唯「うえええええん! ごめんなさぁい!」ベソベソ
[怒りながらも手を取って走る姿は姉か母親か! 和先輩の愛情が痛い唯先輩! 私は何を
言ってるんだ!]
和「憂! こっちの場所はわかるでしょ!? 早く援護して!」
憂『見えてるけど射程距離外だよ! そっちに向かうから待ってて!』
和「それじゃ間に合わないのよ……!」
唯「どうしよう、和ちゃん……」
和「もう、あの手しか…… 唯、こっちよ! もっと早く走って!」ザザッ
紬「澪ちゃんとりっちゃんは今のうちに装填を済ませて迎撃の準備を! すぐに憂ちゃんが
来るわ! 私はこのまま和ちゃん達を追うから!」ズドドドドドドドドドドッ
澪「わかった! 気をつけろよ!」
律「一難去ってまた一難か……!」
和「はあはあ……」ガサガサ
唯「ひいひい……」ガサガサ
[懸命に逃げる二人! どうやら和先輩はどこかに向かっているようです! 戦略的撤退
でしょうか!]
和「唯、もうそのミニガンは捨てなさい。これ以上は邪魔になるだけよ」
唯「ええっ、でも……」
和「重さでどんどん行動が遅くなってるじゃない。それに憂が来てくれれば、そんな武器は
必要無くなるわ。ほら」
唯「う、うん。わかった……」ドサッ
[唯先輩、ミニガンと給弾ベルトパックを捨てました。これは賢明な判断でしょう。 ――って
言ってる間に!]
ズドドドドッ ズドドドドドドドドドドッ
和「もう追いついてきた……! さあ、逃げるわよ!」ザザッ
唯「あうう……」ヨロヨロ
紬「絶対に逃がさないわよ、和ちゃん!」ザッザッザッザッ
[この超重量武器を抱えて、この移動速度! 執拗な追跡! 私にはムギ先輩がターミネーターに
見えてまいりました!]
ザザッ ザザッ ザザッ
和「やっと着いたわ……!」ヨロッ
唯「これって…… 洞窟?」
[二人がたどり着いた先は小さな洞窟でした! この中でムギ先輩を迎え撃とうというの
でしょうか!?]
和「さあ、入るわよ」
唯「うん」
[あっ、二人が洞窟に入るようです!]
唯「暗いよぅ…… 怖いよぅ……」コツコツコツ
和「唯、いい? この中は曲がりくねっているけど、一本道ですぐに出口があるわ。ここからは
私に構わず走って出口を目指しなさい。洞窟から出たら、すぐに憂が見つけてくれるわ。
わかったわね?」コツコツコツ
唯「で、でも、和ちゃんは……?」
和「私はここでムギを倒すわ」
唯「そんな! 危ないよ!」
和「大丈夫。ちゃんと秘策があるから。唯はミーティング聞いてなかったでしょうけど……」
唯「ごめんなさい……」
和「さあ、早く行きなさい」
唯「う、うん。和ちゃん、また後でね」
和「後でね」ニコッ
~洞窟入口~
紬「この中に入ったのね……」
[遂にムギ先輩が追いつきました。しかし、すぐには入らないようです。洞窟の前に立ったまま
動きを見せません]
紬「鬼が出るか蛇が出るか…… いずれにせよ、この武器じゃ入れないわね」ドサッ チャッ
[ムギ先輩がM2を捨てました! やはりあの長大な重火器では狭い洞窟の中だと不利になると
踏んだのでしょう! しかし、懐から取り出したパイファー・ツェリスカは世界最大最強の
ハンドガン! 火力に不足はありません!]
紬「お邪魔します……」スッ
[撃ち合いの最中ですが、やはり育ちの良さが出ますね。一言挨拶をしてから中に入ります。
そして、カメラの無い洞窟では中の様子を伺い知る事は出来ません。勝者が帰ってくるのを
待つのみです!]
~洞窟内部~
紬「暗い…… 罠は無いようだけど……」コツコツコツ
紬「ん? あそこに座り込んでるのは…… 和ちゃん?」ササッ
和「来たわね、ムギ。隠れなくてもいいのよ。ほら」ポイ ガチャッ
紬「どういうつもり? 銃を捨てちゃうなんて。それで私が安心すると思ったの?」
和「安心するとは思ってないわ。でも、銃を構えているあなたと両手に何も持っていない私、
どっちが不利かは一目瞭然でしょ?」
紬「……」スッ
和「ようやく出てきてくれたわね」クスクス
紬「ゆっくりとセカンドウェポンを出して」ジャキッ
和「わかったわ。そんなに警戒しないで。今、上着のジッパーを開けるから……」
紬「……諦めちゃったの? 和ちゃんらしくないね」
和「あら、私は諦めた訳じゃないわよ。私の役割は二つ。一つは憂がいぶり出したターゲットを
近距離で仕留めること……」ジジジジジジ
紬「もう一つは……?」
和「もう一つは最低でも一人を確実に抹殺すること。この胸のセカンドウェポンでね」ジジジジ バッ
【和第二武器:クレイモア地雷】
紬「!?」
和「さあ、一緒に逝きましょう」ニヤリ
紬(撃つ!? いや逃げ――)
和「遅い!」カチッ キュイイイン
チュドォオオオオオオオオン
バシャアアアアア
[おわぁあああ! ビックリしたぁ! 突然、洞窟の中から大量の塗料が吹き出しました!
これは中で爆発物が使われたものと思われます! し、しかし、これでは中の三人は
ひとたまりも……]
本部『
平沢唯選手の生存を確認。平沢唯選手の生存を確認』
スタッフ『真鍋、琴吹、両選手の失格を確認。真鍋、琴吹、両選手の失格を確認』
[やはり失格者が出ていました! 武器の構成からいって爆発物を使用したのは和先輩と
思われます! しかし、自分を犠牲にした確実な攻撃というのも現実的な和先輩らしいと
言いますか…… と、とにかく、これで両チームともに失格者が二名ずつ! 人数は半分まで
減ってしまいました! 現時点での生存者は、TEAM唯が唯先輩と憂の
平沢姉妹、TEAM澪が
澪先輩と律先輩となっております! ゲームは佳境に入り、どのような展開を見せるので
ありましょうか!]
~洞窟出口付近~
唯「ふええ…… 憂、どこぉ……?」ウロウロ
[おっと、和先輩を失い、憂を探し求める唯先輩が森をさまよい歩いております。でも、
この状況だと、あまりウロウロせずに憂が見つけてくれるのを待った方がいいんじゃ……]
唯「うう……」ウロウロ ガサガサ
澪「唯の奴め、どこへ行ったんだ……」ウロウロ ガサガサ
唯「あ」
澪「あ」
[あぁーっと! 出会ってはいけない二人が顔を突き合わせてしまった。唯先輩、これはまずい!
非っ常ーにまずい!]
澪「い、いたぞ……」
唯「あわわ……!」オロオロ
澪「いたぞおおおおおおおお!!」ジャキッ カチッ カチッカチッ
唯「に、逃げろー!」ダダッ
澪「あ、あれ!? 弾が出ない!? 火炎放射器もだ!」カチッカチッ カチッカチッカチッ
唯「ん……?」ピタッ
澪「何で!? ま、まずい!」アセアセ カチッカチッカチッカチッカチッ
[おーっと! アクシデント発生! アクシデント発生です! 澪先輩のライフルと火炎
放射器に突然の不具合! 本部、これは!? ――本部からは続行の裁定が出ました!
澪先輩、急転直下! 一気に大ピンチだー!]
澪「ダメだ……! くそっ、逃げなきゃ!」ダッ
唯「こ、これ、もしかしてチャンス……? チャンスだよね? よし!」チャッ
[形勢逆転! 唯先輩、懐からシグザウエルを出し、臨戦態勢で決するか大勢!]
唯「待て待てー! 澪ちゃーん!」タンッタンッ タンッ タンッ
澪「うわわっ! 来るなー!」ザザッ ザザザッ
[逃げる! 走る! 澪先輩、一心不乱の逃走!]
唯「待て待て待てー! やっつけちゃ――」
ズボオッ
唯「ひゃあああ! な、何なのぉ!?」ズボボボボオッ
澪「やったか!?」ピタッ
律「かかった!」ガサッ
[唯先輩が消えた! 地面に吸い込まれた! これはもしや落とし穴ぁ!?]
唯「やだやだ! 動けないよぉ!」ジタバタ
律「澪、やれ! 穴の中に火炎放射器だ!」
澪「わかった!」カチャッ
[ああっ、澪先輩のアクシデントすらも罠だった! 単に銃器へ弾倉を装填していない
だけでした! 何という頭脳的戦術!]
澪「喰らえぇ!」プッシャアアアアアアアア
唯「びゃああああああああああ!!」ビチャビチャビチャビチャビチャ
律「よっしゃあ!」
澪「上手くいったぁ…… 良かった……」フゥ
唯「きゅう……」ガックリ
【平沢唯:リタイア】
[唯先輩、失格! 律澪コンビのクレバーな頭脳プレーの前に唯先輩失格! これで遂に
TEAM唯は憂一人を残すのみとなってしまったぁー!]
律「やったな、澪! 作戦成功だぜ!」タッタッタッ
澪「ああ、こんなに上手くいくとはな」
律「あとは憂ちゃんだけだ。ここからは私達の――」
ヒュッ ザシャアッ
憂「お、お姉ちゃん……」
[はぅあ……! 二人の背後に憂が……]
律「来たか……」ヒソヒソ
澪「振り向くなよ……! まだ刺激するな……」ヒソヒソ
律「ああ、わかってる…… それにしても胃が縮み上がりそうだよ……」ヒソヒソ
澪「いいか、1・2・3で撃ちながら左右に飛ぶぞ……」ヒソヒソ
律「ちょ、ちょっと待て……! それって、3と同時か? 3の後か?」ヒソヒソ
澪「3と同時だよ……! いくぞ? 1……」
憂「よくも……」
律「2……」
憂「よくもお姉ちゃんを……!」
律澪「3!」ザザッ ドンッドンッドンッ ババババババッ
憂「ああああああああああ!!」ババババババッ
[遂に始まったぁ! ゴールデン律澪コンビVS憂怒りの第二形態! 律先輩と澪先輩は
横っ飛びに飛んで、それぞれフルオートショットガンとパルスライフルを撃ちまくる!
それに対し、憂は怯むこと無く雄叫びを上げながらサブマシンガンを乱射!]
律「くそっ! なんてすばしっこいんだ!」ドンッドンッドンッドンッドンッ
[憂、常軌を逸した身体能力で銃弾を回避! 当たりません! 憂にはまったく当たりません!
射撃したその先に憂がいない!]
憂「ああああああああああ!!」ババババババッ
[かと思えば、連続側宙を駆使し、まるで無重力状態を思わせる動きでサブマシンガンを撃つ!
その射撃も正確無比です!]
律「危ねっ! だああ! 弾が切れた! 澪、装填するから火炎放射器で憂ちゃんの動きを止めろ!」
澪「おう!」プッシャアアアアアアアア
憂「……!」ダッダッダッダッダッダッ ババババババッ
[憂、今度は走る! 一ヶ所にとどまらず、全速力で走りながらの射撃! 火炎放射器ですら
憂を捉えきれません!]
律「う、嘘だろ……?」ガシャッ ジャキッ
澪「律、角度を崩すな! 90度を保ちながら二方向からの斉射を続けろ! 絶対に止められる!
憂ちゃんだって人間なんだ!」ババババババッ
律「この人間離れした動き見て、よくそんなこと言えんな! ちくしょう!」ドンッドンッドンッドンッ
[あ、いや! しかし、憂の反撃が減ってまいりました! 回避に専念しだしております!
二人の攻撃が確実に憂を追い詰めつつあります。]
憂「くっ……!」ギラッ ババババババッ
律「やばっ! なんか私ばっか狙ってね!?」ザザッ ドンッドンッドンッ ザザッ
[おおっ!? ここに来て憂の戦法が変わりました! 二人の攻撃を回避しつつも、連射数と
装弾数の劣る律先輩一人に的を絞っております! 律先輩が徐々に退避に回ろうとして
おります!]
澪「律! 陣形を崩すなって!」ババババババッ
律「無茶言うな! 防ぎ切れないんだよ!」ザザッ ドンッドンッ ザザッ
憂「……」ババババババッ ババババババッ
律「ダメだっ! 一旦退避する! 憂ちゃんを撒いたら無線で連絡するから!
うわあ!」ザザッ ザザッ ドンッドンッ ザザッ
澪「律ぅううう!!」
[退避に全精力を注ぐ律先輩! 執拗に追う憂! 二人がどんどん澪先輩から遠ざかって
いきます!]
澪「くそっ! 装填してすぐ動けるようにしとかないと!」ガシャッ チャッ
[澪先輩、パルスライフルと火炎放射器に装填し、合流の準備を整えております。別のカメラは
律先輩と憂が巻き起こしている戦いの渦を追っていますが、何しろ凄まじいスピードです!]
澪「火炎放射器はもうそろそろ危ないな。直付のカートリッジタンクじゃ容量なんて知れた
ものか……」ガシャッ ジャキッ
[ん……? あれ……? 二人の様子が……]
律『澪、澪……!』
澪「律! 無事か!?」
律『あ、ああ…… 無事は無事なんだけど…… 急に攻撃が止んでな。もしかしたら憂ちゃん、
そっちに向かったかもしれない』
澪「わ、わかった……」ゴクリ
律『そんなに離れてないはずだから、周りに気をつけながらそっちに向かうよ』
澪「ああ、なるべく早く頼む……」ドキドキ
ガサガサッ
憂「お姉ちゃん…… 今、助けるからね……」
澪「ひいっ……!」ビクッ
[のおっ! 私までビックリしたじゃないですか! ど、どこからか憂の声が聞こえました!]
憂「お姉ちゃん、待ってて…… 今、助けるから……」ガサガサ
澪「う、う、憂ちゃんだ……! こっちは、唯が落ちた落とし穴の方か……?」コソコソ
[あっと、憂がいました……! 唯先輩が気絶している落とし穴を覗き込んでいるところです!
カモフラージュでしょうか、上着に枝や葉っぱをたくさん付けて、頭からスッポリと被って
おります……!]
澪「よ、よし」カチャッ
[澪先輩、静かにゆっくりとパルスライフルを構えます……! 憂が気づく様子は無い……!]
憂「お姉ちゃん…… 今、助けるよ……」
澪「喰らえっ!」ババババババッ
バシュバシュバシュバシュ
[当たったぁー! 被弾! 憂、遂に被弾! 今、この瞬間、TEAM澪の勝利が確定
しましたぁー!!]
澪「よし! 律! やったぞ! 憂ちゃんを倒した!」スタスタスタ
律『ホントか!? やったな!』
澪「憂ちゃん、残念だったな。お姉ちゃん想いなのはいいけど――」スタスタ
憂『オ姉チャン…… 今、助ケルヨ……』
澪「う、憂ちゃん……?」バサッ
[んなぁ!? こっ、これは!?]
澪「憂ちゃんじゃない……! あ、梓!? それに…… こ、これは、唯の無線機……」チャッ
[何ということでしょう! 何ということでしょう!! 上着の中から出てきたのは憂では
ありません! 梓でした! 気絶している梓と唯先輩の無線機を使い、己に見せかけた
罠を張っていたぁー!!]
律『澪、どうしたんだ? ゲームは終わったんだろ? 澪!?』
澪「じゃ、じゃあ、憂ちゃんは…… どこに……?」ガクガク ブルブル
[あ、ああ…… う、うっ、後ろ……]
憂「狩りの時間です……」
ヒュバッ
澪「きゃああああああああああ!!」ズシャアッ ズザッ ザザッ ズルズルズルズルズルッ
律「澪っ! 応答しろ! 澪ぉ!! くそっ! どうなってんだ! ちくしょう!」
[み、澪先輩が…… これで両チーム共に残り一名ずつ……! 律先輩と憂の一騎討ちと
なります!]
律「ったく…… やるしかないか……!」ザザッ
[おや……? 律先輩が後退します。どうやら自陣方向へ引き上げるようです。そして、
一方の憂は…… 本部がカメラ映像をチェックしておりますが見当たりません。完全に
姿を消してしまいました]
~TEAM澪スタート地点近く~
律「こんなのがどこまで通用するかわからないけど……――」ザシュッ ザシュッ
律「手持ちのスペックで戦るしかないのが人だもんな……――」グイッグイッ ギュッ
律「サバゲーなんかでここまでやるとは思わなかったよ、まったく。なんで私がこんな目に……――」カチャカチャ
律「泥を身体に塗ってカモフラージュした方がいいかな…… そりゃやり過ぎかw――」ギュッギュッ ドスッ
[律先輩、懸命に罠を作成しております。基本の落とし穴は勿論ですが、あの草を結んでいるのは
足を引っ掛けさせるためのものでしょうか。そして…… ああ、これは考えましたね。蔓と
木の枝を使った鳴子です。当たれば音を出して相手の居場所を知らせてくれます。あの簡易的な
カカシは意味がよくわかりませんが……]
律「ああ、もう! もっと人数いるうちに作っときゃよかった!」イソイソ
最終更新:2014年05月22日 23:26