【第二十五話】


 ‐ホテル‐


エリ「あーあ、明日にはハワイを出ちゃうのかー」

アカネ「まだ遊び足りない?」

エリ「ずっとこうしてダラダラしてたーい」

アカネ「こら駄目人間」

とし美「なんかエリの駄目人間っぷりがハワイ来てから悪化してない?」

エリ「なにその元から駄目人間の素質あったみたいな言い振り」

まき「そしてなんとなくアカネちゃんも甘くなった気がするよねー」

アカネ「えっ?」

まき「言葉は今まで通りだけど、声の感じがこう……」

まき「“も〜、仕方のない子なんだからっ”ていう感じ?」

三花「それわかる〜。あとその語尾にハートマーク付けてる感じだよね」

アカネ「なにそのすごく恥ずかしい人……」

三花「アカネ恥ずかし〜」

まき「エリちゃんと同じ部屋だからって、何してるのかなー?」

アカネ「ち、違うから! 何もしてないから!」

アカネ「……」

エリ「……」

アカネ(……最初の夜からずっと同じベッドで寝てるなんて、さすがに言えないわ……)


  *  *  *


エリ「朝ご飯食べたら、どうする? 明日の昼には出るんだよね?」

三花「うん、だから今日はお店一杯回って、お土産を買おうと思うよ」

エリ「お土産かー……。ハワイ土産の定番ってなにかな?」

アカネ「定番どころではコーヒーとか、チョコレートじゃない?」

とし美「コナコーヒーってやつね」

エリ「粉コーヒー? 粉末状なの?」

とし美「えっ。どんな形態で売られてるかは知らないけど」

エリ「だって粉コーヒーなんでしょ?」

とし美「確かにコナコーヒーだけど……」

エリ「ほらやっぱり粉末状なんじゃん」

とし美「えっ?」

エリ「えっ?」

エリ・とし美「……えっ?」


 ‐雑貨屋‐


まき「なにやら雰囲気のあるお店だねー」

三花「お、このポーチ可愛い!」

とし美「本当ね。三花に似合うんじゃない?」

三花「買っちゃおうかな〜」

エリ「あ、これ家族に買っていこうかな」

アカネ「どれどれ?」

エリ「木彫りのトーテムポールのストラップ!」

アカネ「……まあハワイっぽいけど、ガッカリされそうね」

エリ「そう?」

三花「ねえねえ、このブレスレットどうかな?」

アカネ「おお、可愛いじゃん」

まき「どうせなら、初日からそういうハワイアンなアクセサリーつけておきたかったねー」

三花「あ、確かに! それ悔し〜!」

とし美「まあ、またいつか五人で来ればいいでしょ」

三花「それもそっか。じゃあ来年に備えて……購入決定と」

とし美「来年に行くことは決定なんだ」

エリ「来年じゃなくても、いつかは五人でまた来たいね!」


 ‐外‐


三花「ふふ、買っちゃったよ〜。来年に備えるって言ったけど、日本で使ってもいいかな〜」

まき「いいと思うよ、可愛いしー」

まき「でもまだ他のみんなはお土産買えてないんだよね?」

アカネ「というか三花も、自分へのお土産しか買ってないしね」

三花「家族向けのお土産屋って感じじゃなかったしね」

三花「今度はスーパー寄ってみない?」

エリ「えっ、スーパーでお土産を?」

とし美「意外とお土産は地元のスーパーで揃うもんだよ」

とし美「しかも地元のスーパーのみならず、日本でお馴染みのあのお店で、お土産も買えるんだ」

エリ「お馴染みのお店か……わかった、ローソンだね!」

とし美「コンビニではないかな」


 ‐ドン・キホーテ‐


エリ「ま、まさかのドンキホーテ……」

とし美「聞いてたとおり、日本のものとは少し雰囲気違うね」

アカネ「でも日本の商品とか売ってる……」

まき「ハワイに来てる日本人向けって感じだねー」

三花「見て見て! ちょうどお土産にいい感じのチョコレートあるよ!」

まき「コナチョコレート!」

アカネ「しかも他のお店と比べて安いね。そこはさすがドンキかな」

とし美「よし、私これお土産にしよっと」

アカネ「あ、私も。あとコーヒーも欲しいんだけど……」

エリ「アカネ」

アカネ「なに?」

エリ「まさかと思うけど、まだブラックサイドなの?」

アカネ「まだ言うか」

まき「エリちゃん、加糖が一番だっていい加減認めようよー」

アカネ「こっちもまだ言うか」

とし美「そんな甘いものが好きなら、これ買えば?」

アカネ「Pancake...パンケーキミックス?」

とし美「味は三種類。日本で焼いて食べてもいいんじゃない。しかも安いよ」

エリ「どれどれ」

エリ「えーと、タロ——」

エリ「私はパス」

アカネ「早っ!」

三花「今、ポイのこと思い出したね?」

まき(ポイはタロイモだからねー)


  ‐外‐


まき「結構買っちゃったねー」

三花「思いのほか安かったからね〜」

アカネ「これでお土産は十分だね?」

エリ「オッケー!」

とし美「それじゃ、また海に遊びに行っちゃう?」

エリ・まき「賛成!」

三花「最後までエンジョイしちゃうよ、ハワイ!」

エリ「ハワイ!」

まき「いえーい!」


 「あれあれ? まさかのまさかじゃないですか?」


まき「……あれ、ハワイだというのに悪寒が」

アカネ「なんというか……、ここに来てまでこうなるとは。ご愁傷様」

まき「えっ?」


後輩B「まきせんぱあああああい!」

まき「うわああああ!!」


後輩B「ハワイでも会えちゃうなんて、運命感じますね!」

まき「う、うんソウダネー」

後輩A「あれあれ、先輩たちじゃないですか! 旅行ですか?」

三花「そうだよ〜。そっちも?」

後輩C「はい、私たちも旅行です」

三花「特に記念でもないのにハワイ旅行とは、リッチだね〜」

後輩C「いえ、この子が福引きで当てまして」

後輩B「当てちゃいまして!」

とし美「凄まじい幸運の持ち主ね」

後輩B「いやー、あの時はどうして当たったのか私にも謎でした。
 しかしたった今、その意味がわかりましたよ」

後輩B「神さまが私たちを巡り合わせようとしてくれたんですね、まき先輩!」

まき「悪魔か、もっと邪悪ななにかの間違いじゃないかな」

後輩A「あ、あの、アカネ先輩たちはいつ帰るんですか?」

アカネ「明日だよ」

後輩A「私たちより一日早く帰っちゃうんですね」

エリ「うう……この悠々自適の生活も明日まで……」

アカネ「自堕落な生活の間違いじゃない?」

エリ「こうなったらアカネー、自堕落な生活させろー」

アカネ「ちょ、抱き着かない! 暑いでしょ!」

後輩C(……いつもどおり熱いなあ)

後輩A「……」

後輩C(そしてなんでこっちは恨めしそうに見てるんだ)

まき「はーなーしーてー!」

後輩B「いーやーでーすー!」

後輩C「こっちはいつも通り」

とし美「どうする? お昼はまだなんだけど、一緒に食べる?」

後輩C「あ、はい。そうですね」

三花「さらに賑やかになってきたね〜」

まき「私としてはこうなる前で十分だったよー……」

アカネ「そんなこと言わないでさ、ほら」

まき「うー……」

エリ「それで、何食べる? モコロコ?」

三花「えっ、もころこ?」

エリ「あ、違う。モロココだっけ?」

とし美「それも違くない?」

エリ「ノコノコ?」

三花「それって亀じゃ」

まき「今の気分は?」

エリ「んー、ソコソコ」

アカネ「なにやってんの」


  *  *  *


三花「お昼を食べた後は!」

後輩B「運動ですね!」

後輩A「いや休憩挟みましょうよ」

後輩B「そんなことで部長が務まると思うの?」

後輩A「体調管理も立派な職務だから」

後輩B「それもそうだ」

後輩A「認めるの早いな……」

アカネ「まあまあ。休憩してから遊ぼう?」

後輩B「……ですね。それまではまき先輩とお話してます」

まき「いつの間にか私巻き込まれちゃってるねー」

後輩B「嫌ですか?」

まき「……ううん、別にー」

エリ「そういえばお土産は買った?」

後輩C「はい、これを買いました」

とし美「あ、これ日本の漫画……の、英語版?」

後輩C「そうです。ちょっと日本のものとは違って、こっちの人向けに、色々な解説がついてるんですよ」

とし美「なるほど、“TAKUAN”なんて海外の人はわからないもんね」

後輩C「非常に興味深いです」

エリ「……」

後輩C「どうしましたエリ先輩?」

エリ「いや、英語読めるんだなあと思って」

後輩C「先輩つい最近まで受験生だったんですよね?」


  ‐ビーチ‐


エリ「さて、始めようか……」

後輩A「……」

三花「新旧バレー部の全面戦争だよっ!」

後輩B「臨むところです。勝つのは私たちですから」

アカネ「へえ、なかなか言うじゃん」

後輩C「私たちも成長してるんですよ、先輩」

とし美「……あの、一ついいかな」

まき「なに、とし美ちゃん?」

とし美「ビーチバレーで対決することは結構なんだけど、基本ビーチバレーって二対二に分かれるじゃん」

とし美「私たち三年生が五人、二年生が三人」

とし美「これ新旧で対決させると、すごい不平等だと思うんだよね」

アカネ「それもそうね……」

三花「それなら大丈夫!」

三花「うちには“まき”っていう、同年代の後輩がいるからね!」

まき「えっ!?」


  *  *  *


まき「……」

後輩B「き、機嫌直してくださいって。私は先輩が例え年下でも、尊敬してますから!」←まきとチーム

まき「全然フォローになってないよー!」

後輩B「でもでも、こうなることは簡単に予見できてたといいますか……」

まき「本当にフォローする気あるの!?」


後輩C「おっと早速いつもの掛け合いです。あの二人は仲良しですねー、解説の三花さん」

三花「あの二人の喧嘩は、堅固な絆の裏返しですからね〜」

とし美「……なにやってるの?」

三花「見ての通り、解説だよ〜」

後輩A「……」

後輩C(そんな呆れた目でこっちを見ないでほしいなあ)


エリ「そこの二人、なにやってんのさー! 始めるよー!」

まき「……いい?」

まき「本当に簡単に予見できるっていうのは、
 ああいう常に一緒にいるようなアツアツな二人のことを言うんだよ?」

アカネ「なぜ私たちを指差す」←エリとチーム

後輩B「納得です」

アカネ「納得しないで!」


後輩C「解説席も」

三花「納得だねっ」

後輩A「……まあ、こればっかりは私も」

とし美「バレー部の共通認識ね」


エリ「いやいや相手方の言っていることも確か」

エリ「私とアカネは高校生活を共に駆けてきた存在、無くてはならない相棒、
 ……もはや私の嫁なのさ!」

アカネ「ちょ、ちょっとエリ……!」

後輩B「先輩。これ終わったらアイス買いに行きましょう」

まき「むしろ頭から氷を被った方がよくないかな?」

アカネ「……」

まき「……アカネちゃんが」


三花「今やアカネの頭はオーバーヒート。
 ハワイに来てから仲がさらに深まってはいましたが、これは決定的ですね〜」

後輩C「ちょっとその点詳しく聞かせてもらえません?」

三花「うんうん、実はねー……」

とし美「……後でアカネに何言われても知らないよ?」

後輩A(これは私も個人的に気になる)


エリ「さあアカネ。サービスはよろしく!」

アカネ「……」

まき「あっ、すごぶる嫌な予感」

後輩B「えっ?」

エリ「ふっふっふっ……サービスを打つ前から相手を圧倒させるアカネの覇気。
 それを味方につけたときの、この優越感よ!」

エリ「はーっはっはっ! さあ、恐怖の前にひれ伏すが——ぐふぉあっ!?」

後輩B「えっ!?」

まき「あーあ、やっぱり」

エリ(な……、なにかが後ろから飛んできた……!?
 この感触、間違いなくボール……一体誰が……!)

アカネ「……」

エリ「ま、まさか……!」

アカネ「……そ、そんな恥ずかしいことを皆の前で言うなあああああ!!!」

エリ(はは……、昨日の味方は今日の敵、ってね……)


三花「え、エリ選手ダウン! カウント、ワン、ツー、スリー……」

後輩C「決まったー! この試合、エリ選手のKO負けです!」

とし美「ビーチバレーにKOなんてあるの!?」

後輩A「もう無茶苦茶だ……」


  *  *  *


30