澪「まぁいいや」
律「そうだな」
澪「それで?」
澪「いったん学校に戻ってきたって言ってたけど…唯や和もいたのか?」
律「ああ。みんな、いたよ」
律「……梓以外は」
澪「えっ、梓はどうしたんだ?」
律「犬に追いかけられて消えてった」
澪「そっか」
律「梓をのぞくアタシらは学校に戻って
澪やムギたちにコンビニで買ったメシを届けたんだ」
律「まあ、言ったとおり澪は寝てたけどな」
澪「うん」
律「で、みんなでメシ喰って、しばらくして
救助の人が『ここはヤバいから移動しようず』とか言ってきてさ」
澪「ヤバい?何が?」
律「…電気がアレで、復旧しなくて、水も破裂?して
食べ物も、アレで、寒くて、冷えて、、。」
律「おわり」
澪「えっ」
律「で、唯が救助の人にコショウをふりかけて、どっかに走り去って
ムギは本物の動物の豚の生皮着ぐるみを着て、どっかに走り去って
和もいつのまにかどっかに走り去っていった」
澪「待て待て待て」
律「そして私もどっかに走り去った」
澪「待てって!!」
律「どうしたの?お腹痛くなったの?」
澪「あたま痛くなったの」
澪「分からないことだらけだよ」
律「まあ、いつの時代もそんなものさ」
澪「救助の人が何を言っていたのか絶対に理解出来なかったんだな?」
律「はい」
澪「まぁいいよ。良くはないけど、そこは諦めるよ」
澪「しかし、なぜ
唯が救助隊にコショウをふりかけたかくらいは分からないのか?」
律「さあな……最近の唯さんが何を考えてるか
アタシらでも分かんねーんだ」
澪「アイツは暴走族のイカれたヘッドか何かなのか?」
律「まぁ、とにかく澪以外みんな走り去っていったんで
アタシも走り去る事にしたんだが
走り去ってる途中で
どこへ走り去ったらいいか分からなくなってな」
澪「そりゃそうだろうな」
律「でも、そのうち気付いたんだ」
律「アタシたちは明日に向かって走り出しているんだ!ってな」
澪「そうか」
澪「なに言ってんだお前」
澪「まあ1つずつ、いこうじゃないか」
律「いいぞ」
澪「お前は走り出したあと、どうしたんだ」
律「なんか、そこらの家から人がワラワラ出てきてね」
律「雪も降り始めているってのに民族大移動の始まりさ」
律「気が付けば町中の人が、どこかに向かって歩き出していた」
澪「ほう」
律「頭の悪いアタシでも流石に気付いたよ」
律「こりゃやべぇってな」
澪「そうだな」
律「で、アタシはしばらく町の人らと何処かへ歩き続けていたんだ」
澪「お前にしてはマトモなチョイスだな」
律「でも、そのうち学校で寝ている澪の事が
気がかりになって引き返したんだ」
澪「律にしてはステキなチョイスだな」
律「でも、そのうち扉が開きっぱなしになって
店員のいない漫画喫茶があってね」
澪「お、お前、まさか」
律「さっきまでそこにいた」
澪「2日間も!?」
律「なんとかスラムダンクを全巻読破したぞ」
澪「スラムダンク読むのに2日もかかったの!?」
律「字が多かったからな」
澪「多くないよ!!」
律「おもしろかった」
澪「私の事は!?」
律「好きだよ」
澪「えっ…ば、ばかっ///」
律「まぁいいか」
澪「まぁいいよ」
澪「それでも、ここに戻ってきてくれたんだから」
律「まあね」
澪「しかし、お前……そののち、校庭で排泄行為をおこなっていたが…
トイレまで我慢出来なかったのか?」
律「いや~、雪にジャムつけて食べてたら
お腹が急に痛くなっちってさ」
澪「なぜ、そんなマネを」
律「食べ物はジャムしか持ってなかったからね」
澪「なぜジャムしか持ってなかったんだ」
律「梓にハメられたんだ」
澪「どうやったら、そんな状況になるんだ」
澪「いや…でもまあ、お前は頭がおかしいからなぁ」
律「おい、そんな納得の仕方でいいのか」
澪「それで…来てくれたのはありがたいが
これからどうするんだ?」
律「そりゃアタシが聞きたいよ」
和「それならこの学べる和にお聞きなさい」
澪「えっ!?」
律「おっ」
和「全新系列!!」
律「天破侠乱!!」
和律「見よッ、眼鏡は赤く燃えているッッッ……!!」
澪「一体、何が起こったんだ…」
和「ウソよ」
澪「あぁ。何がウソなのかは全く理解できないけど……」
澪「和……お前、どうしてここに?」
律「何処かへ走り出したんじゃなかったのか?」
和「私は色々と準備を整えて澪を助けに来たのよ」
澪「私を?」
和「救助の人たちは寝ている澪を置いていくって言っていたしね」
澪「置いていくって…みんな、どこに行ったの?」
和「あら、律から聞いてないの?」
律「へへ…」
和「あぁ、まぁ彼女は頭がおかしいものね」
澪「そうなんだ」
律「そんな事ないよ!?」
和「スラムダンク名言集ク~イズ」
律「よし来い!」
和「左手は…?」
律「揚げるだけ」
澪「唐揚げでも作る気なのかこのイカレカチューシャ」
和「それで澪、調子はどう?」
澪「あぁ、すっかり元気になったよ。いささか眠り過ぎたけれど」
和「元気になったのは分かっているわ」
和「私が訊ねているのは精神的な話よ」
律「どういう事だ?」
澪「こんな事態になって不安じゃないか…とかって事?」
和「澪、あなたは保健室で目を覚まし、携帯を確認した直後
パンツに手を突っ込んで拳を「ドーン!」って突きだしたわね?」
律「えっ」
和「こうよ」モゾッ
和「ドーン!」グィィン
澪「……」
律「どういう意味なんだ?」
和「分からないわ」
澪「和、なんでそれを…」
和「私は昨日から保健室にいたのよ」
律「あっ、そうなのか?」
和「ずっと澪が目を覚ます様子がないから
綿を含んだ水で口を湿らせてあげたり
寒くないように添い寝してあげたり
寝汗を拭いてあげたり下着を脱がせたり
下着を頭にかぶったり下着を着せたり脱がしたり
触ったり触ったり触ったり
色々世話になったのよ」
律「へ~」
澪「世話になったってなんだよ!?世話をしたんだろ!?」
和「そうね」
和「それと、何か誤解しているようだけれど
私は純粋に看護しただけだから」
澪「本来かなあ」
律「和は偉いや」パチパチパチ
律「なぜ下着を頭にかぶったのかは謎だが」
和「弱っている女、子どもを私は放っておけないわ」
律「聖人君子なのか変質者なのかハッキリしてくれ」
澪「なんだろう…」
澪「すごく胸がもやもやするよ」
和「胸が…?それはイケナイわね……」
澪「いや、興味をもたなくていい」
澪「まぁいいよ」
和「それがいいわ」
澪「でも私が目覚めたとき和の姿は見えなかったぞ」
和「保健室は暗かったでしょう?」
澪「うん」
和「私は闇の中、黒の全身タイツを着て、立ち尽くしていたのよ」
律「まるで名探偵コナンの犯人のような」
澪「どうしてそんな事を…」
和「澪がそろそろ目を覚ましそうだったから
ビックリさせようと思って」
澪「今、十分ドン引きしたよ」
和「それでいつ驚かせようかタイミングを見計らっていたら」
和「ドーン!」グィィン
澪「……」
和「私は澪の気色悪さに失神したってワケ」
澪「……」
和「精神を疑いたくなるのも頷けるわね」
律「私から一ついいか?」
和「どうぞ」
律「お前ら変態じゃないの?」
澪「お前に言われたくないんだよ!」
和「まぁいいわ」
律「そうだな」
澪「そうしよう」
澪「さて、律の説明は意味不明だったが
和は今どういう状況か理解してるのか?」
和「救助隊の話は聞いたわ」
和「かなりややこしい話だったし『たぶん、おそらく』と
推定の部分が多すぎて
どこまでが本当か分からないけれど…」
澪「うん」
和「簡潔に言えば
もうすぐもっと寒くなって、雪が積もって
水や食料、燃料の供給が一時的に断たれるから
しばらくの間、街を離れるべき、という話だったわ」
澪「えぇ~…」
澪「なんかオオゴトだな…。どうしてイキナリそんな事に…?」
和「さぁ…過去に例が無い異常気象だからなんとも…」
和「でも物事には必ず始まりがあるものだし
『そんな話、聞いた事ない!』と喚いてみても、仕方ないわ」
澪「まあ、そうだけど…」
澪「けど…、そんな状態で私は学校にとり残されたのか」
澪「よく考えたら怖い話だ」
和「正確には、後回しにされたのよ」
和「町の人たちを避難場所まで送り届けたあと
助けに戻るとは言っていたけれど」
律「でも救助の人、来てないじゃん」
和「これだけ雪が積もっての長距離移動は辛いでしょ」
和「責められないわよ」
和「それで、澪の両親も、その事を知らずに避難してる可能性があったから
私が一肌脱いで人肌でヌイたというワケよ」
澪「ん?」
和「なんでもないわ」
澪「あっ、もしかして唯が救助隊にコショウをふりかけたっていうのは
私を置き去りにする事に対して怒って…?」
和「いえ、アレはそんなタイミングじゃなかったわね」
和「もっと異質な何かだったわ…」
澪「そ、そうか…」
律「で、学べる和センセイ、これからどうすんの?」
和「ふふ」
澪(和がウキウキしてる…)
澪(気味が悪い)
和「本来ならセーフティラインまで避難すべきでしょうけど
雪で足元が悪く、移動にはかなり手間どるのではないかしら」
和「予報によると明日はかなり天気が荒れるらしいし
今は動くべきではないかも」
律「ふんふん、それで?」
和「幸い、ここには灯油があって、充分な食べ物もある」
和「明日から荒れるという天候がおさまるまで
ここで暖をとりつつ留まるのが賢明でしょうね」
律「移動は明後日以降ってワケかぁ」
澪「て事は、まだ学校に居続けなきゃいけないんだな…」
澪「私はもう3泊くらいしてる事になっちゃった」
和「色々、準備はしてきたから初日よりは快適なハズよ」
和「寒さと飢えを気にしないでいいだけで、かなり違うわ」
律「そりゃ分かるけど、ヒマだよなぁ」
澪「じゃあ部室に行って練習するか?」
律「えぇ~…あそこは寒いだろ」
澪「ストーブくらい運べばいいだろ」
和「ふふっ、楽しそうね」
澪「あ、でも和は退屈かな?」
和「あら、私も簡単な曲ならピアノで弾けるわよ」
律「よーし。そんじゃ、ドラム叩いてストレス解消するのも悪くないか」
和「じゃあ軽音部の部室に行きましょうか」
澪「あっ…」
律「どした?」
澪「なんでもないよ」
澪(そういえば亀が死んでるんだった…)
澪(でも、私が殺ったなんて分かんないよな…?)
澪「じゃあ部室に行こう!」
最終更新:2014年04月19日 21:57