかってるよ!」
三花「そんで、大丈夫なのアカネ?」
アカネ「うん。だいぶ復活してきたよ」
三花「よしよし、じゃ、タクシーでレストランまで行くよ」
まき「た、タクシー!?」
エリ「私たちって、そんなにリッチだったってこと!?」
三花(日本よりは安いんだけどね〜)
‐レストラン‐
まき「おお! 植え込みがおしゃれっていうか、ハワイっぽい!」
アカネ「南国に来た、って感じにさせてくれるね」
三花「ここはビュッフェ形式だから、好きなだけ取って食べるんだよ」
エリ「ビッフェ?」
三花「ビュッフェ」
エリ「ビュッへ!」
アカネ「ビュッフェ」
エリ「び、ビュッフッへ!」
まき「ビュッフェ」
エリ「ち、違うって、ビュウッヘエ!」
とし美「もはや原型を留めてないね」
三花・アカネ・まき「ビュッフェ」
エリ「うわあああん!!」
* * *
アカネ「まずはグリーンサラダ……と」
まき「一目散にサラダを取るとは、さすが女子力高いアカネちゃんだね!」
アカネ「他の皆だって、サラダ取ってるじゃない。
それとデザートコーナーはあっちだよ、まき」
まき「わー、本当だー。でもどうしてデザートを推したのかなー?」
アカネ「その輝く笑顔がなによりの証拠でしょ?」
まき「うっ」
アカネ「にしても、サラダもだけど、デザートも一杯あるね。
ここから見たところケーキとか、パイとか……」
アカネ「あっ、ハウピアもあるじゃん」
まき「ハウピア?」
アカネ「ココナッツのプリンみたいなものね」
まき「へー……」
アカネ「どう?」
まき「……どうせハワイに来たなら、そういうハワイっぽいデザートも食べないとね!」
アカネ「そうね。私も少し貰おうかな……」
エリ「ねえねえアカネ! あっちにお寿司あったよ! カレーもあった!」
まき「……」
アカネ「……」
エリ「どうしたの二人とも?」
アカネ「……別に人の食べるもんにケチはつけないけどさ」
アカネ「はあ……」
まき「エリちゃん……」
エリ「なんか呆れられてる!?」
* * *
とし美「エリのお皿の中身から、ハワイをまるで感じられないんだけど」
エリ「えー、そう? あくまでハワイのお寿司だよ?」
エリ「とし美だって、その和え物、日本でもありそうじゃん」
とし美「これはポケっていうの。アヒポケ」
エリ「なにその面白い名前?」
とし美「お刺身をネギとかの薬味と、ハワイアンソルトで和えてるものね」
とし美「醤油で味付けされてて、美味しいのよ」
エリ「へー……三花のそのお肉は?」
三花「ラウラウ。葉っぱに包まれたお肉だよ〜」
エリ「ふむふむ。アカネのそれは?」
アカネ「ロミロミサーモン。サーモンにトマトとか玉ねぎとかを、
ハワイアンソルトでマリネしたものね」
エリ「みんなハワイっぽいもの食べてるんだねー……私もなにか取ってこようかな」
アカネ「むしろこの場で取らなかったエリに驚きだけど……。
そういえばさっき少し話題に出てたポイは、誰も取ってきてないの?」
まき「みたいだねー」
エリ「じゃ、それ取ってこようかなー」
* * *
エリ「ただいまー」
まき「おかえりー。それがポイ?」
エリ「うん。見た目は微妙だね」
とし美「因みにポイはタロ芋をペーストにして発酵させたものなの」
エリ「へえ。じゃあ試しに一口」
とし美「もう一つ因みに。発酵が進んだポイは酸味が出てきて、
あんまり日本人好みの味じゃないんだよ」
まき「へー」
三花「そうだったんだ〜」
エリ「……それを知ってて……私に取りに行かせたというのか……」
とし美「知ってて行かせたよ」
アカネ「鬼ね……」
とし美「ポジションとしては塩気のあるおかずと食べる、白ご飯みたいなものとも聞くね」
エリ「こんなもんが白ご飯と肩を並べてたまるか!!」
三花「まあまあ。騙されたと思ってさ、このラウラウと一緒に食べてみてよ」
エリ「そうやって私を嵌めようとする……どれどれ」
アカネ「そう言いつつも食べてみるんかい」
エリ「……んん!?」
まき「どう?」
エリ「さっきに比べれば、だいぶいけるぞ……これ……!」
三花「お〜、まさか本当に合うとは……驚きだねっ」
アカネ「食べさせた本人がそれ言うの?」
‐ビーチ‐
エリ「飯食った次は……」
三花「海でしょっ!」
まき「しかしアレだねー」
まき「人の海だね」
とし美「どの時期もある程度は混んじゃうよ、仕方ない」
エリ「なんでこんなに混んでるの?」
とし美「私たちみたいなのが一杯いるからじゃないかな」
アカネ「全くその通りね。日本人かはわからないけど、それっぽい人はちらほら見えるし」
エリ「そういえば、ハワイって日本語通じると思ってたんだけどさ」
エリ「さっきからタクシー呼ぶときは英語だよね」
アカネ「……当たり前でしょ。ここは日本じゃないんだから」
エリ「えっ、じゃあ日本語通じるってのは嘘なの!?」
まき「大きな施設だと通じる人もいるだろうけど、全体は無理だろうねー」
エリ「なんか一気にハワイが怖くなってきた……」
アカネ「なんで」
* * *
最終更新:2014年04月06日 15:39