〜秋山家

澪「…………」カリカリ

澪「よしっ、この問題集もこれでおしまいっと」

澪「今度また新しい問題集買ってこないと……ふう」

〜♪

澪「ん、携帯……音声着信? こんな時間に誰が……って、珍しいな」ピッ

澪「もしもし?」

梓『あっ、澪先輩ですか? こんな遅くにすいません』

澪「ううん、別にいいよ。どうかしたのか?」

梓『はい、ちょっと澪先輩にお願いしたいことが…』

澪「なに? 私でよければなんでも聞くよ」

梓『ありがとうございます、その…今夏休みの宿題やってるんですけどちょっと分からない所があって』

梓『もしよかったら、澪先輩に教えていただきたいなって思ったんですけど…』

澪「そうだな…うーん」

梓『澪先輩?』

澪「それなら明日、私の家に来ないか?」

梓『えっ!?』

澪「明日はマ…母さんと父さんが家を空けてて私一人だから、梓が来てくれればすぐ傍で教えてあげられるんだけど」

澪「どうかな?」

梓『は、はい行きます! おじゃまさせて下さい!』

澪「そっか、嬉しいよ。じゃあ明日、勉強道具持って私の家においで」

梓『あっ』

澪「どうした?」

梓『私、澪先輩の家知らないです…』シュン

澪「そっか…ならまず近くの公園で待ち合わせしよう、それから私の家に案内するよ」

梓『は、はいっ、それなら!』

澪「じゃあ明日、まずは公園でな」

梓『はい、楽しみにしてます!』

澪「もう、遊びに来るわけじゃないんだぞ?」

梓『えへへ…』


・・・


澪「待ち合わせ10分前、ちょっと早く来すぎたかな……ん?」

梓「あっ、澪せんぱーい!」

澪「梓、早いじゃないか? まだ待ち合わせの10分前なのに」

梓「そんなこと言ったら澪先輩だって早いですよ?」

澪「それはやっぱり、梓を待たせるわけにはいかないからさ」

梓「私も、澪先輩を待たせるわけにはいかないので……」

澪「ふふっ、じゃあちょっと早いけど行こっか」

梓「は、はいっ」

ビュウウ・・・

澪「わっ、それにしても今日風強いな」

梓「そうですね……雨とか降らなければいいんですけど」


・・・


澪「さ、上がって」

梓「は、はい、おじゃまします!」カチコチ

澪「梓、そんなに緊張することないぞ」

梓「そ、そう言われても…」

梓(憧れの先輩の家で二人きりだなんて緊張しちゃいます)

澪「まあそのうちリラックス出来るとして…ここが私の部屋」

梓「綺麗に整ってますね、澪先輩の部屋」

澪「いや、たいしたことないよ」

梓(それに、澪先輩の香りがする…)

澪「さ、勉強始めよっか。それとも少し休んでからにする?」

梓「あっ、いえ大丈夫です! 今日はよろしくお願いします」

澪「こちらこそよろしくな、梓」




梓「澪先輩、ここの計算は…」

澪「ああ、ここはこの計算式を使って…」カリカリ

梓「えっと、じゃあこう計算して……」カリカリ

梓「答え、こうですか?」

澪「うん、正解! よく出来たな梓」ナデナデ

梓「えへへ…澪先輩の教えが上手だからです」

澪「ううん、梓の飲み込みが早いからだよ。勉強に対しての集中力もすごくあるし」

澪「だから教えやすいし、教えがいもあるよ」

梓「それは褒めすぎですよ、澪先輩」

澪「そうかな?」

梓「ところで澪先輩は夏休みの宿題は?」

澪「私は宿題なら夏休みに入って一週間ぐらいで終わらせたよ」

梓「ええっ!? じゃあ、そちらの机にある問題集などは」

澪「あの問題集は本屋で買ってきた物、今年は受験生だからいくら勉強しても勉強不足ってことはないだろうし」

梓「ふわあ……やっぱりすごいです、澪先輩」

澪「いや、勉強ばかり出来てもどうしようもないけどな」

梓「いいえ、私は尊敬します! 澪先輩のそういう努力家な所、す……すごく憧れます」

澪「梓ったら……ありがとうな」ナデナデ

梓「んっ……///」

ザァ-・・・

澪「外、雨降ってきたな」

梓「帰る頃までにはやんでくれればいいんですけど……」

澪「傘ぐらいなら貸してあげるよ、梓」

梓「ありがとうございます」


・・・


ビュオオ-・・・

澪「もう夕方だけど外、雨だけでなく風まですごくなってきたな……」

梓「そう、ですね……」

澪「天気予報見てきたら今、大雨警報に竜巻警報まで出ているみたいだよ」

梓「ええっ、そんなにですか!?」

澪「ああ」

梓「でも私、そろそろ帰らないと」

澪「何言ってるんだ、こんな嵐の中を帰すわけにいかないよ」

梓「けど澪先輩に迷惑に…」

澪「それこそ何言ってるんだよ、梓が傍にいて私が迷惑なはずないだろ?」

梓「そ…そう、ですか?」

澪(この天気で一人だと怖いし、むしろ傍にいてくれると嬉しい…かな)ボソリ

梓「? 何か言いましたか?」

澪「なんでもないよ、とにかくこんな天気だから今日は泊まっていかないか?」

梓「は、はい! ではお世話になりますっ」




澪「えーっと、お米はあるしそれに鮭にお肉、人参、じゃがいも、その他の野菜は……」ブツブツ

梓「澪先輩?」

澪「梓、家に連絡してきた?」

梓「はい、こんな天気ですし……迷惑にならないようにって」

澪「そっか」

梓「澪先輩は台所で晩ごはんの支度…ですか?」

澪「うん、ご飯にお味噌汁、焼いた鮭に肉じゃがでいいかな?」

梓「は、はい! 澪先輩が作るものなら何でも」

澪「よし、じゃあ晩ごはん作るの手伝ってくれる?」

梓「はい、もちろんですっ」

澪「じゃあまず……あ、梓は肉じゃがに玉ねぎ入ってたらダメだっけ」

梓「? 別に大丈夫ですけど…なんでです?」

澪「いや、猫が玉ねぎ食べたら命にかかわりかねないからさ」

梓「もうっ、猫じゃありませんよ私!」

澪「ごめんごめん」

ピンポ-ン

梓「あれ、こんな時間に誰が?」

澪「ああそうだ、今日新聞代取りに来るって言われてたんだ」

澪「ちょっと払ってくるから…じゃあ梓にはまず玉ねぎ切ってもらってもいい?」

梓「了解です!」


・・・


ドウモデシタ-

澪「どうも、お疲れさまです」

バタン

澪「こんな雨の中で新聞代取りに来るっていうのも大変だな…」

澪「さてと、梓そっちは……」パタパタ

梓「ううっ……ひっく」

澪「あ、梓どうした!? 指でも切ったのか!?」

梓「ち、ちがいます……玉ねぎが目にしみて……えっく」

澪「そ、そうだったのか……よしよし」ギュッ

梓「あ……///」

澪「じゃあ野菜の方は私が切るから、梓はそっちの戸棚から食器や箸出してくれる?」

梓「は、はい分かりました///」

澪「うん、じゃあよろしくな」パッ

梓「あ……はい」

梓(ちょっと名残惜しいな……)シュン


・・・


梓「ごちそうさまでした、澪先輩」

澪「おそまつさまでした、梓の口に合ったかな?」

梓「はい、とても美味しかったです」

澪「そっか、よかった」

梓「澪先輩、お料理上手なんですね」

澪「いつもマ……母さんの夕飯の手伝いしてる内に基本的な料理は出来るようになったみたいだから」

梓「私、学校の調理実習ぐらいでしか料理なんてすることないので尊敬します」

澪「梓も少しぐらい料理出来ないと、結構不便だよ?」

梓「うっ、考えときます」

澪(出来ないなら出来ないで、私がいつも作ってあげてもいいけどさ)ボソリ

梓「澪先輩?」

澪「ううん、なんでもないよ」


・・・


ヤッタナ-ッ、ゲゲゲッ、ダイダゲキ-

梓「ふああっ! そんなあ……今度は勝てそうだったのに……」

澪「いや、今のはちょうど青ぷよが来たから上手く連鎖に持ち込めただけだよ」

梓「うう、これで5連敗……澪先輩、ぷよぷよ強すぎです」

澪「ぷよぷよとかテトリスとか、そこそこ得意なんだ」

梓「けど、澪先輩が結構ゲーム持ってるのは意外でした」

澪「こういう落ちもの系のゲームは頭の回転にもなるしさ、後はピクロスとかもやったりしてるよ」

梓「頭の回転になるゲームをよくやるというのは澪先輩らしいですね」

澪「ありがとう、さてそろそろシャワーの時間……」

梓「あっ、勝ち逃げなんてダメです! もう一回です!」

澪「もう、しょうがないな」

澪(梓が意外と負けず嫌いってこと忘れてたよ)


・・・


ファイヤ-ッ、アイススト-ムッ、ダイヤキュ-トッ

梓「やったあ! 初勝利です!」パァァ

澪「負けたよ梓、気持ちいいぐらいの完敗だったよ」

梓「運よく緑ぷよが来たのがたまたま連鎖に繋がったので、まぐれでしたけどね」

澪「運も実力のうちってやつさ、またしような」ナデナデ

梓「はいっ」ゴロゴロ

澪「さて、じゃあそろそろシャワー浴びにいくか」

梓「あ、あの……」ジッ

澪「どうかした?」

梓「……い、いえ、何でもないです」

澪「……んー、せっかくだからお風呂炊いて一緒に入ろっか?」

梓「えっ!?」

澪「今、明らかに『一緒に入りませんか』って言おうとしたろ?」

梓「う……///」

澪「今日も暑いけど、少しぬるめの温度でお湯いれれば問題ないだろうしさ」

澪「それならどう?」

梓「は、はい……ではお言葉に甘えて///」


・・・


梓「わ、澪先輩のお家のお風呂場の浴槽大きいですね」

澪「何でもママの要望で大きくしたみたいでさ、二人入っても足伸ばしてゆっくりつかれる広さなんだ」

梓「へえ……」

澪「まずは体を軽く洗ってからな」スルッ

梓(わ……澪先輩、やっぱり大きい……///)

澪「ほら、梓も」スルッ

梓「きゃあ! 急にタオル取らないで下さい!///」

澪「あ、一年前の合宿の時よりほんのり大きくなってる」

梓「そ、そうですか? ……ってほんのりって言うのはあんまりです!」

澪「えっと、じゃあ少し、いやわずかばかり……」

梓「みーおーせーんーぱーい!」ズイッ

澪(な、何だか底無し沼にはまったような気がする……)



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最終更新:2014年08月25日 18:30