─保健室─

澪「も」

澪「も」




澪「も」


琴吹紬です

澪ちゃんが「も」になってしまいました

かなしいです


澪「も」

りっちゃん達に置いてけぼりにされたショックで
澪ちゃんはもう『も』以外の言葉を話せなくなってしまったのです…

澪「も」

澪「も」

紬「澪ちゃん……」

澪「も」

紬「100万円あげる」

澪「えっ、本当!?」

紬「嘘よ」

澪「も…」

紬「澪ちゃんは本当に半端もんやで…」

澪「ごめんなさい」

紬「いいのよ」

澪「だけどムギは寂しくないのかい?」

澪「熱を出してるってのに
きゃつらに、ほったらかしにされて…」

紬「私は弱ってる姿を人に見られたくないから
一人で寝ている方が、本当に気楽だわ」

澪「ははぁ」

澪「ネコは死ぬ時に姿を見せない、とか
そういうタイプだな」

澪「つむぎキャットだね」

紬「ニャア~」

澪「頭おかしいんじゃないの」

紬「酷すぎるわ」

澪「しかし、まあアレだよね」

澪「ほったらかしと言えば、ムギの家からは
『お嬢様救出部隊』的なものは出動しないのか?」

紬「……」

紬「そんなもの、あるワケないわ」

澪「ムギ?」

紬「…私は、四人姉妹の中で
一人だけ父親が違うから」

澪「えっ」

紬「私の父は、祖父なのよ」

澪「えっ、えっ!?」

澪「ど、どういう事?」

澪「父親がおじいちゃんって事は、つまり禁断の…」

紬「嘘よ」

澪「なんだ嘘か」

紬「寝る前に布団の中で、そういう妄想設定したりするの」

澪「ははあ」

紬「澪ちゃんは妄想の中で
りっちゃんにしゃぶらせたりしないのかしら」

澪「何を?」

紬「ナニを」

澪「……」


紬「みおち○ぽみるく」


澪「黙れよ」

紬「テンションが上がってきたわ!!」ハァハァ

澪「もう私を一人にしてくれ」

ざわざわ

紬「あらっ」

紬「なにかしら、廊下が騒がしい感じに」

ガラッ

信代「おーい、大変大変!」

紬「ジャイアンのお母さま!」

信代「違う違う」

澪「おれはかーちゃんの奴隷じゃないっつーの!って言ってみてくれないか」

信代「それじゃジャイアンそのものだよ」

紬「名前的にはドラえもんなのに」

澪「なんなんだ一体…」

信代「本当に」

信代「今、レスキュー隊かなんか、それっぽいのが来ててね」

澪「おお」

紬「それで騒がしかったのね」

信代「でも、なんか…」

澪「?」

紬「どうしたの?」

信代「なんかスゴいブサイクで気色悪かった」

紬「それで騒がしかったのね」

澪「いや、失礼だろ」

澪「ジャイアンのママの分際で」

信代「アンタだって失礼だろうが!」

紬「その言葉もジャイアンのお母様に失礼なような」

信代「…で、とりま家が近い人からレスキューが付き添って
送ってくれるんだってさ」

澪「えっ」

紬「とりま?」

澪「なんだかキミが使うと痛々しいナ☆」

信代「うるさいよッ!」

信代「というか反応するトコは、そこじゃないんだよッ!!」

澪「それもそうだ」

紬「こんな女、どうでもよかったわ」

信代「その言い方もなんだかシャクだけど…」

澪「しかし家まで送ってくれるったって
結局は徒歩じゃないの?」

信代「だろうね」

澪「私、熱が40度もあるからなあ」

信代「すっごい元気そうだけどね」

澪「いや、さっきからゴリラ界の美少女ゴリラの幻覚が見える」

信代「へぇ」

紬「私の家も相当遠いから、すぐには関係の無い話だわ」

信代「まあまあ、そんな人のために食べ物は持ってきてくれたから」

澪「本当?早く持ってこいよ、このデブ!」

信代「言葉遣い!!」

澪「ごめんごめん」

澪「嬉しくてつい本音が」

信代「大概にしないと顔を舐めるよ」

べろん

澪「わぁ!?ぎゃああ!?きたな

紬「耳元でうるさ~い」

ドスッ

澪「ぐっ……」

信代「暴力はよくない」

紬「でも、私の拳も痛かった」

信代「じゃあ仕方ないね」

澪「うっ…うぅ…」


紬「ところで、信代ちゃん、ノンビリしているけれど
救助の人に送ってもらわないの?」

信代「あぁ、順番待ちだよ」

信代「救助の人らは今、アタシより家の近い子を
送ってるだろうから、そのあとで…」

澪「えっ、帰るの?」

信代「そりゃあねぇ」

澪「えええ、熱を出して寝込んでいる私を見捨てて帰っちゃうの!?」

信代「だって、さっきデブとか言われたし…」

澪「あっ、あれは違うんだ」

澪「マグレなんだ」

信代「えっ」

紬「澪ちゃんストップストップ」

澪「なに?」

信代「アンタ、まぐれでデブって言ったのか」

澪「う、うん」

紬「澪ちゃん。ウソはダメよ」

澪「ムギだって、お父さんが祖父とか、100万円くれるとか
散々ウソついてただろ!?」

紬「あっ。そ、それはアレよ…」

紬「マ、マグ…」



紬「マ~ク~ロス」

信代「?」

紬「マ~ク~ロス」

澪「デデデデデデデ~」

澪紬「マ~クロ~~ス♪♪」

信代「……」

信代「……?」


澪「とにかく帰らないよね?」

信代「あ、え、いや、絶対に帰るけど?」

澪「くそっ、なんていうヤツなんだ…」

澪「自分の事しか考えない悪魔超人め…
トトロに食べられちゃえー!!」ハァハァ

紬「トトロはそんな事しないのに」

澪「うわぁああっ!?騒いでたら余計気持ち悪くなってきたぞ!!」

澪「くそっ!くそっ!オエー」グゥゥッ

紬「澪ちゃんを見ていると、へそで紅茶が沸くわ」

信代「っていうかさ、もう大人しく休んでなって」

澪「オェ?」

信代「澪だって熱さえ下がれば帰れるワケだしさ、JK」

紬「JKってジャイアンのカーチャンの略なのかしら」

信代「常識的に考えな」

澪「ふむ…」

澪「休む…」

澪「その手があったか!」

紬「その手しか無かったわよ」

紬「最初から」

澪「じゃあ私は一回休み」

信代「まるで人生がスゴロクであるかのように」

澪「うぅ……しかし、寝たいけど
頭痛がひどくて寝つけないな…」グワングワン

紬「だったら、この風邪薬を使う?」スッ

紬「睡眠薬が多少、含まれているから、すぐ眠れると思うわ」

澪「本当?じゃあ、使ってみようかな…」

紬「はい、どうぞ」パキ

澪「どうもありがとう」

紬「よいのよ」

澪「ん…」ゴクン


─────────
──────
────

澪「…………」

澪「………」

澪「…?」


目を覚ますと

あたりは一面、真っ暗闇だった

澪「え?」

澪「……え??」


2、3秒ほど呆然としたのち
自分がいつの間にか眠っていた事に気付いた。

私は確かムギからもらった風邪薬を飲んで……

記憶がそこで途切れているって事は、あのあとアッサリ熟睡してたって事かな。

しかし、それにしても……

改めて、辺りを見回すが、やっぱり誰もいない。

ムギも信代も姿を消し、そこは、ひたすら暗い保健室だった。

信代は、そのうち帰ると言っていたけれど
ムギまで…?


澪「ムギ、いないの…?」

私は、どれくらい眠っていたのだろう。

状況を把握するためにポケットから携帯電話を取りだして
時間を確認……しようと思ったが、ディスプレイには何も映らない。

澪「バッテリーが切れてる……」

私の携帯は普段からバッテリーの寿命が短く
1日充電しないと、このザマだ。

くそっ、こんな事なら早くAUポイントで携帯を買い換えておけばよかった……!!

私は怒りのあまり、江頭2:50のように
パンツに手を突っ込んで「ドーン!!」と拳を突きださざるをえなかった。

澪「ドーン!!」


でも保健室の壁に掛けられている時計があったので
私は穏やかな心になった。

澪「6時15分か…」

という事は、ぐっすり8時間は眠っていた事になる。

あ、いや……

ふと窓の外を見ると真っ暗だが……

澪「まさか朝の6時って事は無いよな……」

疲れていたし、昨日はあまり眠れなかったし
睡眠薬入りの風邪薬の事もある。

20時間眠りまくった可能性もないワケじゃないが…

澪「月ッ光蝶ッであるッ!!」

私は気持ちよくなった。

不安な状況ではあるが、眠ったおかげで
どうやら体調はかなり回復しているようだった。


ふと、ムギの使っていた保健室ベッドに触ってみる。

まだ、あたたかい…

何があったか分からないが、ムギがベッドから出て
そう時間は経っていないという事か?

とにかく、このままじゃワケが分からない。

私は非常用の懐中電灯をひっつかみ、保健室から出ることにした……


停電中につき、廊下も真っ暗だ。

念のため、近くにあったスイッチを押すが
蛍光灯がつく様子はない。

随分、時間も経ったろうに未だに電気は復旧しないのか?

つきあたりにある『非常口』の灯りは見えるものの…

窓から校舎を見渡してみるが、ここからでは人影らしきものは見えない。

しばらく校内を適当に歩きまわり
いくつかの教室や職員室をのぞいてみるが、やはり誰もいない。

ムギだけでなく学校に残っていた人たち全員が
いなくなってしまったような。

澪「……みんな、どこに行っちゃったんだろう」

可能性として考えられるのは救助の人に
みんな家に送ってもらった事。

そして、私はあまりにも気持ちよく眠っていたので
起こされなかった、と。


いや、起こせよ!!

そんなの優しさじゃないよ!!

私は、そこらの教室でオシッコをまき散らしてやろうかと思ったが
まきちらした。

よく考えてみたら、ムギは保健室にいなかっただけで
校内の別の場所にいるだけかも知れない。

単にトイレに行っただけとか……

救助の人たちが食べ物を持ってきたとか信長代返が言ってたし
それを取りに行ってる可能性もあるし。

う~ん……

しかし、いざ探すとなると学校ってのは結構広い。

澪「あっ!玄関に行こう!」

下駄箱にムギの外履き靴があるかないかは
よい判断材料になるであろう。

私は自分の頭の良さに惚れぼれして
鏡で自分のチャーミングな顔を見つめながら自慰行為にふけろうとしたが
指が冷たかったので自重した。



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最終更新:2014年04月19日 21:50