―57―
『律』
律は私の友達だ。
いつも変な事を言って
私を困らせる困ったヤツだけど
頭を叩くと
すごく綺麗な音がする。
ぽん、ぽん、ぽぽん
ぽん、ぽぽん。
ああ、もっと聞いていいけれど
耳から血が出てきたね。
律。
もうあの頃には戻れないね。
『唯』
唯は私のお友達。
明るくって
面白くって
可愛いらしい
私の自慢のお友達。
さっきなんて坂道を
ごろごろ
ごろごろ
転がって
パッ
と消えた。
どこに行ったの…?
唯…。
『ムギ』
ムギは私のお友達。
甘くって
美味しくて
お金をたくさん持っている
私の大切なサンタクロース。
さっき、いきなり口に舌をねじこまれた。
ムギ。
お前の口の中は納豆味。
ごちそうさま。
澪「どうだろう」
律「どうかしてるよ」
唯「どうかしてるね」
紬「どうかしてるわ」
―57―
おわり
―58―
唯「ふんふん♪ふんふふ~ん♪」
紬「あらっ、唯ちゃん。ゴキゲンね♪」
唯「空元気だよ」
律「やるなぁ」
澪「唯、本当は元気じゃないの?」
唯「元気ないという程でもないけれど、元気イッパイというには荷が重いよ」
律「荷が重いのか」
澪「何かあったんだ」
唯「何もないよー」
唯「でも、何もないからこそ何か、こう…」
唯「ビーフシチュー食べたい」
律「食えよ」
澪「唯、なんだったらおいしいビーフシチュー屋さんを探してみたら?」
律「おっ、グルメ番組みたいだな!」
紬「たまには気分転換にいいかもね!」
唯「面倒くさいよ」
澪「面倒くさいヤツだ」
唯「鳥のヒナみたいに口をアアーッって開けてたら
誰かが美味しいビーフシチューを流し込んでくれないかなあ」
律「見ろよ、死んだ魚みたいな目をしてるぜ」
紬「今、唯ちゃんを押し倒して股関をまさぐっても許してくれそうね」
澪「よ、よし、やってみるか」
紬「ウオオオオッ」
どたっ
唯「えっ…!?」
紬「今よ!脚を押さえつけて!」
澪「断る」
紬「なばっ」
律「アタシはやるなんて一言も言ってないし」
紬「ここに来てまさかの裏切り!?」
澪「昔はムギが私たちを騙すポジションが多かったが時代は変わったんだ」
紬「うう…」
唯「ムギちゃん、重いよ」
紬「うん…今、どくから…」
唯「あっ、でもムギちゃん、あったかい」
ぎゅっ
紬「あっ…唯ちゃあん…」
律「今日は寒いからなあ」
澪「唯は寒くなると口数少なくなるんだ」
律「じゃあエアコンの温度を上げれば…?」ピッピッ
フォオオッ
唯「むぁ……」
唯「なんだか元気が沸いてきたよお!!」
紬「良かったあ~」
ぎゅ~っ
律「おーい、唯。もう暖かくなったんだし、ムギを離してもいいんじゃないか?」
唯「やだ!」
紬「えっ」
澪「どうしたんだ?」
唯「こうやって、あたたたくなってもムギちゃんに抱きついていたいとアピールする事によって
気分が良くなったムギちゃんにビーフシチューをごちそうしてもらうんだよ~」
律「いい作戦だ」
澪「内容が全部筒抜けなのが残念だな」
紬「本当に」
律「だが、やってみる価値はありますぜ」
ガシッ
紬「えっ」
唯「りっちゃん…!?」
律「ムギはあったかいな~ムギ~」
すりすり
紬「り、りっちゃあん…」
ぎゅっ
澪「私も仲間に入れて!」
すりすり
紬「み、澪ちゃんまで…!!」
唯「ムギちゃあん♪」スリスリ
律「ム~ギ♪」スリスリ
澪「ム、ムギ…///」モミモミ
紬「ああっ…」
紬「もおっ…」
紬「んんんんっ……!」
紬「アハァッ、もうすごいビーフシチューがみんなですごい食べたいわっ!!」
律「誰の金で?」
紬「私の金で」
唯「や、やった…!」
澪「でもムギ、仕送り最低限だから余裕ないんだろ?」
紬「正直、全員におごるのはキツいわ…」
律「ふむ」
律「ヨーシ!こうなったらアタシらがムギにおごるってのはどうだ?」
紬「えっ」
唯「えっ」
唯「それもなんだか気分がよいね!」
紬「唯ちゃん」
澪「ムギにはいつもお世話になってるからな」
澪「たまには律も良いことを言う」
律「たまにとは ひでぇや」
紬「み、みんな…!!」
紬「びゅっビーフシチューなんて言わず、もう、ゴチバトルで行くようなすごい店に行かない!?私のお金で!!」
律「行く行くww」
澪「しめしめww」
うまくいきました。
―58―
おわり
―59―
―ゴチバトルで行くようなすごい店―
唯「あ~っ!おいしかった」
澪「ありがとなムギ」
紬「どういたしまして」
律「ゴチになります!」
紬「ふふっ♪」
紬「ところで、みんな」
唯「なあに~ムギちゃ~ん」
紬「さっき、私がおごるみたいに言ったけれど」
澪「ああ」
紬「アレは嘘よ」
唯「えっ」
律「あっ」
澪「ああっ?」
紬「すいません、お会計お願いします」
店員「はいっ、10万円になります。」
紬「あ、会計別々で」
店員「あ、はいっ、お客様のお会計8000円になります」
紬「カードでお願いします」
店員「はいっ…ありがとうございました」
唯「……」
澪「お前いくら持ってる?」
律「3円」
紬「じゃあね、みんな」
紬「結局、時代が変わっても
私がみんなをハメるというポジションに変わりなかったようね」
カランカラン(店を出てく音)
澪「くそ…アイツめ!」
唯「どうしよう」
澪「謝るんだ…謝ればお店の人も許してくれるさ」
律「お前バカ、そんなもんで済んだら警察いらんわ」
澪「3円しかないくせにビーフシチューおごるとか言ってたバカに
言われたくはないんだよ!?」
唯「お、お会計お願いします」
澪「えっ、唯…」
店員「え~と…お客様のお会計、1万8000円になります」
唯「カ、カードでお願いします」
澪「!」
律「唯のヤツ、学生の分際でカード持ってんのかよ!?」
澪「ムギも学生なんだけどな」
店員「お客様、このカード、クレジット機能は無いようですが…」
唯「でもTSUTAYAカードだから…」
店員「いや、しかし」
唯「このカードあげるから!このカードでDVD借りても延滞料金かからないから!」
店員「ハァ」
律「アイツ、滅茶苦茶だぞ」
澪「でも確かに人のカードなら
借りる時に金はかかるが未来永劫返す必要はない」
店員「わかりました。このカードでチャラにしてあげます」
唯「や、やった!」
律「あの店員も滅茶苦茶だぜ」
店員「ありがとうございました!」
唯「う、うわああああ」
カランカラン(店を出てく音)
澪「アイツ、これからどうなるんだろう」
律「他人の心配してる場合かよ、このままじゃアタシら食い逃げ犯になっちゃうぜ!」
澪「すいません、お会計お願いします」
店員「お客様の会計、1万3000円になります」
澪「はい」
店員「ちょうどですね。ありがとうございました!」
律「なにっ」
澪「ハァ…痛い出費だった」
律「お、お前 金持ってんのか!?」
澪「そりゃあるよ。大学生だし。まあ、常に大金持ち歩いてるワケじゃないけど」
律「き、きたねぇッ!きたねぇッ!」
澪「他人のおごりで6万円も飲み食いするヤツにだけは言われたくないね」
律「頼む澪、助けてください。なんでもします」
澪「」
カランカラン(店を出てく音)
律「ちっ、ちきしょう!」
―59―
おわり
最終更新:2014年04月19日 22:13