紬「放課後ティータイムとは袂を分かち、不遇に耐えながらも自らの音楽を追い求める、
  孤高の天才ミュージシャン。それが唯ちゃんの役割……」

梓「なっ……!」

紬「三人になった放課後ティータイムは、日本音楽界のあらゆる記録を塗り替え、名実共に
  史上最高のトップバンドとなった。伝説のバンドとなったのよ。私の筋書き通り……」

梓「唯先輩の人生は……? 私達五人の関係は……?」ワナワナ

紬「大いなる目的の為には、変化や犠牲は付き物よ。一人の例外も無く皆を幸せにしたいなんて、
  子供のわがままか、理想主義者の戯言に過ぎないわ」

遂に梓の瞳から涙がこぼれ落ちた。

梓「そんな…… そんなの、絶対間違ってます…… 喜びも苦しさも五人で分かち合うのが、
  放課後ティータイムだったはずです……! 放課後ティータイムは、私達五人で放課後
  ティータイムじゃなかったんですか!?」ポロポロ

紬「間違ってるのは梓ちゃんの認識よ。放課後ティータイムは誰の物でもない。私達五人の
  物でも、事務所の物でも、レコード会社の物でも、マスコミの物でも。ファンの物ですら
  ないわ」

梓「じゃあ、放課後ティータイムって一体、何なんですか……」

その問いを受け、紬は眉尻を下げて力無く微笑んだ。まるで“困った子ね”とでも言いたげに。

紬「放課後ティータイムは、私にとって……――」

その時、突如として律が立ち上がった。
ダメージが抜け切れておらず、足元が幾分怪しかったが、殺意に燃える眼光を取り戻している。

律「いつまで下らない話を続けてるんだ。私が知りたいのはそんな事じゃない。何故、お前が
  唯を殺したか、だ……!」ダッ

律は拳を振り上げて再度、突進を敢行した。
悲しげに首を左右に振りつつ、紬が迎え撃つ。

紬「心正しき者の歩む道は、心悪しき者の利己と暴虐によって、行く手を阻まれる――」

律の大振りのパンチが虚しく空を切る。
紬は素早く律の側方へ回り込むと、彼女のロールシャッハ・ニットに手を掛けた。ニット帽は
一気に引き下げられ、持ち主の顔面を覆い隠す。
更には、完全に視界を失った律の腕を取り、関節を逆に極めながら、テーブルの上へ投げ飛ばす。
皿やコーヒーカップは激しい音を立てて割れ、律はテーブルの向こう側まで転がっていった。

紬「愛と善意をもって暗黒の谷で弱き者を導く、その者に祝福を――」

ニット帽を直して視界を取り戻した律が、勢いよく立ち上がった。手には鋭く尖る皿の破片が
握られている。

紬「彼こそ兄弟を守り、迷い子たちを救う者なり。私の兄弟を毒し、滅ぼそうとする者に、
  私は怒りに満ちた懲罰をもって大いなる復讐をなす――」

紬の胸に破片を突き立てようとした律であったが、胸へ到達するはるか前に、破片を持つ
手は捕らえられてしまった。
凄まじい力で手首を握られ、破片が床に落ちる。
それと同時に、紬のもう一方の手が律の喉を掴んだ。

紬「私が彼らに復讐をなす時、私が主である事を知るだろう」

紬が喉輪を極めたまま、大外刈りの要領で強引に律の脚を払った。律の身体が一瞬、宙に浮かぶ。
喉を掴んだ手は離さずに、紬は充分過ぎる落差から、律の後頭部を床へ叩きつけた。

律「がっ! かはっ……!」

悶絶する律。それを見下ろす紬。
紬の呼吸や着衣には、少しの乱れも無い。

紬「エゼキエル書25章17節。りっちゃんの質問に対する答えよ……」

その声は律には届いていないのだろう。
律は身体をヒクつかせ、呼吸困難と闘っている。
紬は梓と澪の方へと振り返った。

紬「ついて来て。お話の続きをしましょう」




そう言うと、紬は食堂の出入口へゆっくり歩き出した。
梓も澪も身体を震わせて、即座に後ずさる。
海を割ったモーゼよろしく、紬は二人の間を悠然と通り過ぎた。
廊下の方へと足を運ぶ紬の背中を見送ると、梓と澪は律へと駆け寄った。

澪「律っ……!」

梓「律先輩、しっかり!」

律「うう…… だ、大丈夫だ……」

喉に強い衝撃を受けたせいか、律の声はかすれ気味だった。
二人の肩を借りてフラフラと身体を起こすも、語調は強気なままだ。
大きくずれたサングラスをかけ直し、律が言った。

律「早く、ムギの後を追うんだ……!」



リゾートハウスの廊下を歩く四人。
紬を先頭に、少し離れて律の両脇を支える梓と澪。
季節外れなせいか、窓の外からは鳥の鳴き声やそよ風の音以外は、何も聞こえてこない。四人も息遣い
以外は、その口から発していない。
その静寂を破ったのは、紬の背中を見つめ続けていた梓だった。
到底納得など出来る筈も無い紬の思考。それに対する苛立ちが、梓の口を開かせた。

梓「随分と余裕なんですね。私達に背中を向けて、前を歩くなんて」

紬「そう?」クスクス

梓「私はともかく、律先輩が銃を隠し持っていたら、とは考えないんですか?」

律(梓! 馬鹿!)

自身の発した言葉が致命的な失言では、と梓は考えなかったのか。
突如、足を止め、クルリと三人の方へ向き直る紬。
梓らは心臓が止まりそうな驚きと共に立ち止まった。
しかし、紬は食堂で顔を合わせたときと同じく、ニコニコと笑っているだけ。

紬「仕事柄、危機管理意識は高いの。普段からね」

紬がグイと浴衣の胸元をはだけた。
そこから覗いたものは、襦袢でもTシャツでもなく、鈍く光る鎖帷子のようなアンダーウェア。

紬「ヴィブラニウム合金の鋼線を編み込んだ防弾ジャケットよ。たとえ至近距離から50口径の
  対物ライフルで撃たれても無傷で済むわ」ニコッ

梓「……」ゾクッ

邪気の無い得意げな笑顔が梓に向けられる。
その徹底した用意周到さ。
また、常日頃からそこまでの防衛手段を必要としなければならない現在の彼女。
再び梓の口をつぐませたのは、そんな自分の理解が及ばない存在への畏怖だった。



目的の場所には程無く到着した。
それは、リゾートハウスの大きさとは対照的な、然程広くもない一室。
ワークデスクがあり、その上には数台のPCがディスプレイと共に鎮座している。
それだけなら個人トレーダーのデスクの上も似たようなものだが、異様だったのはデスクの背後、
壁一面に何十台と設置されたモニターだった。
ここは一体、何の為の部屋なのだろうか。

紬「さあ、入って」

デスクの方へと歩みを進めながら、紬が背で三人に入室を促す。
律は何の躊躇も無く、ズカズカという擬音が似合いそうな大股で部屋に入っていった。その後に、
警戒と恐怖でいっぱいの梓と澪が続く。
そして、三人がデスクの前に揃ったところで、紬が口を開いた。

紬「ジョン・F・ケネディの演説原稿の内容を知ってる?」

梓「……?」

紬「『今、この地に集う我々は、好むと好まざるとかかわらず、世界の自由を守る城壁の
  見張り(watchmen)となる宿命なのです』よ」

話の流れが読めず、困惑する梓と澪。
律は敵意を込めた眼つきで、デスクの向こうにいる紬をサングラス越しに睨みつけている。



少しの沈黙を挟み、再び紬が話し出した。

紬「……最初は、琴吹グループ内の使途不明金の発覚だったの。すぐに内部調査を命じた結果、
  業務上横領に手を染めていた三人の古参役員を洗い出したわ」カタカタ

紬は片手でキーボードを叩き、ディスプレイを少しの間見つめた後、すぐに三人へ視線を戻した。

紬「三人の役員を更に調査していく中で、彼らがある違法カジノの常連客だったという事実も
  判明した。五藤組が中心になって、東京グラスタワー最上階のペントハウスで開いていた、
  違法カジノよ」

澪「グラスタワーのペントハウス……?」ピクッ

紬「そこに、唯ちゃんがいた……」

梓「えっ!?」

澪「唯が!? どうして!?」

律「……」

何の脈絡も無く飛び出した唯の名に、梓と澪は色を失った。
しかし、律だけは何の反応も見せず、紬を睨み続けている。

紬「私も驚いたわ。だから、唯ちゃんへの個人的な調査を手配したの」

紬「当時の唯ちゃんには交際していた男がいたわ。名前は小椎尾学。聞いた事あるでしょ?
  自分を大物ミュージシャンと勘違いした、下品で、頭の悪い、どうしようもない男……」

紬「バーでお酒を飲んでいるところに声を掛けられ、交際が始まったようね。あの頃の唯ちゃんは
  心を病んで、お酒に溺れていたから、彼の口の上手さに騙されてしまったんでしょう……」

紬「すぐに唯ちゃんは小椎尾に連れられて、頻繁に違法カジノへ通うようになってしまった。
  彼と五藤組の関係が深かった為にね」

梓「それを知って、ムギ先輩は何も行動を起こさなかったんですか……?」

紬「勿論、行動は起こしたわ。唯ちゃんと彼の関係が一切報道されないようにマスコミへ
  手を回し、唯ちゃんを彼やカジノそのものから遠ざけるように五藤組に働きかけた」

澪「え……? いや、そうじゃないだろ……?」

紬「デリケートな問題なの、澪ちゃん。そのカジノの常連客は唯ちゃんや小椎尾、琴吹の役員
  だけじゃない。あなたのプロデューサーさんや和ちゃんの旦那様もいたのよ」

澪「何だって!?」

梓「和先輩の旦那さん……!? あの、国会議員の……?」

紬「当時政権与党の議員や経団連の幹部が複数、東証一部上場企業数社の取締役達、大御所と
  呼ばれる大物俳優やベテラン歌手…… 政財界や芸能界のバランスを崩しかねない黒い霧が、
  あのカジノにはかかっていたわ」

澪「そんな……」

梓「一体、何がどうなって……」

予想など出来る筈も無い、飛び抜け過ぎた話の流れ。
驚きを通り越して、思考の麻痺を伴う混乱に陥っても不思議ではない。

紬「そして、この問題に取り組もうとしていた矢先に、もうひとつの問題が持ち上がったの。
  それが――」

律「唯の自伝か」

ここまで無言を通していた律が不意に口を開いた。
話を横合いからひったくられたせいか、紬の表情が不機嫌そうに曇る。

紬「……その通りよ。唯ちゃんはカジノの件以来、尾行や盗聴を駆使して、あらゆる面で
  私の監視下に置いていたわ。そんな彼女が一本の電話を掛けた」カタカタッ

短いキーボード操作の後、PCのスピーカーから律と梓には聞き覚えのある会話が再生された。



『――自伝、ですか……』

『うん、そうなの。だからね、純ちゃんにも協力してほしいの。音楽界の歴史とか、当時の
 資料とか、そういうのをね』




『はあ…… 私は構いませんけど……』

『ありがとう! 良かった…… ごめんね。お仕事が忙しいのに――』



紬の手がキーボードから離れ、今度はデスクの上に置いてあった書類の束を持ち上げた。
数枚、数十枚という厚さの束ではない。まるで一冊の“本”くらいはある厚さだ。
その書類の束を手に、紬は三人へゆっくりと近づく。

紬「急いで内容を調べさせたけど、嫌な予感って当たるものなのね……」

梓「……?」

少しの沈黙と共に、梓の方へ眼を遣る紬。
どういうわけか、その視線と表情には憐みの色が含まれているようだった。

紬「……梓ちゃん。ちゃんとお医者様に診てもらった?」

梓「はい? な、何の話ですか?」

紬「大変よね。濡れないのと痛いのとで、好きな男性と愛し合えないって。性的不能が恋愛に
  及ぼす影響は小さくないものね」

梓「な!? な、な、な……! ど、どうして……!?」カアアアア

頬を染めながら慌てふためく梓には返答せず、紬の視線が今度は澪に向けられた。

紬「澪ちゃん、危なかったわね。プロデューサーとお付き合いしていたせいで、あなたまで
  とてつもない不祥事に巻き込まれるところだった。でも、あなたがトップに立てたのは
  あの人のおかげというのも、また事実なのよ?」

澪「ど、どうして私と彼の関係を!?」ビクッ

先程と同様に、紬の眼が今度は律へと向けられる。

紬「りっちゃん――」

律「ヒモ、DV、ギャンブル、借金。私が付き合う男は、みんなクズ野郎って言いたいんだろ?」

紬「あらあら」クスクス

梓「ま、まさか……」ハッ

電流が走るが如く、梓の脳裏をよぎったもの。
それは、つい先日、車中で律と交わした会話。
故人を偲んで交わした会話。亡き人を想いながら交わした会話。



『確かに…… 唯先輩に相談したくらいですね』

『私もそうだよ。何故か唯には話しやすかったんだよな』

『唯先輩の人柄だったんでしょうね……』



追い打つかのように、否、死者に鞭を打つかのように紬が続ける。

紬「放課後ティータイムメンバーの男性遍歴やスキャンダラスな事実。メンバー同士の不和、
  特に澪ちゃんの横暴な振る舞いや唯ちゃんに対する酷い仕打ち。他にも、さっきの違法
  カジノに関わった重要人物の詳細。一般人が決して知り得ない、芸能事務所やテレビ局の
  暗部……」

紬は束を眼の高さまで掲げると、静かに手の力を抜いた。
一枚一枚にビッシリと文章が印刷された、何百枚ものA4コピー用紙が床に散乱する。
紬の足元にも。梓の足元にも。澪の足元にも。律の足元にも。
“ブチ撒けた”という表現がピッタリだ。
そして、その間、紬の眼は三人を捉え続けていた。

紬「自伝の名を借りた暴露本よ。これは」

梓「う、嘘です…… そんなの…… 唯先輩が、そんな事をする訳が、ありません……」フラフラ

澪「唯……」プルプル

律「……」




梓は二、三歩後ろへよろけると、その場にペタリと座り込んでしまった。
澪は頭を垂れて足元の原稿を凝視し、拳を握り締め、身を震わせている。
律だけが、不動のまま、表情ひとつ変えずに佇んでいる。
紬は、三者三様の反応を示す梓達に、嘲笑うでもなく、慰めるでもなく、少しの感慨を込めて
話し掛ける。

紬「身も心もコメディアンに成り下がった唯ちゃんが、人生の逆転を狙った乾坤一擲の
  ブラックジョークだったんでしょうね。恐ろしく出来が悪くて、笑えないジョーク
  だけれど……」

監視者(watchmen)として。復讐者(avengers)として。
冷徹の仮面を被った彼女に、憎悪の影は微塵も見えなかった。

紬「このままでは放課後ティータイムを穢され、壊されてしまう。私は唯ちゃんの排除を決めたわ」

律「唯殺しを告白するんだな?」

紬を突き刺さんばかりに指差す律。
証拠は手にしている。自白もさせた。あとは――

紬「いいえ。“告白”という表現には、悔恨の意味が含まれるわ。私はただ……」

律「ただ?」

紬「……ただ、残念だっただけ」

律とは眼を合わせず、数台あるディスプレイのうちの一台をジッと見遣る紬。
そこに写っていたのは平沢唯、秋山澪、田井中律、琴吹紬、中野梓。放課後ティータイムの
五人である。
ただし、それは2009年、桜ヶ丘高校軽音楽部だった頃の放課後ティータイムだった。
とびっきりの。
満面の。
心の底からの。
どんな形容詞でも足りないくらいの笑顔を浮かべる五人。
やがて紬は液晶の中の五人から眼を離すと、変わり果てた三人の方へと眼を向けた。

紬「……唯ちゃんは死んだ。でもね、事はそんな単純な問題ではなくなっていたの。それは、
  まるで幾重にも複雑に絡まった大きな結び目。あらゆる人間、あらゆる組織が、あらゆる
  方向から絡み合っている。結び目を解く為には、正攻法とはかけ離れた飛躍が必要だった。
  ゴルディアスの結び目を断ち切る剣のようにね」

律「剣? どういう事だ。何が言いたい」

紬「私が振るう剣は、イーストアジア・エアラインが運航する、とある航空旅客機の起こす事故」

梓「事故……?」

紬「旅客機を操縦していた外国人機長は持病の精神疾患が原因で錯乱状態となり、他の操縦士を
  殺害した挙句、本来の飛行ルートを外れ、あの東京名所グラスタワーに突っ込んでしまうの」

澪「え……? ええっ!?」

紬「その事故は日本最悪の航空事故となり、旅客機側とグラスタワー側、そして地上にいた人達と、
  合わせて三千人以上の犠牲者を出す事になるのだけれど、私の関心はそんなところには無いわ」

律「……」

紬「私の関心はね、そのグラスタワーに何故か偶然……―― フフッ、偶然に偶然が重なって、
  今回の一連の事件や不祥事に関係したすべての人間が居合わせてしまう、という事」

梓「まさか、そんな…… う、嘘ですよね……? 大勢の罪も無い人達を殺すなんて……!
  嘘だと言ってください!」

紬「本気よ。放課後ティータイムを守る為ですもの」

律「そんな事、させてたまるかよ」

途方も無い話とはいえ、紬がやると言うのなら本当にやるのだろう。
だが幸いにも、彼女が事に及ぶ前に察知出来たのだ。
律は紬に詰め寄った。

律「言え。いつ実行に移すつもりだ? 虐殺の予定日時は!? さあ、言え!」

激しい詰問の言葉を聞くや、紬の鼻孔から小さく溜息が漏れた。

紬「いつ? 予定? ……あのね、りっちゃん。私は漫画やアニメの悪役じゃないの。誰かに
  妨害される危険がほんの僅かでもあったら、こんな重大な事をペラペラ話すと思う?」




律「何……?」

紬「35分前に実行したわ」



時は僅かに遡り――

2022年10月21日午前12時00分。
グラスタワー110階、カフェ・ムジョルニア。
不意に店内でざわめきが上がりだした。ランチタイムの賑わいとは明らかに別種なものだ。

和「何かしら……」

憂「どうしたんだろうね?」

やがて、ざわめきはすぐに悲鳴へと変化していった。
皆、眼を見開き、口を歪め、喚き、叫ぶ。中にはよろめきながら店の出入口へ急ぐ者もいた。
そればかりか、真向かいに座っていた真鍋夫妻までもが、他の者達と同じく恐怖と驚愕の
表情を顔面に貼り付けている。
そして、憂を除いた店内の全員が、一様に窓の外を凝視していた。
和も、その夫も、琴吹グループ役員も、刑事も、ルポライターも、編集者も、誰も、彼も。
憂はようやく後ろへ振り向き、ガラスの向こうへ眼を遣った。

憂「え……?」

透き通るような青空も、ジオラマのような街並みも、そこには無かった。
ただ眼に映るのは、こちらから僅かに数mの距離まで迫ったジャンボジェット機だけ。

そして、憂はすぐに何もわからなくなった。





キャビアにシガレット
礼儀作法は洗練されていて
例えようもなく素晴らしい
彼女は死の女王
火薬にゼラチン爆弾
それとレーザービーム
いつでも君の心を吹き飛ばせるのさ
――クィーン



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最終更新:2014年04月26日 20:21