─51─

菫「職員室に行ったら、さわ子先生が先生に怒られてました」

直「床に正座させられてて笑いをこらえるのが大変でした」

梓「報告ありがとう」

純「さわ子先生なにをやらかしたんだろう」

憂「きっとロクでも無いことだよ」

直「あの先生、昔からバカだったんですか?」

菫「なっ、直ちゃん」

純「でも昔は、あんな感じじゃなかったんだよね」

直「ほほぅ」

憂「お姉ちゃんが一年生だった時は、おしとやかで優しくて美人な
凌辱しがいのある女教師だったそうだよ」

梓「凌辱しがいのある、っていうのは唯先輩の感想なの?」

憂「さわ子先生が自分で言ってたんだって」

菫「それはゾクゾクしますね」

純「いや、しないけど」


さわ子「紅茶と甘い甘い甘いものが食べたいたいたいたい焼き」

梓「あっ、先生」

純「おつとめご苦労様です」

さわ子「あら、あなたたち、なぜ部室の前にしゃがみこんでダベってんの?」

さわ子「大麻でも吸ってんじゃないでしょうね」

純「どういう発想なんですか」

梓「というか菫たちに部室の鍵をとりに行ってもらったのに
先生が怒られていた最中だったので
鍵を受け取れなかったんですが」

さわ子「…見てたの?」

直「それはもうバッチリと」

さわ子「見てたのなら助けなさいよ!?」

菫「む、無理ですよ…」

梓「そもそも何故いいトシして怒られていたんですか?」

さわ子「…掘込先生っているでしょ?」

純「現国の先生ですよね」

梓「なにかと、さわ子先生に厳しいと定評のある…」

さわ子「アイツ、私の学生時代からここで教師やってるから
その時のノリで叱り飛ばしてくるのよ!!」

さわ子「生徒も見てる前で…私の威厳が…」

憂「でも怒られるような事をするから怒られるんじゃないですか?」

純「というか学生時代も怒られてたんですか?」

菫「先生はいつまでも幼いままなんですね、脳の中だけ」

直「えーと」

梓「死ねばいいのに」

さわ子「お、おまえらっ」


さわ子「まぁとにかく私を目のカタキにする
掘込をなんとかせねばと思いたったワケよ」

純「おっ」

梓「何か仕掛けたんですか?」

さわ子「私はヤツと対面で座りながら、何度も脚を組み替えてみたの」

菫「えっ」

直「先生、今日は結構、短めのスカートなのにそんな事をすると…」

さわ子「そう…案の定、ヤツは脚を組み替えるたびに
チラチラと見え隠れするスカートの奥の私のアレに
視線を泳がせ始めたわ!」

憂「うひょお」

純「すごいじゃないですか!」

梓「さわ子先生はやる時はやる女です!!」

菫「なんだか掘込先生気持ち悪い…」

直「偉そうにさわ子先生を叱ってても
一度でもさわ子先生で股関を熱くした以上
もはやなんの説得力もありませんね」

さわ子「でしょ~!?」


さわ子「そういう計画を紙に書いていた所を見つかったの」

梓「アホかコイツ」

直「どうしてそんな事、紙に書いてたんですか」

さわ子「いい事を思いついた!って思ったんだけど
忘れたらいけない!って思って書いた」

憂「頭いいなあ」

梓「バカなのが玉に傷だけどね」

さわ子「ハ~…私、3年前は美人で綺麗で美しい女教師として評判だったのに
どうしてこうなったのかしら」

梓「3年経ったからじゃないですか」

直「賞味期限切れ」

さわ子「ききぃ」

純「でも先生」

純「賞味期限って、おいしく食べれる期限であって期限が切れても食べる事は出来るんですよ」

さわ子「じゅ、純ちゃん…」




さわ「だからなんなの…?」


純「わかりません」


おわり





─52─

純「ふは~、やっと授業終わったよ~」

菫「お疲れ様です」

直「純先輩は勉強が苦手なお調子者というイメージですが
実際そこのところ、どうなんでしょうか」

純「おい」

憂「純ちゃんは意外と頭いいよ~」

梓「優等生ってほどでも無いけど、バカにするほどでは無いんだよね」

純「おつかいできる犬くらいはお利口だよ~」ワン!

直「よしよし」ナデナデ

憂「よしよし」ナデナデ

梓「よ~し純、パン買ってきて」

梓「駅前のおいしいパン屋さんで」

純「私はパシリではないよ!」

純「そして駅前って遠いよ!」

梓「ソーセージあげるから」

純「そんなのじゃ割に合わないよ!」

菫「利口なおつかい犬は口が達者なんですね」

憂「別に達者でもないような…」

純「梓と遊んであげてたら喉が渇いちゃった」

梓「それは私のセリフだよ」

菫「ではアイスティーでも用意しますね」

純「お~、ありがと~スミ~レ」

憂「あ、墨入れちゃん。実はお茶を家から持ってきたんだけど…」

菫「……」

純「お茶ならムギ先輩が残していったのが、いっぱいあるのに」

憂「お姉ちゃんが卒業旅行のお土産で買ってきたのが沢山余ってたの」

憂「せっかくだから、みんなで飲もうかなって」

直「卒業旅行のお土産が紅茶って、どちらへ行かれたんですか」

憂「ロンドンだよ~」

直「高校の卒業旅行でロンドンなんてイカれてますね」

憂「うん、行かれたんだよ~」

純「ロンドンか~、いいな~」

純「私たちも卒業旅行ロンドンに行こうよ~」

梓「でも私、2年連続、卒業旅行でロンドンに行きたいって言ったら
流石に親に殴られるよ」

憂「確かに」

直「というかなぜ去年、卒業旅行に行ったのですか?」

菫「もしかして梓先輩、留年…」

梓「もしかして私ってバカだと思われているの?」

菫「だって背も低いし…」

直「体は子供、頭脳も子供」

梓「私、去年まではしっかり者だったのに!!」

純「それであのスミーレさん、そろそろ飲み物の方を…」

菫「あっ、ごめんなさい!」

純「いいよいいよ、焦んなくたって」

梓「というか自分で淹れたら?」

憂「墨入れちゃん、私も手伝うよ~」

菫「……」

憂「墨入れちゃん…?」

菫「あの…」

憂「なぁに、墨入れちゃん」

菫「あ、その…」

純「なになに、どうしたの?」

梓「純の髪の毛について言いたい事があるならハッキリ言った方がいいよ」

純「チービ!」

梓「モップくそ頭」

憂「本当にどうしたの?」

菫「いえ、その…憂先輩に墨入れって言われるの、前から気になってたというか…」

憂「えっ」


憂「で、でも純ちゃんも墨入れって呼んでいるのに…」

菫「ご、ごめんなさい」

憂(なんで…?純ちゃんはよくて私はダメ?)

憂(私なんかにアダ名で呼ばれたくないという事なのかな)

憂(許せないよ)

憂「バラバラにしてやるぞ」

菫「!?」

純「憂っ!?待って待った!!」

梓「さすが桜高の人間瞬間湯沸かし器だよ」

直「憂先輩にそんな一面が…」

純「昔は憂選手っていって、そりゃあ大変なモンだったんだから」

憂「ふ―っ、ふーっ」


直「思うに墨入れと呼ばれるのが気に入らないのでは」

菫「」コクコク

純「かわいそうに、憂の殺気にあてられて言葉も出ないよ」

憂「なんで!?純ちゃんも墨入れって呼んでるのに…!」

純「私はスミーレって呼んでるもん」

憂「私も墨入れって呼んでるよ?」

梓「いや…憂のは違うよ」

憂「???」

直「憂先輩のは何かヤクザチックですよね」

憂「??????」

純「あー、プラモに色塗るヤツだと思ったけど
そっちの意味もあるのかー」

梓「そりゃ嫌だよね」

菫「」コクコク

憂「……プラモに色?」

純「そろそろ分かったかな?」

憂「頭に浮かぶのはバラバラになった墨入れちゃんをプラモのように組み立てる光景ばかり」

菫「ガタガタガタガタ」

直「」カタカタ

菫「ん…」

純「そこ何してんの」

直「震える菫をブラインドタッチで鎮めてみました」

菫「直ちゃん…」

梓「混沌としてきたなぁ」

純「とにかく憂は墨入れ禁止」

憂「分からないよ…助けてよ…お姉ちゃん…」

梓「憂は発音が変なんだよ。いや、滑舌かな?」

憂「かつぜつ…?」

純「憂のはスミーレじゃなくて墨入れになってるよ」

憂「?」

梓「スミーレって言ってごらん?」

憂「墨入れ」

純「ス・ミー・レ」

憂「す・み・い・れ」

純「ハンカチをハンケチと言うおじいちゃんみたい」

直「無理しないで菫ちゃんと呼ぶようにした方がいいのでは」

憂「やだ!私もハイカラな呼び方したいもん!」

純「ハイカラて」


梓「発声練習してみようか」

純「そういえば我々は軽音部だもんね。
その手の事は、お手のもの」

憂「すごい心強いね!」

梓「じゃあ憂は私のあとについてきてね」

憂「はい!」

梓「アメンボ赤いなアイウエオ!」

憂「ぁメンばかいなイウエオ!」

梓「浮き藻に小エビも泳いでる!」

憂「うきモニこぇべもよぃでぅ!」

純「ん?」

梓「柿の木栗の木カキクケコ!」

憂「カキコキコキコキコケコケコ!」

梓「キツツキこつこつ枯れケヤキ!」

憂「キツっキこつこつパレペヤキ!」

梓「真面目にやってる?」

憂「大真面目だよ!」フンス-3

純「し、しかし…」

菫「ひどいよ…こんなのあんまりだよ……」

直「よしよし」

憂「梓ちゃん、続きをお願い!」

梓「う~ん。まぁ出来ないからこそ練習するんだもんね」

純「まったくもってそのとおり」

梓「ささげに巣をかけサシスセソ!」

憂「ささげに巣をかけサシスセソ!」

純「おっ」

梓「そのウオ浅瀬で刺しました!」

憂「そのウオ浅瀬で刺しました!」

純「おお」

直「言えてますね」

梓「立ちましょラッパでタチツテト!」

憂「立ちましょラッパでタチツテト!」

菫「憂先輩…」

梓「トテトテたったと飛び立った!」

憂「トテトテットッタッタぱットッビッビッバ」

憂「い、言えたよ~!!」

純「言えてないよ!?」

直「ではスミーレと読んでみてください」

憂「墨入れ」

梓「まるで成長していない……」

菫「もう墨入れでいいです」

純「あきらめたらそこで試合終了だよ!?」

梓「スミーレ」

憂「スルメ」

純「今、試合終了のホイッスルが鳴ったあぁあ~ッ!!」


おわり



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最終更新:2014年04月19日 22:08