─26─
和「唯、今度の土曜日、クリスマスの買い出しに付き合ってくれない?」
唯「あっ、和ちゃん、クリスマスパーティやるんだ~?」
和「えぇ」
和「たった1人でね。」
唯「そ、そんな…ムチャだよ…」
唯「私が和ちゃんにして上げられる事は何もないの?」
和「だから買い出し付き合ってほしいって言ってるでしょ」
唯「そういえばそうだったや」
和「私の部屋をすごい飾り付けて24日の夜は盛大な祭りになるわ」
和「名付けて和祭り」
和「和の中の和たちよ!!出てこいやアアアァァッ!?」
唯「で、でも1人なんだよね……」
和「あら、ケーキとコーラとなんか粋な映画DVDでも借りてくれば
私のテンションはクライマックスよ?」
唯「でも……」
和「マ~ジ~ンンガアアアッ♪ゼエエェェェェッッ!!!!!!!」
唯「な、何が?」
和「なんでも無いわ」
唯(和ちゃんのテンションが上がっている)
唯(恐い)
唯「私たちもパーティやるから和ちゃんもおいでよ」
和「カン違いするんじゃないわよ。
アンタ達とは一時的に手を組んだだけで仲間になった覚えは無いわ」
唯「じゃあ、いいや」
和「本当に諦めますか?」
唯「はい」
和「はいじゃないが」
唯「はいじゃがい…も?」
和「じゃがいも」
唯「うん…」
和「いいのよ」
唯(何がいいのか全く分からない…)
唯(恐ろしい)
唯「ところで私、土曜日は用事があるから
買い出しには付き合えないんだけど…」
和「あら、そうなの」
唯「逆上して私を殺したりしないよね?」
和「私をなんだと思っているのよ」
唯「ラスボスより強い隠しボス」
和「あっ…悪い気はしないわね///」
唯(和ちゃんがいい気持ちになってる…)
唯(よかった~)
和「それで土曜日の用事って忙しいの?」
唯「そこそこ」
和「何するの?」
唯「缶けり」
和「誰とするのよ?」
唯「わたし1人だよ」
唯「スクール水着でね」
和「ソフトオンデマンド企画なのかしら?」
唯「ソフトオデンマンなんて知らないよ」
和「それがいいわ」
和「そんなことより買い出し付き合いなさいよ。殺すわよ」
唯「もはや脅迫だね」
和「唯が持ってない色のクレヨン買ってあげるから」
唯「この私がまるで赤子扱いだ」
和「どうやったら買い出しに付いてくるのよ」
唯「和ちゃんこそクリスマスは1人で過ごすクセに
なんで買い出しは1人で行かないのさ」
和「『クリスマスは1人で過ごすクセに』ですって…?」
唯「あ…その言い方に深い意図はなくて…」
和「今アンタ、私の髪型をハンバーグみたいだとッッ……!!」ガタン
唯「言ってないよ絶対に言ってないよ!!」
和「そう?」ハァハァ
唯「そうだよ」
唯(和ちゃんが天上天下唯我独尊)
唯(唯が独尊…?)
唯「わたしッ!?」ガタン
和(唯が私!?とか叫び出した…)
和「まあ、よいわ」
唯「えへへ~」
和「買い出しに付き合ってほしいのは
クリスマスツリーを家に持って帰りたいからよ」
唯「わあ、重そう」
和「二人がかりなら持ちやすいわ」
唯「でも、そういうのって宅配サービスとか無いの?」
和「山で勝手に斬り倒した樹を
宅配サービスで運んでくれるお人よしがいると思う?」
和「唯ったら本当に非常識ねぇ」
唯「お前が非常識だ!?」
和「俺がガンダムだ?」
唯「そうだよ!!違うよ!?ワケが分からないよ!?」
和「うるさいわね、キチガイみたいにわめきちらすんじゃないわよ」
唯「うん!!たん!!うん!!たん!!」フンス=33
和「よしよし」ナデナデ
唯「ゴロゴロ…」
唯「木って切っていいの?」
和「きってきっていいの?」
唯「私が聞いているんだよぉ」
和「??」
唯「えっ、なんでそんな不思議そうな顔するの?」
和「きってきっていいのって?」
唯「??」
和「なんでアンタが不思議そうな顔してんのよ」
唯「分からないよ…なにもかもが…」
唯「山に生えている木を切ってもいいと思っているんですか」
和「ああ、木にも命があるとかそういうアレ?」
和「そんなもの、ただの幻想よ。くだらない」
唯「そんな問題じゃないもん!!」
和「ハッ、じゃあどんな問題だって言うのよ」
唯「法律の問題だよ」
和「Oh...」
唯「あっ、英語」
和「ルールなんてブチ壊すためにあるのよ」
唯「木ドロボウの言う言葉じゃないと思うんだね」
和「フン、否定だけなら誰でも出来るわ」
和「理想を通したいなら代案を出してご覧なさい!」
唯「……」
和「どうしたの、減らず口はもうおしまい?」
唯「ぅ」
唯「うええええぇぇぇ…」グスッ
和「あら、ちょって、違うの、まって、泣くんじゃないわよ」
唯「ひっく、うぐ…うぅぅっ」
和「よしよし」ナデナデ
唯「フシャーッ!!」
和(唯を怒らせてしまったわ…)
和(興奮するわね!!)
和「私はただ『木を盗みに行くのは買い出しとは言わないよ~』
ってツッコんで欲しかっただけなのよ」
和「Are you O.K?」
唯「ぅぇ…えいごなんか分からないもん…」プイッ
和「Ilove you.」
唯「あっ、それは分かるよ~///」
和「セックス」
唯「じゃあ木を切りに行くのはウソだったんだね」
和「そりゃそうよ」
唯「よかった、じゃあクリスマスを1人で過ごす和ちゃんはいないんだね?」
和「いるけど?」
唯「いるんだ……」
和「宇宙ゥゥッ戦ッ艦ッ!!ヤアアァァマアアアァァトオォォォ!!!!!」
唯(和ちゃんのテンションがクライマックスだ…)
唯(すてき…)
おわり
─27─
唯「学校へ行こう!」
憂「そうだね!」
唯「ややっ。今朝は冬なのに、わりとあったかいよ?」
憂「きっと、お姉ちゃんの日頃の行いが良かったんだね!」
唯「学校……休む……」
憂「とにかくサボりたいんだね」
唯「レールに沿った人生なんてまっぴらゴメンなんだよ~」
憂「暴走特急だね!」
唯「さあ!憂もついておいで!」フンス=3
憂「でも線路はどこまでも続いているから……」
唯「そうだね…線路から外れたら、すぐビルとか山とかにぶつかるもんね…」
憂「うん…」
唯「憂は遥か彼方を見据えているんだね……」
憂「線路は続くよ♪の歌って
アメリカ大陸を延々とつなぐ長い長い線路を作り続けた人夫たちが
過酷な労働でバタバタ死んでいく中
『線路はどこまで続くんだクソッタレめ』という怨み節で作られた歌なんだって」
唯「ほぇ~」
唯「じゃあ私、桜ヶ丘のレールガンになるよ」
憂「レールガン?」
唯「ゲーセンからパクったメダルを電撃の力で
凄まじい勢いで撃ち出して、なんでもフッ飛ばすんだよ~~」
憂「お姉ちゃんはどこを見据えているの?」
唯「何も考えずに走れ!って言ってたんだ」
唯「とあるニートが」
憂「ニートの言う言葉なんか聞いちゃダメぇぇっ!!」
唯「そのニートは戦火の中、こうも言っていたよ」
唯「『月は出ているか?』」
憂「その人、厨ニ病だよ!」
唯「言いたい事も言ったから学校へ行こう」
憂「良かった良かった」
おわり
─28─
梓「なんですか、二人きりで話したい事って…?」
澪「いや、そんなに身構えなくていいよ」
澪「梓は1人だけ後輩という立場だろ?」
「もしかしたら、軽音部の中で何か思ってる事があるのに
先輩に対して言いにくいから黙ってる事とかないのかなって」
梓「はあ…」
澪「余計なお節介なら、そう言っていいんだぞ?」
梓「あ、いえ!」
梓「すみません、なんだか気を使わせてしまって」
澪「いいって」
澪「それで、何かないのか?
ガマンしてる事とか、もっとこうしてほしい!って事とか」
梓「いえ!本当に居心地のいい部活で…」
澪「本当に?」
梓「…まあ、居心地が良すぎるのが逆に問題でもあるんですけど」
澪「すぐダラダラしちゃうからな」
梓「はい、みなさん本当は凄いんだから
もうちょっと真面目に練習しないと勿体ないです!」
澪「そうだな、明日からはきっちり引き締めて行こうか」
梓「はい!ビシッといきましょう!」
澪「さあ、その調子で私たちに対して
まだ言いたりない事はないのか?」
梓「えっ?今、言ったじゃないですか」
澪「真面目に練習しろっていうのは前々から梓が言ってた事だろ?」
澪「せっかくなんだから、今まで言ってない事で何かないのか?」
梓「はあ…」
梓「うーん」
澪「まあ、本当に無いならいいんだけど…」
梓「あ、あの澪先輩」
澪「うん?」
梓「これは別に、その人の事が気にいらないとか
全然そういう事じゃないんですけど…」
澪「ん?なんだなんだ、やっぱり何か言えない事があったのか?」
梓「あの…」
梓「ムギ先輩の紅茶って、ぶっちゃけ、お湯の味しかしないんですけど
あれはどういう意味なんですか」
澪「お前、そういう、お前、リアルにヤバい話はやめろ」
梓「ヤバいって事は、澪先輩も感じていたんですね!?」
梓「『なぜケーキはこんなに美味しいのに
飲み物はこんなにも、お湯なのだろうか』と!!」
澪「いやいや…お前、せっかくムギがあんな得意気に入れてくれるんだから…」
梓「とくいげ?」
澪「違うんだ」
澪「紅茶は、あの、アレだ…
香りを楽しむモンなんだろうさ」
梓「まあ、確かに香りは文句なく良いですけど…」
澪「そうだろ?」
梓「でも毎日嗅いでたら飽きますよ」
梓「しかも、よく考えたらヤクルトの方がいい香りだし」
澪「香りの比較対象としてヤクルトを持ってくるんじゃないよ」
梓「牛乳と違って背が伸びるワケでもないし」
澪「文句だらけだよこの人!」
澪「私はどうすればいいんだ」
梓「ムギ先輩にさりげなく言っていただければ…」
澪「なんて?」
梓「私たちは放課後ティータイムであって放課後お湯タイムじゃないのだ!」
梓「そして変な葉っぱティーばっか飲ませて
お前はバンド名を放火後ティー大麻に改名させたいのか?と」
澪「それを、さりげなく伝える方法があるのなら教えてくれ」
梓「口に出して言いづらいなら、手紙を書くとか」
澪「キミが書いてくれないかな」
澪「やめて!!」
澪「お前、ムギに憎しみでも抱いているのか?」
澪「あるいは、お前の中にはモンスターがいるのか?」
梓「そ、そんなヒドい……」
梓「私はただ、澪先輩が何か言いたい事はないかと迫ってくるから…」
澪「え、あぁ、そ、そうだな」
澪「私が悪かったよ、全面的に。ごめんな?」
梓「いえ…」グスッ
澪「……」
梓「……」
澪「よし、なんか変な感じになっちゃったし
今から何か美味しいモノでも食べに行くか!」
梓「澪先輩…」
澪「いい感じの喫茶店があるんだ。そこの紅茶は美味しいぞ~」
梓「はい!私、ヤクルトがいいです!」
澪「梓はヤクルトが好きなんだなあ」
梓「本当はツバメの肉の方が好きなんですけどね!」
澪「キミ何言ってるの?」
澪「ああ、ヤクルトスワローズ?」
梓「はい!」
澪「もうお前がなんなのか分からん」
~~~~~~
律「なんだ、二人きりで話したい事って」
澪「律。お前、後輩に対して何か言いたい事とかない?」
律「お前、梓に対して何か言いたい事とかあるの?」
澪「お、おい、助けてくれ。ウチの部活にモンスターがいる」
おわり
最終更新:2014年04月19日 21:48