─保健室─
澪「うう…」
唯「澪ちゃん、熱が40度もあるよ~!!」チーン
澪「私の熱を電子レンジみたいに表現するのはやめてくれ…」ハァハァ
紬「どうやら、へらず口を叩く余裕はありそうね」
律「なんだよ~、もしかして熱あるのに我慢してたのか?」
澪「いや…今朝、目覚めたときから目眩はしてたんだけど
揺れる想いはマシュマロみたいにふわふわなだけかと思って…」
律「コイツは重症だぞ」
梓「いつもこんな感じな気もしますが」
澪「しかし、みんな、平気ってスゴイよね」
唯「何が?」
澪「いや…あんな薄いカーテンを布団がわりにして
よく風邪ひかないなって…」
唯「だって私たちバカだもんね~♪ね、りっちゃん?」テッテレ~
律「おぅさ!バカは風邪ひかないもんな!」パッパラ~
紬「ゲホゲホ」
和「ゴホゴホ」
梓「あ~なんだか熱っぽいな~」
澪「突然どうしたの?」
梓「そういえば律先輩、寝ゲロ吐いたって言ったじゃないですか」
律「ああ、そういや、んな事言ってたね」
紬「あっ、もしかして、りっちゃん…ちょっと失礼するわね」スチャ
律「ん、なに?脇フェチ?」
紬「……」
和「……」
ピピピッ ピピピッ
和「律の体温、46度あるわ」
律「す、すげえ」
梓「よ、46度って生きてていい温度なんでしたっけ」
唯「えっ、なになに?どうゆう事?」
和「律は高熱があるけれど脳がバカ過ぎて
熱がある事すら気付かなかったようね」
「りりり律、お前なんともないのか?」
律「え…」
律「うう…」
律「平気だけど?」ケロリ
和「これが進化か」
唯「りっちゃんはポケットモンスターだったんだね」
律「へへ、いや~悪いな~」
梓「ま、まあ頭が悪いのは確かですけど…」
紬「うぅっ…」
唯「ど、どうしたのムギちゃん。大丈夫?」
紬「りっちゃんを見てたら気色悪くなってきた…」ウプ…
和「澪に続いてムギまで倒れてしまった…」
律「う~ん、こりゃさすがに帰るのは無理か…」
紬「あ…私の事は気にしないで?」
紬「私は電車通学だし、どのみち歩いて帰るのは厳しいと思っていたから
ここに残って休んでいるわ」
唯「ムギちゃん…」
澪「わ、私の事も気にしないで、みんな帰ってもいいよ」
律「澪…」
澪「心配するなって!ただの風邪だから寝てれば治るし…」
澪「逆に付き添ってもらってても、あんまり意味はないからな」
律「じゃ、帰るか」
和「善は急げ」
唯「そうだね!」
澪「なにっ」
梓「やった!これで
澪「待て待て待て」
唯「どうしたの澪ちゃん」
和「何か異常が生じたかしら?」
澪「君たちの心が異常なんだ」
梓「よく分かりませんね」
律「澪は気にしないで帰れって言った」
唯「そして私たちは帰ると言った」
和「何も問題は無いわよね」
澪「言ってない」
律「え?」
澪「私は帰れなんて言ってない」
梓「え?い、言いましたよね…」
澪「絶対に言ってません」
律「中立な立場のムギよ、どうだった?」
紬「え…い、言ったと思うけれど…」
澪「違うよ」
澪「帰ってもいい、と言ったけど『帰れ』とは言ってないよ」
梓「…?」
律「何が違うんだ?」
澪「帰ってもいい、という事は『帰らなくてもいい』という事でもある」
和「まあ…そうね」
唯「でも、帰ってもいい、という事でもあるよね」
澪「ダメだ」
梓「えっ!?」
律「ど、どういう事なんだ」
澪「帰ってもいいけど、帰ったら生涯をかけて呪ってやる」
唯「それ、帰っていいって事なの?」
和「でも常識的に考えれば呪いなんて、ありえないものよ」
梓「つまり…?」
律「帰ろっぜ~♪」
澪「ウォオオぇオォ!?」
─廊下─
ォォォォオォォオォ…
梓「風に乗って澪先輩の叫び声が聞こえますね」
唯「こわいなぁ」
和「さて、どうしようかしら」
律「帰るんだろ?」
唯「ね~っ」
和「あれは澪をからかっただけでしょ?」
和「昨日から粗末な乾パンしか食べてないんだし
とりあえず近くのコンビニで食料調達して戻ろうと思うのだけれど…」
和「澪たちには栄養をつけさせないとね」
梓「あっ、そうだったんですか」
唯「わたしはきづいてたよ」
律「あたしも」
和「それは良かったわ」
唯「でへへ」
─外─
ザフッ
唯「わああ!?」
律「すげえ雪…腰まで埋まっちゃうよ!!」
和「でも、実際は1メートル50センチは積もってそうよね」
梓「下の方の雪は固まってるみたいですけれど…」
唯「ところどころ柔らかいところがあるね」
和「気をつけて歩かないと腰どころか頭までズボッと
ズボッ
┗┛┗┛
唯「和ちゃんがメガネだけを残して消えたあああー!!」
和「徒歩一分で死ぬところだったわ」
唯「気をつけて歩かないとね」
ザフッ
律「しかし、どうやって気をつけりゃいいんだ…?」
ザフッ
梓「あっ」
梓「あれ見てください!雪の上に足跡が…」
和「そういえば姫子が言ってたわね」
和「既に抜け出した生徒がいるって」
唯「この足跡を辿れば校門の外まで無事に行けるかな?」
ザフッ
和「それは分からないけれど
行けるところまで行ってみましょうか」
唯「姫子ちゃんは結局、抜け出したのかなあ…」
ザフッ…
ザフッ
ザフッ
ザフッ
ザフッ
唯「はあはあ…」
梓「ム、ムラムラしてきたんですか…?」ハァハァ
唯「あずにゃん…」ハァハァ
梓「ゆ、唯先輩…」ハァハァ
唯「黙ってて」ハァハァ
梓「はい…」ハァハァ
ザフッ
ザフッ
律「校門が遠いぜ…」ハァハァ
和「それにしても…これだけの異常事態に
地方自治体は動かないのかしら…」ハァハァ
梓「高校生が学校に取り残されているんだから
救援とかあって良さそうなんですけどね…」ハァハァ
律「梓」ハァハァ
梓「はい?」ハァハァ
律「黙ってろ」ハァハァ
梓「なんでですか!今のは別にいいじゃないですか!」ハァハァゼェゼェ
律「そ、それもそうだな」ハァハァ
ザフッ
唯「はあはあ…やっと校門に辿り着いたよ~」
律「あ、人だ…!人がいるぞ」
通行人「……」ザフッ
ザフッ
和「あの、ちょっとよろしいですか」
通行人「ン…」
通行人「おや、キミたちは……なんだい…?」
梓「女の魅力は乳よりも足の指に感じますよね」
通行人「えっ」
通行人「……えぇっ?」
和「誰かそのマツピツを黙らせて」
唯「えいっ」
ドスッ
梓「ぐっ…」
通行人「…?」
和「あの……私たち、昨日からずっと学校から出られなくて
状況がよく分からないんですが
今、何がどうなっているんですか?」
通行人「え?あ、ああ……」
通行人「えっと……なんだか、かなりのオオゴトらしいよ」
通行人「ここいら一帯だけじゃなくて
日本中が豪雪に見舞われているらしいんだ」
唯「ふぇ…?」
律「にっぽん中が?」
通行人「しかも電力量不足だとかで、電気も使えなくなるしさ」
通行人「ボクなんか、今、慌てて灯油を買い込みに行ってたところさ」ドスッ
梓「あ…ポリタンク」
律「そっか、石油ストーブなら停電中でも使えるもんなあ」
通行人「おっと、悪いが、そろそろ行かなくちゃ」
唯「あ、はいっ」
和「引き止めてすみませんでした」
通行人「いやいや、じゃあキミたちも気をつけてね」
ザフッ
ザフッ
唯「行っちゃったね」
和「買い込みか……」
和「コンビニ、急いだ方が良さそうね……」
ザフッ
ザフッ
唯「ややっ…」
人々「」ザフッ
ザフッ
律「ぽつぽつ人影が増えてきたな」
唯「なんだか安心するね~」
和「私はチョッピリ、嫌な予感もするけれど」
唯「なんで?」
ザフッ
梓「あっ、街のホットステーソン、ローションですよ!」
律「なんだい、ステーソンって」
梓「知りません」
─ローソン─
ざわざわ…
唯「わあっ!?すごい人の数だね~。これが数の子なんだね~」
律「まったくだ」
和「さっきの人の話じゃ
買いだめする人が多そうな感じだったけれど、やっばりねぇ」
梓「ははぁ、食料品の買いだめですか」
律「見ろよ、停電でレジ止まってるからソロバンで会計してるよ」
和「雅やかね」
梓「せめて電卓を使えばいいのに」
律「梓バカだなあ、停電なのに電卓が使えるかよwww」
梓「律先輩の家の電卓ってコンセントついてるんですか?」
唯「あ、カップ麺の棚がスカスカだよ~」
律「和の言ってた嫌な予感って、この事?」
梓「謝れよ」
和「えぇ……ごめんなさい。それでも、まだ商品はそこそこ、残っているようね」
和「パンもオニギリもあるわ」
梓「和先輩は謝らなくてもいいんですよ」
唯「よ~し、何食べよっかな~!」
律「わずかに残ってるカップ麺にすっかな」
律「腹が膨れて暖もとれる!!一石二鳥!!」
唯「おお~、りっちゃんかしこい!革命児!」パチパチ
律「へへへ、褒め過ぎだろ~」
梓「でも停電中なのにお湯湧きますかね」
律「ハァ?梓ん家のお湯にはコンセントついてんのかよw」
梓「お湯にはついてませんが、ポットにはついていますね」
律「へー」
唯「あっ、ねぇ…お店も停電だから、お湯入れられないんだって…」
梓「まあ、そうですよね。普通気付きますよね」
和「律、ラリってんじゃないの?」
唯「ラリっちゃんだね…」
律「言い過ぎだろ…」
和「理科室の実験器材で、お湯くらい沸かせないかしら」
律「おっ、それだよ!」
唯「じゃあカップ麺買っていいんだね!?」
和「まあ、なんとかなるでしょう」
唯「だけど私はあえてアイスを買ってみるよ」
和「もう好きに生きなさいよ」
唯「ふんす」
律「お湯OKなら澪とムギのために
インスタント粥でも買ってやるか」
唯「ねぇねぇ、買いだめって私たちもした方がいいのかな」
和「え?」
梓「いくらなんでも昼過ぎには帰れるだろうし、そこまでは…」
梓「……帰れますよね?」
律「さ、さあ」
梓「いや、お前には聞いてません」
和「そうなのよね…」
和「また吹雪が止まなくなる…なんて事もありえるし、なんとも言えないわ」
和「澪たちも放っておけないし…」
唯「ムギちゃんの家の人とか迎えに来ないのかなあ」
律「さ、さあ」
唯「り、りっちゃんには聞いてないよ」
律「なんでだよ!?アタシをもっと頼れよ!?」
梓「律先輩、このジャムのフタ開けられますか?」
律「まかしとけ!」
カパンッ
律「やった!開いた!」
和「商品、勝手に開けていいと思ってるの?」
梓「お買い上げですね」
律「ま、待ってくれ、アタシ300円しか持ってないんだ」
唯「ごはんはジャムだよ関西人」
律「そんな…」
和「じゃあ、そろそろ買うもの買って戻りましょうか」
梓「はい!」
最終更新:2014年04月19日 21:50